空も、海も、赤に染まる。 止まる事は無く、止める事も出来ず、炎を上げて沈んでゆく。 名前を呼ぶ事も、手を伸ばす事も、躰を寄せる事も、ましてや涙を流す事も、鉄の塊であった私には出来ず。 己で沈む事も出来ず、ただ、ただ、軋んでゆく何かを、感じながら。 ただ、ただ……燃え沈み逝く貴女、を。 ……ん。 う…ぁ…。 …、さん。 ……。 …赤城さん。 …ぅ……うぅ。 赤城さん、赤城さん…。 ……ッ。 …。 ……、……。 ……赤城さん。 …あ……あぁ、……ぁぁぁ。 ……。 ……ぁぁぁ、ぁぁぁ……あ、あ…ぁあ。 …ゆっくり、と。 …、……ッ。 …大丈夫、大丈夫です。 ……が、……さ…。 私に合わせて…ゆっくりと、吸って下さい。 ……。 …ゆっくりと、吐いて。 ……。 ……大丈夫、赤城さんは此処で生きています。 …か…が……。 …私も此処に居ます、赤城さんと共に生きる為に。 ……は、ぁ……はぁ…。 …貴女を、独りにはしません。 もう、二度と…。 ……。 ……この契りを、決して。 …かが、さん。 ……。 …かがさん……かがさん……。 ……赤城さん、貴女をお慕いしています。 今の貴女に逢う、ずっと前から……貴女、を。 わたし、わたしは……あなた、を……。 …私も貴女を守る事が出来なかった。 それどころか…。 ……ごめんなさい。 ごめんなさい……。 ……謝らないで、赤城さん。 貴女は…何も、悪くないのだから。 …ごめんなさい、かが…ごめんなさい…かが…かが……。 ……。 う、うぅぅぅ……。 …赤城さん、私を慕って呉れますか? ……。 …今生の、私を。 鉄の塊では無い、人の子の形をした私を…。 ……加賀、さん。 …。 加賀さん…加賀さん……わたし、私は…。 …。 ……貴女になら、壊されても良いの。 いけません。 …あ。 ……私は貴女と生きたい。 生きたいのです、赤城さん……だから、こそ。 …。 …だからこそ、貴女と契りを交わしたかった。 貴女と、今を生きる為に……。 …。 …私と、生きて下さい。 …。 私と生きて……赤城。 ……ああ。 …。 ……。 …躰。 ……。 …どこも、おかしくないですか。 ……う、ん。 痛くは、ないですか…? …うん。 ……泣かせて、しまいました。 …ん。 ……不慣れで、すみません。 初めて、だったので…。 …それで、いいの。 ん…あかぎさん…。 …ねぇ、加賀さん。 はい……。 …もう一度、して。 ……。 ……もう一度、私の中に来て。 …っ。 ……? 加賀さん…? …あ、いえ。 どうしたの…すごく、熱くなったわ。 ……。 かが…? ……すみません、酷く昂ぶりました。 …。 ……赤城さん、良いですか。 …はい。 ……では。 ん……あぁ……。 …。 ……ね、ぇ。 …は、い。 ……わたし、も。 …。 ……あなたを、たべても、いい? ……。 …わたしも、たべたい。 ……もちろんです。 よか、った…。 …でも、今は。 ん……かがさん……。 あの戦いは結局、負けたのだと。 この姿になってから、知った。 そして守るべき存在だったあの人もまた自分と同じ場所に沈んだ、沈められた事も。 後悔、己が不甲斐無さを痛いぐらいに感じながら、それでも私は心の奥底で仄暗い喜びを抱いたのも確かで。 そんな私を、貴女は赦して呉れるでしょうか。 ……。 …かが、さん。 ……はい、あかぎさん。 …。 …どうしましたか? ふふ……。 …おかしいですか? いいえ…うれしいのです。 …うれしい、ですか。 はい……とても。 …。 ね、かがさん…。 …なんでしょう。 かみのけ…ゆびで、すいてください…。 はい…あかぎさん。 ……ん。 …。 ふふ……きもち、いいです。 いたくは、ないですか…? …ぜんぜん。 いったでしょう…?きもちいいって…。 …はい、いわれました。 ね……わたしも、してもいいですか。 …もちろんです。 …でも、いまはわたしがしてもらうばん、ですから。 …。 できれば…かがさん。 …なんですか。 その……あいているてで、だきしめてくれたら…うれしい、です。 …よろこんで。 ……。 あなたが、まんぞくするまで…こうして、いましょう。 …きっと。 …。 …ないと、おもいます。 ずっと…ですか? …そう、ずっと。 だって…。 …。 …でも、いまはこれだけで。 …。 …ねぇ、かがさん。 ……もう、いいのですか? …まだ、です。 そう、ですか…。 ……。 ……。 …ねぇ。 …なんでしょうか、赤城さん。 ……初めてだと、言いましたよね? …? その…こういう、こと。 …ああ。 はい…初めてですよ。 …。 …赤城さん? ……不思議、ですね。 不思議…ですか。 初めてなのに…やり方を、知ってるなんて。 …。 …どうして、ですか? 人の子の本能、かも知れません。 …本能? ……然ういう事に、しておきませんか? …。 それに…赤城さんだって、知っていたのですから。 私は…。 若しも何故かと訊かれたら…どうしますか? それは…その、加賀さんが先にして呉れたから。 それだけでしょうか…? …それだけ、です。 本当に…? ……。 赤城さん…? ……本能、です。 ……。 …然ういう事に、しておいて下さい。 ふふ…それでは、私と一緒ですね? ……そう、です。 …。 加賀さんは……わたしがはじめてのひと、なんですよね。 …そして、たったひとりのひと、です。 ……。 …赤城さん、貴女が愛しいです。 心の底から…。 ……ずるい。 …ずるかった、ですか? ……わたしだって。 …。 …わたしだってかがさんだけ、です。 ……赤城さんも私が初めての人、ですか? …。 …。 とっくのむかしに……そう、いいました。 そうでしたか…? …そうです。 ……。 …ん。 ……赤城さん。 かがさん…。 …私を、赦して呉れますか。 …? ゆるす…? …先に沈んでしまった、私を。 ……。 …。 ……貴女は此処に居る。 私と生きると…生きたいと言って呉れた…だから赦すも何も、無いです。 …。 どうか…私と生きて下さい。 …。 私と…生きて、加賀。 ……はい、赤城。 ……。 …ここは、譲りません。 誰にも…譲りません。 ……ゆずらないで、だれにも。 …。 …ぜったい、ですから。 ……絶対、です。 …あなただけ、なのですから。 ん…赤城さん。 ……ふたりで。 …。 ……この姿で、生きて。 …はい。 ……加賀さんと私、二人で。 ……。 …私は、貴女を。 ……。 心の底から……お慕い、しています。 だから、どうか……この契りを。 …この命は、貴女の為に。 …。 …この加賀、貴女だけの為に。 ……加賀さん、私の命は。 ……。 …貴女だけのもの、ですから。 どうか、忘れないで…。 昨日までの私と、今日からの私。 同じだけど、でも屹度、違う。 知らなかった事を知ってしまった私、貴女の温もりを知らなかった頃には戻れない私、戻りたくないと強く願う私。 私はもう染められてしまった、染められてしまったから。 然う、貴女の色に。 ……。 ……。 …かがさん。 ……。 加賀さん…。 …う。 ……お早う御座います、朝ですよ。 ……。 …加賀さん。 ……ここ、は。 …もう、何を言っているのですか。 ……。 …寝惚けているのですか。 それにしたって…その言い様は少し酷いと思います。 ……ああ。 …。 …おはようございます、あかぎさん。 お早う御座います…加賀さん。 此処が何処だか、分かりましたか…? …はい。 では…何処ですか? ……。 加賀さん…? …あかぎさんの、うでのなか、です。 ……。 …ですよね。 ……そう、ですけど。 もう、加賀さんったら…。 …? どうしておこるのですか…? …あ。 こんなにあなたのからだは、やわらかくて。 こんなにも、きもちいいのに…。 か、加賀さん…。 ……ほんとう、に。 未だ寝惚けているのですか…て、駄目です、また寝たら。 …あかぎさんのからだが、いけないのです。 何ですか、それ…ああ、もう。 ……。 駄目ですよ、加賀さん。 二度目は…めっ、です。 …め? ……。 …あかぎさん? ……すみません、今のは無しにして下さい。 なぜです…? ……その、恥ずかしいので。 …。 …。 …あかぎさんは、ほんとうに、おもしろいわね。 面白いって…。 恥ずかしいと思うなら、言わなければ良いのに…。 ……。 ふふ…ふふ…。 ……加賀さん、笑いすぎです。 …。 …加賀さん? 私、笑ってましたか…? 笑ってましたよ。 今更、何を言ってるんですか。 そう、ですか…ふふ。 ああ、もう。 また笑った。 …赤城さんと、居ると。 あ…。 …こんな私でもちゃんと笑えるようです。 ……。 …貴女と契れて、良かった。 本当に…。 ……加賀さん。 これから、宜しくお願いします。 赤城さん。 …こちらこそ。 ……。 あ、加賀さん…。 …口付け、嫌ですか? い、嫌じゃないですけど…朝、ですし。 昨夜、数え切れないくらい、しました…し。 …明るいのが駄目ですか? 然ういう問題でも……わ。 …では、暗くして差し上げましょう。 ……お布団、被っただけじゃないですか。 それでも暗くはなったでしょう…? ……。 …明るい方が良かったですか? ……もう。 加賀さんのばか…。 ……赤城さん。 一度だけ、ですよ……。 …すみません、無理かも知れません。 ……。 …すみません、矢張り無理そうです。 ……かがさんの、ばか。 …はぁ。 かが、さん……。 ……。 …ん、…ねぇ……も、ぅ。 ……あかぎさん。 もう…おきないと……。 …もうすこし。 ん…だめ、です……そろそろ、ほんとう…に。 ……。 …かがさん…ね、ぇ。 ……そのこえ。 ん…あぁぁッ。 ……なにかが、とけてしまうわ。 か、が…さ…。 …いえ、もうとかされてるんだわ。 ねぇ……ね、ぇ…もう、だめ……だめ、よ…。 …なにかって、なにかしら。 なんだとおもう…あかぎさん…。 …ぁ、だめ……ねぇ、だめ……。 ……なんと、いったかしら。 ひとのこは、なにがとけると、いったかしら……。 かがさ……ひゃんッ。 ……。 な、なにを…あ、やだ、だめ……だめぇ…。 ……。 な、なめない…で……そんな、ところ…ねぇ……ねぇ……。 …ああ、とけてしまう。 とけてしまうわ…あかぎさん…。 …あッ。 ……あかぎさんのここ、みたいに。 あぁぁっぁ…、……が…、はぁ、ぁぁぁ……か……さ、……。 ……あつくて。 とても、あつくて。 ……、……っ、……! とける……とける……ああ。 …も…、も…ぅ…。 ……。 かがさん……かがさん…かがさん…っ、……か、が…ッ! ……あか、ぎ。 ………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ。 ………。 ……、…ぁ……、……ぁ、ぁ……。 ……はぁ。 ……っ、…。 ……あかぎさん。 …………か。 …はい、あかぎさん。 ……ちが、う。 …ちがう? ………ば、か。 …。 ……だめって、いった…のに。 …あぁ。 ……。 …すみません、あかぎさん。 おさえきれません、でした。 …。 ……おこってますか。 …あきれてるん、です。 あきれて…。 ……ふたりで、あさねぼうなんてしたら。 また、いわれてしまうじゃないですか…。 …べつに かがさんの、そういうところ。 すきです、けど、だめです。 …すきなのに、だめなんですか。 そうです…もちそうにないから、だめです。 もちそうに…? …わたしが、です。 ……。 だいたい、わたしたちはかんむすで…にんむだって、あるんです。 …ちゃんとしますよ。 わたしは、あなたをまもるのですから。 そのために、ちぎりをかわしたのですから。 …もうっ。 あかぎさ…? …ほんとにもう、だめですからね。 ……はい。 …。 …。 …もう、おきますからね。 …。 かがさん、きいてますか。 ええ、聞いているわ。 赤城さん。 …? ん、何? …い、いえ。 じゃあ、おきましょう…。 ええ。 わ。 お早う、赤城さん。 え、ええ…お早う、加賀さん。 ……。 ……え、と。 赤城さん。 …え。 あ、はい、何ですか。 今夜は、駄目ですか。 ……え。 出来れば、したいのだけれど。 した、い…? ええ。 駄目、かしら。 ……。 一晩と少しくらいでは、足りないわ。 …ッ! も、もう、何言ってるんですか…ッ! 夜の事だけれど…おかしかったかしら。 ば、ばか…っ。 む。 わ、私達は艦娘なんですよ、もう…ッ。 …分かってるわ、勿論。 だから、約束をしたいのよ。 や、約束…。 必ず、此処に帰って来られるように。 ……。 駄目、かしら。 赤城さん。 ……も、う。 加賀さんは、ずるい…。 …ずるい、かしら。 ずるいです……だから、約束破ったら、赦しませんから。 …ええ、分かってるわ。 ……。 赤城さん…。 ……加賀さん。 …何かしら。 ……約束の印を、ください。 印…。 …もう一度だけなら、許してあげるって言っているのです。 ……。 …口付けて、加賀さん。 ああ。 初めから然う言って呉れれば、良いのに…。 ……察して呉れない加賀さんが、いけないの。 あの日、あの時、ファインダー越しに見たお二人の姿は、幸福、そのものでした。 あ。 …あら。 ……。 お、お早う御座います、赤城さん!加賀さん! 青葉さん、どうしてこんな所に? 此処は空母寮ですけど…。 ……青葉。 あ、いえ、その…そう、青葉は朝のお散歩をしてたんです、はい! 朝のお散歩、ですか。 ……。 はい、お散歩です! 赤城さんと加賀さんはこれから朝ごはんですか? はい。 