おはよう、さやかちゃん、杏子ちゃん。


   …うん、おはよ。


   …おはよう、まどか。


   珍しいね、二人がわたしよりも遅いなんて。
   どうかしたの?


   …いや、まぁね。


   まぁ、なに?


   え、と…ごめんね、待たせちゃって。


   ううん、いいよ。
   さ、行こ


   ふ……あぁぁぁ…ぁ。


   わぁ、大きなあくび。
   杏子ちゃん、ひょっとして寝不足?


   …昨日は、悪かったな。


   うん?


   飯、ごちそうになっちまって。
   それから風呂と服も。


   ううん、気にしないで。
   うちで良かったらいつでもまた、来てね。
   パパとタツヤも喜ぶから。ママも話してみたかったって言ってたよ。


   …。


   勿論、今度はさやかちゃんと一緒にね。
   良かったら、泊りにね。


   …うん。


   …おう。


   じゃあ、行こう?


   …あの、まどか。


   なに、さやかちゃん?


   え、と…。


   まどか、あたし達は付き合う事になったんだ。


   うん、おめでとう。


   …。


   …。


   …?
   どうしたの?


   …うーん、まいったかも。


   …まどかって、すげぇな。


   えー、すごくなんかないよ。
   ただ、嬉しいだけだよ。


   …。


   …。


   二人がしあわせそうにしてる。
   わたしはそれが嬉しいの。


   …ありがと、まどか。


   …ありがとう、まどか。


   えへへ。
   さ、行こ。遅刻、しちゃう。


   うん。


   おう。








   美樹ー、お客さまだぞー。


   うん、誰?


   また隣のヤツじゃないのか。


   いや、今度はセンパイだよ。


   ふぅん。
   じゃ、いないって言って。
   ね、杏子、あたしいないよね。


   そうだなぁ。


   て、滅茶苦茶いるじゃねーかよ。


   これからいなくなるの。
   行こう、杏子。


   おう。


   て、おーい。
   頼むよ、部活のセンパイなんだって。


   だって、いなければどうしようもないし。


   さやか、行こうぜ。


   わぁ、待った待った。
   五分、いや、一分でもいいから。
   な?な?


   えー。


   さやか。


   なに、杏子。


   今後の事を考えて、はっきりさせておくのも手だと思うぞ。


   そうそう…て、おおい。


   ふむ、それも一理ある。


   だろ。


   じゃあ、杏子も来て。


   あたしも?


   隣とは言わないから、傍にいて。
   中沢、それでもいい?


   お、おー……てか、いいのか?


   よし。
   じゃ、来て、杏子。


   しょーがねぇなぁ。


   …まぁ、いいか。
   後は俺の責任じゃねぇし…。








   さやかって、もてるよな。


   うん、そうみたい。
   前はこんな事、無かったのにね。


   節穴だったんだろ。


   そうなのかなぁ。


   そうだよ。


   杏子の目はどうだった?


   あたし?


   そ、杏子。
   いつから自覚してて呉れた?


   ……。


   何で目を逸らすの?


   …オクタだろ?


   違うよ?


   …あんな夢見させられたら、自覚するも何もないだろ。


   じゃあ、夢見てなかったらあたしはずっと、片想いのままだったの?


   …いや、ずっとじゃないよ。


   そうかなぁ。


   …。


   …杏子?


   あー、下から覗き込むな。


   …耳まで赤い。
   かーわい。


   …そろそろ良いだろ、さやか。


   んー……。


   ……。


   …じゃあ、手繋いで呉れる?


   こ、ここでか。


   然う、此処で。
   大丈夫、皆手ぐらい繋いでるじゃない。


   ……。


   きょーぅこ。


   …しばらく、慣れそうにないな。


   …?


   …何でもない。
   あーもう、しょうがねぇな。


   ふふ……。


   ……。


   ……え、と、杏子。


   な、なんだ、さやか。


   …ちょっと恥ずかしいねぇ。


   みんな、してるんだろ…。


   …まぁ、女の子ってそういうトコあるよね。


   ……しかし、きれいにフってやったもんだよな。


   期待持たせても仕方ないから。
   あたしには杏子がいる、これからもそれは変わらない。
   だったら、きれいに終わらせてあげた方がいいと思う。


   人生経験が豊富なヤツは言うコトが違うな?


   でしょ?


   …。


   …あたしには、出来なかったから。
   そして、いつまでも引きずってるのは苦しいから。


   ……そう、だな。


   でも、杏子は引きずっててね?


   うん?


