い、た…ッ!


   …ッ。


   うあー…。


   …。


   指、切ったぁ。


   …ナディ。


   久しぶりだなぁ、こんなの。


   …。


   エリス、絆創膏取って。


   …。


   エリス、聞こえてる?


   …なに。


   絆創膏、取って欲しいんだけど。


   見せて。


   つか見てどうするの。


   見たい。


   なんで。


   見たいから。


   …。


   ナディ。


   そんなにあたしの傷、見たいんかい。


   うん、みたい。


   どんな趣味だ。


   趣味じゃないよ?


   …む。


   見せてくれたら取ってあげる。


   んじゃ、自分で取る。


   …。


   ええ、と…わ。


   ……。


   こらこら。
   血、付いちゃうでしょーが。


   …。


   ほら、離す。


   ……。


   エーリース。


   …。


   あ。


   ……鉄の味?


   ……エリス。


   ん?


   なに、してんの。


   ナディが前にしてくれたこと。


   前…?


   雨宿り。


   …いつの?


   雨降った時の。


   そりゃそうだ。


   覚えてないの?


   んー…。


   …。


   …て、こらこら。
   そんなに舐めないでもいいから。


   ……おいしい?


   血が?
   んなわけないでしょうが。


   とくいたいしつ?


   あのなぁ。
   大体、舐めてんのはあんたでしょ。


   ……やっぱり覚えてないんだ。


   あたしの血、おいしい?


   ……ちのあじ。


   これでタコスの味がしたら面白いかもね。


   ……。


   ほら、エリス。
   離す。


   ……。


   んー…血、止まったみたいかな。


   …。


   …。


   …。


   …エリス。


   …。


   なに不貞腐れてるのよ。


   ……ふてくされてないよ。


   あ、そう。
   ならいいや。


   ……。


   絆創膏、絆創膏…。


   ナディのうすらタコス。


   わ…。


   ……。


   ありがとう、エリス。


   ……。


   …よし。
   けどこれでもやっぱ、少し痛いかな…。


   ……。


   お…。


   ……。


   なに、どうしたの。


   …どうもしない。


   …。


   …。


   …皮むき、出来ないんだけど。


   …。


   エリスってば。


   ……いいの。


   よくないでしょ。


   いいの。


   …。


   …。


   …おなか、すいちゃってるんだけどなぁ。


   …。


   仕方ないなぁ…。


   ……。















  U n a  
v i d a












   い…ッ!


   …。


   …て、あれ。
   痛くない?


   …。


   …なんだ、今の。


   …。


   まぁ、いっか。


   ……ナディ。


   んー?


   …。


   どしたー?


   切った。


   うん?


   指。


   ああ、指。
   て、指ぃ?


   血。


   うわ、痛そう。


   痛い。


   まぁ、そうよね。


   …血。


   とりあえず洗って。


   …。


   えと傷薬は、と。


   ナディ。


   絆創膏もまだ残ってた筈。


   ナディ。


   え、なに?
   て、垂れてるって。


   ……。


   ああ、もう。


   …。


   …?


   ……。


   …なに。


   …してくれない。


   何を?


   …。


   …。


   …。


   …痛い?


   …痛い。


   だったら早く…て、いたたたたッ。


   …。


   エリス、へたにいじらないの!
   痛いでしょうが!


   なんで?


   なんでって。


   なんでナディが痛いの?


   そりゃあ傷をいじられれば誰だって痛い…


   痛いのは私だよ?


   …て、あれ。


   …。


   ……なんで?


   知らない。


   …。


   …。


   …そういや、さっきも。


   さっきも、何?


   …いや、まさかねぇ。


   何がまさかなの?


   …。


   …。


   …うん。
   気のせいだ、気のせい。


   …。


   それより手当て、しないとね。


   …。


   ほら、エリ


   舐めて。


   ……はい?


   血。


   …。


   前みたいに。


   …いつの話かしら?


   …。


   わ。


   舐めてくれたら治るから。


   いや、治らないでしょ…。


   いいの。


   良くないって。


   …。


   エリス。


   …。


   …。


   …。


   ……あーもう。


   …。


   痛々しい。


   …あ。


   ……。


   ……。


   ……あくまでも応急処置なんだからね、これ。


   …ナディ。


   …なに。


   おいしい?