今朝は少し、遅くなってしまいまして…残っていれば良いですけど。 青葉さんもう、済ませたのですか? ……。 はい、青葉はもう食べました。 大丈夫です、未だいっぱいありましたから。 然う。 良かったわ。 ねぇ、加賀さん。 ええ…然うね、赤城さん。 …え、と。 それでは青葉はこの辺で ところで、青葉さん。 …。 は、はい? なんでしょーか? 昨日の加賀さんの歓迎会の時、姿が見えなかったようですけれど。 どうかしたのですか? …。 青葉、ちょっと忙しかったんです、はい。 来られないくらいに? 折角、お料理が沢山並んだのに。 ほんの少しでも、駄目だったのですか? …。 は、はい、ちょっと、外せなくて…。 然うですか。 それは残念でしたね。 …。 じゃ、じゃあ、青葉は行かなきゃいけないところがあるので…えと、失礼しま 待ちなさい。 …う。 加賀さん? 貴女が、青葉さんね。 は、はい、そうです。 えと、初めまして、です。 青葉型一番艦の青葉って言います。 …然う。 え、えと…。 加賀さん。 赤城さん、この人が昨日さんざ言っていた人なのね。 ええ、然うですけど…。 あ、あのぅ…。 青葉さん。 は、はい。 赤城さんの事、勝手に記事にしないで欲しいものね。 え…。 ましてや、写真など…。 か、加賀さん。 私は、良いわ。 でも…赤城さんの事は無断で記事にしないで。 若しも今度、したら…。 あ、あわわ…。 …その時は、赦さないわ。 断じて。 は、はい、分かり 加賀さんの事も、ですよ! …? 赤城さん? 加賀さんの事も無断で記事にして欲しくありません。 だから、青葉さん。 は、はいぃ。 若しも次があったら…その時は、赦しません。 分かって、貰えますよね? は、はい! 次からはお許しを得てからにしようと思います…!! 分かって貰えて、嬉しいです。 それでも常に許しが出るとは思わない事ね。 あ、あの、それで、早速なんですけど! …? はい? …何。 お、お二人の今朝の写真、撮っても良いですか?! …はい? …は? ご夫婦になられた記念に! 是非とも!! ……。 ……。 だ、だめですか? …どうしましょう、加賀さん。 ……青葉さん。 は、はい。 その中に、よもや、私達の写真が既に収められている事は無いでしょうね。 昨日以降の…例えば今朝の、とか。 …え。 まさか……でも、青葉さん。 な、ないです、ないです、本当にないです。 起き立ての、もしくは寄り添って眠ってる、仲睦まじい二人の写真が撮れたら良いなぁとか思いはしましたけど! …。 …。 でも、本当にないです…! ないです…!! ……。 ……。 青葉、誓ってないです…! …と、言っているけれど。 信用しても良いものなのですか、赤城さん。 …多分、ですけど。 大丈夫だと思います、涙目になってますし……多分。 大体、障子がしっかりと閉まってましたし、流石に……。 ……。 ……。 …本当にないです、ないです、ごめんなさい。 ……はぁ。 …加賀さん。 ……うぅ。 良いわ。 けれど嘘だったら…分かっているわね? は、はいぃぃ! 青葉、十二分に分かってます…! …然う。 ならば、それを信じるわ。 ……。 …青葉、もう行きます。 その、 待って、青葉さん。 …赤城さん? な、なんでしょーか。 写真、撮って下さい。 加賀さんと私の。 ……。 い、良いんですか!? はい。 でも、その代わり。 …。 なんですか? 写真が出来たら、私達に下さい。 お願いします。 …。 勿論です!! 一番にお渡しします!! 有難う御座います。 良いですよね、加賀さん。 …赤城さんが、良いなら。 私は、構わないわ。 ありがとーございます!! じゃあ、早速!! …。 …。 えと、折角なのでもうちょっと寄り添ってください。 その方が屹度、良い写真になると思います! ……加賀さん、良いですか。 …ええ、赤城さん。 ああ、良いですね、良いですね……わ。 ……加賀さん。 良いですか、赤城さん。 ……はい。 わぁぁ…。 …では、これで。 えと…青葉さん、宜しくお願いします。 はい! ではでは笑って下さい! はい、チーズ!! ・ ・ ・ ……。 よぉ、ちび。 …私はもう、ちびではありません。 何言ってんの、ウチから見ればキミはまだまだちびや。 尻の青い、ちびすけや。 …。 んで、何見とるの? …別に。 んー、どれどれ。 ……。 なんや、写真か。 …返して下さい。 て、これ……赤城と加賀やないの。 おー、なっつかしいなぁ! 返して下さい。 