−幌筵泊地にて。 今日も雪ですね。 …然うですね。 毎日、雪ですね。 …ええ、然うですね。 外、真っ白ですね。 …はい。 音、しませんね。 …雪の降る音がしますよ。 寒いですね。 …炬燵、温かいですよ。 ……。 ……。 加賀さん、構って下さい。 ……然うですね。 …。 …はい? 構って、下さい。 暇です、暇で死にそうです。 …いや、暇で死ぬなんて話は聞いた事がありませんが。 現に今、私は轟沈寸前です。 …洒落でも止めて下さい。 加賀さんが構って呉れないから。 …赤城さんも読みませんか? 今は本より、加賀さんです。 ……。 久しぶりに非番が合ったのに。 これなら非番じゃない方が良かったです。 …私は良かったと思っていますよ。 私は思ってません。 加賀さん、本ばかり読んでいて。 …非番で無ければ読めないので。 眠る前にも読んでいるくせに。 …こんなにゆっくりとは読めません。 ……。 ……。 …私とどちらが大事ですか。 大事の種類が違います。 ……。 …。 ……。 …赤城さん、どちらへ。 …外、行ってきます。 そんな格好で? 風邪、ひいてしまいますよ。 …そうしたら、少しは加賀さんも私を構って呉れるじゃないですか。 ……。 …冗談ですよ。 赤城さん。 ……。 外に行くのなら、一緒に間宮さんにでも行きませんか。 …え。 行きませんか。 ……。 襟巻きを。 首が出ていては、本当に風邪をひいてしまいます。 …巻いて下さい。 はい。 ……。 …はい、出来ました。 ……。 …。 ……加賀さん。 …貴女のそういう姿を見られる私は幸せ者ですね。 ……。 …皆の前ではいつもは、凛として。 誰もが憧れる一航戦の赤城さんで……。 …。 …だけど、今は。 加賀さん。 …はい。 ……構って、下さい。 …では、一緒に。 ……。 …矢張り、良いものです。 …何が、ですか。 貴女と非番が合う事…です。 ……然うでしょうか。 …貴女とゆっくり時を過ごす事が出来る。 私は…この時を、何よりも大切に思っています。 ……。 …赤城さん。 ……だったらもっと、構って下さい。 …。 ……今の私は、貴女の赤城なのだから。 −七月七日。 赤城さん、お待たせしました。 加賀さん。 晴れて、良かったですね。 はい、本当に。 加賀さん、隣に。 はい。 珍しい事なんですよね。 今日、晴れる事は。 確かに、去年は雨でしたね。 はい、朝から夜までずっと。 しとしと、と。 赤城さん、心の底から残念そうにしていました。 加賀さんも、でしょう? 私は別に。 いいえ、してました。 …赤城さん。 私には分かるんです。 だって私の加賀さんですから。 …冷や酒で良かったですか。 それとも冷酒の方が 照れてますか? …いいえ。 暗くても、見えてますよ? …。 ふふ。 えと、おつまみは… …胡瓜と茄子の浅漬け。 蔓茘枝の天麩羅。 あとは牛筋の煮込みです。 ああ、とっても美味しそうですね! お口に合うと良いのですが。 大丈夫です。 加賀さんが私に作って呉れるお料理はいつだって、美味しいですから。 …有難う御座います、赤城さん。 加賀さん、加賀さん。 はい? 早く。 …はい。 では赤城さん、お猪口を。 いいえ、先ずは加賀さんからです。 いえ、私よりも赤 加賀さん。 …分かりました。 では、頂きます。 それでは…。 ……。 …。 …有難う御座います、赤城さん。 どういたしまして。 赤城さん。 はい、加賀さん。 ……。 ……ふふ。 …未だ始まっていませんよ。 然うですけど。 でも溢れてきちゃうんだもの、仕方無いでしょう? ……。 ねぇ、加賀さん。 …赤城さん、零れてしまいますよ。 ……だめ? だめ…では、無いですが。 ……。 …? 赤城さん…? …堅苦しい話し方、やめて。 ……。 ……。 …分かったわ、赤城さん。 うん…。 …。 ねぇ…良い? …ええ。 けど、その姿勢だと飲めないわ。 …分かってます。 だから、少しだけ。 ……。 …彦星と織姫、どうして一年に一度しか逢えないか知ってる? 二人はとても仲睦まじい夫婦だったのは良いけれど、遊びに感けて、仕事をしなくなってしまった。 