   はぁ?


   私の血。


   …。


   おいし?


   んなわけないでしょって前にも言った。


   …。


   …雨宿り。


   …思い出した?


   …思い出した。


   あん時もあんたは…


   ナディ。


   …何よー。


   特異体質?


   だからだな。


   …えへへ。


   …。


   治った。


   いや、治ってないから。


   治ったよ?


   治ってないから。


   治ったの。


   治ってない。
   ほら、ちゃんと手当てするから。


   …ナディ。


   もう舐めないわよ。


   うん、もう言わない。


   …じゃあ、今度はなに。


   好き。


   ……。


   大好き。


   …幸せ者なのかね、あたしは。


   そうだよ。


   …あんたが言うな。
   恥ずかしい。


   だって、私が幸せ者だから。








   で。


   …で、って何よ。


   貴女達の惚気話を聞いてるほど暇じゃないのだけど。


   はぁ?


   思わなくても新婚さんだものね。


   新婚って。


   今にして思えば、あの旅すらも婚前旅行だったわね。


   はぁ?
   てか何言ってんのよ、あんた。


   仲良し夫婦。


   ……。


   散々、見せ付けられたから。


   …このやろ。


   ま、指輪もまともに用意出来なかったけれど。
   寧ろ、それは未だに。


   …う。


   愛があれば良いのね、貴女達の場合は。


   てか人が気にしてることをさらっとだな…。


   あら、気にしてたの?


   …そりゃあ。


   けどあの子はそれでも喜んでくれて、大事にしてくれてる。
   違う?


   …そう、だけど。


   まぁ、愛じゃごはんは食べられないけれど?


   ……。


   ちゃんと働いてね?


   …分かってるわよ。
   てかなんであんたがいるのよ。


   たまたまよ。


   たまたまかよ。


   ええ、たまたまの視察。
   おかげで惚気話を聞く羽目になったけれど。


   別に惚気ていたわけじゃ


   世間一般では惚気と言うのよ。
   そういう話は。


   ……。


   はいはい、ご馳走様。


   …あたしが言いたいのは


   ところで。


   …あ?


   いつからなの。


   …。


   覚えている限りで良いわ。


   …多分、式の前ぐらいから。


   ここ半年ぐらい、かしら。


   最初は気のせいかと思ったんだけど。


   気のせいでは済まなくなってきたと。


   でもいつもじゃないのよ。


   ならば、頻繁ではないのね?


   …けど。


   …。


   多くなってきているような気がする。


   何か心当たりはある?


   …分からない。


   然う…。


   …。


   ねぇ、ナディ。
   あの時の事、どこまで覚えてる?


   あの時?
   どの時よ。


   貴女達が死んだ時。


   ……。


   思い出したくないって顔ね?


   …。


   エリスを撃った事、今でも気にしているのね。


   ……。


   …私には詳しい状況は分からないけれど。


   …ブルーアイズ。


   …。


   その時の話をするという事は。
   関係、あるのよね。


   …憶測、だけれどね。


   聞かせてもらおうじゃない。


   …。


   話しなさいよ。


   ……私達が駆けつけた時。


   …。


   貴女達は…特に貴女はエリスを慈しむようにして死んでいた。


   …。


   私は、無いと思っていた魔女の力を発動させてエリスを生き返らせた。
   けれど貴女を生き返らせる事は出来なかった。
   力を使い果たして気を失ってしまったから。


   …。


   そんな貴女を生き返らせたのは…分かるわよね。


   …エリス。


   そう。
   多分、それが要因。


   …と、言うと?


   エリスは貴女に分けた。


   …何を。


   自分の生命力。


   ……。


   だから貴女達は誰よりも近しい存在になった。
   文字通り、ね。


   …でもなんで今更。


   さぁ、それは分からないわ。
   馴染んできたのか…それとも。


   …。


   何?