あの二人、加賀が着任した日にさっさと夫婦になってしまってなぁ。 そりゃもう、周りを驚かせたもんやったんやで。 …知ってます、何度も聞かされましたから。 それ、本人達から? …いえ。 知ってるわ。 でもま、一度くらいは聞いたやろ? 多分、赤城あたりから。 ……。 加賀が来るまで誰にも心を開こうとしなかった、あの赤城が。 加賀が来たらあっさり、変わって。 と言っても、アホみたいな笑顔を見せるのはいつだって加賀限定だったけど。 …。 加賀も加賀で。 赤城にだけは、だだ甘なんや。 いやもう、赤城にだけ、優しい目を向けて。 …。 ほんまに、バカップルだったわ! 思い出しただけで、砂糖吐くわ!! ……知ってます。 でもな、あの二人、揃うとほんまに強かったんやで? 一人でもそこそこやったけど、二人揃うと手がつけられへんかった。 ほんま、アホみたいに、強かった。 …知ってます。 そのうち、キミらが来て、我が子のように可愛がって。 ……。 それからも、色々あって。 んで、最後の日が来た。 ……。 そんな顔、すな。 ウチら艦娘は、いつか、その日が来るんや。 だからこそ、キミらが来るんやからな。 ……。 後を任せられる存在が居る、それだけでどんだけ背の荷物が減るか。 まぁ、任せられる方はたまったもんじゃないだろうけど、な。 …私達は艦娘です。 戦う為の、存在です。 ほぉ、良い心構えやなぁ。 感心や。 …そろそろ、返して下さい。 恋しいか? 会いたいか? …いいえ。 素直やないなぁ、キミは。 ちょ、止めて下さい。 言ったやろ。 キミはウチから見たら、まだまだ、ちびすけやって。 …。 ウチもそろそろ、お役御免や。 つまり、ウチもこっから居なくなるって事や。 だから言いたい事があるなら、今のうちに言っとき。 …別に無いです。 ほんまかぁ? 無いものは、無いです。 じゃあ、ウチから一つ。 近いうち、新しいウチがウチの仕事を引き継ぐ。 そん時は、宜しくな。 ……。 なんやねん、その顔。 ハトがまめでっぽ喰らったような顔、して。 …。 はは、アホ面やな。 加賀、そっくりや。 …私は、 “加賀”。 …。 その名はとっくに、キミのもんやもんな。 ……。 めっちゃキツイけど、頑張るんやで。 でも、無駄死にだけはしちゃ駄目や、分かったな。 …。 加賀、返事は? …はい。 よぉ、出来ました。 ところで。 …写真。 赤城は、どし 加賀さん! お。 ……。 加賀さん、龍驤さんと何をやっているのですか。 私、ずっと待ってたんですよ。 …すみません、赤城さん。 ちょっと 加賀は母親が恋しくなってただけや。 そう、怒らんといて。 母親? ち、違います! ほら、この写真。 …赤城と、加賀の。 違います、赤城さん。 たまたま、その、見てたら、龍驤さんが 加賀さん。 は、はい。 お、なんか始まるんか? ……。 あ、赤城さ……んんッ? お、おお。 ……。 …ん、…あか、……んぅ! ……いつ見ても、あいつら以上やな。 ……。 ……あ、あかぎ、さん。 邪魔者は退散、退散…。 待って下さい、龍驤さん。 …と、まず。 加賀さんがお世話を掛けたようで。 すみませんでした。 いやいや、世話なんて掛けてへんから。 然う、ですか? 然う然う。 なぁ、加賀? …。 …と言うか、はいって言っとき。 面倒なコトになるの、嫌やろ…? ……はい。 加賀さん? あ、あの、赤城さん。 お待たせしてしまったのはすみませんでした。 けど、龍驤さんとは少し話をしていただけですので…。 私を待たせているのを自覚しておきながら、ですか。 …う。 この写真。 あ、赤城さん…。 …本当、しあわせそうに笑ってますよね。 特に赤城。 い、いえ、加賀も結構…。 ねぇ、然うは思いませんか、加賀さん。 は、はい…思い、ます。 赤城のこの顔、私と同じ筈なのに。 同じに思えないのは何故でしょうか。 そ、それは…同じ赤城さん、ですけど…その、違いますし。 加賀さんも、ですか。 わ、私は…。 ……。 う。 …いつに、なったら。 あ、赤城さん…。 ……私を、貴女のものにして呉れるんですか。 …! え、と。 とりあえず、ウチはもう行くわ。 あ、龍驤さ 大変やとは思うけど、まぁ、キミも加賀なんやから。 なんとかなるやろ、多分。 …何ですか、それ。 加賀、さん。 あ、はい…。 …いつになったら、私をこの赤城のように笑わせて呉れるのですか。 そ、それは……その。 ……いつになったら、貴女の気持ちを告げて呉れるのですか。 