−Birthday Wishes ‐Nov.21





   ふふ…。


   …。


   …ふふ。


   ……あの、比叡姉さま。


   なぁに、榛名。


   …さっきからずっと、このままなのですが。


   はい、このままですね。


   …あの、姉さま。


   なぁに、榛名?


   …これで本当に良いのですか。


   はい、これが、良いんです。


   …ですが先程からずっと、このままですよ?


   はい…このままです。


   …むぅ。


   ふふ……榛名。


   ……姉さまが良いのなら、良いですけど。


   うん、良いんです…。


   ……。


   …榛名との時間が、欲しかったんです。


   ……でも榛名、姉さまの為に何かしたいです。


   もう、してます…。


   …してません。


   してますよ…。


   ……むぅぅ。


   …かわいいなぁ、榛名は。


   …姉さま、何か食べたいものはありませんか?
   榛名、作ります。


   今は…特に、お腹空いてません。


   …じゃあ、喉は渇いていませんか。
   榛名、姉さまがお好きなお茶を淹れます。


   比叡は大丈夫です。


   ……じゃあ。


   …。


   ……。


   …榛名は本当に良い子ですねぇ。
   私の事を、想って呉れて…。


   ……榛名は。


   それだけで私は十分にしあわせなんだけど…。


   …だって、今日は。


   今日は…?


   ……姉さまの進水日、なんです。


   はい、然うです…。


   …だから、榛名。


   だから、司令に無理を承知でお願いしたんですよ。
   進水日の祝いの言葉なんぞ要らないから榛名と私に休みを呉れ、と。


   え、提督に…?


   ええ、司令に。


   ……。


   どうです?
   私もやる時はやるでしょう?


   ……。


   …ん?
   榛名…?


   ………榛名も、無理を承知で、お願いしたんです。


   え?


   あの…姉さまの進水日のお祝いがしたいから、姉さまと榛名にお休みをって。


   …榛名が?
   本当に?


   ……はい。


   …。


   …でも、姉さまが言ったから。


   いや、榛名がお願いしたからです。


   いいえ、姉さまが。


   いや、榛名が。


   姉さまが…え。


   ……。


   ……ねえさま。


   …榛名。


   あの…あの…。


   ……有難う、嬉しい。


   …榛名も、嬉しい、です。
   姉さまとこうして一緒に居られる事…。


   ……。


   ん、姉さま…。


   ……本当は一緒の時間を過ごしているだけで良かったんだけど。
   我儘、一つだけ言っても良いかな…?


   …一つとは言わずに、幾つでも仰って下さい。
   榛名に出来る事なら…何でも、します。


   何でもって……それ、他のひとには言っては駄目ですよ。


   …榛名、言いません。
   姉さまにだけです…。


   …私にだけ、ですからね。


   はい、姉さまにだけです…だって榛名は姉さまのもの、ですから。


   ん…榛名。


   ……姉さま、榛名に望む事を。


   ……。


   ん…ん。


   ……したい。


   …。


   ………私のものだって、確かめさせて。


   …はい、お好きなだけ。


   …。


   ひえいねえさま…。


   …ほんとうのことを、いえば。


   はい……。


   ……したいとは、おもってた。


   …だと、おもってました。


   けど…よるになったらって。


   …きょうは、とくべつです。


   とくべつ…。


   …そう、とくべつ。


   なんか…。


   …?


   …あまい、な?
   はるなが、いうと…。


   ん…ねぇさま。


   あまい、あまい…。


   …。


   …どんなさとうがし、よりも。


   ……それに。


   …それに?


   はるなも……そうして、ほしいと。


   …まだ、あかるいけどだいじょうぶですか。


   くらく、してくれないのですか…?


   ……。


   …。


   …そう、だった。


   はい…そうでした。


   …。


   …。


   ふふ…はるな。


   ふふ…ひえいねえさま。


   ……ことしもいっしょにいてくれて、ありがとう。


   …らいねんもきっと、いっしょにいます。


   はい、きっといてください…。


   ねえさま。


   はい、はるな。


   ……うまれてきてくれて、はるなとであってくれて。


   …。


   …ありがとう、ございます。








  −Happy Marriage





   んーー…。


   …ん?


   あと、もう少し……。


   …。


   …あと、少し。


   任せて、榛名。


   …あ。


   これで、良いですか?


   あ、はい。
   有難う御座います…姉さま。


   いいえ、どういたしまして。


   …。


   何ですか?


   …いいえ、何でも無いです。


   然うですか?


   …はい。


   然う。


   …あの、姉さま。


   何ですか、榛名。


   この後…


   駆逐艦の子達の演習を見てあげる事になっています。


   ……然う、ですか。


   榛名はこの後は?


   …榛名は、何も。


   お休みですか?


   ……はい。


   然うですか。


   …。


   では。
   榛名はこれから、何をするつもりですか?


   …え?


   蜂蜜。
   お菓子でも作るつもりだったのですか?