   …別に。


   面白く無さそうな顔をしているけれど。


   …。


   言っておくけれど。
   私にはそういう症状は無いわよ。


   …何も言ってないんだけど。


   私は確かにあの子の傷を癒したけれど。
   あとはあの子の持っていた力によるものだと思うの。


   …でも死んでたんでしょ。


   ええ。
   心臓を撃たれて、ね。


   …。


   だけど貴女の場合は…外因によるものじゃなかった。
   詳しい事は分からないけれど…。


   ……。


   …エリスはね。


   …。


   貴女を愛おしそうに抱いたそうよ。
   手をかざすだけじゃなく貴女の躰を抱き締めて…。


   …覚えてる。


   …。


   …すごく、あったかかったから。


   ……。


   …。


   …まぁ、所詮は憶測だけれどね。


   でもなんで今更…。


   それは分からない。


   …。


   …気になるのね。


   もしも本当にあたしに分けたとしたら。
   エリスは大丈夫なの。


   …。


   だから、エリスは…。


   貴女はいつだって自分よりもあの子の事なのね。


   …。


   良いコンビ…いえ、カップルね。


   …うるせ。


   死なば諸共。


   は、何それ。


   死ぬ時は一緒。
   まさにぴったりでしょう?


   …笑えない。


   本気だから?


   ……。


   …。


   ……あたしはエリスに生きてて欲しいだけよ。


   それはあの子も同じ。
   だからあの子は貴女がいない世界を選ばない。


   …。


   …。


   …時、に。


   …なに。


   エリスの痛みが貴女に伝わるとして。
   逆はあるの?


   ある。


   …。


   だから話した。


   そう。


   …。


   ますます、離れられないわね。


   そんなつもりも無いから。


   …。


   ……さて。
   仕事しないとどっかの誰かが報酬をくれないから。


   ナディ。


   んー?


   若しも、これ以上


   別に構わない。


   ……。


   エリスの痛みだから。
   分かるなら、それで良い。


   …。


   …何よ。


   結局、最後まで惚気話だったから。


   だから違うって言ってる。


   分からないのは当人達だけなのよね。


   …。


   末永く、お仕合わせに。


   余計なお世話だ。


   それで、話は変わるけれど。


   …あ?


   手、どうかしたの?


   手?


   左手。
   ずっと触っているようだけれど。


   別に。
   なんでもない。


   然う?
   なら、良いけれど。


   ……。








   …。


   …ナディ?


   お。


   どうしたの?


   ううん、どうもしない。


   でもぼーっとしてたよ?


   あんたがいなかったから。


   私がいなかったから?


   うん。


   そっか。
   ただいま、ナディ。


   おかえり、エリス。
   お疲れさん。


   ありがとう。
   ナディもお疲れさま。


   ん、ありがと。


   今日は忙しかった?


   うん、それなりに。
   そっちは?


   私もそれなり。


   そっか。


   ごはん?


   うん、お腹空いた。


   じゃあ作るね。


   その前に。


   ん…。


   …熱は、大丈夫そうね。


   …うん、大丈夫。
   ナディは…。


   今日は調子が良かった。
   痺れもなかったし。


   …そっか。
   良かった…。


   …ん。


   ごはん、作るね。


   いや、今日はこれ。


   タコス?


   そう。


   ナディが作ったの?


   うん、あたしが作った。
   今日はヤギ肉を貰ったんだ。


   やった。


   ヤギ肉?


   違うよ。


   ふぅん?


   ナディのごはん、好き。


   ふふ、ありがと。
   じゃごはんにしよっか、エリス。


   …。


   ん、なに?


   ううん。


   じゃ、おいで。


   いえっさ。








   ……。


   …ナディ。


   ん…。


   今日のナディはあまえんぼ…。


   …そうかも。


   …。


   …。


   …いつもあまえんぼ。


   …あんたに言われるのはなぁ。


   ……。


   …。


   ……何かあったの?


   …何かって?


   分からない。


   …。


   だって一緒にいなかったから。


   …そうだね。


   …。


   …。


   …ん。


   ……。


   あまえんぼナディ…。


   ……うん。


   …。


   …。


   …ねぇ、ナディ。


   …。


   ナディはあまり話してくれないから…。


   …話してるじゃない。
   今だって…。


   ううん、違うの。


   違うってなにが。


   …ナディは。
   自分の事、あまり話してくれなかったから。


   …そうだっけ。


   そうだよ。


   …。


   …そうなの。


   ……そっか。
   エリスが言うなら…そうだね。


   …。


   …でも。
   今じゃもう、大分話したつもりなんだけどな…。


   …もっと知りたい。


   まだあったかな…。


   私の事、どう思ってるのか…。


   …そんな事?