それに怒った織姫の父、天の神が二人を引き離した。 ……。 けれど、織姫があまりにも悲しそうにしているので、一年に一度だけ逢う事を許した。 その日が 今日、七月七日。 …。 …。 ……晴れて良かったわ。 天の川、無事に渡れたかしら。 若しも雨が降って天の川の水嵩が増しても、二人は逢えるのよ。 鵲(カササギ)と言う鳥が翼を連ねて橋代わりになるから。 詳しいのね。 こういう事、あまり興味ないと思ってた。 赤城さんに聞かれると思って。 …。 …。 ……そういうところも、好きよ。 …赤城さん。 飲む前から、酔ってしまうわ…。 ……私に? …然ういう事を。 ……。 …。 …そろそろ、始めましょうか。 …はい。 では…肩、また後で貸して下さいね。。 …ええ、お好きなだけ。 ……。 ……。 ……ん、美味しい。 このお酒、美味しいわ。 飛龍に貰ったのよ。 まぁ、流石ね。 ええ、本当に。 お料理は…先ずは牛筋の煮込みから。 ……。 ……ああ、やっぱり美味しいわ。 凄く、美味しい…。 …ゆっくり食べて。 お料理は逃げはしないわ。 加賀さんも食べて。 はい。 浅漬けも、天麩羅も……本当に、美味しい。 凄く、美味しい…! …満足して貰えたかしら。 はい、とっても。 …良かった。 加賀さんは本当に。 …ん。 ……本当に良い伴侶です。 …。 …私の、加賀さん。 ……嬉しいわ、赤城さん。 ……。 ……。 …彦星と織姫も、こうしているかしら。 ええ、屹度…。 …然ういえば、加賀さん。 なに? お願い、なんて書いたの? お願い? ああ、短冊の。 ん。 然うね…教えない。 え、どうして? 教えてしまったら願い事は叶わないと言うから。 ええ、然うなの。 だから、教えないわ。 むぅ……。 …でも、然うね。 赤城さんが教えて呉れたら、教えてあげても良いわね。 私、ですか。 ええ、然うよ。 人の願いを教えてと言っておきながら、自分のは教えないのでは平等では無いでしょう? ……。 教えて呉れないなら、教えてあげないわ。 …叶わなくなるのは、嫌だわ。 だったらお互い、秘密にしておきましょう。 でも、でもね加賀さん。 短冊に書いて飾って誰の目にも触れられるようになっているのよ。 それってどうなの? 確かに、その気になれば誰でも読む事は出来るわね。 でしょう? だったら。 けれど、口に出して言うのとは違うでしょう? …然う、だけど。 ふふ、そんなに気になるかしら。 私の願い事。 …気になるわ。 ……。 ん…加賀さん。 …少し、熱くなってるわね。 お酒のせいかしら…? ……もう、話を逸らさないで。 逸らしてはいないわ。 少し、気になっただけ。 ……ん。 …そんなに、知りたい? ……知りたい。 どうして…? ……加賀さんのこと、だから。 私の事…? ……なんでも、知りたいの。 なんでも…? だって…貴女の伴侶になった今でも、知らない事がいっぱいあるんですもの…。 …それは私もよ、赤城さん。 こんなに一緒に居て、こんなに色んな顔を見せて呉れているのに…それでも、知らない事だらけだわ…。 ……だから、知りたい。 貴女がどんな事を願ったのか…。 ……。 …加賀さん。 ………私の、願いは。 …。 ……其れ以外、無いわ。 未来永劫、変わらない…。 …どれ以外、なの。 ……。 加賀さ……んん。 ……。 …ずるい、加賀さん。 ……本当に、知らない? …。 ……常に貴女の傍に居る事。 …。 …私の存在意義、そして私の願い。 貴女は他にあると思って…それとも、言わせたかっただけ、かしらね? ……ずるい、加賀さん。 それで…貴女は? ん…。 ……赤城さん。 …本当に、知りませんか。 ……。 …私の願い、は。 明日も、明後日も、来週も、来月も、来年も……この命が、海に還るまで。 ……。 …還った後も。 あなた、と…。 …ふふ。 ……真面目に話しているのに。 だって、可笑しいわ…お互い知っているのに、知りたがって。 …。 ……然う思うと可笑しいわ、赤城さん。 …も、う。 ……お代わりは要る? 