|
ん〜…。
…エリス。
なぁに？
地図、出して。
ちず？
で、見て。
いえっさ。
…。
…みたよ？
この先に町らしいものは？
…んー。
人家がありそうなところでもいいから。
ないよ？
…。
このさきには。
…オーケイ。
ところで、エリス。
なぁに？
風、冷たくなってきたと思わない？
…。
…。
…おもう。
そっか。
もどるの？
戻る。
どうして？
どっちみち、この先には進めないと思うから。
すすめない？
空が面白いことになってる。
…はれてるよ？
でも、いつもとは違う。
…。
やばい感じがすごいする。
…もどる？
全速で。
巻き込まれたら、やっかい。
いえっさ、ナディ。
よし。
んじゃあ……
L a t o r m e n t a y e l s o l .
…ああもう。
まにあわなかったね？
くそぅ…。
ぬれちゃった。
ずぶ濡れって言うのよ、これは。
やど、あいててよかったね？
まぁ、ね。
ぬれちゃったけど。
風邪、ひく前にあったまらないと。
みずもしたたるいいおんな？
ありがとう。
エリスのこと？
自分でゆーな。
ナディがおもったこと。
思ってないから。
おもってないの？
思ってません。
…ざんねん。
シャワーは、と。
…。
…やっぱり、お湯は出ないよなぁ。
やっすいもんな…。
ぬぐ？
…とりあえず、濡れたままだと風邪ひくしね。
…。
エリス、鍵は
したよ。
付いてて良かったねぇ。
ね。
体、拭かないと。
これじゃ寝ることも出来ない。
タオル。
…と言うか、布切れ？
ぬのきれ？
……まぁ、ないよりはましか。
ましだね。
つかおっきいな、これ。
よかったね。
うん？
だいはしょうをかねるんだよ？
ま、そうだけど。
そんな言葉、よく知ってたわね？
えへん。
別に褒めてないから。
ほら、エリス。
なに？
髪、ふいたげる。
…。
顔、青くなってる。
寒いんでしょ？
…だいじょうぶだよ。
だめ。
ナディは
あんたが先。
拭いたら、ベッドに入る。
いい？
…。
ほら、早く。
…いえっさ。
もうちょっと早く気付いてれば…な。
……ナディ。
ん、どした？
まだ寝てないの？
…うん。
早く寝なさいよー？
…ナディ。
んー？
そっち、いってもいい？
こっち？
だめ？
んー…。
……。
…仕方ないなぁ。
いい？
ただし。
それ、ちゃんと羽織ってくるのよ。
薄っぺらくてもないよりはマシだから。
いえっさ。
…。
…かぜ、すごいね？
そうね。
…。
ん、なに？
…いい？
え？
…お。
…。
…こらこら、狭いって。
へいき。
そりゃ、あんたはね。
…こうしてればあったかいよ？
…。
こうしてたほうが、あったかい。
…。
…ナディ？
シャワー、お湯も出ないくせにさ。
不釣合いな椅子よね、これ。
ふつりあい？
そう、不釣合い。
そうなの？
こんな椅子なんかいらないから、お湯出せっての。
…。
…おかげで二人で座れちゃうじゃない。
…。
…なに。
なんでもない。
あ、そ。
うん、そう。
…。
…かぜ、すごいね。
うん。
…。
…だから、眠れなかった？
だから？
音、うるさくて。
…。
今夜には過ぎると思うんだけど。
…ねぇ、ナディ。
うん？
どうしてわかったの？
どうしてって？
あらし。
…まぁ、長年のカンみたいなもんかな。
かん？
そ、カン。
ただの雨なら気にしないんだけどね。
…。
匂いがする、とでも言うかなぁ。
におい？
嵐の匂い。
…。
…ん？
みずのにおいしかしないよ？
…今は、ね。
すごいね？
そうでもない。
長く旅してるとこんなもんよ。
エリスもそうなる？
…。
なる？
…長くしてれば、なるかもね。
そっか。
…なんで嬉しそうなの？
ナディといっしょだか
…。
…。
…と。
……。
…怖い？
こわくないよ。
…本当かぁ？
ほんとう。
…また、くるよ。
…ッ！
……怖くない、ね。
…こわくないよ。
じゃ、離れてくれる？
…。
ん？
…や。
怖くないんでしょ？
…はなれたら、あったかくない。
…。
…ぅ。
……怖いなら怖いって言えばいいのに。
こわくないの。
…はいはい。
……。
素直に言ったら…肩、抱いてあげるのに。
こわい。