   そんな事じゃないよ。


   …。


   …じゃないよ、ナディ。


   ……そうだね、ごめん。


   …。


   ねぇ、ナディ…。


   …好きよ。


   …。


   変わらないから…ずっと。


   …。


   …エリス。


   …。


   …?


   …。


   …エリス?


   …。


   エリス、どうし


   痛みのこと、話したの?


   え…。


   …ブルーアイズに。


   どうして…。


   …分かるよ。


   エリス…。


   …。


   …うん、話した。


   …。


   …いや、だった?


   …。


   …。


   …ナディ、は。


   …うん。


   私の事、大事にしてくれてる…。


   …当たり前でしょ。


   でもね、不安になる時があるの。


   どうして。


   …私の事で、何か考えてる時があるから。


   好きな人を想うのは自然な事じゃないの…?


   そうだけど…違うの。


   …何が言いたいの?


   …くせ。


   くせ?


   …私が創られた存在だって知った時も。
   ナディ、ずっと私を見てた。
   見てただけだった。


   ……。


   …一人で、抱えてた。


   …あの時は。


   …。


   言ったらエリスがいなくなってしまいそう、で…。


   …。


   …。


   …いや?


   え…?


   痛みが伝わるなんて、気持ち悪い…?


   …そんな事無いよ。


   けど、いやだよね。


   嫌じゃない。


   …本当の事を言っても良いよ。


   言ってるよ。


   …。


   …言ってるのよ、エリス。


   …。


   …。


   …。


   …あたしは、さ。


   …うん。


   これから…エリスが感じるであろう痛みを知りたいと思ってる。


   …。


   …分けるとは違うだろうけど。
   それでも…あたしは分かりたい。


   …。


   だから…嫌じゃない。


   …だめ。


   え…。


   私はナディに痛みをあげたくない。
   感じて欲しくない。


   ……。


   そう、思ってるのに。


   …エリス。


   …それなのに。


   …。


   嬉しいと思ってしまうの。


   …。


   ナディの痛みが私に伝わって…私の痛みが、ナディに伝わって。
   二人は一つなんだって思うと…嬉しいの。


   …夫婦だから。


   …。


   仲良し夫婦、だから。


   あ…。


   あたし達はこれからもっと、似ちゃうのかもしれない。
   全然、違うと思っていたけど…ね。


   …けど。


   あたしだってさ、あたしの痛みがエリスに伝わるのは嫌。
   エリスがあたしのせいで痛がるなんて、嫌。
   でも…。


   …。


   …嬉しいって、どうしても思っちゃうの。


   ナディ…。


   一つなんだって…思うと、凄く嬉しい。


   …。


   ね…エリス。


   …うん…うん。


   ……。


   ……。


   …ありがとう、エリス。


   …。


   あたしに貴女の命をくれて。


   …ナディ。


   エリスと生きる事が出来て…嬉しい。


   …。


   …くれたんでしょう?
   あの時…。


   ……うん。


   当たり、か…。


   …あたり?


   あいつがね、言ったのよ。


   …ブルーアイズ?


   憶測って言ってたけ、ん。


   …。


   …エリス。


   ここで、他の女の話をしないで。


   …。


   …しないで、ナディ。


   ……ごめん。


   …。


   …。


   …くれたのは。


   …?


   ナディもだよ。


   …え?


   博士が死んで。
   私には何もないって思ってた。
   思い出すらも私には残されていなかったから。


   …。


   でも、ナディが私を見つけてくれた。
   ナディがいてくれたから…私は生きようと思った。


   …。


   いやだった。
   望んでもいないのにこんな力を持つ自分が。
   貴女を傷つけてしまった力が、自分が、どうしようもなくいやだった。


   …。


   でも…それでも、貴女はいてくれた。


   …。


   魔女の力なんでどうでも良いって…何があっても私を一人にしないって、言ってくれた。


   …。


   …私に愛を教えてくれた。


   ……。


   それから…。


   ……。


   …だから。
   ナディもくれたんだよ。


   ……エリス。


   私、ナディが好き…ナディと一緒に生きられて、嬉しい。


   …あぁ。


   ナディ、ナディ…。


   …エリス。


   触って、ナディ…。


   でも…。


   …さわって。


   …。


   ……ん。


   エリス…。


   …ナディ。








   …。


   …。


   …あー。


   ……ふふ。


   …。


   …。


   …なにがおかしいのよ。


   ナディといっしょにいるから。


   …なんだそりゃ。


   …。


   …。


   …ねぇ、エリス。


   なぁに?