煮込みと浅漬けなら、未だあるけれど…。 ……。 赤城さん…? ……言わせないで。 …酔っている? ……誰のせいだと? さぁ…分からないわ。 ……後で、食べます。 ああ…。 …何、その「ああ」は。 ……赤城さんらしいな、と。 …どうせ、私は大食いと言われていますよ。 可愛いわ、然ういうところも…。 …加賀さんだっていっぱい食べるのに、私ばかり。 ……美味しそうに食べるから。 …加賀さんだって。 特に間宮さんの冷菓を食べてる時は…あ。 …気付いて呉れているのは赤城さん、貴女だけだと思うわ。 ……かが、さん。 …人を酔わせて襲うと、地獄行き。 …? なに、それ…? …この国では然う言うらしいわ。 このままだと…私は、地獄行きになってしまうかしら。 …。 …赤城さん。 ……ならないわ、だって私は襲われるわけじゃあないもの。 …。 ……ねぇ、加賀さん。 …なに、赤城さん。 ……おなか、すいたわ。 いっぱい、すいてしまったわ…。 ……私もよ、赤城さん。 ん…んぅ…。 ……天の川、きれいね。 …来年、は。 ……雨、かも知れないわね。 それでも…構わないかしら? …夜は、長いから。 だから…。 ……ええ、然うだったわね。 −みたして、みたされて。 ……。 ……ふふ。 …。 ……やっぱり、可愛いですね。 …ん。 ……。 ……あ、さ。 …お早う御座います、加賀さん。 ………。 …私の事、分からないなんて言わないで下さいね? 若しも言ったら… ……あかぎさん。 …そのお鼻、食んであげようと思いました。 ……いうわけ、ありません。 …。 ん、あかぎさん…。 ……やっぱり、少しだけ。 …どのみち、たべられるのですね。 ……加賀さんは、私の主食ですから。 …おなかは、みたされませんよ。 ……心のごはんです。 …けさはまた、はやいですね。 ……いけませんでしたか? いけなくはないけれど…。 ……ねぇ、加賀さん。 なに…。 …眠い、ですか。 ……すこし。 …でも、寝かせてなんかあげない。 ……。 …ね? ……あかぎさんは、げんきね。 …こころが、すいたの。 ……ゆうべ、さんざしたと思いますが。 ゆうべは、ゆうべ……。 ……。 …ね、加賀さん。 加賀さんは、すいてない…? ……目覚めたばかり、なので。 …。 ……赤城さん。 …。 ……拗ねないで下さい。 …拗ねてなんか、いません。 ……唇、尖ってます。 私の唇は最初からこういう形です。 …。 ……ん。 …赤城さん。 ……。 ……口付けて欲しいのかと、思ったのだけれど。 …加賀さんは、ずるい。 ……赤城さんが、言うの? …私はずるく、ないもの。 そういうところが…ずるいのよ。 あ…加賀さん。 ……食べたいの? それとも…食べられたいの? ………。 …どちらの気分、ですか。 ………食べられる、ほう。 …然う。 分かったわ…。 …ん、……んぅ。 ……声、我慢しないで下さい。 して、ません…。 …。 ……若し、そう聞こえるなら。 加賀さんがもっと、なかせて呉れれば良いんだわ…。 ……言ったわね。 …ええ、言ったわ。 ……少し、頭にきました。 …顔、笑ってるけれど。 ……赤城さんこそ。 …口付けて。 ……。 …もっと、深く。 ……今の時分は。 …。 …朝餉、食べはぐるのは嫌でしょう? お互い…。 ……未だ、大丈夫です。 …一回で済むとは限らないわ。 ……あ、まだ。 …然うでも無いみたいだけど。 全部、加賀さんのせい…私の心を、空かせるから。 それは…ごめんなさいね。 …そんな言葉、要りません。 そんな言葉じゃ…満たされません。 …知ってるわ。 ……ねぇ。 …。 ……じらさないで。 …まだと言ったのは、だれですか? ………。 …もう、良いの? ………加賀さんの、ばか。 …。 ………、て。 …聞こえない。 ………うごい、て。 …。 ……はや、く。 はやく、ほしい……。 …あげているわ、もう。 ……いじわる。 かがさんの、いじわる…。 …。 ……。 …赤城さん、愛しています。 ………。 ……。 ……わたし、も。 だか、ら……。 ……。 …いっぱい、……シ、て。 ……、さん。 ……。 …赤城さん。 ん……。 …そろそろ、起きて支度をしないと。 ……いや。 朝餉を、食べはぐってしまいますよ。 …いや。 ならば、起きないと。 ……うぅ。 …少し、遣り過ぎたかしら? ……かがさん。 なに。 ……のど、かわいた。 なにか、のませて…。 …と、言われても。 かがさんのせい、なんだから……。 …我儘ね? ……はやく。 …分かったわ。 だったら、離れて。 いや。 …喉が乾いたのでしょう? ……。 …赤城さん、まるで駄々っ子のようよ。 ……。 …仕方無いわね。 離れないのなら、我慢して頂戴。 ……かがさんの、いじわる。 …。 ……。 …ところで、赤城さん。 ………なに。 いっぱいには、なったかしら? …。 ……心。 …ならないわ。 ずっと、ならない。 …ずっと、ですって? そうです…ずっと、です。 だからかがさんはずっと、わたしのこころをみたしてくれるどりょくをしないとだめなんです。 …努力、なのかしら。 せきにん、ともいいます。 ……。 …いやとは、いわせないんだから。 いうと、おもっているの…? ん…。 ……おもっているのなら。 少し、頭に来るのだけれど…。 …かが、さん。 ……言うと、思ってるのですか。 あ、や……だ、め。 ……どうなんですか。 だ、だって…わからない、じゃない。 …何が。 そのとき、は…あ、…そう、いって…も…あぁッ。 ……。 …だ、って。 だっ、て……。 …本当に駄々っ子のよう。 んん……あ、あぁぁぁ。 ……朝餉、食べられないわね。 や、やだぁ……。 …仕方ないわ。 赤城さんのせいなんだもの…。 ……、…かが、さん…。 ……爪、立てて。 強く…。 ……ん。 …赤城さん。 ……ね、え。 …もう、無理よ。 ひ、あ…。 ……。 ……やだ、かみつかないで。 …貴女が、好きな事をしているだけ。 何度でも、してあげるだけ…。 あ、と……。 ……。 ……つけ、て。 わたしが、かがさんの…ものだって、わかる…。 ……もう、たくさんつけたけれど。 でも、然うね……もっと、ね? んん…ッ。 ……。 ………ね、え。 …なに。 ……わた、しも。 …今は私が食べる番ですので。 ……そう、じゃなくて。 …。 わたしも、かがさんのこころ、いっぱいに……できて、ますか。 …。 かがさんは、わたしのこころを、いっぱいにしてくれる……じゃあ、わたしは? わたしは、かがさんのこころを…いっぱいに、してる? できてる…? …赤城さん。 わたしは、かがさんの……。 …貴女は私の心の主食ですから。 ……。 …私の心をいっぱいに出来るのは、赤城さんだけ。 だからもっと、食べさせて欲しい…し、食べて欲しいとも思います。 ……ほんとう? わたし、かがさんの…。 …赤城さんだけ、です。 だから、これからも……一緒に。 よかっ、た……。 ……動いて良いかしら? …ごは、ん。 ……大丈夫、間に合わせますから。 ほんとう、に……。 …努力は、します。 ……。 …おかわりいただきます、赤城さん。 はい……たぁんとめしあがれ、かがさん。 −姫と従者。(二代目) ……。 ……。 ……。 …あ、あの。 …何ですか。 あまり、じぃっと見てないで呉れますか…。 …見ていては、いけないのですか。 いけなくは無いですが…その、気になってしまうので。 じゃあ、もっと見る事にします。 え、えぇ…。 …。 あ、赤城さん…。 …そもそも。 どうして、そんなに気になるのですか。 別に気にしなければ良いだけの話でしょう。 然う、言われましても…。 …意識から、私の存在を消せば良いだけの話でしょう。 そ、そんな事…。 …。 …出来るわけない、です。 どうして? ど、どうしてって…。 ……秘書艦の仕事って、忙しいんですね。 …。 …だから私との時間を削らないといけないのですね。 あ、赤城さん、今日はその、鳳翔さんが遠征で居ないからで…。 …別に加賀さんじゃなくても良いじゃないですか。 どうして、加賀さんなんですか。 然う、言われても…。 ……。 …赤城さん。 ……。 …困り、ました。 これでは一向に仕事が片付きません…。 ……。 …あの、赤城さん。 必ず、部屋に戻りますから…だから。 …嫌です、聞けません。 ……。 …大体、提督だって居ないじゃないですか。 加賀さんにこんな仕事押し付けて…。 提督は…急な会議が入って。 知っています。 ……。 …あの、糞提督。 赤城さん、流石に口が過ぎます。 …曙さんの真似をしただけです。 ……。 …加賀さん。 ……赤城さんの口から、然う言った言葉は聞きたくありません。 …。 ……。 ……もう、言わないわ。 だから…もう、言わせないで。 ……。 加賀さん……。 ……。 ……もっと、気にして。 …え。 …気にして、私の事。 ……してます。 気にならない筈が、無いです…。 …。 あ、赤城さん…。 …手伝います。 え。 早く片付けてしまいしょう、こんなもの。 こんなもの…。 加賀さんと私の大切な時間を奪うものです…だから。 ……。 …これに目を通して、文章におかしなところが無ければ判を押せば良いのですね。 然う、です…けど。 けど、何ですか。 いえ…それでは、お願いします。 はい、お願いされます。 ……。 ……。 ……あの、赤城さん。 …何ですか。 その…有難う御座います。 …いいえ。 …。 …全部、自分の為ですから。 ……自分の為、ですか。 加賀さんはもっと、自覚して下さい。 …自覚。 ……私は貴女ともっと、一緒に居たいのです。 ……。 …なのに貴女はちっとも、分かって呉れない。 ……すみません。 …。 …。 …本当に分かってないのですか。 私だけ、なのですか…。 あ…。 ……私だけが、貴女を慕っているのですか。 そ、それは……。 ……。 ……私も、お慕いしております。 …本当でしょうか。 …。 …いつだって、私からです。 然う、いつだって…。 …。 …告白だって、ずっと待ってて。 小さい頃から、ずっと…。 …赤城、さん。 ……口付けだって、加賀さんからはあまりして呉れない。 ……。 …それが、どんなに。 赤城さん…すみません。 …。 あ、いえ…然うじゃなくて…あの、こちらを向いて呉れませんか。 ……。 …赤城さん。 ……期待、させるのですか。 …。 …期待、しても良いですか。 ……は、い。 …。 ……。 ……加賀さん。 あかぎ…さん。 ……。 ……。 ……。 ……足りません。 え……えぇ。 …だから、早く。 早く片づけてしまいましょう、こんなものは。 …。 …加賀。 は、はい……。 ……。 …ん、…まっ、て……。 ……。 まって、ください…あかぎ、さん…。 …さんざ。 ん…ッ。 …さんざ、待ったわ。 ん、んぅ…。 ……待つのは、嫌い。 待たされるのは、もっと、嫌い…。 …あかぎ、さん。 貴女を、一人で待つのは……嫌い。 ……。 …加賀さん。 加賀…。 ……布団、を。 ……。 …また、貴女を、待たせてしまいます。 けど…どうか。 ……いやよ、もう。 う…。 いますぐ、欲しいの…。 ……あかぎさん。 …だから、ねぇ。 早く…早く……。 …。 …くち、づけて。 たくさん…あなたから、して…。 ……やはり、布団を。 …いやよ。 いま、ほしいの…。 ……たくさん、ほしいと、いったのは。 あ。 ……あなたです、赤城さん。 ………ああ。 …だから、こそ。 ……その、め。 …まっていて、くれますか。 ……すこししか、まてないわ。 わかって、います…。 …すぐじゃないと、いや。 わかってる…だから。 ……いっそ、しきっぱなしにしておけば。 それは、だめです。 ……ばか、かたぶつ。 …あかぎさん。 くちづけ、して……そう、したら……ん。 ………。 …あぁ。 その目…その目よ…加賀…。 …赤城さん。 …まって、いるわ。 だから…もう、またせない、で。 ……この加賀、今直ぐに。 −鶴姉妹と二代目と、青赤夫婦と。 て、一寸。 …。 そんなとこで何してんの、ちびっこ。 …。 聞こえてるんでしょ。 無視するな。 ……。 返事。 …なにかごようですか。 御用ですか、じゃないわよ。 そんなとこで何してんの。 …かくれんぼ、ですが。 は、かくれんぼ? て、あのかくれんぼ? …そうです。 ……索敵の練習ってとこ? にしても、かくれんぼ、ねぇ…。 …。 誰としてるかはまぁ、聞かなくても分かるけど。 で、なんでそんなところに居んのよ。 …かくれてます。 はぁ? 木の上に? ……そうです。 …。 …もう、いいですか。 いつから? …。 いつから、そこに居んの。 …ヒトサンマルマル。 は、ヒトサンマルマル?! あんた、今何時だか分かってるの?! ……ヒトゴーサンマルごろ、だとおもいます。 二時間半もそんなとこで!? ……。 あのねぇ、幾らなんでも無いでしょ、それは。 …でも、かならずみつけてくれます。 然ういう問題じゃない。 落ちるわよ、そのうち。 …おちません。 あんたね。 ……。 …。 ……。 …まさかとは思うけど。 下りられなくなったとかじゃないわよね。 猫の子じゃあるまいし。 ……。 …。 ……ちがいます。 て、当たりじゃん。 あーもう、何してんのよ。 …ちがいます。 違わない。 大体ね、木なんか登って手を傷付けてしまったらどうすんのよ。 あんた、未だちびとは言え弓取りなのよ。 ……。 大事にしろって、言われてないの。 ……あのひとは。 は? …かならず、みつけてくれます。 だから、わたしはここにいます。 ……。 …。 …はぁぁぁ。 あーもう、良い。 良いわよ、もう。 …。 そこでじっとしてなさいよ。 …? 後で盛大に文句、言ってやるんだから! 人には五月蠅いくせに、己の子には甘すぎるって!! …あら。 ……。 そんなところで、何しているの? ……。 え、と…迷子、じゃないわよね。 流石に…。 …。 あの子とは、一緒じゃないの? …いっしょじゃなかったら、なんですか。 いえ、別に良いのだけれど…いつも、一緒だから。 珍しいなって。 かくれんぼ、してるんです。 かくれんぼ? て、あのかくれんぼ? ほかにありますか。 …索敵の練習かしら。 じゃあ、貴女は隠れているの? それとも鬼さん? …さがすほうです。 然う。 じゃあ、見つかると良いわね。 ……。 …? どうしたの? …なんでもないです。 でも。 ……。 一寸聞いても良いかしら。 範囲は決めてあるの? …はんい? まさかとは思うけど。 この泊地の敷地内全て、では無いわよね? ……。 …まさか。 幾ら他より小さいと言っても子供では…。 …ぜんぶ、でも。 わたしはみつけます、みつけられるんです。 …。 …おかあさんがおかあさんを、みつけだしたように。 わたしも、あのこを。 …ああ。 もう、いいですか。 わたし、いかないといけないんです。 あのこが、まってるんです。 待って。 …。 一緒に行っても、良いかしら? …なんでですか。 一緒に行きたいなぁって。 駄目、かしらね? …やくそく、してないんですか。 約束? いもうとづる。 ああ。 大丈夫よ。 …。 ね? だめ、かしら? あ。 あら。 翔鶴姉。 瑞鶴。 え、と。 ねぇ? …ちびっこ。 ほら。 さぁ。 ……。 ……。 はぁ、全く。 瑞鶴と一緒だったのね。 見つけちゃったから。 翔鶴姉こそ。 私も見つけてしまったから。 なんで見つけちゃったかな。 瑞鶴、気にしているものね。 いつも。 はぁぁ? 誰がこんな無愛想なちびすけ。 青い方の親、そっくりでさぁ。 ふふ、その青い方の親御さんの事も好きなのよね。 は、止めてよ。 本気で。 優しいのに素直じゃないところ、好きよ。 …翔鶴姉。 はいはい、ごめんなさい。 ともあれ。 もう、良いでしょ。 行こ、翔鶴姉。 ええ、然う 瑞鶴。 翔鶴さん。 …げ。 あ。 瑞鶴。 …加賀さん。 翔鶴さん。 赤城さん。 あかぎ、かが。 後ろに居るのは分かってるわ。 時間になっても帰ってこないから。 加賀さんと一緒に迎えに来たのよ。 …。 …。 と言うか、加賀さん。 何かしら。 かくれんぼするなら、木の上は止めろって教えておいて下さいよ。 木の上? 然う、木の上。 うっかり見つけちゃったらすっごい面倒くさいから。 …かが。 ……。 えと、赤城さん。 はい? 