あ、う……。 ……ずっと、待ってるのに。 あ、赤城、さん…。 …いっそ、ここで決めてしまえ、加賀。 …。 赤城さん、私は…。 ……なぁ、赤城と加賀も、然う思うやろ? 加賀さん。 …。 加賀さん。 …。 加賀さん。 …。 無視、ですか。 …違い、ます。 では何故、返事をして呉れないのですか。 …しようが、無いからです。 しようが無いとは、どういう意味ですか。 それは無視していると、どう違うのでしょうか。 ……。 …。 ……赤城さんは、どうして。 …。 私に…その、口付けをするのですか。 言わせるのですか。 …私はあの加賀ではありません。 知っています。 …あ。 私にとっての“加賀”は…加賀さん、貴女だけです。 小さい頃からずっと、私の傍に居た…。 ……。 …何度伝えれば、分かって貰えるのでしょう。 何度然う言えば、貴女は…。 ……分かって、いるのです。 …。 けれど……私は。 どうすれば良いのでしょう。 …。 …私は貴女のものになりたいだけ。 なれないのなら…いっそ、“赤城”の名など捨ててやります。 そ、それは…! だって然うすれば。 私が“赤城”で無くなれば、貴女は私を“赤城”として見なくなるでしょう? なれば、貴女は私をただの女として見て呉れるかも知れないでしょう? …そんな事、言わないで下さい。 それとも、何ですか。 貴女は“赤城”と言う存在が居れば、それで良いのですか。 “赤城”と言う名を冠する女を守る事さえ出来れば、其れで満足なのでしょうか。 赤城さん。 …だったら、私は。 一体、何なのでしょうか…! …止めて下さい、赤城さん。 私は、貴女のものになりたいだけ。 ただ、それだけです。 ……。 若しも、叶わないのならば。 私は お慕い、しております。 ……。 …ずっと、お慕いしておりました。 ……それは本心? それとも……あ。 ……。 ……。 …加賀さん。 ……私は。 …。 貴女が“赤城”だから慕っているわけではありません。 貴女が…貴女だから、守りたいと願い、心からお慕いしているのです。 …。 ……貴女を、愛しています。 …もっと、早く。 もっと早く、聞きたかった。 ……すみません。 貴女を、追い詰めてしまった…。 ……ですが。 …。 …私を貴女のものに、して呉れるなら。 ……赤城さん。 ならば…。 私は疾うに、貴女のものです。 …。 …そんな私が、貴女を私のものにするなどと。 ばか。 …え。 本当に、ばかですね。 大ばかです、加賀さんは。 あ、赤城さん…。 私を、貴女のものに、して下さい。 ……。 …して、呉れますよね。 と言うより、して。 …あ、う。 ……。 ………は、い。 聞こえません。 …なって、下さい。 …。 …お慕い、しております。 だから……どうか、私のものに、 契りを。 ……え。 …今夜、抱いて下さい。 え、え…。 ……春を、教えて。 は、る…。 この熱い手、で。 あ。 …私、に。 あ、赤、ぎ……んぅ。 今日は、穏やかな日和やなぁ。 うん、良い事や。 なぁ、キミらも然う思わへん? …名を捨てる事など、出来やしないのに。 楽しそうですね? …ん。 ああ。 お手紙、ですか。 ええ。 先程、郵便屋さんが届けて呉れたのよ。 ああ、然う言えば見掛けました。 珍しいですね、うちにお手紙なんて。 ごめんなさいね。 うん? 先に読んでしまって。 ああ、良いですよ。 でも、然うね…折角だから一緒に読みたかったですね。 今からでも良ければ。 では、ご一緒に。 では、隣にどうぞ。 お言葉に甘えて。 よいしょ… …。 …なに? いえ……ふふ。 もう、何ですか。 よいしょ、なんて。 と、思っただけよ。 貴女だって……。 …ふふ。 …もう。 それで誰から、なの? 誰からだと思う? んー…然うねぇ。 私が知っている人? ええ、とても。 貴女も? はい、私も。 んー……。 分からない? もう少し絞れたら、と思うのですけど。 なにぶん、広すぎて。 …ふふ、然うね。 それで? だぁれ? 龍驤さんからよ。 龍驤さん? て、あの龍驤さん? 他に誰が居るの? 珍しいですねぇ。 と言うより、初めてよ。 内容はなんて? 新しい子が漸く、来るみたい。 ああ。 でもそれをわざわざ? 勿論、それだけじゃないわ。 ここ、読んでみて。 どれ……。 …ここ、よ。 ここからの件(くだり)…。 ……。 ……。 ……。 …。 …捨てたところで、何も変わらないのに。 ええ…然うね。 …だけど、然うね。 それだけ、切羽詰まっていたのね。 …ごめんなさいね。 ? どうして、貴女が? なんとなく。 なんとなく、ですって? 貴女が? 私にもそういう時ぐらい、あるわよ。 ……。 …どうしましたか。 もう、こんなにずっと一緒に居るのに。 …。 …驚く事があるから、不思議ね。 ……驚いたのですか? ええ…少し。 …然う。 ……ねぇ。 なに? …私より先に、逝かないでね。 ……。 …。 …ええ、分かっているわ。 ん…良かった。 …。 ……ねぇ? 次は、なに? …足の調子、どうですか。 ……。 …。 …今日は良いわ。 …痛みは? あまり無いわ。 …然う。 ……。 ん…なに? …腕の調子は、どうですか。 ……。 …。 …今日は、良いわ。 多分、日和が良いのね。 ……。 …ねぇ。 はい…。 …私が、貴女の足になってあげる。 …ならば私が、貴女の腕に。 その瞳の代わりも。 ならば、私は貴女の温もりに。 …。 …。 …ねぇ? なに…? 私……しあわせ、なの。 …。 …戦うだけが、私の存在意義だった筈なのに。 貴女に出逢って…再会して。 契りを、交わして。 …。 一つの夢が、叶って。 叶えて、呉れて。 …ああ。 色々あったけれど……今はこうして、二人だけの時を過ごしている。 本当ならば…許されてはいけない時間なのに。 …。 ねぇ……私、しあわせよ。 とても…とても。 …。 貴女が、私に…春を、呉れた。 そしてその意味も、教えて呉れたの…。 …私は。 ん…。 …貴女を、しあわせに出来ましたか。 言ったでしょう…しあわせ、だって。 …。 …ねぇ、貴女は? ……。 …教えて。 ……。 …その名はもう、あの子のものだけれど。 だけど…私にとっての“加賀”は、貴女だけだから。 …。 ……。 …私にとっても、然うよ。 私にとっての“赤城”は…貴女だけ。 ……ああ。 …私も、しあわせよ。 私は貴女をしあわせに出来ましたか…? …貴女が居なければ、このしあわせは無かったわ。 ……。 …貴女を愛しているわ。 これから先も…ずっと。 …ああ。 私も、私もよ……。 ……。 ……。 …今日は、穏やかな日和ね。 ええ…本当に。 ……。 …これからあの子達、どうなると思う? さぁ、どうなるかしら…。 …気にならない? 何にせよ。 “加賀”は、“加賀”にしか、なれないわ。 …。 …“赤城”の傍。 それが…“加賀”の、居場所。 ……。 …他なんて、無いのよ。 なんだか…。 …ん? ……なんだかあまり、良い響きでは無いわ。 然う…? …然うよ。 私は良い意味で言ったのだけれど…。 …“赤城”が“加賀”を縛っているみたいなんだもの。 縛る…。 ……。 …ばかね。 何を言っているのかしら…。 …貴女にばかって言われたくない。 …。 …。 しようが無いわね…。 ……。 …貴女は、可愛い人。 出逢った時から、ずっと…可愛い人。 …茶化さないで。 ……茶化してなんか、いないわ。 ん…んん…。 ……。 …。 ……お慕いしています。 …それ、ずるい。 ずるい…? …昔のような、喋り方。 ……いけませんか? 貴女は。 …。 …貴女は何度、私に恋をさせるつもりなのですか。 ……。 …。 ……それは私の台詞だわ。 ん…。 …だから、お互い様って事にしましょう? ……。 …気に入らない? ……ううん。 然う…なら、良かった。 ……ねぇ。 なに…? …あの子も、それくらいだったら。 あの子が、切羽詰らなくても良かったのに…ね。 …すみません。 ……ふふ。 可笑しい、ですか。 …ええ、とっても。 ・ ・ ・ ……はぁ。 …。 …あかぎさん。 あかぎさん……。 ……ふふ。 …? ……。 なにが、おかしいの…? ……なんだと、おもう? …わかりません。 ……そうね、ごめんなさい。 だから、ふてくされないで…ね。 …ふてくされては、いませんが。 ……。 …それで、なにがおかしかったのですか。 ……ねぇ、かがさん。 はい…。 ……あなたが、ちゃくにんしたひのこと、おぼえてる? ……それが、なにか? こたえて…? …おぼえているわ。 ……まみやさんに、いったことも? …もちろんです。 あのときのことは、いっしょう、わすれません。 ……はじめて、てをつないで、はじめて、ほうようをしたことも。 …はい。 はじめて、くちづけをかわしたことも…? …わすれられるわけ、ないわ。 ……そう。 …それを、おもいだしていたの? ……ええ、そうよ。 ……。 ん…かがさん。 …いまより、そちらのほうにおもいをはせていたのですか。 