   ……蜂蜜入りのパウンドケーキ、を。


   蜂蜜入りのパウンドケーキ、ですか。
   良いですね。


   …金剛お姉さまに教えて頂いたんです。
   だから、作ってみようと思って…。


   美味しそうですね。
   いいえ、榛名が作るのだから美味しいに決まってる。


   そ、そんな事は……榛名は、そんなに器用では無いので…。


   でも、何事にも一所懸命です。
   私は…榛名のそういうところも、好きですよ。


   …ッ。


   ふむ。


   あ、あの、姉さま…良かったら、ですけれど。


   はい。


   じょ、上手に出来たら…その、食べて呉れませんか。


   勿論、喜んで。
   上手に出来なくても、頂きたいです。


   だ、駄目です…姉さまに失敗したのなんて、食べて頂くわけにはいきません…。


   大丈夫ですよ。
   榛名の失敗は貴女が言うほどのものではありませんから。


   け、けど…焦げてしまったら。


   少しの焦げだったら、問題無いでしょう。


   ま、丸焦げになってしまったら…。


   榛名。


   …う。


   大丈夫。
   貴女はそんな失敗は、しない。


   …比叡姉さま。


   失敗すると強く思い込んでしまうと、本当にしてしまうもの。
   だから…大丈夫。


   ……はい。


   それに…榛名の口癖。


   …。


   榛名は、大丈夫です。


   …あ。


   ふふ。


   ………姉さま。


   楽しみにしていますね、榛名。


   …はい、ね


   ……。


   ……ぇ、さま。


   …榛名。


   あ、ぅ……ぁ。


   …え、と。


   ………。


   榛名が可愛かったから…つい。


   〜〜ッ。


   …嫌、でしたか。


   ……。


   ……榛名。


   …いや、では。


   …。


   ………ありま、せん。


   …本当に?


   は、い……。


   うん…良かった。


   ………。


   …頬が熱い。
   耳も、赤くなって…。


   あ、あまり、見ないで下さい…。


   …逸らす事が、出来ません。


   比叡、姉さま…。


   ………愛おしい。


   ぅ……。


   …どこまでも、貴女は。


   い、いけません…。


   …。


   …あまり、榛名を揶揄わないで下さい。


   ……私は、本気です。


   ぁ…。


   ……。


   …こんなところ、誰かに見られたら。


   ……恥ずかしいですか?


   …。


   ……榛名、私達は。


   …。


   ……分かりました。


   …ごめんなさい、姉さま。


   良いんですよ。


   ……。


   …そういうところも、好きなのですから。


   ……は、榛名は。


   はい。


   ……姉さまの、そういう、ところ。


   …嫌いですか。


   ち、違います…ッ。


   …。


   は、榛名は…榛名は、恥ずかしい、ですけど、でも…でも。


   ……でも。


   …そういうところも、すきです。
   こまってしまったりもするけれど……けど、すき、です。


   …。


   あ、姉さま…。


   …ああ、本当に愛おしい。


   …。


   ………榛名。


   …。


   …良いのですか、榛名。


   ………嬉しいんです。


   …。


   姉さまに…貴女に、抱き締められて。
   それから…抱き締め返すのも。


   ……もう少し、力を込めても良いですか。


   …………はい。


   …。


   ん………。


   …ああ、愛しい。


   ……。


   …名前、呼んでみては呉れませんか。


   ……比叡姉さま。


   …名前だけで。


   そ、それは……。


   ……。


   ……。


   …お願いします、榛名。


   ………ひえい、さん。


   …。


   …比叡さん。


   ……。


   ……。


   …有難う御座います、榛名。


   比叡さ……ん。


   ……。


   ………しあわせ、です。


   …。


   貴女に、愛されている事……選んで、貰えた事………。


   …私こそ。


   ん…。


   …貴女と結ばれた事。
   結ばれる事が、出来た事……。


   …。


   ……とても、とても、しあわせだと。


   ……。


   …………榛名。


   …。


   ……こうして、いたいですけど。
   もう、行かなくてはいけませんね…。


   ……ケーキ。


   …。


   …焼いて、待っています。


   ……はい、楽しみにしてます。


   …。


   行く前に、もう一度だけ…。


   ……これ以上、は。


   榛名…。


   ……名残惜しくなってしまいます、から。


   …。


   ……だから、また後に。


   …然うですね。
   また…後に。


   …。


   …。


   …行ってらっしゃいませ、比叡姉さま。


   …。


   あ、えと……行ってらっしゃい、比叡さん。


   はい…比叡、行って参ります。








  −Haruna’s figure 〈Case:Paramushiru〉





   …ふむ。


   …。


   ほぅ…ほぅ…。


   ……比叡さん。


   …成程。


   折角の紅茶が冷めてしまいますよ。


   ……ふぅむ。


   …。


   …これは確かに良く出来ていますねぇ。


   ……それ、いつまで出しておくのですか。


   もう少し。


   …紅茶が冷めてしまいます。


   ………。


   …。


   あ。


   比叡さん。


   榛名。


   …折角良い茶葉が手に入ったんです。
   それに一緒に飲もうと言ったのは比叡さんではないですか。
   それなのに。


   …。


   …なのにそんな人形をずっと見ていて。


   いや、なかなか良く出来ているなぁと思いまして。


   …大体、どうしてそんなものが在るのですか。


   ……。


   ひ、え、い、さ、ん。


   …お。


   ……。


   榛名?


   ……そんなにその人形の方が良いのですか。


   うん?