…。
…こわい。
……最初からそーいえ。
…。
でも、そっか。
エリスにも怖いものがあるんだ。
…びっくりしただけ。
まだ言うか？
…うそ。
たく。
……ぅ。
…大丈夫。
…。
嵐は、いつか、過ぎる。
ずっと続く嵐はないから。
…。
…だから、大丈夫。
……うん。
…。
…。
…でも。
…？
今日の嵐は少し、ひどいかな。
…。
…この宿、意外に頑丈そうだから大丈夫だとは思うけど。
…おゆはでないけど？
そう、お湯は出ないけど。
なんで出ないのかな。
…ふふ。
なぁに。
ナディ、しつこい。
だってさぁ。
ふふ。
…。
……ナディ。
まだ怖い？
ナディがいるから…へいきだよ。
…なら、いいけど。
ん…。
雨の匂いのする砂漠ってのがあってね…。
…。
エリスと逢った、あの町より北に…。
…。
乾いてる大地が、あっという間に潤うの。
茶色だった荒野が、緑になる…。
…あっというま？
本当、一瞬のようでね。
…。
うっかりしてると道路が川のようになって通れなくなる、とか。
どうろが？
もう、流れが半端なくてさ。
車でも無理なのに歩きでなんて渡ったら完全にのまれる。
だからその水のイキオイが引くまで、軽く二時間は通れない…。
ふぅん…。
いつもは乾いてひび割れてるってのにさ…その時だけ川になるとか、ね。
川じゃなかったなんて、信じられないくらい。
…みたこと、あるの？
うん、あるよ。
だからこうやって話してるんじゃない。
…ん。
遭ったコトもあるかな…。
あった…？
…雨風もひどいけど、雷はもっとひどくてね。
あの時は…本気で、死ぬかと思った。
しぬ…。
頭のすぐ上で鳴るのはいいとしても…。
…。
目の前で落ちた時は…駄目だと思った。
…だから？
ん…？
だから、わかるようになったの…？
…少しは、あるかもね。
でもあの嵐は読めないから。
おまけに気付いた時には手遅れ。
…。
そこに住んでる人たちにさえ、読めないものだから。
あたしなんかに分かるわけない。
…でも、わかったよ。
あれは、こんなんじゃない。
…。
…出来ればもう、遭いたくない。
……ナディ。
…。
…こわい？
一緒にするな。
……つよがり。
…。
エリスがいるよ。
…だから？
いるから。
…。
…。
……そろそろ、寝なよ。
ナディがねるなら。
…。
…。
…あの嵐は。
…。
きれいだった。
…きれい？
自分がいるトコはそれはもうひどいってのにね…。
うん。
…ちょっと向こうに目を見れば、真っ赤な夕焼け。
あめなのに？
ほんの一部だけ、しかも本当に一時だけなの。
他はなんてこと、ない。
…。
思えば、かなり運が悪かったなぁ…。
でも、きれいだったんでしょ？
…。
…。
…うん、きれいだった。
後にも先にも、あんな夕焼けを見たのはあれだけ…。
…いいな。
…？
エリス…？
わたしも、みたい。
…悪いことは言わないからやめといた方がいい。
あの時の雷はこんなもんじゃ…
ナディとみたい。
…。
…みたい。
……怖がってるくせに。
…。
…なに。
ううん。
……。
…。
…だからもう、イヤだって。
あんなのに巻き込まれるのは…。
…よめないんでしょ？
…。
だから、あうかも。
…勘弁してよ。
だいじょうぶ。
…。
…エリスが、いる。
…。
いる。
…魔女の言葉は重いなぁ。
…。
……ごめん。
…ナ、
…。
ん、ん…。
……エリス。
…めずらしいね。
…
ナディから。
…そんな時だって、あるわよ。
…。
……嫌なら、いい。
そんなわけ、ない。
…。
…ない、から。
もっと…。
…は。
ぅ、あぁ…。
……エリス、体重こっちに預けて。
…。
…じゃないと、もたない。
…。
エリス。
……や…てる。
…。
で、も……ぁんッ。
…く。
あ、ぁ、ぁ……。
…だから。
だっ…、て…。
……。
ナディ…ナディ…。
……しがみついて。
…で、も。
……できるだけで、いいから。
……。
……あたしが、支える。
ナ、ディ…。
…あんたが、あたしを支えてくれてるように。
わ、たしが…。
…だから。
ナディ、ナディ…。
……呼びすぎ。
…よんで、くれない。
呼んでる。
…もっと。
