−円環ノ絆 ……。 ……。 …初夜、なんですよね。 まぁ…然うなるわね。 …。 …。 …日向さんみたいね、その言い方。 …然うかしら。 腕、引けを取らなくなってきたと。 …伊勢さん、ですか。 日向さんがもう一人、居るみたいだとも。 …。 ふふ…このところずっと、はっきりしないお天気が続いていたけれど。 今日は、晴れて呉れましたね。 ええ…然うね。 晴れて…良かったです。 …ええ。 ……。 …赤城さん。 あ、あの。 はい。 …今更、なのですけど。 …どうかして? その…改めて、だと。 少し…照れますね。 ……今更? だから、然う言ったじゃないですか。 ……。 …まさか、あれ程盛大なものになるなんて。 …確かに。 ……。 …綺麗、でした。 ……。 …赤城さんの白無垢姿。 もう一度、見たいくらいです。 …それは私と別れたいと言う事ですか。 ありえません。 …ではもう一度、祝言を挙げる気ですか? ……。 そうしたら…もう一度、加賀さんの白無垢姿が見られますけど。 …。 ふふ…ね、一度だけで良いでしょう? …ええ、一度だけで良いわね。 …。 …。 …ユビワ。 …。 …どう、ですか。 似合っていると思うわ。 …思う、なんですか。 ……今は。 …。 こういうの、なのね。 …慣れない? なにぶん、古い人間なので。 …ふふ。 ……弓を引く時に邪魔になりそうな気がするわ。 邪魔なんて…酷いわ、加賀さん。 …。 でも然うね、その時は外して…紐に通して首から下げておくなんてどうかしら。 切れてしまったら…無くなってしまうわ。 …。 …折角、赤城さんとお揃いなのに。 ……。 …何。 可愛い事、言って呉れたので。 …可愛い事? はい。 …そんな事、言ったかしら。 言いましたよ。 …。 …ユビワ、私とお揃いだと。 ……それが可愛い事? だって…貴女がそんな事、言うだなんて。 ……。 …私も無くしたくないわ。 貴女と、お揃いなんだもの…。 …赤城さん。 ……左手、薬指。 …? どうしてユビワなのか…教えて貰いました。 誰に…いえ、それは良いでしょう。 どうして、なの。 …知りたい? ……。 …今、自分で調べれば良いって思った? …どうでしょう。 …。 …。 …言って? ……知りたいわ。 じゃあ…教えてあげる。 ん…赤城さん。 …この体勢では、駄目ですか? 重い…? ……良いわ。 ふふ…良かった。 …それで。 ユビワ、は。 途切れる事の無い、永遠の絆。 …。 …円、でしょう? ……ああ。 左手、薬指。 …。 …心臓から繋がる、場所。 …中指ではいけないの? 薬指と心臓は一本の血管で繋がっている…と、遥か昔何処かの国では然う考えられていたんですって。 …。 それから…。 ……。 右手より…左手の方が少しだけ此処に近いでしょう? ……ええ、然うね。 ……。 ……。 …加賀さん。 …赤城さん。 ……もう、初めてでは無いですし。 改めてに、なってしまいますけど…。 …関係無いわ。 ……然う、ですね。 ……。 ……かがさん。 …灯り、どうしますか。 ……貴女の顔が、見たいわ。 …分かりました。 ……ねぇ。 ……。 なまえ…よびすてに、して。 ……。 …それで。 なんども…なんども、よんで…。 ……いくらでも。 なんど、でも…。 −存在理由 ……。 ……。 …空母寮。 ……。 …吹き飛んでしまいそう、ね。 …古いですから。 ……改築、しないものね。 …はい。 ねぇ…? …なんでしょうか。 私ね…古いけれどこの空母寮が好きよ。 …然うですか。 どこか…懐かしい、そんな思いを抱かされるの。 …。 …私、本当は今の時代があまり好きではないの。 便利を追い求めて…追い求め過ぎて…その代償として、人は心を失くしているような気がして。 …。 …どこか、冷たい気がするのよ。 いえ、確かにあの頃も……それでも、人は人と繋がっていたわ。 然う、機械を介さずとも。 ……。 だから…若しかしたらこの時代を壊す為に、人の世を壊す為に、あれらは…と。 少しだけ、考えてしまうの…。 …思うのです。 何を…? …あれらは若しかしたら、人の子が間接的に産み出したものでは無いかと。 ……。 …私達の元はふねです。 私達は所詮、人の子によって造られたものに過ぎない。 ……。 …この星で繁栄をし、まるで自分達がこの星の主かのように振る舞い、驕り。 そしてある時、殺し合いを始める…。 ……。 …私達はその為に造られた。 人の子が人の子を殺す為に。 ……。 …結局、残ったのは怨嗟と悔恨と、終わらぬ憎悪。 それらが集まって……生まれたのが、あれらだとしたら。 …私達は何の為に戦っているのでしょうね。 ……。 …人の子に従って。 今でも人の子は私達をただ、使うだけ。 ……。 …それでも、私は。 人の子の為じゃない。 ……。 …人の子の為になんかじゃ、ない。 赤城さん…。 …私は、貴女が居るから。 ……。 …で、なければ。 こんな世界、どうでも良いのよ。 然う…いっそ、壊れてしまったって。 ……。 …あなた、は。 …私は。 ……ん。 私が生まれた意味を…今は、あなただけが、知っていると思っています。 …わたしだけが? はい…。 ……それは、私が好きに思って良いと言う事? …好きに、は。 少し、困りますが……。 …でも、然うとも取れるわ。 ……。 …ねぇ、加賀さん。 ねぇ…。 …はい。 ……あなたは、わたしを愛するために生まれてきたの。 …それは、また。 ……良いでしょう? …良くないとは言えません。 ですが、聊か…。 …聊か、何。 少女的だと…う。 …。 …赤城さん、鼻は。 ……くちづけ。 …。 …はやく。 ……はい。 ……。 ……。 …今の私は加賀さんの赤城だということ。 はい……。 …それで、あなたは? …私は赤城さんの この空母寮の事…好き? …え。 …。 え、と、私は…。 …私と、同じ? ……のすたるじっく、と。 …? 言うそうです。 …何の事。 この感傷に、名を付けるのならば。 …感傷。 ……人の子の心は、ふねであった私には良く理解出来ません。 ……。 …ですが。 ……。 …赤城さん。 ……私が望んでいた答えは。 …分かって居ます。 だったら、なぜ。 …すみません。 いやです。 …。 …そんなあなたなんて、嫌い。 ……赤城さん。 …。 …どうか、嫌わないで下さい。 若しも貴女に嫌われてしまったら…私の生まれた意味が、消えて無くなってしまう…。 …どうしてそう思うの。 何故なら、私は…。 ……。 …私は、貴女を愛する為に生まれてきたのだから。 ……。 …然う、貴女が教えて呉れたのです。 ……だったら、言って。 好きです…この空母寮が。 赤城さんが好きなこの…んぅ。 ……。 ……あかぎ、さん。 …さっきまで、みたいに。 さっき…。 ……わたしのなか、ゆさぶって。 あなたいがい、なにもかんがえられなくして…。 ……です、が。 …どうせ、きょうはなにもできないわ。 とうばつも、えんしゅうも、きょうのよていのなにもかもが、ちゅうしになったのだから。 ……。 ほんなんて、よませない…あなたは、わたしをあいさないといけないのだから。 あかぎさん…。 …あなたが、ほしいのに。 いわせるあなたが、きらい…。 ……あかぎさん。 …つよく、つよく。 あいして…あいして、ください。 …あなたは。 ……あなたのややが、ほしい。 …。 ……このおなかで、うんでみたい。 あか、ぎ、さん…。 ……わかって、いるわ。 …。 ……だから、おねがい。 …すきです。 …。 ……あなたいがい、いらない。 …かが、さん。 ……。 う、ぁ……。 ……こわしてしまえれば、いいのかもしれません。 けれど…こわしたく、ないのです…。 …しって、る。 ……。 …あなたは、やさしい。 こんな、みにくいきもちばかりの、わたしに…。 …あなたは醜くなんか、ない。 ん…。 ……あなたが醜いと言うのならば。 私の方がずっと…醜い。 ……。 ……わたしは屹度、この手に掛ける事が出来るでしょう。 …なに、を。 人の子を。 ……。 …あなたを、うばう、ものを。 ……かが。 …だから。 ……。 ……。 その、やさしさが……。 …やさしさ、など。 ときどき、こわいのよ…どうしようもなく、こわいの。 ……。 …こわいの、かが。 わたしの、かが…。 ……あかぎ。 …ねぇ、さむいわ。 …。 あたためて…かが。 あなたの、ねつを…。 …あかぎ。 つづき、を……。 ………あなたを、あいするために。 ……。 ……。 …つき。 ……あらしは、すぎたようですね。 …あかるいですね。 はい…とても。 ……かがさん。 …まだ、さむいですか。 ……いまは、だいじょうぶ。 でも…。 …ずっと、こうしています。 ……。 …しています、あかぎさん。 −律動、旋律、和声 赤城さん。 …。 赤城さん? ……。 ……。 …。 ……。 …あ。 ……。 …加賀さん。 何を聞いているのですか。 …声、掛けて呉れれば良かったのに。 掛けましたよ。 …。 邪魔をしてはいけない、然う思ったので。 …吃驚しました。 ごめんなさいね。 …。 耳の。 珍しいですね。 これで聞くと良いと、言われたんです。 と言うより、これはこれをしないと聞こえないみたいで。 その小さいのから聞こえてくるの? ええ。 然う。 それで、何を聞いていたの? …飛龍さんが貸して呉れたものなんですけど。 飛龍が? その、上手に言えないので…一緒に聞いてみませんか? 良いのですか? …その方が良いかなぁって。 でも、どうやって聞けば良いのかしら。 それをしないと聞こえないのでしょう? …加賀さんはこっちを。 …。 加賀さんの耳に。 …ああ。 だからもう少し、傍に。 じゃないと、届かないから。 …ええ、分かったわ。 ……もっと。 …。 ……。 …顔がくっついてしまうわね。 …いや? いいえ。 ……。 …。 …流しますね。 …はい。 ……。 ……。 ……。 …言葉がこの国のものでは無いのね。 ええ…然うなの。 飛龍さんらしいでしょう? …ええ、然うね。 ……。 ……。 …楽しそうだなぁって。 …ええ。 ……。 ……。 …ね、加賀さん。 …なに。 ……悪くない、ですね。 …それは、歌が? ……歌も、ですけど。 …? …二人でこうやって聞いている事。 …。 ……加賀さんは 寧ろ、良いと思うわ。 …あ。 ……。 …かがさん。 ……もう一度、聞いても良いかしら。 …未だ、終わってないのに。 気が、早いんだから…。 −奏で。 赤城さんは声がとても綺麗ね。 …え。 ……。 あ、あの、加賀さん? たまに口遊んでいる時があるでしょう? …。 とても綺麗な声で。 …然う、かしら。 自分の声は、分からないから…。 綺麗な声をしているわ。 …。 今、こうして話している時の声も。 ……。 …。 …加賀さんは。 なに。 …私の事、本当に好きなんですね。 