   からだ、大丈夫…?


   …。


   エリス…?


   …たしかめてみる?


   …。


   みる…?


   …と言うか、どうやって。


   こうやって。


   …。


   …。


   ……え、と。


   ……つたわった?


   …。


   …。


   …うーん。


   やっぱり、ナディはうすらタコス。


   …すいませんねぇ。


   うそ。


   …。


   ……大丈夫だよ。


   …初めからそう言えって。


   伝わってない、から。


   …え?


   いたいの。


   ……。


   ん…?


   まさか、エリス…。


   …。


   エリス。


   …冗談。


   …。


   …えへ。


   そういう冗談は


   ん、ごめん。


   …大丈夫なのね?


   ん、だいじょうぶだよ…。


   ……なら、いい。


   …。


   …気持ち悪くない?


   だいじょうぶ。


   …そか。


   …。


   …。


   …ねぇ、ナディ。


   うん?


   …ここ。


   ……。


   わかる…?


   …うん、わかるよ。


   ほんとう…?


   …ほんとう。


   そっか、よかった。


   …。


   …ね、ナディ。


   …なに?


   たのしみだね。


   …。


   …たのしみ。


   ん、そうだね…。


   …えへへ。








   ・








   でも、さ。


   …?


   なんで今頃なんだろ。


   …いまごろ?


   だってさ、あれからもう何年だっけ?


   …。


   結構、経つでしょ?


   それだけ一緒にいたんだね。


   …。


   ん?


   …小首を傾げるな。


   なんで?


   …なんでも。


   どうして?


   …。


   ナディ?


   いや、だから。


   …。


   ……ぎゅうってしたくなる。


   すれば良いのに。


   …。


   ん…?


   …話が進まなくなるでしょうが。


   ぎゅうっとしても、進むよ?


   …。


   進むの。


   …こらこらこら。


   えへへ。


   …あーくそ、かわいい。


   ナディは素直。


   …。


   正直者。


   ……どうせ、欲望に忠実って言いたいんでしょ。


   そうなの?


   ……。


   …墓穴?


   ……ちくしょ。


   あの時、ナディは十代?


   …あ?


   エリスも。


   …まぁ、そうね。
   同い年だって知ったときはちょっと複雑だったけどね。


   若かったね?


   今も若いって。


   でも腰が痛いって。


   それはあの女がこき使うから。
   それに寝れば治る。


   痛くてもするし?


   …。


   やり方次第。


   …。


   ん?


   …それはあんたが、と言うかやり方とかゆーな。


   今も若い二人だから。


   …ああもう、変なコトばかり。


   最近は前ほどじゃなくなった。


   …そりゃあ、ねぇ。


   …だから昨日は嬉しかった。


   ……。


   ……えへへ。


   と言うか最初の話はどこへやった。


   あるよ?


   うん?


   この子が。


   …?


   ふたつを、ひとつに繋げてくれたの。
   きっと。


   …。


   ひとつ。


   ……。


   ナディ。


   …じゃ、そういうことにしとこうかな。


   だってそうだよ?


   言い切ったな?


   うん、言い切った。


   …。


   えへ。


   …まぁ、いっか。
   んじゃそれで…。


   ナディ…。


   …今朝はまだ、でしょ?


   うん…。


   エリス……。





   そろそろ、良いかしら?





   …え。


   あ、ブルーアイズ。


   朝からお盛んな事で。
   でも起きていて良かったわ。


   つ、つか!


   お早う、二人とも。


   おはよう。


   いつから…!?