   ……榛名の形を模した、そんな人形が。


   …。


   ………貴女の榛名は、此処に居るのに。


   ねぇ、榛名。


   …。


   今年の夏は暑い日がほとんど無かったですね。


   …いきなり、何の話ですか。


   どちらかと言うと、肌寒い日が多くて。


   …然うでしたね。
   けれど、それが何でしょうか。


   それでも冬の寒さに比べたら、どうって事は無いですけれど。
   氷点下になる事は無いですし。


   …然うですね。
   紅茶、本当に冷めてしまいますよ。


   …。


   …また、見てる。


   本当に良く、出来ている。


   ……そんなの、榛名ではないのに。


   榛名。


   ………何ですか。


   榛名の水着姿、今年は見られなかった。


   …はい?


   見たかったんです。


   ……何を仰っているのですか。


   見たかったんです、榛名の水着姿。


   ………。


   …毎年、楽しみにしていまして。


   ………比叡さん。


   はい。


   …そんな顔をして、そんな事を言わないで下さい。


   えと…締まり、また無くなっていますか。


   ……。


   …可愛いなぁ、と。
   いつも、思っているんです。
   今も思い出してしまって…つい。


   ……知ってます、いつも言われていますから。


   はい…。


   いつも、言われて……いつも、抱き締められて。
   霧島に、いつもの癖が出たって呆れられて…金剛お姉さまは、笑っていて。


   ……はい、その通りです。


   …ほぼ毎年、見ているのに。


   だって、本当に可愛いんです。
   いつ見ても、何度見ても、本当に。


   ……飽きませんか。
   新しい水着でもないのに…。


   まさか。
   榛名に飽きるなんて、ありえません。


   ……。


   ありえないよ、榛名。


   だったら…榛名が今、水着姿になったら。
   私を、見て呉れますか。


   うん?


   そんな榛名の人形よりも…私を。


   …。


   ……。


   これは、確かに、良く出来てる。


   …。


   だけど、それでも。
   私の榛名には、敵わない。


   …ッ。


   所詮、これはツクリモノです。
   マガイモノです。
   私の榛名の可愛さに敵うわけが無い。


   ……。


   さて。
   これは、片付けておきましょうか。


   …処分されないのですか。


   流石に、榛名を模している人形を処分するのは…。


   だったら、榛名が。


   や、待って下さい。


   …榛名の方が可愛いんですよね。
   だったら、良いじゃないですか。


   然う、ですけど。
   ほら、人形には魂が宿ると言うではありませんか。


   …でも、貴女の榛名は私です。
   この人形ではありません。


   然うですけど…勿体無いと言いますか。


   ……。


   えと、榛名?


   ……分かりました。


   え。


   ……水着になれば、良いんですよね。


   …はい?


   待っていて下さい、今、着替えますから。


   ええ、と。


   ……着替えている間、此方を見ないで下さい。


   外、雪降っていますよ?


   問題ありません…部屋の中は暖かいですから。


   でも。


   …。


   榛名。


   ……新しい水着、来年こそは必ず。


   本当に、着て呉れるのですか。


   …着ます。


   あー…。


   ……。


   …嬉しいです、けど。
   今は、その…止めた方が良いと思います。


   …どうしてですか。


   それは…まぁ。


   …見たいんですよね。
   だったら…。


   多分、我慢出来ません。


   …え。


   本物の榛名の水着姿を見てしまったら。


   ………。


   …つまり、その。
   襲うかも知れません…と、言いますか。


   ………。


   …襲うは語弊がありますけど。


   でも、それに近い事はすると言う事ですか。


   …。


   ……。


   ……はい。


   …やっぱり、着替えます。


   はい…え。


   ……。


   ええ、と…。


   …比叡さんはいつも、然う思っていたのですか。


   ……と、言いますと?


   榛名の水着姿を見て。


   …。


   …。


   ……今は、また、違うんです。


   どう、違うのですか。


   …それは。


   それは…?


   ……やきもちやいてる榛名が、酷く、可愛くて。


   …!


   …だから。
   これで、水着姿になんてなられたら…多分、箍が。


   ……。


   …。


   ………あちらを向いていて下さい。


   本当に外れてしまいますから。


   …良いですよ。
   外して下さい、寧ろ。


   未だ、夜にも


   それで、私を見て。


   …。


   …そんな人形よりも。


   ……見てるよ。


   …。


   …。


   ………着替えます。


   …分かりました。


   ……。


   ……。


   ……比叡さん。


   …見てません。


   ………それ、もう出さないで下さい。


   …。


   …何処かに、やって下さい。


   ………分かった、もうこれは見ない。


   …絶対、ですよ。


   ……約束します。


   …。


   …。


   ……良いですよ。


   …。


   …。


   ………あぁ。


   …。


   ……やっぱり、私の榛名には敵わない。


   …比叡さん。


   ………榛名。


   …ん。


   ………外して、良いですか。


   …どうぞ、外して下さい。


   ……。


   あ…。


   ………。


   …比叡、さん。


   直ぐに脱がしてしまうのは勿体無いな…折角、着替えて呉れたのだから。


   …。


   ……だから、もう暫し、このままで。


   …榛名だけを。


   ……それから。


   …見ていて。








  −Haruna’s figure 〈Case:Kominato〉





   蜜柑の花が咲いている。
   思い出の道、丘の道。
   遥かに見える、青い海。
   お船が遠く、霞んでる…





   …ただいま、榛名!
   護衛のお礼に蜜柑、貰ったよ!
   一緒に食べよう!!