なに、突然。 …然うなんですよね? …。 …だって、言われた事ないもの。 言われた事が無い? …声が綺麗なんて。 加賀さんだけよ、そんな事言うの。 ……。 …屹度、加賀さんだけが然う思って。 赤城さん。 …なに。 貴女は美しい人です。 ……。 …声だけで、なく。 ん…。 貴女を形づけるもの、全てが。 …。 …。 ……貴女は、本当に。 …。 ……私の事が、好きなのですね。 …。 ……然う、言って。 …好きよ。 ん、加賀さん…。 ……。 …加賀さん、未だ。 きれい、ね。 …。 ……とても。 …加賀さんだけ、ですよ。 …。 ……でも加賀さんだけで、良いわ。 …私だけで無ければ、困るわ。 …。 …。 ……ふふ。 …嬉しい、ですか? いいえ、可愛いと思って…。 …かわいい。 なかなか当てる事が出来ませんね…? …赤城さん。 ……ここ、さわって。 …良いのかしら。 …さわるだけ、です。 それいじょうは、だめ…。 ……。 …そのつもりは、なかったですか? ……。 ふふ……ふふ…。 …。 ……ぁ。 …。 かがさん…。 …さわっただけ、よ。 それは……ぅ。 …どこで触るかは、指定、されてないもの。 ……。 …今からしますか。 ……ないで。 …。 ……あとは、つけないで。 いま、は…。 ……分かりました。 ……。 ……こえ、だしてくれないのですか。 …いやです。 ……好き、なのだけれど。 ……きかせてなんか、あげない。 …あかぎさん。 ……どうしても、というのなら。 …。 ………あなたのて、で。 −琥珀色の中に。 …かがさん。 …。 加賀さん。 …う。 目を、開けて下さい…加賀さん。 ……あかぎ、さん。 …。 ……。 …眠って、しまったんですよ。 ……ああ。 …。 …? 赤城さん…? …加賀さんの瞳は、きれいですね。 は…? …とても、きれいです。 ……。 何を言ってるのか理解出来ないと言う顔、ですね。 …。 …きれい、ですよ。 ……然うかしら。 もっと近くで見てみても、良いですか…? …構わないけれど。 じゃあ、遠慮しません…。 ……。 ……。 …聊か近過ぎないかしら。 …遠慮しないって、言ったでしょう? ……。 加賀さんの瞳の中に。 …。 …私が、居ます。 私だけが、映ってる…。 ……。 …本当に然うだったら、良いのに。 …。 ……。 …。 瞳……やっぱり、きれいです。 然う…どんなものよりも。 …赤城さんの方がきれいよ。 ……。 …赤城さん。 ……私はきれいではありませんよ。 きれいと言うのは…加賀さん、貴女のような人の事を言うのです。 それは、違います。 …。 …。 …加賀さん。 ……寒いのですか。 …違います。 ……けれど、震えているわ。 ……。 ……。 …私はきれいなんかじゃ、ないの。 ……私の瞳が本当にきれいだとしたら。 え…。 …それは、いつだって貴女を見ているからでしょう。 ……なにを。 …私の瞳の中には赤城さん、貴女しか居ない。 ……ありえません。 いいえ、在り得るのです。 現に。 …ん。 ……赤城さん。 …無理だわ、そんな事。 ……私が、言っているのは。 …。 …私には赤城さんしか居ないと言う事よ。 ……どこで、覚えてくるのですか。 覚えて…? …然ういう台詞。 ……。 …何を言っているのと言う顔。 赤城さん。 ん…加賀さん。 …貴女の瞳の中には誰が居るの。 ……。 …その、美しい瞳の中に。 ……あぁ。 …。 ……教えてあげません。 …。 …だってもう、知っているでしょう? 知りません。 な…。 知っていたとしても、間違っているかも知れないわ。 …意地が悪いわ。 