   あたし以外の人になんて、靡いちゃだめだから。


   ……。


   …だめ、だからね。


   お前もだからな。


   ……。


   絶対、だめだ。


   …はい、分かりました。


   ……。


   …ねぇ、きょ


   さやか。


   …なぁに。


   好きだ。


   ……。


   だからこそ、夢のように手を出してしまうのが恐かった。
   壊れてしまうのが、恐かった。自分で壊してしまうのが、恐かったんだ。


   …うん、分かるよ。
   あたしも…そうだったから。


   あたしは一度、壊した。
   自分の願いで。


   ……。


   だけど…それじゃ駄目だったんだ。
   それじゃ結局、一歩も前に進めない…。


   …。


   それでも良かったんだけどな…さやかと出逢わなければ。


   …でも、出逢っちゃったね。


   ああ、出逢っちまった。


   …やり直したい?


   いや、全く。


   …そか。


   好きだ、さやか。
   ずっと一緒にいて欲しい。


   好きだよ、杏子。
   ずっと一緒にいて。


   ……。


   ……。


   …指輪でも買いに行くか。


   お、いいね。
   あ、でも、お小遣いないや。


   お年玉が残ってるから、買ってやる。


   え。


   いつ買いに行く?


   でも杏子


   受け取ってよ、さやか。


   …。


   な。


   ……うん、分かった。
   ありがとう、杏子…すごく、すっごく、嬉しい。


   いつか、ちゃんと働いてちゃんとしたの買ってやるからな。


   …その時はあたしも杏子に買ってあげたいな。








   いらっしゃい、さやかちゃん。


   お招きありがとう、まどか。


   よ、まどか。
   来たぞ。


   うん、いらっしゃい。
   杏子ちゃん。


   んー…まどかんち久しぶり。


   そうだね。


   あたしは…あれ以来か。


   もっと来てくれてもいいのに。
   杏子ちゃん、あまり遊びに来てくれないんだもん。


   杏子はねぇ、休みになると結構、ぐぅたらしてるからねぇ。


   さやかには言われたくないけどなー。


   ふふ。
   さ、上がって上がって。


   はーい。


   お邪魔します。








   あー、食べた食べた…もう、入らない。


   パパさんのごはん、相変わらずうまいよなぁ。


   さやかちゃんと杏子ちゃんがお泊りに来るって言ったら、パパ、張り切っちゃって。
   わたしも一緒に買い物に行ったんだ。


   あー…お腹いっぱい。


   さやか、他人様の家で行儀悪いぞ。


   何よぅ、杏子だってうちにいる時はごろごろしてるじゃないよぅ。


   うちとまどかんちは違うだろ。


   ぶー。


   ふふ。
   さやかちゃん、お風呂どうする?


   入るー…けど、ちょっと休んでからにするー。


   たく、しょうがねぇなぁ。


   はい、ここで問題です。


   あん?


   食べ終わった後…いつもあたしの膝を枕にして、ぐぅたらしてるのは誰でしょう?


   …。


   はーい、杏子ちゃんだと思いまーす。


   …。


   はい、正解です。
   流石まどか、あたしの嫁。


   うふふ。


   …。


   杏子ちゃん、さやかちゃんちにいる時のようにくつろいでもいいからね。


   …さーやーかー。


   だって本当のことですからー。


   だからって


   さやかちゃんと杏子ちゃん、付き合ってるんだもの。
   それくらい、普通なんじゃない?


   …。


   …。


   …?
   あれ?


   …や、まどかは言ってくれますなぁ。


   …あー。


   そうだ。
   お布団、どうする?
   一応、二組用意してあるけど


   じゃあ、お言葉に甘えて一組で。


   …まどか、二組頼む。


   いいの?


   えー?


   オク…さやか。


   …一緒が良かったな。


   じゃあ、お風呂は一緒に入る?


   はーい!


   オクタ!


   …むぐぅ。


   まどか、別でいいか?


   杏子ちゃんはそれでいいの?


   …まどか。


   ふふ、冗談。
   ママね、杏子ちゃんと話してて楽しそうだったよ。


   そうか?


   うん。


   …あたしはー?


   勿論、さやかちゃんとも。
   綺麗になったって、言ってた。


   …。


   あれは恋をしてる女だって。


   …あ、うん。


   ……。


   そうだ、何か飲む?
   何がいい?


   ……なんか、まどかにはずっと敵わない気がするよ。


   ……かもなぁ。









   ……静けさの中、一粒を堕ちただけ。


   …。


   広がる波紋に…波うつ井戸の底…。


   …。


   …ざわついた私の心の森を揺さぶる木枯らしよ、共存出来るものならそのままで。


   ……。


   …誰もがこの森で静かな声を聴いて、雑音に涙した。


   ……初めて聞いたな。


   あの子の歌、ずっと聞いていたからかな。
   でも全部は歌えないの。


   …。


   貴女の方が良く知っていると思う。
   一番近くで、聴いていたのだから。


   …。


   これはほんの一部分。
   どうしても聞き取れなかったから。


   ……。


   …慣れない場所では、眠れない?