   …。


   …んん?
   榛名、榛名?
   若しかして、未だ、帰ってない?


   …。


   そっかぁ。
   まぁ、良いや。
   待ってれば…榛名は帰ってくるんだし。


   …。


   …然う、榛名はこの部屋に帰ってくる。
   帰ってきたら、お帰りって、言おう。
   お帰りって言って…それで、それで。


   …。


   …いやぁ、やだなぁ、あははは。
   でも、良いですよね…だって、私と榛名は……あぁもう、照れるなぁ。


   …。


   ……ん?


   …。


   机の上に何かある………え。


   …。


   ひ、ひえぇぇぇ……???


   …。


   な、何ですか、これ……は、榛名に似てるような気がするんですけれど……と言うか、何ですかこれぇぇぇ…。


   …。


   ……え、と。
   ええと、とりあえず、落ち着こう…うん、落ち着こう。
   とりあえず、これは…多分、榛名にとても良く似ている人形か何かで………何故か、水着姿、で。


   …。


   …こんな榛名、未だかつて、見た事が無いわけ、で。
   そもそも、水着なんて……こんな、水着姿……出来れば、見てみたいですけど…いやいや、何を言って…………し、しかしですよ?
   ほ、本当に、良く出来ている、わけ、で…………でも、私の榛名は未だ、こんな躰つき……いやいや、ほんとに何を言っているんだ、私。


   …。


   ……………どちらかと言うと、幌筵の。
   …いやいやいや、何考えてるんですか、私、何を思い出そうとしているんですか、私!
   そもそも見た事無いでしょう、私、ばかですか、ばかですね、私…!!


   …。


   ……もう少し。
   もう少し、近くで、良く、見てみても、良い、でしょう、か……。


   …。


   少しだけ……少しだけ…………あぁ、ほんとに良く似てる………。


   …。


   榛名……。


   ………。


   …ほんとに、可愛い。
   可愛いな、榛名……さ、触ってみても、良いかな…。


   ……姉さま。


   す、少しだけなら…。


   比叡、姉さま。


   …へ。


   何を、して、いらっしゃるのでしょう。


   …………榛名?


   ええ、然うですけれど。


   いつ、から、そこ、に……。


   姉さまが…その榛名に似ている人形の前で挙動不審になっている辺りから、でしょうか。


   …。


   それで。
   その手は、何をしようとしているのでしょう。


   ……ひえぇぇぇぇぇッ。


   姉さま。


   い、いや、これは、その、違うんです…!
   本日の漁船の護衛が終わって、蜜柑貰って、部屋に帰ってきて、榛名と一緒に食べようと思って、そしたら、榛名は未だだったから。
   然うだ、榛名が帰ってきたら、お帰りって言おう。
   そしたら、出来れば、許して貰えるなら、その、ぎゅうっとして、それから、お帰りのキスを…


   今まさに、その人形に、しようとしてませんでしたか。


   ち、違います…ッ!
   そんな事、そんな事は、決して…決して、無いです…ッ。


   然うでしょうか?
   異様に昂ぶっていたようでしたけれど。


   ち、違う、違うんです…ッ。
   は、榛名に似ていたから、もう一寸良く…近くで見てみようと思って…ッ。


   それで、その手で触れようとしていたわけですね。


   こ、これは……その、少しだけ、その、思いましたけど、でも、決して疚しい気持ちからではなくてですね…ッ。
   ちょ、一寸だけ、どんなものなのか……その、榛名と躰つきが少し、違うから…だから、その。


   ……。


   あ、いえ、勿論、私の榛名の方がずっと、可愛いですよ…!
   こんなツクリモノなヒトカタとは違う、全然、違う…ッ。


   榛名は幼児体型だそうですから。


   …え。


   ……あの榛名とは違いますものね、どうせ。


   何を、言って…。


   ……。


   あ、あの、はる、な…?


   比叡、お姉さま。


   は、はい…ッ。


   今夜は榛名、伊勢と日向の部屋でお休みします。
   それでは。


   ま、待ってぇぇぇぇ……っ!!!


   待ちません。
   姉さまはどうぞ、その榛名に似ている人形と


   待って、待って下さい、榛名…!
   お願い、お願いですから…ッ。


   …。


   ごめんなさい、榛名…ッ。
   す、少し、ほんの少し疚しい気持ちはあったかも知れません…いや、あったと思います…ッ。
   で、でも、でも…!


   …。


   でも、私の榛名が一番だから…ッ。
   ぎゅうってしたいのも、キスしたいのも…その、それ以上の事を、したいって思うのも、私の…ぐぇッ。


   ……。


   は、る、な……。


   ……姉さまなんて。


   …!
   榛名…!