意地が悪いのは、どちらですか…? …ん。 ……。 ん、…ふ、……か、が…。 ……赤城さん。 …い、ま。 ……。 …わたしのまえに、いるひと。 ……だれ、ですか。 ぬくもりと、くちづけを、くれるひと…。 …それは、だれ。 ……いじわる。 …。 ……いま、だれがうつってますか? …。 ……それが、こたえ。 …なまえを。 …。 ……なまえを、よんでください。 …。 …あかぎ。 ……かが。 …。 かが……かが。 …あなたのひとみのなかに、わたしはいますか。 ……あなただけ、よ。 …。 あなただけ…あなたしか……。 −二羽鶴(瑞翔) …ただいま。 お帰りなさい、瑞鶴。 あーーーー。 ? 瑞鶴?どうしたの? …。 瑞鶴…? …ほんと、嫌になる。 嫌に…? …。 何かあったの…? ねぇ、翔鶴姉。 なぁに? 幾ら夫婦だからって、場所ぐらいは弁えろって思わない? 夫婦…? …赤城さんと加賀さんの事? …。 赤城さんと加賀さんがどうかしたの? ……、してた。 え? キス、してた! …え。 そりゃあさ、あそこはあんまり人が通らないとこかも知れないけどさ。 でも、どうなのよ!こんなせっまい泊地でさ! ええと、瑞鶴はたまたま通ってしまったのね…。 ほんと、何考えてんだが。 人には五月蠅く言うくせに自分は何って感じだわ、もう。 うーん…。 …たく、ほんと何考えてんだか。 翔鶴姉も然う思うでしょ? 多分、なのだけれど。 …。 考えるよりも先に躰が動いてしまうんじゃないかしら…。 考えるよりも、先に? 多分、多分よ? …何それ。 瑞鶴は然ういう事、無い? 考えるよりも先に躰が動いてしまう事。 無いよ、そんなの。 …私も、実はあるのよ。 え、然うなの? …ええ。 何それ、知らなかった。 …然う? 然うだよ。 …然う。 教えてよ、翔鶴姉。 気になるよ。 ……。 ん…翔鶴姉? …瑞鶴は加賀さんの事、好き? は? 好きでしょう? …何言ってんの。 誰があんな赤城さんばか。 見てるから。 見てないし。 私が、よ。 …翔鶴姉が? 然う…私が。 然う、だったの。 …勘違いしてるでしょう? う…。 私が見ているのは…瑞鶴、貴女よ。 わたし…? …然う、あなた。 そ、然うなんだ…。 瑞鶴の事を見ているとね、思うの。 加賀さんの事、本当に好きなんだなぁって。 ……。 然う、思うのよ。 あのさ、翔鶴姉。 なぁに? 好きか嫌いかって言われたら、好きだよ。 多分。 …うん。 けどね、翔鶴姉。 好きって、それだけじゃないよ。 それだけじゃ、無いんだよ。 …。 なんでもかんでもそういうのに繋げるの、わたしは好きじゃない。 好き=恋愛感情って考えるの、本当に嫌だ。 瑞鶴…。 そればかりじゃないのに。 馬鹿じゃないの。 …瑞鶴。 ……。 瑞鶴、怒ったの…? …怒ってないよ。 怒ってないけど…。 …ごめんなさい。 でも恋愛感情って言いたかったわけじゃないの。 じゃあ、何が言いたかったの。 ただ、瑞鶴は…。 …。 …瑞鶴は、加賀さんを見ているから。 私ではなく、加賀さんを……。 ……。 ず、瑞鶴…? …今、分かった。 な、なにが…。 …考えるよりも先に躰が動くってこと。 あ……。 ……。 ずい、かく……ん。 ……。 ……。 ……しょうかくねぇ。 ずいかく…。 ……。 い、いま……。 …もっと前から、分かってたかも知れない。 ……。 翔鶴姉が敵に砲撃されそうな時。 瑞鶴は何も考えずに躰が動いていたから。 …。 ……好きだよ、翔鶴姉。 …あ。 ……瑞鶴が見てるのは、翔鶴姉だよ。 加賀さんは……そういうんじゃない。 わた、し…。 …もう一度、言う。 