私からも…なんですが。 かくれんぼするなら、範囲を決めた方が良いと思います。 全ては、未だ、早いと思うので。 ああ。 でもこの子達も空母ですから大丈夫ですよ。 それに、翔鶴さん達も良くしていたでしょう? …あ。 ふふ、懐かしいわね? 翔鶴さんが鬼で、瑞鶴さんが隠れて。 なかなか見つけられなくて、一緒に探したものですね。 …赤城さん。 ふふ。 あかぎちゃん、かがちゃん、さぁ、帰りましょう。 今日は間宮さんから頂いた羊羹がお八つよ。 …! まみやさん…! 加賀さんも、良い? …かが、部屋に戻ったら手をちゃんと見せるのよ。 …。 返事。 …はい。 ふふふ。 では、翔鶴さん、瑞鶴さん。 有難う。 …世話を掛けたわね。 加賀さんのお礼、ちゃんと聞きたいんですけどー? 瑞鶴。 だって、さぁ。 ちびっこにも良くないじゃん。 ほら、子は親の背中を見て育つとかって言うしさ。 大事な事だよ、これ。 …然う、だけど。 瑞鶴。 なんですかー。 有難う。 ……。 もう、良いわね。 行きましょう、赤城さん。 ふふ。 はい、加賀さん。 可笑しくは無いわ、赤城さん。 然う? 然うです。 じゃあ、然ういう事にしておきましょう。 加賀さん、あかぎちゃんの手をお願いしても良いですか。 では、赤城さんはかがの手を。 はい。 翔鶴、瑞鶴。 また、夕餉の時に。 …はぁ。 はい、また。 ………。 …瑞鶴? 大丈夫? 大丈夫、だけど。 あんなにあっさりと… お礼を言われる、なんて? …だって、あの無愛想加賀さんが。 赤城さんの前でしか、愛想良くないくせにさ。 嬉しかったの? ば、そんなんじゃないよ! 嬉しかったのね? だから、違うって! ふふ、瑞鶴ったら。 もう良いでしょ。 私達も行こ、翔鶴姉。 て言うか、間宮さんに行くつもりだったんだからさ。 瑞鶴は加賀さんの事、大好きだものね? …! 翔鶴姉!! 怒るよ!! はい、ごめんなさい。 だから、怒らないで。 ね? あーもう、ああもう! 瑞鶴? なに…?! 私達も、行きましょうか。 …。 ね。 …うん。 ねぇ、加賀さん。 何。 加賀さんは瑞鶴さんの事、どう思ってるの? 瑞鶴を? はい。 どうしてそんな事を? だって加賀さん、瑞鶴さんと話している時楽しそうだから。 ……。 ふふ、思い切り顰めてる。 赤城さん。 はい、加賀さん。 あの子はただの五航戦の片割れ。 それだけよ。 本当にそれだけ、なんですか? 私は、赤城さん。 …あ。 貴女と一緒に居る時が一番、楽しいわ。 あ、はい…。 分かって呉れれば良いの。 …あの。 赤城さんは翔鶴の事、どう思っているの。 え? …。 翔鶴さんは…然うですね、後輩、ですね。 後輩…。 はい、後輩です。 …然う。 でも、どうして? 聞いてみただけです。 然う? 然うよ。 …ねぇ、加賀さん。 なに。 ふふ、ふふ。 赤城さん? 心配しなくても、私は加賀さんが一番ですから。 …。 加賀さんは、どうですか? 言わなきゃ、駄目ですか。 駄目ですって、言ったら? 赤城さんが一番です。 誰よりも、赤城さんが。 …。 言いました。 …もう。 なに? 何でもありません。 さぁ、早く戻りましょう。 はい、赤城さん。 …あ。 うん? 文句、盛大に言うの忘れた!! 加賀さんに? 人には五月蠅いくせに、己の子には甘いって言ってやろうと思ってたのに!! あらあら。 じゃあ、また今度ね? 絶対、言ってやる! 口実が出来て良かったわね? そんなんじゃないから!! あーもう、あの赤城さんばか朴念仁め…! ふふ、瑞鶴は加賀さんの事本当に大好きね。 でもお姉ちゃんの事も忘れないでね? ……。 ……。 …かがさん。 …はい。 …つぎはかならず、みつけますから。 …はい。 ぜったい、ですから。 …はい。 だから、かがさんも。 …あかぎさん。 …。 …つぎは、みつけてください。 わたしも…みつけますから。 …ぜったい、ですよ。 はい…ぜったいです。 …。 …。 …て、いたくないですか。 だいじょうぶです。 …。 …。 …つぎは、ぜったいです。 はい…あかぎさん。 |