   確かに慣れはしていない。
   けれど、二度目だから問題は無い。


   一度目は結局、泊まっていってくれなかったけどね。
   残念だったな。


   …。


   放っては、おけない?
   でしょ?


   …。


   それなのに、傍に居て上げなくても良いの?


   直ぐに戻る。
   問題は無い。


   …相変わらずだね。


   ……。


   あの子みたいに表には出てこないみたいだけど。
   この間も結局、出てこなかったし。


   …干渉する気は無いよ。


   貴女らしい。
   けれどそれだとあの子が寂しがったままだよ。


   ……。


   …抑え切れるぐらいだったら、誰も苦しまないから。


   ……。


   これからも出てくるつもりは無いの?


   …この躰の主は其れを望んでいない。
   だったら、出てくるべきでは無いだろう。


   あの子みたいに上手く両立すれば良いんじゃない?


   あれは出来ているとは言えないだろう。


   ふふ、然うかも。


   ……。


   …でもそれだけ、貴女に恋焦がれているんだよ。
   貴女に逢いたくて、愛されたくて、その腕の中で眠りたくて。
   今でも。


   ……。


   私達は消える事は無い。
   仮令、表に出る事は無くても。


   …分かってはいるよ。


   だったら、良いんじゃない?
   あの子が表に出ている時だけでも、逢って愛してあげても。


   ……。


   …良いと思うよ。


   クリーム。


   なーに?


   …あんたも消えないのだな。


   ……。


   あたし達を消したのは…クリーム、あんただった。


   正しくは私じゃないよ。


   …。


   …神になって、人間の姿では知る事は出来ない事を沢山識った。
   けれど…業は、消せない。消せなかった。


   …。


   それこそが私の願いそのものだったのだから。
   違いと言えば…この星を壊すか否か、それだけ。


   …いっそ、壊して呉れても良かったよ。


   其れは出来ないよ。
   其れは私の願いでは無いのだから。


   …だから、だよ。


   うん?


   だから、あいつと分かり合えなかった。
   最後まで。


   分かり合う事なんて、出来ないから。
   貴女も、あの子も。


   …。


   …だけど、だからこそ。
   傍に居て、笑い合って、愛し合って…共に生きていきたいって思うんじゃないのかな。


   …あんたはどうだったんだ。


   私?


   …あいつと、どうなりたかったんだ。


   ……友達。


   …。


   最高の友達だった…けど、実際はどうだった?


   …。


   …もっと、話がしたかった。
   繰り返す時間の中で幾ら想いを重ねても、それは結局、一つにはなれない。


   今からでも遅くは無いだろう。


   …然うかなぁ。
   じゃあさ、その時は手伝ってくれる?


   …あたしがか。


   と、オクタちゃんにもね。
   そしたら嬉しいなって。


   ……考えておこう。


   うん、考えておいて。





   きょうこ……。





   …。


   あ、呼んでる。


   ……クリーム。


   どうか、幸せに。
   佐倉杏子ちゃん。


   …あんたもな、鹿目まどか。


   うん、ありがとう。





   きょうこ……オフィ?





   さやか。


   …オフィ。


   違うよ、あたしは佐倉杏子だ。
   美樹さやかの事が好きな…ただの人間だよ。


   …きょうこ。


   ごめんな。
   さ、寝床に戻ろう。


   ん…。


   ……。


   …まどか。


   オクタちゃん。


   ……?


   ずっと、祈ってる
   オフィちゃんとどうか、幸せに。


   …クリー…ム?


   おやすみなさい。
   杏子ちゃん、さやかちゃん。
   また明日。








   ……。


   ……ぅ。


   おっきろーーーー!!


   …ッ。


   ………ぅ。


   さやかちゃん、杏子ちゃん、朝だよー。
   起きて起きて。


   ……まどかぁ。


   ………。


   おはよう、さやかちゃん。


   ……おはよ。


   ……。


   杏子ちゃん?


   …。


   …はぁ。
   おっきろーーーーー!!!!


   ……あー。


   おはよう、杏子ちゃん?


   ……ふとん。


   だーめ。


   ……まどか。


   おはよう?


   ……おう。


   朝ごはん、出来るまでにちゃんと身支度を済ませること。
   いい、二人とも?


   ……はぁい。


   ……おー。


   ふふ。
   寝起きの二人、かーわい。
   学校がある時はわたしよりも早いのに、なんか不思議。


   …きょうこぉ。


   …あー。


   いつの間にか一緒に寝てたしね?


   ……。


   …あ?