加賀さんは…そういう好きじゃ、ない。 ……あ、の。 あの人は…ううん、あの人達はわたしの、翔鶴姉と瑞鶴の目標。 そしていつか、いつか必ず、越えてゆかなければいけないふね達。 ねぇ…然うでしょう、翔鶴姉。 …う、ん。 うん。 …瑞鶴、私、その。 人の子ってさ。 兄弟姉妹じゃ、だめらしいよね。 …え? でもさ、わたし達は元ふねじゃない? でもって今は艦娘じゃない? だからそういう人の子の都合とか…その、関係ないと思うんだ。 ……。 ……。 ……あの、ずいかく。 あーーーーーー!! な、なに。 加賀さんのばか、ばぁーーーか! ず、瑞鶴? 加賀さんが赤城さんとキスなんてしてなきゃ、こんな事! ……。 て、赤城さんもなんだけど! でも多分、加賀さんが悪い、絶対悪い。 …。 あんの一航戦夫婦め! キスすんなら部屋でしろ、部屋で! ……こんな事、なの。 あーもう、ああも 瑞鶴。 …わ。 瑞鶴。 しょ、翔鶴姉…? こんな事、なの。 …え、ええと? ……。 …翔鶴、姉。 ……キス、したのは。 こんな事、なの…? あ、いや……。 …。 ……その、こんな事じゃないです。 …。 ……全然、こんな事じゃないです。 …好きよ、瑞鶴。 へ…。 ……。 あ、翔鶴姉…。 ……ああ、もう。 瑞鶴の、ばか。 え…えぇ? ……。 しょ、翔鶴姉。 ……赤城さんと加賀さんの事、言えないわ。 いや、でもさ? 此処は部屋の中だし、誰にも…て、ああ、然うじゃなくて。 …。 ………え、と。 …。 …好きです、翔鶴姉。 …それは、どういう「好き」なの。 だ、だから…。 …好きではないのでしょう? そ、然うだよ。 でもこの「好き」は……。 …。 ……そういう「好き」だから。 …。 あ、あの、翔鶴姉は……。 …吃驚、した。 あ…? ……だって、然うでしょう? あ、あー…だよね。 ……。 …翔鶴姉、わたしは。 ………姉妹、だけど。 …。 …ふね、だものね? 私達…。 …! う、うん。 …。 …瑞鶴は翔鶴姉が好きです。 うん……私も瑞鶴が好き。 …ッ。 じゃあ…ッ。 ん…。 …やったぁ!! ん、瑞鶴…。 翔鶴姉、翔鶴姉。 …瑞鶴、ちょっと苦しいわ。 へへ。 もう………赤城さんと加賀さんに感謝しないと、ね。 え、なんで。 …なんで、だと思う? ……さっぱり分からないんだけど。 ふふ…。 ちょ、ちょっと、翔鶴姉…。 ……大好きよ、瑞鶴。 −冬ノ前日 …ねぇ? …。 ねぇ…。 …なに。 もしも、ね。 ん…。 若しも、何でも好きな事をしても良いって言われたら。 加賀さんは何がしたいですか…? …。 …したい事、ありますか。 考えた事、無いわ。 …では今、考えてみて下さい。 ……。 ……。 …赤城さんは、どうなの。 私の答えは…加賀さんの答えの後。 ……。 …秋が、過ぎれば。 …。 冬が、始まります。 此処は雪が沢山、降るんですよ…。 …。 …加賀さんにとっては、初めての冬ね。 ……。 …今夜は、とても、冷えるけれど。 こうしていればちっとも、寒くないわ…。 …。 …ねぇ、加賀さん。 私ね、こうしていると本当に安心出来るのよ…。 …。 …だから、ね。 冷える日は一緒に…。 赤城さんが、したい事。 …え。 それが、私のしたい事です。 わ……。 …温かいですか。 ……はい、とっても。 冷えませんか。 …はい、全然。 然う…。 …此処の夏は。 …。 本土と違って、そんなに暑くないから。 …然うなんですか。 場所によっては35度以上の日が続く所もあるらしいわ…。 …それ、は。 …夜も、熱帯夜と呼ばれて。 とても寝苦しいそうですよ…。 ……。 …だからね、私。 はい。 私、「赤城」は…貴女と、「加賀」とこの場所で出逢えて、今こうして過ごす事が出来て良かったって思っているの。 ……。 …分からない? いえ。 …ん。 此処がそんな暑い場所だったら…こうして貴女を抱き締めて眠る事は出来なかったかも知れない。 ……寧ろ。 …。 暑くても構わないと私がお願いしても、加賀さんが嫌がるかも知れないわ。 だって貴女、熱に弱いんだもの…。 …熱に弱い事は否定はしません。 が、貴女を嫌がると言う部分は大いに否定します。 ……。 …。 …ねぇ、これからは屹度、ずっと寒い夜が続くと思うの。 貴女は未だ知らないけれど、氷点下の夜は本当に寒くて…。 …。 …手足が、本当に冷え切ってしまって。 雪のように、冷たくなってしまって…。 …。 だから、その…肌を重ねない日も…。 これからお布団は一つだけ敷きましょうか。 …。 …これからは、一つの布団で眠る。 それが私のしたい事では、駄目ですか…? ……もう。 …駄目ですか? 加賀さんは本当に、ずるい…。 …したい事を聞いてきたのは赤城さん、貴女だけれど。 ……。 …赤城さん。 二人だと少し、狭いけど…。 …大きいのを一つ、申請しましょうか。 もう、最後まで聞いて下さい。 …。 ……狭いけれど、私はこれが良いの。 …。 …だって、ん。 ……。 ……かがさん。 赤城さん。 …もう。 最後まで言わせてって、言ったのに…。 ……。 …私、ね。 はい…。 ……加賀さんとしたい事、探そうと思うんです。 探したいと、思ってるんです…。 探す…。 …一緒に、探して呉れませんか。 ……。 …。 …それも、良いですね。 本当…? ええ…赤城さん。 …良かった。 一つ。 …? 明日からはお布団は一つで。 それで、良いかしら? ……もう、加賀さんったら。 −貴女の名が消えた日。 ……。 ……。 …赤城さん。 …加賀さん。 お茶、入りました。 …有難う御座います。 ……。 …間宮の羊羹、ですか。 はい。 ……。 …栗入り、です。 まぁ……。 …。 …少し、寄りかかっても良いですか。 ……構わないわ。 …有難う。 ……。 ……。 ……。 …ねぇ。 …なに。 どうして、違う日なのかしらね…。 …。 …沈んだ日はほとんど変わらないのに。 ……分かりません。 …。 …人の子の考える事は。 ……一緒に消して呉れれば良かったのに。 …。 …どうせ消えるなら、貴女と一緒が良かった。 ……赤城さん。 …ただの感傷です。 気にしないで。 …。 ……感傷、なんて。 まるで、人の子みたいですね…。 …。 ねぇ、加賀さん。 …はい。 ……暫しこうしていても、良いですか。 …勿論よ、赤城さん。 ……有難う。 …。 ……加賀さんは温かいわね。 …熱くは無いですか。 平気よ…寧ろ、心地好いの。 …。 …。 …赤城さん。 …はい。 赤城さんが生まれた日が、来たら。 …え。 二人でお祝いしましょう、また。 ……。 …いや、かしら。 いいえ…でも。 …。 …貴女が生まれた日も、私はお祝いしたいわ。 私の…。 ……そんな顔、しないで。 ……。 …私は貴女が僚艦で良かった。 然う、思っているのだから…。 ……赤城さん。 …貴女と私は姉妹では無いけれど。 姉妹では無いからこそ…今の関係を築けたのだと。 ……。 …絆を、結べたのだと。 …。 姉の事、覚えていて呉れて有難う…。 ……私は。 …その身の中で、大切にして呉れていて有難う。 …。 だから…加賀さん。 …。 …。 …今からずっと昔の今日の日に、貴女の名前が消えた。 …はい。 ……けれど、私の中で消える事は無いわ。 