   …。


   お、お願いですから、その先は言わないで下さい、言われたら、心が、心が…。


   …。


   ごめんなさい、榛名…。
   だから、どうか、どうかその先の言葉だけは…。


   …。


   榛名………。


   …今夜はどうぞ、そのお人形と一緒に眠って下さい。
   その、榛名に似ている、お人形と……。


   え、えぇぇぇぇ………。


   …。


   は、榛名ぁぁぁぁぁぁぁ………。


   …。


   は、榛名じゃなければ、嫌です、嫌なんです…。


   …榛名はそんな躰つき、してませんよ。
   どうせ、してませんから。


   か、躰つきとか、そんなの関係ないんです…私は、私には榛名が…。


   どの榛名ですか。


   あ、貴女じゃなきゃ、駄目なんです……駄目だから、だから。


   …う。


   お願いだから、見捨てないで……ください……。


   ………苦しい。


   榛名…榛名……。


   …。


   ………。


   …ところで、姉さま。


   は、い…。


   …こんなものがどうして、此処にあるのですか。


   わ、分かりません、部屋に帰ってきたら置いてあって……。


   …それで、昂ぶっていたと。


   ………。


   …。


   …………ごめんなさい。


   鼻から血が出ていますよ。


   …え、嘘。


   嘘です。


   え、えぇ。


   ………。


   あの、榛名……行かないで、呉れません、か。
   ひとりで、眠るのは、もう……もう…。


   …そのお人形があります。


   榛名じゃなきゃ、駄目な


   ……。


   ………はる、な。


   …苦しいです、姉さま。


   け、けど、離したら…。


   …行きません。


   え。


   ……行きませんから、離して下さい。


   ほ、本当に…?


   …行こうと思っていましたけれど。


   ……。


   ………苦しいです、姉さま。


   …。


   …。


   ……あの、榛名。


   …何ですか。


   ……キス、しても、良いですか。


   …今、しました。


   わ、私からも…。


   ……。


   ……したい、です。


   …。


   ……。


   ……早く、して下さい。


   は、はい…!
   比叡、気合、入れて…!


   入れなくて良いです。
   姉さまが気合を入れると…ん。


   ……。


   …ん、……んぅ。


   ……。


   ……。


   ……はぁ。
   榛名…。


   ………。


   榛名…榛名…私、私は…。


   …お蜜柑。


   う。


   食べるんじゃなかったのですか。


   そ、然うでした…。


   …とりあえず、その人形を片付けて下さい。


   は、はい、今直ぐに…。


   やっぱり榛名がやります。
   姉さまは触らないで下さい。


   は、はい…。


   …。


   ……あの、榛名。


   …。


   …その。


   ………。


   や、やっぱり、何でもない、です……。


   …。


   …蜜柑、二つ貰ってきたんです。
   甘いと言っていたから……?


   …水着。


   ……。


   榛名が水着を着たら、姉さまは嬉しいのですか。


   …あ。


   ………。


   え、えと、見てみたい…とは、思っています。


   …。


   …………嬉しい、です。


   …。


   ら、来年の、夏は…


   艦娘は泳げません。


   だ、だから、波打ち際で…。


   …。


   …。


   ……良いですよ。


   え、本当に…ッ?


   …。


   は、榛名。


   ……それから、夜も。


   へ……。


   …。


   今、なん…ぐぇ。


   お蜜柑、甘いと良いですね。


   …はい、然うですね。


   ……姉さま。


   は、はい。


   お口を開けて下さい。


   …え。


   ……。


   あの、榛名…?


   …早くして下さい。


   は、はい、ただいま!
   ……ほへへ、ひぃ、へふか?


   そのままで居て下さい。
   それと、喋らないで結構です。


   ………。


   ……。


   …?


   ……そのまま、ですからね。


   ……。


   ………。


   …!


   如何ですか。


   …………ん、おいしいです!


   然うですか。


   は、榛名!


   …何ですか。


   あ、あの、もう一度…口に、


   嫌です。








  −I've got your back.





   …はぁ。


   んー。


   え…。


   ん?


   …比叡、さん?


   榛名、お帰り。


   …。


   どうしました?


   …あの、今日は。


   榛名より早く、戻ってきました。


   …。


   驚いた?


   …はい。


   ふふ。
   座って、榛名。
   お茶を淹れましょう。


   あ、いえ、榛名が…。


   良いから、座って。
   いつも淹れて貰ってばかりだからたまには私が、ね。


   でも…。


   さぁさ、榛名。
   どうぞ、どうぞ。


   ……。


   金剛お姉さまから頂いたお菓子、未だ残っていましたよね。
   あのお菓子、美味しいですよねぇ。
   流石はお姉さま。


   …。


   然うだ、今日はジャムと一緒に飲みましょうか。
   疲れている時は甘いのが欲しくなりますから。
   不思議ですよねぇ、ひとのこの躰って。


   …姉さま。


   榛名。


   …ん。


   お疲れ様、榛名。
   頑張ったね。


   …姉さま、だって。


   私は、大丈夫ですから。
   ほら、この通り。


   ……。


   ん、榛名?


   …少し、だけ。


   …。


   少しだけで、良いですから…。


   …少しだけ、ね。


   榛名の、我儘を…。


   …少しだけなんて、言わずに。


   …。


   榛名、ほんの少しだけ、離れて貰っても良いですか。


   …。


   …大丈夫、離そうとしているわけでは無いから。


   ……。


   ん…じゃあ、榛名。


   …?


   ふふ。


   あの…。


   よいしょ、


   …え。
   きゃ…。


   と。


   ……。


   …はーるな。


   あ、あの…。


   …この方がより、良いと思うから。


   ……びっくり、しました。


   へへ…やりました。


   …加賀さんみたいですね。


   一度、言ってみたかったんですよね。


   …でも屹度、加賀さんはこんな事しません。


   それは、分かりませんよ…?


   …ベッドじゃないですから。


   うん、なに?