   別々だったのに、やっぱり二人一緒がいいんだね。


   ……きょうこ。


   …いや、あたしはおぼえてないぞ。


   じゃあ、わたしはママを起こしに行くから。
   そうそう、パパったら今朝のごはんも張り切って作っちゃうみたいだから。
   いっぱい、食べてあげてね。


   …はーい。


   おー…。


   ふふ、じゃあまた後でね。


   うん…。


   おう……。


   ……。


   ……。


   …きょうこぉぉ。


   おい、こら…おきるんだろ。


   そうだけど…そうだけどぉぉ…。


   おい、さやか…。


   ……もうちょっと、こうしてたいよぉ。


   ここ、まどかんちだぞ…というか、どうしていっしょにねてたんだ、あたしたち。


   …いいじゃない、べつに。


   だから、まどかんちだろ…ここ。


   ……。


   あ、おい、こら…。


   …きょうこ…きょうこぉ。


   ……。


   …なんか、なつかしいにおいがしたの。


   なんだ、それ…。


   ……オフィ。


   …。


   ……。


   …はぁ。
   オクタ。


   …やん。


   起きろ、さやか。
   もたもたしてるとまた、まどかが来るぞ。


   ……。


   …さやか。


   ……きす。


   あん…?


   …キス、プリーズ。


   ……。


   ……。


   …ほら、これでいいだろ。


   えへへ…。


   …目、覚めたか。


   うん…ばっちし。


   …なら、起きるぞ。


   ねぇ…。


   …うん?


   そういや、まどかんちにとまったんだよねぇ…あたしたち。


   …そうだよ。


   いつもとちがうねぇ、てんじょう…。


   …そりゃ、そうだ。


   …。


   …さやか。


   なんか、あんしんするのよね…まどかんちって。
   まえから、そうなんだ…。


   …。


   なんでかなぁ…?


   …なんでだろうな。
   でも、分からなくもない気がするけどな。


   うん…。


   でも、あたしは。


   …ん?


   さやかの部屋の方が安心する。
   さやかの匂いがして。


   …。


   …。


   …なーんか、やらし?


   …うるせ。


   ふふ…。


   …さやか。


   ……おはよ、杏子。


   …ああ、おはよう。
   さやか。








   あー…美味しかったぁ。


   朝からすごいご馳走だったなぁ。


   ねー。


   まどかんちって、朝からあんなに食べるのか?


   ううん、今朝は特別。
   さやかちゃんと杏子ちゃんが一緒だったからだよ。


   オムレツ、すごいふわふわだった。


   さやかじゃ、ああはいかないよな。


   むぅ。
   だったらもう、作ってあげない。


   でもさやかのも好きだぞ。


   そんなフォロー、いらないもん。


   じゃあどんなフォローならいるんだよ。


   …。


   さやか。


   杏子ちゃん、そこはさやかちゃんのが一番好きだって言うのがいいんじゃないのかな。


   ……。


   …そんなの、言わなくたって。


   それでも、だよ?


   ……。


   あーもう…しょうがねぇさやかだな。


   どうせ、しょうがないもん。
   ばか、ばーか。


   …小学生か。


   …でも、可愛いね?


   ……。


   …はぁ。
   さやかのが一番好きだよ、なんだかんだで一番口に合ってるんだ。


   なんだかんだって何よ。
   あとタメイキも。


   …まどか。


   …もうひと押し。


   さやか。


   ……。


   さやかのオムレツが食いたい。
   さやかの作った飯が食い


   …さやかばっかり。


   ……あ?


   …たまにはあたしを好きって言って呉れても良いと思う。


   ……。


   ……ぶー。


   …。


   そうだ。
   杏子ちゃん、さやかちゃん、わたしお茶淹れてくるね。
   パパが作ったハーブのお茶、美味しいんだよ。


   あ、おい、まどか。


   じゃあ、ごゆっくり〜。


   て、ここはあんたんちだろ…。


   ……。


   …オクタ。


   ……分かってるもん、知ってるもん。
   でも、あたしだってさやかだもん…。


   ……。


   …オフィに、逢いたいよぅ。


   ……。


   ……。


   オクタ、オクタヴィア。


   …!
   オフィ…!