あんたのもっとは終わりがない。
…わたしのなま、えは。
…。
ナディが…、よんでくれるために、あるから。
…。
わたしも…。
…。
…あるんだ、よ。
……ばーか。
う、ぁ…ッ！
…どんだけなんだ、あたしは。
エリスの、こいびと…。
…。
……ふう、ふ？
は…。
……。
はは。
……おかしくない。
おかしいわよ、十分。
…。
……べた惚れなんだ、結局。
べた…。
…あたしは、さ。
ナディ、が…。
……たく、やんなっちゃうな。
だれに…？
…は？
だれに、べたぼれなの…？
…おい。
おしえて。
お。
おしえて、ナディ。
……今更聞くか、それ。
ききたい。
…こんなコトになってるのに。
かんけいない。
…いや、関係大ありでしょ。
できるものだから。
…あ？
じゃ、なくても。
……あのなぁ。
あたし、言ったでしょうが。
…。
……あんたが好きだって。
…だめ。
な。
…いうまで。
うごいちゃ、だめ。
……マジかい。
いって。
ちゃんと。
……ああもう、この魔女は。
…。
…。
は…は…。
…苦しそう。
……ぅ。
あのさ、思うんだけど。
…。
…あんたが苦しいだけじゃないの。
…。
……終わらなくて。
だ、から…。
…このまま、言わなかったら？
…。
あたしは
そんなこと、ない。
…。
……ない、の。
…強がって。
ナディだっ、て…。
…あたしだって、なに。
…くるし、い。
…生憎。
あたしは男じゃないから。
…。
……出せば終わりじゃ、ないのよ。
……。
それくらい、分かってるでしょうに。
…。
…ねぇ、エリス。
それでも。
…っ。
……ナディも、くるしい。
……。
あ、う…。
…この、いじっぱりめ。
それ、は…ナ、ィ…だ、よ。
…。
あ、だめ、うごいちゃ…。
…苦しいんでしょ。
や、や…いやッ。
…。
…は…、は…ぁ。
…エリス。
…ちゃん、と、きか、せて。
じゃない、と…。
…そんなに。
…。
……エリス。
ナ…
……もう、無理なんだけど。
ああん…ッ！
…。
ん、は…んん。
……。
は…、いじ…っぱり。
……うるさい。
いじわ、る…。
…。
……いじわる。
…。
……うすら、タコ…ッ！
…。
……ナ、デ…ィっ！
……あたし、は。
ナディ、ナディ…ッ。
だから呼びすぎ。
それから…。
あ、あぁぁ…ッ！
…限界だったなら、強がらなきゃいいのに。
あぁ…ぁぁ…。
…気持ちいい？
……。
ねぇ、エリス…。
……う、ん。
…。
…きもち、いい…いいよ、ナディ…。
……。
も、っと…ひゃぅ！
…。
……ナ、ディ。
…あんたも。
…？
……耳、赤くなるんだ。
…あ。
つか、耳だけじゃなくて…
や…。
…全部、なのかも。
……ば、か。
…いつもいじめられてるから、たまには。
ばか…。
エリス…。
…す、き。
…。
ぜん、ぶ…、すき…だいす…き。
…うん。
あ…ッ！
…。
…そと。
…。
……すこし、しずかになったね。
まぁ、ね。
…ふぁ。
…。
……んん。
寝るなら、ベッドで。
…や。
我侭ゆーな。
…。
…こら、寝るな。
…ねぇ。
…。
さっきの、ちゃんときかせて。
…は？
さっきの…こたえ。
こんどはちゃんと…。
…。
……ナディ。
…。
…。
…エリス。
もう、こわくないね…。
…あんたがね。
ううん、ナディも。
だから、一緒にするなって。
…あめ。
あ？
…やむ？
…。
やむ？
…多分、もうじき。
風も弱くなってきたから。
…でもまだ強いよ？
さっきよりは、弱いでしょ。
…。
…少なくとも、あんたが吹っ飛ばされるほどじゃない。
エリスはナディよりかるいから。
…そうだけど、怒るぞ。
ナディのほうがおおきい。
だから
だから。
…。
…わたしはナディのなかにいられるの。
……。
だいすき…。
…なんじゃそりゃ。
…。
…とにかく。
寝るなら、ベッドで。
雷、もう鳴ってないから大丈夫でしょ。
…ふふ。
なに、その笑い。
…ナディがだいてくれたから。
…。
ぜんぜん、きこえなかった。
……あーそうかい。
…。
…。
…あつい？
うるさい。
寝るなら、ベッドで寝ろ。
まだ、きいてないよ…？
は？
…こたえ。
…。
…。
……あんたに、よ。