ずっと、ずっと……消える事は、無いの。 …私もです。 …。 貴女の名前が、私の中で消える事は無いから。 …。 加賀さん…。 ……今年は。 …。 …雨が、多いですね。 ええ…本当に。 −Survivor …。 …。 …あー。 …。 嫌んなるくらい、青いわね。 …雨よりはマシかと。 そういう問題じゃないの。 …。 で、生きてる? …会話、したでしょう。 確認作業は大事でしょ。 …生きてますよ、一応。 一応でも生きてりゃ良いのよ。 生きてたもん勝ちって言うでしょ。 …。 世の中、然ういうもんなの。 覚えておきなさい。 …時間の問題だと思いますが。 は? 二人とも燃料は僅か。 通信も途切れて久しい。 でも、二人とも沈まないで生きてる。 こういうのはめっけもんって、言うの。 …貴女は相変わらず、わけが分かりませんね。 あんたは相変わらず、小難しく考え過ぎよ。 …。 とりあえず、釣りでもする? お腹、すいたでしょ。 どうやって。 釣り竿や餌も無ければ、魚雷も残されてませんよ。 だから? 手掴みでもする気ですか? この海の真ん中で。 為せば成るって言うでしょ。 昔から。 成らない時だってあります。 やる前から駄目だって決め付けて諦めるの、あんたの悪い癖。 諦めじゃなく、本当のことです。 無駄に動いたところで燃料の消費が早くなるだけです。 あーもう、だから…。 …。 …ほんと、青いわねぇ。 日が傾けば、赤くなります。 そして、夜になれば暗闇になる。 暗闇にはならないわよ。 月と星があるんだから。 …でも、微々たるものです。 あのねぇ、不知火。 …何ですか、陽炎。 一縷の光って言うでしょ。 …はぁ。 光が全く無いわけじゃないの、海の上に居れば。 ……通信、依然途切れたままです。 あーだから。 あーもう! 今の不知火たちは奴らに見つかれば、簡単に屠られてお仕舞いです。 燃料も無ければ、弾も そんなもん、糞喰らえよ。 …。 誰が簡単に諦めてやるもんか。 ふざけんじゃないわ。 …いや、不知火はふざけていないのですか。 良い?不知火。 …え。 通信が繋がらないって言うんならねぇ…! か、陽炎、何を… こんなもん、こうしてやれば良いのよ!!! ゴン!!! あ。 ……いったぁぁぁ。 なんてことをするんですか、陽炎…! 折角、あともう少しで復旧が… そういうのは昔から殴れって言うでしょ! 滅茶苦茶です! 滅茶苦茶で結構! 私達はね、不知火! う。 こんなとこで、空を眺めてる暇んてないの! だから、通信機を……て、ああ。 ふふん。 …完全に沈黙しました。 どうして呉れるんですか。 そういう時はもう一発… もう良いです。 ああもう…。 不知火! 何ですか、陽炎! 負けてたまるか!! …は? 負けてたまるか! はい、あんたも。 …頭の回路、とうとう何処か焼き切れたのですか。 負けて、たまるかーーー! ……。 今度こそ、生きてやる! 今度こそ、沈まないで!! 今度こそ!!! …。 負けて たまる、か。 お。 負けてたまるか。 言いましたよ。 もっと大きな声で。 そんな声じゃ 嫌です。 燃料の無駄遣いです。 だから、あんたは あ。 あ? 陽炎、空に。 空がなんだって言うのよ。 青いだけでしょ。 あれは…日向さんの瑞雲。 え。 陽炎! 日向さんの瑞雲ですって!? …あ、ほんとだ! どうやら不知火たちは助かるようです。 ほら、だから言ったじゃない! でもこれは奇跡に近い うっさいわね! 言ったでしょ、生きてたもん勝ちだって! …言ったけど。 よっしゃ、帰るわよ! 不知火!! …迎え、まだ来てないわ。 |