   違う。


   ……。


   オクタはさやかだ。
   だから、あたしは…あんたの事も好きだよ。


   …。


   …だけど、あたしが好きなのはさやかだから。
   ごめんな…。


   ……。


   …さやか、お前の作ったオムレツが一番だからな。


   ……きょうこぉぉぉ。


   お……。


   ばか、ばーか…。


   …ばかばか言うな、ばか。


   ……。


   …まどかんちに来てまで、何してんだろうな。
   あたし達は…。








   ふふ、今日も良い天気になりそう。


   ……。


   杏子ちゃんとさやかちゃん…仲直りしたかな。
   けんか、とも言えないけど…さやかちゃん、杏子ちゃんの事になるともっと可愛くなっちゃうから。


   ……。


   …杏子ちゃんも。
   悩んでいたようだけど…でも、良かった。
   さやかちゃんの隣にこれからもいてくれるなら…。


   ……。


   …さやかちゃんの隣に杏子ちゃんがいる。
   そして、杏子ちゃんの隣にはさやかちゃんがいる。
   一緒なら…独りじゃないから、二人はきっと、大丈夫だね。


   ……。


   二人がずっと、一緒にいられますように。


   ……。


   …お泊り、楽しかったな。
   また、したいな。


   ……。


   今度はマミさんも呼ぼう。
   マミさん、来てくれるかな。
   来てくれるよね。


   ……。


   今日はどこへ行こう。
   おうちで遊ぶのも楽しいけど…こんなに天気がいいんだから。


   ……。


   そうだ、マミさんちに行けばいいんだ。


   ……。


   マミさん、突然行ったら驚くかな。
   でもきっと、迎えてくれる。
   困ったように笑われちゃうかもしれないけど。


   ……。


   ねぇ。


   ……。


   ねぇ、あなたも一緒に。


   ……。


   ほむらちゃん。


   ……。


   …また、皆一緒に。


   ……。


   待ってるから。


   ……。


   ずっと、ずっと、待ってるから。


   ……。


   …ホムリリィちゃん。


   ……。


   ……


   ……。


   …そろそろお茶を淹れて戻らないと。
   二人が待ってて…くれてるかな。


   ………か。


   …。


   ……せ?


   ……。


   ……。


   …ひとり、足りないの。


   ……。


   足りない、から。


   ……。


   だから…いつか、きっと。


   ……。


   その時を…ずっと、待ってるから。








   来るって言ってくれれば、もっとちゃんとしたものを用意したのに。


   マミさん、このティラミスすっごいおいしいですよ!
   ねぇ、杏子?


   ああ、うまいな。
   マミ、お代わり。


   もう。


   ごめんなさい、マミさん。
   連絡しないで来てしまって。


   本当よ、鹿目さん?


   えへへ…ごめんなさい。


   マスカルポーネ!マスカルポーネ!!


   わぁ。


   ベベ、そんなにはしゃいでいたら…


   …モジュッ。


   ああ、大変。
   ベベ、大丈夫?


   ……。


   ごめんなさいね、鹿目さん。
   ベベ、鹿目さんのお茶をこぼしちゃ駄目でしょう?


   ……ジュベベ。


   行儀の悪い子はチーズになっちゃうわよ?


   …ッ!
   カマンベール!


   マミさん、台布巾借りますね。


   ええ、お願い。
   ありがとう、鹿目さん。


   いいえ。


   ところで、マミ。


   うん?
   何かしら、佐倉さん。


   どうしてもう一人分、あるんだ?


   …ああ。


   それ、あたしも気になってました。
   ベベの分…は、他にあるし。


   それが…私にも良く分からないのよ。


   分からない?


   分からない…って、どういう意味ですか?


   なんとなく、なのだけれど…そうしていたような気がしたの。


   …。


   …。


   皆と言うと…鹿目さん、美樹さん、佐倉さんにベベ、そして私。
   だけどもう一人、いたような気がしたの。
   変、よね。


   …もう一人。


   ……ィ。


   ?
   美樹さん?


   …さやか?


   マミさんが言うなら、そうかもしれないなぁって。
   思っただけ。


   ……。


   うん…そうかもな。
   ま、変に夢見がちなとこはあるけど。


   佐倉さん?


   マミ、それも食っていいか?


   だーめ。


   けど、いないじゃんか。


   だめなの。


   …ちぇ。


   だったら杏子、あたしの分あげる。


   え、いいのか?
   お前、うまいって言ってたじゃんか。


   杏子に食べて欲しいの。
   杏子が食べてるとこ、見るの好きだから。


   お、おう、そうか…。


   えへへ、そうなの。


   ……。


   …なんだよ、マミ。


   いいえ、なんか雰囲気が変わったような気がして。


   気のせいだろ、気のせい。
   な、さや…


   ……。


   ……オクタ。


   ちょっとだけだもん…。


   …帰ったら、相手してやるから、


   やぁだ…。


   お、おい…。


   …えへへ。


   そういえば佐倉さんと美樹さん、やっとお付き合いを始めたそうじゃない?


   うぇ?


   はい、そうなんです!


   あらあら。


   だからロロさん…


   …?
   ロロ…?


   …じゃなかった。
   えと、マミさんにもお知らせしようと思ってたんです!


   もたもたしているようだったから、心配していたのよ。
   特に佐倉さん、貴女は肝心なところで押しの弱い子だから。


   …。


   貴女みたいな人をへたれと言うのかしら?


   ば…ッ。


   でも、そう。
   良かった、二人がしあわせそうで。


   …。


   …はい、しあわせです。


   うん。
   じゃあ美樹さん、貴女には新しいケーキをあげるわね。


   え、あるんですか?