わたしに、なに？
…だから。
だから…？
…顔、近づけるな。
ちかくでききたい。
…十分、近いでしょーが。
もっと、ちかくで。
これ以上、どうやって。
…こうやって。
…っ。
……こうやって。
…息が、かかる。
このきょりでも、たりないの。
…どうしたいのよ。
でも、ひとつにならなくてもいいの。
…わけ、わかんない。
なりたい？
…。
ナディは…なりたい？
…触れなくなるから、なりたくない。
…。
ならなくて、いい。
…。
…あんたは？
いっしょ。
何と。
ナディと。
…。
…いつだって、ナディと。
…。
…いっしょ、だから。
……。
……。
……あー。
…きめた。
…。
こんやは、このまま。
…勘弁してくれ。
エリスもいす。
折角、お金払ってんだからベッド使えって。
つかわなかった。
は？
いすで、だった。
…。
…わるくない。
……あーもう、悪かったわよ。
わるくないっていったよ？
そうじゃなくて。
ん？
だから、その…コトに及んでってコトよ。
だから、わるくないよ？
…。
もっとほしがって…。
……耳元で言うなって。
…。
…。
…こたえ、おしえて。
……。
きいたら、ねる。
…ここで？
きめたから。
…言わなかったら？
ここ。
言っても？
きまったこと。
…。
…。
…あー、む。
…このくちびるで。
…。
ちゃんと…つむいで。
……。
…。
…恥ずかしいっつの、もう。
…しってる。
…。
…。
…どっちにしろ、このままなんでしょ。
けっていじこう。
…どうしたって、あたしはあんたのベッド代わりか。
ちがう。
ナディはナディ。
ベッドじゃない。
……。
…ベッド、じゃない。
…。
ふ…。
…。
まだ、したいの…？
…しない、もう。
いいよ？
…しないって。
キスしたのに？
…。
…いいよ。
眠そうな目ぇして。
ねむくないよ。
欠伸、してたくせに。
さんそがたりないせい。
さんそ？
あくびがでるの。
……。
そうなの。
…あ、そ。
…。
…つかさぁ。
なに…？
…正直、すごく照れくさい。
ナディははずかしがりやだから。
…だけど。
…。
あー…やっぱ、照れる。
…まってる。
…。
ナディがいってくれるまで。
…言わなかったら、どうするの。
ううん。
…。
…ナディ、だから。
わたしの…。
…ん。
だいすきなひと…。
……。
あめ、やんだよ。
…まだ、降ってるわよ。
ここ。
…部屋の中で降ってたら大変だっつの。
ちがう。
…。
……ここ。
…。
たいようのおかげ。
…。
…たいようが、わたしをみつけて。
だきしめてくれたから。
……エリス。
…。
まぁ、なんだ…。
…ナディのいいところ。
え…？
でも、わるいところ…。
……どっちだ。
ないしょ…。
…。
…。
…え、と。
…。
エリス、あのさ…。
…。
…？
……。
エリス…？
……んん。
…。
ナ、ディ…。
……。
……。
…ベッドに行けって、言ったのに。
…。
……雨、また少し強くなってきたな。
…。
大丈夫だとは思うけど…寝らんないかな、今夜は。
……。
…道。
大丈…ふぁぁ。
…。
…酸素が足りない、ね。
ん……。
………エリス、さ。
…。
あたしは、あんたに…
…。
エリスに…べた惚れしてる、から。
…。
いないなんてもう、考えられないから…。
…。
だから…絶対に、離さない。
…。
離さない。
…いえっさ。
…。
…。
……今更だ、ばか。
……ん。
・
…。
…。
おはよ。
…。
起きたら？
…おはよう。
よく寝られた？
…うん。
こんなトコで？
ねられたよ。
あ、そ。
ナディは…？
少しは。
…。
雨、大丈夫だった。
良かった。
…。
けど散々降ってくれたから、どこか通れなくなってるかもしんない。
ちょっと話を聞いてから出発するよ、いい？
いえっさ。
ベッド、結局使わなかったなぁ。
あーあ、勿体ない。
…。
たく、あんたが
…ごめん？
…。
…。
…ま、あたしも悪いから。
…ふふ。
あー…ごはん、ごはん行こっか。
ねむくない？
あ？
ねむい。
少し寝たから。
うそ。
…。
…だめ。
……なんで嘘だと分かる。
なんで？
なんで。
…。
…。