   お布団だと、危ないと思います…。
   こんな…抱き上げて、倒れ込むようにするだなんて…。


   ああ、然うか…空母寮は、お布団なんだっけ。


   …お布団じゃなくても、加賀さんはこんな事しないと思います。


   ん、榛名…。


   …でも。


   ……。


   …。


   …いつも、榛名にして貰っているから。
   たまには…ね。


   ……姉さま。


   …うん。
   今だけは…姉と妹に戻っても良いかな。


   ……比叡さん。


   …榛名の好きな風に。


   比叡さん…姉さま…。


   …うん、榛名。


   ……。


   …どうして、欲しい?


   ……ぎゅうって。


   …。


   ぎゅうって、して下さい…。


   …うん、任せて。
   ああ、でも。


   …。


   …どっちが良い?
   姉として?それとも?


   …。


   ……榛名の好きな方、で。


   …比叡さんが、良いです。


   うん…じゃあ、然うします。


   ……。


   榛名……気持ち良い?


   ……はい。


   うん…良かった。


   ……。


   …紅茶はまた後で淹れてあげるね。
   今は、ただ、こうして…。


   ………比叡さん。


   …お疲れ様、榛名。


   ……。


   …。


   ……ただいま、比叡さん。


   ん…?


   ……言って、なかったから。


   ああ……律儀だなぁ、榛名は。


   …大事、ですから。


   うん……然うだね。


   …。


   …じゃあ、これもしないと。


   ん………。


   …おかえりの、キス。


   ………ひえいさん。


   ……唇は、また後で。








  −On Ice





   や、本当に作るとは…。


   …駆逐艦の子達がやる気になると本当に凄いですね。


   いや、本当に。
   結構、大変だったと思うんですけど。


   実際、大変だったと思います。
   この寒さの中で作るのですから。


   靴も手作りしたらしいですね。


   ええ、然うらしいです。


   …明石さんも靴作り、協力したとか。


   楽しんでいたらしいです…。


   …。


   …。


   や、凄いな…。


   …本当に。


   ……でも、まぁ。


   楽しそう、ですね。


   こんな雪ばかりの場所だと、これと言った楽しみが無いですからね。
   たまに降る分には良いのでしょうけど。


   ええ、それは然うなのですけれど…転んで怪我をしなければ良いなぁと思っています。


   ……ふむ。


   …?
   比叡さん?


   榛名、私達も滑ってみましょうか。


   え。


   楽しそうですから。


   でも。


   嫌ですか?


   …靴が、ありません。


   と、思っているでしょう?


   …え?


   明石さん、私達の分も作って呉れていたみたいで。
   流石、私達を熟知しているだけあると言いますか。


   然うなのですか…。


   工廠に置いてあるから必要だったら各自勝手に持って行って欲しいと。
   そんな告知が張り出されていました。


   …知りませんでした。


   私もたまたま読んだんです。


   …大淀さんには何も言われなかったのでしょうか。


   若しかしたら御小言を喰らってるかも知れませんね。


   …ああ。


   ですから…と、言うのもあれですけど。
   榛名、一緒に。


   …でも。


   でも…?


   …榛名、滑った事がありません。


   私も無いですよ。
   道に出来た氷に足を取られて派手にすっ転んだ事ならありますが。


   ……え?


   榛名が来る前、私が此処に来て初めての冬に。
   何しろ、初めてだったので。


   ……。


   あっと思ったら、ね。
   気付いたら空、見てました。


   それは…


   はい、思い切りいきました。
   歩き方が未だ、分からなかった頃の話です。


   お怪我はされなかったですか?


   背中を強く、頭も少し打ったかな。


   だ、大丈夫ですか…?!


   はは、大丈夫です。
   昔の事、ですから。


   けど、打ち所が悪かったら…


   少し痛かったですけど。
   でも、大丈夫でした。
   念の為、明石さんにも診て貰いましたしね。


   …良かった。


   思えば。


   …?


   金剛お姉さまに負ぶって頂いたのは。
   あれが最初で…そして多分、最後なのかも知れません。


   ……。


   昔の事ですよ。


   …姉さまは。


   ん?


   ……金剛お姉さまの事。


   お慕いしています。


   …。


   姉として。
   私達金剛型の長姉として。
   誰よりも。


   …あ。


   ……。


   ね、姉さま…。


   …こういう時、姉と呼ぶのは癖?
   それとも…敢えて?


   ………。


   …私がひとりの女性として愛しているのは。
   榛名だけ…です。


   ……。


   …榛名だけ、だから。


   ………は、い。


   …。


   ん………。


   ……。


   ……比叡、さん。


   …はい、貴女の恋人です。


   …。


   ……なんて。


   …ふふ。


   …。


   …比叡さん。


   はい…榛名。


   ……手を引いて、呉れますか。


   手を…?


   …榛名、初めてなので。


   …。


   ……。


   …良いですよ。
   但し、スケートは私も初めてだから…一緒に滑ってしまったらすみません。


   …榛名は、大丈夫です。


   …。


   その時は…その時です。


   …では、ご一緒に。


   はい…比叡さん。





   あー!


   比叡さんと榛名さん、今日もらぶらぶっぽい!


   比叡さん、榛名さん、一緒にやりませんかー!