   ええ、ここに。


   て、おい、それさっき駄目って言った…


   美樹さんには特別。


   えー…。


   えと…ありがとうございます、マミさん。


   どういたしまして。
   そうそう、知ってる?ティラミスってね、「私を元気づけて」って意味なのよ。


   え、そうなんですか?


   ええ。
   でも美樹さんには佐倉さんがいるから、大丈夫だとは思うけど。
   ね、佐倉さん?


   ……。


   佐倉さんには美樹さんがいるから。
   ね、美樹さん?


   ……。


   あらあら、二人とも顔が真っ赤。
   可愛いわね?


   パルミジャーノ、、レッジャーノ!!


   はいはい、今、新しいお茶淹れるから。
   ベベ、もう鹿目さんのお茶をこぼしては駄目よ?
   それから鹿目さん、ありがとう。








   ……。


   …ねぇ、杏子。


   うん…?


   マミさんのティラミス、おいしかったね。


   …ああ、うまかったな。


   流石マミさんだよね。


   …そうだなぁ。


   あたしも…杏子が喜んでくれるようなケーキ、作りたいな。


   …。


   …あたしには無理かな。


   そんなこと、ない。


   …。


   …ま、最初は失敗するかもしんないけどな。
   でも、食ってやるから。


   …。


   …。


   …ねぇ。


   ん…?


   まどかんちでお泊り、楽しかったね。


   ああ、楽しかったな。


   また、お泊りしたいね。


   まどかはまた来てねって、言ってたけどな。


   けど、なに?


   …。


   …杏子?


   ……いつの間にか一緒に寝てたとか、な。


   …。


   …オクタ、お前の仕業か。


   ……。


   …。


   …あまり覚えてない。
   だけど…懐かしい匂いに包まれたのは覚えてる。


   ……。


   ……。


   …ま、いいけどな。
   また、お泊りするか?


   …うん、したいな。
   楽しかったから。


   …じゃあ、まどかがいいって言ったらな。


   うん…あ、そうだ。


   …うん?


   まどかに泊まりに来てもらうのもいいかも。
   マミさんとベベにも。


   …。


   杏子はいや?


   …別に。
   さやかがそうしたいなら、いいんじゃないか。


   杏子はしたくないの?


   したい…って、言えばいいのか?


   もう、何よそれ…。


   …。


   …。


   …なぁ、さやか。


   なに…?


   …好きだ。


   ……。


   …。


   …へたれって言われたの、気にしてるんだ?


   ち、違うよ、ばか。


   ふぅん?


   ……。


   …あたしも、好き。


   ……。


   …ね。


   な、なんだよ。


   …ちゃんと、相手してね?


   え…。


   …して呉れるって、言ったじゃない?


   ……。


   …ふふ、いっぱいしてもらお。


   ……さやかに、だからな。


   …。


   …。


   …分かってるもん、ばか。


   ……。


   ……。


   …な、なぁ。


   ……なに。


   マミが言ってたもう一人って、結局、誰だったんだろうな…。


   …誰だろうね。


   言われてみれば…いたような気がするんだよな。
   なんでか、分からねーんだけど…。


   …いたからね。


   …。


   あたしもそんな気がするって思っただけ。


   …オクタは何か知ってるのか?


   さぁ…あたしも知らない。


   ……。


   …オフィなら、知ってるかもしれないけど。


   ……。


   …ふふ。
   帰ろ、杏子。


   …ああ、帰ろう。
   さやか。








   ……。


   …マミさん。


   ……。


   ……。


   …一緒に帰ったと思っていたのだけれど。


   ごめんなさい。


   良いのよ。
   あの子達は?


   帰りました。
   真っ直ぐに。


   然う。


   二人はもう、大丈夫だと思います。
   だけど…


   …オクタヴィア、ね?


   はい。


   美樹さんに自覚症状は?


   あると思います。
   若しかしたら


   わざと?


   かも。


   ふふ、まぁ良いんじゃない?思い切り、翻弄してやっても。
   あの子は「私」曰く「へたれ」だから、それ位で丁度良いのかも知れないし。


   それはどちらですか?


   どちらも、よ。
   一歩引くどころから、何歩引けば気が済むのかしらね?


   …ふふ。


   あの様子だとオフィーリアは表に出てきてはいないのでしょうね。


   少なくとも、あの「二人」の前には。
   出てくる積もりも無いみたいです。


   その言い方だと、貴女の前には出てきたのね?


   昨晩、お泊り会をした時に。


   私の前にも出てきて呉れないくせに。


   と言うより、私が引っ張り出しました。


   あら。


   オクタちゃんの歌を少し。


   それで、まんまと釣られたの?