…ナディにべたぼれ、だから。
……。
だから、わかるよ。
…。
…。
…こら、朝っぱらから何しやがる。
ねてないあじがする。
……そんな味、あるかい。
あるよ。
ないわよ。
ある。
ない。
あるの。
ないったら、ない。
あるのに。
とにかく。
ごはん食べに行って、そこで話を聞く。
いい、相棒？
……いえっさ。
…。
ごはん、おいしかったね。
そーだねぇ。
おなかいっぱい？
あんたは？
うん、おなかいっぱい。
あれで？
いっぱいだよ？
相変わらず食が細い。
ナディはふとい？
太くない。
普通。
でもエリスより
それより、どうするかな。
どうするの？
戻るのも、なんかなぁ。
じゃあ、すすむ？
それが出来るなら、考えない。
かわになっちゃったの？
悪い予感って当たるからイヤだ。
ナディのよかん、あたったの？
今回は。
そっか。
すごいね。
すごかない。
そうなの？
そうなの。
ほめてるのに？
こんなことで褒めなくもいいから。
いつもはどんかんなのに？
あ？
どんかん。
…そっちには長年の経験がないもので。
そっか。
じゃあしかたがないね。
はいはい、そーねぇ。
これから？
だと、いいけど。
むりそう。
は？
ナディはたぶん、ずっとどんかん。
…あのな。
だから。
……こら。
ん？
暑い。
いつもどおり？
や、だから
ナディ。
…なに。
したくない？
…。
…。
……あー、もう。
ほんと、どうするかなぁ。
やどにもどる？
…。
ナディ？
…水、引かなかったら仕方がない。
うん。
…エリス。
なに？
くっつすぎ。
…。
腕だけで…
…。
……指、くすぐったいから。
から？
…いっそ、繋げ。
いえっさ。
……。
…。
…さて。
ほんとにどうしようかなぁ。
エリスはナディといっしょならいいよ。
…。
いっしょ。
……はいは
…？
…ふ、
ナディ？
あぁぁ…。
…おおきいあくび。
…。
ねむそう？
…あんた曰く。
酸素とやらが足りないだけ。
…。
んー……。
…。
…何。
いこう。
て、どこに。
いいから。
良くないでしょ。
…。
て、エリス。
…。
エリスってば。
きて。
いいけど、だからどこに。
いそぐたびじゃないから。
は？
それにもう、ひとりじゃないから。
…。
だから、だいじょうぶ。
や、だから何言ってんのよ。
かみなりも、あらしだってこわくない。
…だからあたしは別に
まえにすすめないなら、まてばいいんだよ。
…。
まわりみちをしたって、いいの。
…で、どこに行くの。
いけばわかるよ。
教えてくれたっていいじゃない。
ナディもよくしってるところ。
あたしが？
…。
…て、分かったわよ。
行けばいいんでしょ、行けば。
うん、いいの。
…。
はい。
…。
ナディ。
つか、ここ…。
よくしってる？
場所と言うか…あたしたちの車よね？
うん。
…の、後部座席？
そう。
…つか何してんの。
すわってるの。
そりゃ、見れば分かる。
ナディも。
だからだな。
ん？
いや、ん？じゃなくて。
はやく。
何が早くなの。
ここ。
…そこが、なに。
かしてあげるね？
いや、別に貸してくれなくてもいいんだけど。
…。
…だから、いいって。
ひ、あまりささないよ？
そーいう問題じゃない。
あつくない。
だから、そーいう問題じゃない。
じゃあどういうもんだい？
…。
…ここじゃだめ？
そーいう問題でもない。
ちがうところでなら
エリス
…なに。
気持ちだけでいいから。
きもちだけ…。
これくらいならまだ、大丈夫だから。
でも
知ってるでしょ。
…。
慣れてる。
だから、大丈夫。
……。
丁度いいから、とりあえず出発しようか。
…。
オーケイ？
…。
エリス。
…オーケイ。
よし。
……。
だめならだめで、また考えればいい。
あんたが言うように回り道してもいい。
時間ならたっぷりあるしね。
…。
そうと決まれば、席。
…。
今日は隣じゃなくていいのかね？
…いや。
なら、移動。
……。
ん…？
……。
…置いていかれるのはもう、勘弁して欲しいんだけど。
はやくのって。
はいはい。
じゃ運転、よろしく。
……。
…。
…。
……。
…ナディ。
…。