   …と。


   ……。


   とりあえず、靴を取りに行きましょうか。


   …はい。








   …榛名、お手を。


   はい…比叡さん。


   では。


   …。








   あーさみぃ。
   くそさみぃ。
   哨戒、めんどくせぇ。


   もう、文句ばかり言わないの。
   当番なんだから。


   って言ってもよぉ、雪が降ってるのによぉ。


   それでも小康状態になったでしょ。
   朝は吹雪いていたのだから。


   あいつらだってこんな日に出てくるかっての。


   そんなの、分からないじゃない。
   警戒を怠るなんて


   だってよぉ、雪が降ってるんだぜ?
   気温だって、マイナスじゃねぇか。


   それは此処ではいつもの事。
   ほら、早く行くわよ。
   帰ってきたらあったかいの、作ってあげるから。


   こんなさみぃ日にこき使いやがって、糞が。
   てめぇはあったかい所に居てよ。


   執務をしているの。
   雪が降っていても、暇なわけじゃないの。
   それに資材の事を考えて空調の設定をぎりぎりにしているらしいから。


   んだよ、肩を持つってのかよ。


   然うじゃないでしょう、もう。


   あーめんどくせぇ。


   …もう、摩耶は。


   あー……あ?


   摩耶、早く


   おい、鳥海。
   見てみろよ。


   え、何。


   ほら、あすこ。


   あそこ………あ。


   なぁ、あれって。
   比叡さんと榛名さんだよな?


   うん、然うみたい。


   何やってんだ?
   このくそ寒い時に。


   スケート、じゃない?


   そんなの、見りゃ分かるよ。
   あたしが言ってんのはこんな日になんでそんなもんをやってるかって事だよ。


   そんなの、私に聞かれても。


   駆逐のちび達も流石に居ないぜ?
   なのに。


   ……。


   おい、鳥海。
   聞いてんのかよ。


   …でも、綺麗。


   あぁ?


   比叡さんと榛名さん…息が、とても合っていて。
   ほら、摩耶も良く見てみて。


   て、おい。


   ……わ。


   お…。


   見た?摩耶。
   比叡さん、榛名さんを持ち上げて放り投げたわよ。


   んで、受け止めたな…。


   凄い…。


   つか、おっかねぇ…。


   ……。


   摩耶?
   おい、どうした。


   …確かおふたりがスケートを始めたのは、この冬からだった筈。
   それなのに、あんな事が出来るなんて…呼吸が余程合っていなければ……。


   おい、摩耶。


   …海を走る事、氷の上を滑る事。
   確かに…。


   おぉい、摩耶。
   さみぃんだけど。


   ねぇ、摩耶。


   あ?


   本当に綺麗ね、比叡さんと榛名さん。
   氷の上で、ふたり、踊ってるみたい。
   ううん、踊っているんだわ。
   ふたりの世界の中、ふたりきりで。


   …きれい、ねぇ。
   そんなもんか。


   うん、そんなもん。


   ふぅん。
   ま、あたしはどうでも良いけどよ。


   音楽が聞こえてくるみたい。


   音楽?


   この泊地の金剛型姉妹は、音楽姉妹だから。


   …あたしには聞こえねぇけどな。


   ね、摩耶。


   …なんだよ、鳥海。


   私達もやってみましょう、スケート。


   あぁ?
   やだよ、さみぃ。


   良いじゃない。
   動いていればあったかくなるわよ。


   やだ、めんどくせぇ。
   それよかあたしは、


   でも哨戒よりは良いでしょ。


   …あのな、鳥海。
   あたしが寒いの、嫌いなのはあんたもよぉく知ってるだろ。


   摩耶。


   鳥海。


   …。


   …。


   …。


   ……あぁ、仕方ねぇな!
   一回だけだぞ、それ以上はやらねぇからな!


   決まり。
   帰ってきたら、工廠へ靴を貰いに行きましょう。


   …ああ、くっそ。
   なんだってこんな時に踊ってんだよ、比叡さんと榛名さんは…。








   榛名。


   比叡さん。


   楽しいですね。


   …ええ、とても。


   今日は駆逐艦の子達が居ないから。


   良いのでしょうか、私達がこんなに大きく広く使ってしまって。


   良いんですよ、誰も居ないのだから。
   その時を、狙っていたのだから。


   …はい。


   寒くは無いですか。


   …大丈夫です。
   比叡さんと…踊っているから。


   ふふ。


   …?
   比叡さん?


   スケート、初めてだったのに。


   …本当、ですね。


   海を駆けるのと。


   …似て、いましたから。


   同じでは、無いけれど。


   …それでも。


   …。


   …榛名、楽しいです。
   比叡さんと、こうして…。


   …私もです、榛名。


   ん…。


   ……ふふ。


   比叡さん……。


   …もう少し、共に。


   はい…榛名で、宜しければ。








  −Birthday Wishes ‐Dec.14





   ……。


   …はるな。


   ん…んん。


   ……はるな、めを開けて。


   …や。


   少しだけで、良いから…。


   …ねむい、です。


   ほんの少しだけ、良いから…。


   ……ねぇさまの、いじわる。


   …榛名、少しだけだから。


   ん…や。


   ……困った、な。


   …。


   ………これでは聞こえないかも知れない、けど。


   …ん。


   ……一番に、言いたいから。


   …ぅ。


   …おめでとう、榛名。


   …。


   進水日…おめでとう、榛名。


   ……しん、すい…び。


   師走の…日が替わって、十四日。
   今日は榛名の進水日だよ…。


   ……。


   …あなたが、生まれた日。


   ………あの、うみ、で。


   うん…。


   …ねぇさま。


   ……榛名。


   …はるな、よかったです。


   何が良かった…?