   分かってはいたのでしょうけど。
   オフィちゃんは優しいですから。


   己の事はあっさり棄てるくせにね。
   佐倉さんの時はそれでも棄て切れていなかったのに。
   美樹さんの中に希望を見出して。


   …。


   でもだからこそ、オクタヴィアは放っておけなかったのでしょうけど。


   と言うより、恋慕の魔女の想いは誰よりも強力なのかも知れませんよ?
   己の欲望に直結していますから。


   ふふ、然うね。


   …。


   …。


   …ねぇ、クリームヒルト。


   …はい、ロロさん。


   あの子は、何処へ行ってしまったの?


   …何処にも。


   …。


   あの子は、居ます。
   だけど、存在はしない。


   …それは居ないと同義では無いの。


   かつての私と同じ。


   …それは概念化していると。


   あの子が。


   …。


   …あの子が自分の存在を否定した。
   それが、私達の為だと信じて。


   …莫迦ね。


   ……。


   勝手に決め付けて。
   何時、誰が、そんな事を望んだと言うの。


   …。


   誰も、望んでいない。
   然う、誰も。


   …自己完結、ですから。


   本当にねぇ…分からなくも、無いのだけれど。


   ……。


   …何にせよ、難儀ね。


   …それでも。


   …。


   私は、待ってますから。


   あら、待ってるだけでは駄目よ?


   …。


   引き籠っているのなら、此方から迎えに行ってあげましょう?
   それで、お茶会をするの。皆で。


   ふふ、良いですね。
   それも。


   私は何時だって、招待する支度は出来ている。
   だから、何時でも来て欲しいの。


   …。


   然う、何時でも。


   …ケーキ。


   …。


   美味しかったです。
   とても、とても。


   有難う。
   嬉しいわ。








   Song...
   “硝子の夢” Heart of Air
   “inca rose 空耳ver” 梶浦由記
   “調和 oto 〜with reflection〜” KOKIA

   BGM...
   “Waterfall” from 「クーデルカ」 菊田裕樹
   “The trial” from 「Tales of Rebirth」 桜庭統
   “Abel's ark” from 「Xenosaga episode3」 梶浦由記









   ………。


   ……。


   ………。


   ……ほむらちゃん。


   ……。


   ほむらちゃん、おはよう。


   ……。


   ほむらちゃん、大丈夫?


   ……。


   ねぇ、ほむらちゃん。
   わたしね…。


   ……。


   ほむらちゃん。


   ……、か。


   あなたに逢えて、よかった。
   あなたを助けられて、よかった。
   わたしなんかでもだれかを助けられて、それがほむらちゃんで、本当によかった。


   ……。


   そう、思うんだ。
   思ってるんだ。


   ……か、……か。


   ありがとう、ほむらちゃん…。


   ……。


   ……。


   ……う、ぅ。


   ……。


   …まどか。
   まどかぁ……。


   ……。


   …私が、いなければ。
   私なんかが、いなければ…。


   …。


   …私が居なくても、貴女が笑ってくれるなら。
   笑って、いられるのならば。


   …。


   …それが、私の願いなら。
   それが私の、願いだから…。


   ……。


   …私は、それで良い。
   良いの…。


   ……。


   …だから、も





   甘ったれるな、転校生。





   ……。


   あんたのそういうところ、本当、むかつく。


   …。


   未練たらたらのくせに。
   そう簡単に割り切れるくらいなら、誰も苦労はしないし、誰も苛まない。


   ……。


   あんたの場合、今更帰りたいって言えなくなっただけでしょ。
   どの面下げて、さ。


   …。


   全く同じじゃない。
   だけど、分からなくもない。


   …。


   だけど、あたしは…あたしは、自分の想いに抗えなかったよ。
   あんたが用意して呉れた世界でだったけど…間違い無く、あたしはあの中で幸せだった。
   仕合せなんか、いつだって、自分勝手なものなんだ。


   ……。


   …どんな面でも良いじゃない。
   それがあんたの面ならば。


   …。


   …どんなに時間が掛かっても。
   と言ってもまぁ、時間は有限なんだけれど。


   ……。


   …甘ったれるな、転校生。


   貴女には、貴女にだけは言われたくない。


   ……。


   …分かっているというような口ぶりで。
   貴女のそういうところが、嫌い。
   甘ったれな自分の事は棚に上げて、大嫌いだったわ。


   最初から、馬が合わなかったって事だね。


   ……。


   …いつまでも、うだうだと考えてれば良い。
   思い出に浸って、さ。


   ……。


   …あたしは、あの子と生きる。生きてやる。
   この時間が、この世界が、壊れたとしても。あたしが、壊したとしても。
   何度でも、探して、何度でも。


   傲慢。


   然うだよ。
   何しろ、あたしは魔女だからね。









   さやか。


   ……。


   さやか?


   …ん。


   どうした?