いいえ…それはちがうわ。 …そうでしょうか。 ……ただ、すこしだけ。 ん…あかぎさん。 ……あんなころも、あったんだなぁって。 ……。 …ん、……あ、…ぁ。 ……なにがいいたいのですか。 …あのころのわたしは、しらなかったんです。 …。 ……かがさん、もっとなまえをよんでください。 …あかぎさん。 ……もっと、つよく。 あかぎさん。 ……よびすてにして。 …。 ……おねがい、かが。 …あかぎ。 ……もっと、わたしがあなたのものだっておしえて。 ……いくらでも。 …、…ッ、あ…っ。 ……あかぎ。 かが……かが……か、が…ッ。 ………あなたを、あいしています。 ……もっ、と。 …あのころよりも、ずっと。 は…、や、ぁ……あぁ、ああぁぁぁ…ッ。 ……あかぎさん。 …。 …そんなかっこうで。 なにを、みているのですか。 …いっしょに、みますか? ……。 ねぇ、かがさん…。 …では、こちらに。 もどってきては、くれませんか。 はい……。 ……。 …ふふ、あつい。 ごめんなさいね。 …あやまることなんて、ないのに。 ん、あかぎさん…。 …すきよ。 ……それで。 ふふ…。 なにを、みていたのですか。 …これよ、これ。 しゃしん…? …そう、あなたとわたしがうつってる、ね。 ………ああ。 なつかしい…? それとも…? …いつみても、あなたがとてもきれいにうつっているわ。 …。 …あかぎさん? もう…かがさんは。 …。 …きれいに、とってくれたから。 うでは…まぁ、みとめています。 もう、かがさんったら…。 ……。 ん…かがさん? …しゃしんのなかのあなたも、きれいだけれど。 いま、このてでふれているあなたは…む。 ……。 …あかぎさん。 また、そのきになってしまうから。 ……。 ふふ、ふふ……。 …たのしそうですね。 あなたが、いとおしすぎて。 ……。 …ねぇ、かがさん。 ……はい。 …あした、まみやさんにいきませんか。 ……いいですね、いきましょう。 あしたは…。 …わたしの、ばんです。 ……はい、そうです。 ……。 …ね、かがさん。 なんですか…。 ……やっぱりもっと、ほしいわ。 ……。 …あした、おやすみだから。 ……いいわ、わたしもたりないみたいだから。 ふふ……。 …おかしいですか。 ……ええ、とても。 …わたしも、です。 ……ねぇ。 はい…。 …すき、すきよ。 だいすき…。 ……ええ、わたしもあなたがすきです。 ……。 ……あかぎさん。 …はい。 あなたはずっと、かわいいひとのままですね…。 ……。 …わたしの、かわいいひと。 ……かがさん。 …はい。 ……わたしをもっと、きもちよくさせて。 あなたにもっと、おぼれさせて…。 ……。 …ね。 ………ねむれなくなりますが、それでも? …いいわ、おやすみだもの。 ……ならば、おことばのままに。 空を、見上げる。 あの頃と変わらぬ、蒼と白。 視線を下ろして、前を見据える。 矢張りあの頃と変わらずどこまでも広がる、青と藍。 振り返る。 大将を討って喜んでいる仲間達。 其処に、私が必要としている者の姿は。 かつても、そこに在ったもの。 居て呉れた、もの。 もう一度、空を仰ぎ見る。 ああ。 空と、海は、あの頃と変わらず、其処に在り続けて。 “加賀”。 …“赤城”は、此処に居るわ。 此処、に…。 赤城さん。 …。 赤城さん、空に何か在りますか? …蒼と白が、あります。 然う…。 …どこまでも広がる、蒼が。 あの頃と変わらぬ、白が。 赤城さん。 …はい。 青は、此処にも。 …。 あの頃と変わらず、此処に。 …はい、此処に。 空と、海は、変わらないですね。 ……はい、変わりません。 ……。 ……。 …赤城さん。 …え。 …? どうかしましたか? 今、呼びましたか…? いえ…。 でも、声が…。 貴女を呼ぶ声、ですか? はい、私の名を呼ぶ声が…。 赤城さん。 …また。 ……。 確かに、私の名を…あ。 …。 …赤城さん。 加賀、さん…。 ……私は、此処に居ます。 あの頃と同じように…いえ、今は貴女の伴侶として。 ……。 貴女と共に歩む為に。 …はい、加賀さん。 …。 …。 …未だ、聞こえますか? はい…聞こえます。 然う…。 貴女の声が。 ……。 …聞こえるわ、加賀さん。 はい……。 赤城さん、加賀さん、帰りますよー。 …。 …帰りましょう、赤城さん。 はい…。 …。 ……。 …赤城さん。 いえ…何でもありません。 さぁ、帰りましょう。 君 来 タ リ テ 我 春 ヲ 知 ル 了 |