   いたいことも…くるしいことも…つらいことも…かなしいことも…たくさん、たくさん、ありました……あった、けれど。


   …うん。


   ………うまれてきた、から。
   うまれて、こられたから……こうやって、あなたと。


   …。


   …あなたと、おなじじかんを。
   あなたの、うでのなかで……。


   …。


   ん……。


   ………おめでとう、榛名。


   ねぇさま…。


   …瞳、開けて呉れたね。


   ねぇさま…ひえいねぇさま……。


   …今日は、貴女が生まれた日。
   私にとっても…とても、とても、大切な日。


   ……うれ、しい。


   …。


   …ん。


   ……明日、起きたら。
   改めて、お祝いするから…。


   …。


   …だから、榛名。
   楽しみにしてて下さいね…。


   はい…ねぇさま。


   ふふ…素直。
   いつもだったら遠慮してしまうのに…。


   …。


   …眠たい時の榛名は、本当に。


   ねぇさまぁ…。


   …お。


   ……だっこ、してください。


   …。


   …もっと、ぎゅうって。


   ……これで、良いですか?


   ふふ…。


   …はるな。


   ……ん。


   …。


   ………。


   …おやすみ、榛名。
   どうか、良い夢を…。








  −Play biting





   今日の最高気温も氷点下、と。


   …毎日、氷点下ですね。


   仕方無いとは言え…せめて零度でお願いしたいものですねぇ。


   比叡さん。


   はい。


   …えい。


   お…。


   ……ふふ。


   榛名。


   …幌筵は毎日、寒いですけれど。
   ふたりで、こうしている間は…


   ……温かい、ですね。


   はい、比叡さん…。


   …榛名は温いなぁ。


   比叡さんは…今は、温かいです。


   …今は?


   はい…今は。


   …ふむ。


   ふふ…。


   あー…榛名。


   はい、比叡…きゃ。


   …。


   …比叡さん。


   ……もっと温かくなりますか?


   …熱くなる、ではなくてですか?


   榛名は熱い方が良いですか…?


   …榛名は今でも十分、温かいですから。


   む…。


   ……ふふ、唇が熱いですね。


   …。


   あ…。


   ……。


   比叡、さん…。


   ……榛名の指、このまま食べてしまいましょうか。


   …比叡さんが然うしたいなら。


   …。


   ん…比叡さん。


   …食べませんよ、折角綺麗な指をしているのだから。


   比叡さんが然うしたいのなら…榛名は構いませんのに。


   …食べてしまったら、指を絡められなくなってしまいます。
   それは…非常に、勿体無い。


   勿体無い…ですか。


   …少し、違いますか。
   兎も角、私はあれが好きなのです…。


   ……榛名も、好きです。
   少しこそばゆくて……でも、確かに繋がっているような気がして。


   …ん。


   ……特に。


   特に…?


   …抱かれている時に、絡められるのが、好きです。


   ……。


   ……やっぱり、食べないで下さい。


   …はい、分かりました。


   ……。


   …榛名。


   ………ふふ、こそばゆいですね。


   …うん、然うだね。


   ……温かい、ですね。


   …うん、とても。


   ………比叡さん。


   …なに。


   ……。


   ……。


   ……熱く、なりたいです。


   …十分ではなかったのですか?


   十分ですよ…温かさだけ、ならば。


   …。


   ……熱くは、ないですから。


   ………なるほど。


   ん……。


   …では、熱くなりましょうか。


   して、呉れますか…。


   …ええ、気合を入れて。


   ふふ……比叡さんったら。


   ……。


   あ…、ん。








   ……。


   ……ひえいさん。


   うん…?


   ……あたたかい、です。


   …もう、あつくはないですか?


   ……ほてっては、いますけれど。


   では…もういちど、あつくなりますか?


   …。


   ん…はるな?


   ……。


   ………さっきまで、はるなのなかにはいっていたんですけど。


   …。


   …。


   …ひえいさんのゆびは、はるなのとはちがうんです。


   ……どう、ちがうんですか。


   ながさも…かたちも…おんども…。


   …。


   ……はるなはこのゆびが、だいすきです。


   ……だから、しめつけてくれるのですか?


   …。


   …つ。


   ……もぅ。


   あと、ついたかも…。


   …そこまでつよくはしてません。


   そうかな…けっこうつよく、かまれたけれど。


   …してません。


   つけてくれても、よかったのに…。


   ……。


   ……たまに、うらやましくなるときがあるんです。


   …?
   なにが、でしょうか…?


   …はるなのなかにはいることができる、これが。


   ……。


   …へん、ですかね?


   ……よく、わかりません。


   わたしにもよく、わからないんですよね…。


   …ひえいさんのいちぶ、ですよ。


   そうなんですけど…なんと、いいますか。


   ……へん、です。


   ですかね…。


   ……ん。


   …ともあれ、はるなのなかはあたたくてきもちがいい。


   ……。


   …いた。


   ………。


   こんどこそ…あと、ついかも。


   ……そこまでつよくは、してません。