   ……。


   さや…うぉ。


   …ふふ、きょーこぉ。


   ……。


   相手、して呉れる…?


   …はぁ。
   いいよ、してやる。


   オクタって言わないの…?


   …今更だろ、もう。


   じゃあ…。


   それでも。


   …ちゃんとさやかに、ね?


   ……。


   ね…?


   …その前に。


   ん…。


   …どこ、行ってたんだ。


   何処…?
   何処って…?


   ……。


   …きょうこ?


   いや…何でもない。


   ……。


   …なぁ、さやか。


   なぁに…?


   …なんだか、ばかばかしくなっちゃったよ。


   ばかばかしい…?
   なんで…?


   …だって、そうだろ。


   あたしと、こういうコトすることが…?
   杏子にはばかばかしいの…?


   …そうじゃないよ。


   じゃあ、なに…。


   …うだうだと、悩んでた事さ。


   …。


   …さやかは、あたしの事を好きでいてくれて。
   あたしも、さやかの事が好きだった。
   何を悩む必要があったんだろう、って。


   …でも、悩んだ。
   あたしの事を考えて。


   …違う。
   あたしは…ん。


   …そういうとこ、もどかしいけど。
   好きよ。


   ……オクタヴィア。


   全部、「さやか」の気持ちだから。


   …。


   自分も、もどかしいくせにね…?


   …うん。


   夢だけじゃ、足りないの。
   実際に触れ合って…いっぱい、感じ合いたい。
   だって…誰より、愛しているんだもの。愛されたいんだもの。


   ……さやか。


   どっかの誰かみたいに、身を引くなんて…あたしには、出来ない。


   ……。


   …ね、杏子。
   これまでの分、これからの分、いっぱい、愛してね。


   ……頑張るよ、一応。


   ふふ…。


   …でも、さやかにだからな。


   分かってます…。


   ……?


   ……杏子。


   …さやか?


   他にだれがいるの…?


   …いない、な。


   でしょう……。


   …さやか。


   ……好きって、言って。


   ……。


   …ねぇ。


   ……好きだよ、さやか。


   誰よりも…?


   …うん、誰よりも。
   その、さやかは…。


   …ばーか。


   な…。


   ……杏子が、欲しい。


   ……。


   …好きよ、きょうこ。
   だぁいすき…。








   おはよう。
   さやかちゃん、杏子ちゃん。


   ……おはよ。


   ……おう。


   今日も仲良しさんだね?


   …。


   …腹、減ったぁ。


   え、ごはん、食べてないの?


   …作る時間が。


   …食う時間が。


   え、と、もしかしてと思うけど…お弁当は?


   ……パンを。


   ……買う。


   あー……。


   …ふぁぁぁ。


   ……。


   さやかちゃん、大きな欠伸…て、杏子ちゃん、こんなトコで寝ちゃだめだよ。


   …さやかが、せがむから。


   だってぇ……でも、きょうこだってさぁ…。


   えーと。


   ……さやか、腹減った。


   …夕ご飯は豪華にしてあげるから。


   ほんとか…でも今、腹減ってんだよぉ。


   後でロッキー、食べよ…。


   足りねぇよぅ…。


   …りんごも、あるよ。


   おーーー…。


   …慌ててたけど、持ってきました。


   おー、さすがあたしのさやか…。


   …えっへん。


   えーーと。
   とりあえず、学校行こう?
   遅刻、しちゃ





   あらあら。





   …あー?


   ……あれー?


   あ、マミさん。
   おはようございます。


   おはよう。


   …おはようございますー。


   …おう、マミ。


   二人とも、寝不足のようだけれど?


   ……。


   ……。


   全く、仕様がない子達ね?
   次の日が学校の時はあまり夜更かしをしては駄目じゃない。


   …うぁーい。


   ……。


   マミさん、今日は少し遅くないですか?


   うん、ちょっとね。
   たまには鹿目さん達と時間を合わせてみようと思って。
   迷惑だったかしら?


   いいえ、そんな事。
   一緒に行きましょう。


   ありがとう。


   ……。


   ……。


   あー。
   さやかちゃん、杏子ちゃん、寝ちゃだめだって。


   全く、本当に仕様がないわねぇ。


   ……きょうこぉ。


   ……あー。


   ほら、ちゃんと前を見て歩きなさい?
   と言いより、そんな状態で良くここまで来られたわねぇ。





   ………。





   ……。


   鹿目さん?
   どうしたの?


   …あ、いえ。


   空?


   …今日もいい天気だなぁって。


   そうね、いい天気ね。
   それなのに。


   ……。


   ……。


   ほーら、二人とも。
   しっかりと前を見て歩きなさい?


   …あーい。


   …おー。


   ふふ。


   鹿目さん、行きましょうか。


   はい、マミさん。


   それでね、今度のお泊り会の事なんだけれど…。