   ノックはしたわよ。


   そういう問題か。


   ええ、そういう問題。
   大体、この部屋は店の仮眠室だから。


   そうだけど、だからって


   珍しいのよ、こういう形態は。
   しかも部屋にも施錠が出来るし。


   いや、どうでも良いし。


   でもそのおかげで雨風凌げるから良いでしょう?
   ねぇ、エリス。


   うん。
   ありがとう、ブルーアイズ。


   どういたしまして。


   で、どうしてあんたが


   他の人の方が良かったかしら?


   …う。


   安心しなさい。
   誰にも近付かないように指示はしてあるから。
   鍵があるから大丈夫だとは思うけれど。


   そうだ、鍵!
   鍵は…


   合鍵。
   一応、管理者だから持っているのだけど。


   …あんた、最低。


   声を掛けてもノックをしても返事が無かったら、心配になるでしょう?


   …つか盛んって何よ、盛んって。


   そのままの意味。


   …。


   ふふ。
   まぁ、その調子なら今日の仕事も大丈夫ね。


   …で、朝からなんの用よ。


   エリスを迎えに。
   でもその調子だと朝食も未だみたいね。


   うん、未だ。


   まぁ、時間は未だあるから良いけれど。


   なんであんたが迎えに来んのよ。


   本日の業務運行について道すがら話そうかと思って。
   私、今日はオフィスに居ないから。


   …そうなの?


   そうみたい。


   ええ、然う言うことなの。


   ……。


   とりあえず、朝食を摂ったら?
   摂らないとまともに動けないでしょう、貴女。


   人をばかの子みたいに


   そもそも朝食は一日で最も大事な食事とされているのよ。
   知らなかった?


   …。


   ごはん、作るね?


   ……うぅ。


   ナディ?


   …お願いします。


   あらあら、良いわねぇ。


   …と言うか。


   うん?


   とりあえず出てけ。
   今直ぐ出てけ。


   はいはい。
   じゃあまた後でね、エリス。


   うん、また後で。


   …。


   …早く出てきなさいよ。


   ねぇ、エリス。


   なに?


   体調、大丈夫?


   うん、大丈夫。
   でもなんで?


   ナディが心配しているみたいだから。


   は?


   ねぇ、ナディ。


   …。


   あまり無茶させては駄目よ。


   あんたに言われるまでもない。
   つかなんなのよ、あんた。


   ふふ、なら良いわ。
   じゃあ、また。


   …たく。


   あ、そうそう。


   まだあるんかい。
   いいかげん、朝ごはんにしたいんだけど。


   くいしんぼ。


   エリス。


   ふふ。
   私、用意してるね。


   エリスも聞いて。


   私も?


   ナディ。


   何よ。


   貴女の口座、使えるようにしておいたから。


   …は?


   口座。


   ……。


   その顔は覚えていなかったわね。


   …あ。
   まさか


   私も忘れていたのだけれど。
   ふと、思い出したのよ。


   あんたのせいで、あたし達がどんだけ


   それが仕事と言うものだから。
   意外と貯めていたのね、貴女。


   うるさい、余計なお世話だ。


   兎に角。
   然う言うわけだから。


   ブルーアイズ!


   忘れていた事は謝るわ。


   そんなのはどうでもいい。


   うん?


   エリスのドレス代、返す。


   良いのよ、急がなくても。


   返すって言ったら、返す。


   …然う。
   式は?


   …それは、


   焦らなくても良いけれど。
   貴女は必ず、返してくれそうだから。


   当然。


   ふふ。
   じゃあエリス、そういうわけだから。


   うん、分かった。








   たく、朝っぱらから胸糞悪い…。


   だめ。


   お。


   ごはん食べてるから。


   …ごめん。


   ナディ。


   ん。


   手、大丈夫?


   んー…まぁ、大丈夫。
   あんたは…。


   …。


   …顔色も悪くない。
   でも少しでも良くないと思ったら、無理しないこと。
   あいつに言えば多分、大丈夫だろうから。


   いえっさ。
   ナディも無理しないでね。


   いえっさ。


   良かったね。


   うん?


   口座。


   …うん、まぁ。


   ふふ。


   …あつッ。


   …ッ。


   あ。


   …スープ。
   熱いから、気をつけてね?


   …。


   私は火傷、しないけど。


   …はい。


   ねぇ、ナディ。


   んー?


   おいしい?


   うん、おいしい。
   エリスのごはん、好き。


   うん。