ナディ。
……。
ナディ。
…ぐぅ。
……。
ぎゅうぅぅぅぅぅぅぅぅ。
い゛…ッ！
…。
いひゃぃ、いひゃいって…ッ！！！
……。
…い、いきなりなにすんだ。
…。
つか、もう少し手加減しろってあれほど…。
…。
うぅぅぅ…。
だいじょうぶっていった。
…あぁ？
いったくせに。
…だからって何も、つねらなくても。
千切れるかと思ったわ。
…。
そもそも運転中、に…。
してないよ。
…みたいねぇ。
…。
…。
…。
…ああ、はいはい。
寝ちゃってごめんなさいねぇ。
…ぜんぜん、ごめんなさいじゃない。
だってしょーがないじゃない。
運転、してなかったんだし。
…。
こう、乗せられて揺られたら…つい、さ？
…。
あんただって良く寝てるじゃない。
でもナディはだいじょうぶっていった。
…だからさぁ。
…。
つか、なんで不貞腐れてんの。
あたしはあんたが寝てても起こさないじゃない。
いつも。
…だいじょうぶっていった。
言ったけど。
でも
…。
……あぁ、もう。
…。
エリス。
あんたのそーいうところ…
…。
………勘弁してよ、もう。
…。
エリス。
…。
…なんで泣くかなぁ。
しらない。
泣くほどのことじゃないでしょうが。
かってにでてくるだけ。
勝手にって。
…。
これじゃあたしが泣かしてるみたいじゃないのよ。
…。
…て、そうなのかもしれないけど。
や、でもさぁ…。
……なかった。
あ？
ねてくれなかった。
……。
…さっきは。
……。
……。
……原因は、それか。
ちがうよ。
違わないでしょーが。
ちがうもん。
違わない。
ちがう。
じゃあ、こっち向け。
…。
早く。
…。
まだ、痛いんだけど。
あんたにつねられたトコ。
…。
…たく、ぼろぼろ泣きやがってからに。
…。
…エリス。
…。
もう、泣き止め。
…。
ほら。
…しらないもん。
あ、そ。
分かった。
…ぁ。
じゃあ、そうやって泣いてればいい。
…ナディ？
…。
どこいくの？
…。
まって。
いやだ。
ナディ。
…。
やだ、おいていかないで。
…。
ナ
早く来なさいよ、ばかエリス。
……。
ほら、早く。
……。
何、その手は。
…。
そこまでしてやんないわよ、ばか。
…や。
だーめ。
…。
だから、だーめ。
……いや。
…。
ナディ…ナディ…。
……あぁ、もぅ。
ほんっと、世話のかかるヤツ。
…。
…ほら、早くしろ。
……いえっさ。
…。
…。
…。
…ナディ。
…。
どこまでいくの。
…。
ナ
別に、どこも行かない。
…。
車から離れて、そんなに行けるか。
ばか。
……。
…。
…おこってるの。
なんで？
…つねったから。
すんごい、痛かった。
…。
おまけにぼろぼろ泣かれてさ。
…。
と。
もう、泣くのはなし。
…なかないよ。
目、赤い。
…あかくないよ。
どこが。
…。
…。
…。
…つかさぁ。
…。
足、伸ばせない。
……あし？
あれじゃ。
…あれ？
姿勢が変で、余計疲れる。
まぁ、寝れないわけじゃないけど。
…。
どうせ寝るなら、足伸ばしたいでしょーが。
…あ。
やっと分かったか。
だからなの？
それも、ある。
…ほかは、なに？
あんなところで、寝られるかぁ。
…。
あんな町ん中で。
そんなに寝たいなら素直に宿をとるっつの。
道も通れるかどうか、分かんないんだし。
……。
それに。
…それに？
どうせ、寝るなら。
…なら？
…。
あ…。
……この方がいい。
…。
そりゃあさ…正直なことを言えば、膝も悪くない。
むしろ…。
……うれしい？
言わせるな、つか、聞くな。
…。
……ゆっくり寝るなら、これが一番いい。
ナディ…。
…。
たったまま、ねるの？
…は？
このほうがいいって。
…あのな。
じょうだん…。
…。
……でもね、ナディ。
…なに。
したかったの。
…。
…して、あげたかったの。
……それは。
…。
嬉しかった、わよ。
ちゃんと。
…いった。
言わせたくせに。
…ほんとう？
嘘なんか言うか、ばか。
…ばかばっかり。
あーぁ。
やっぱりだめだったね。
ねぇ。
どうするの？
ま、無理しても流されるだけだし。
すごいながれだね。
この様子だと右左、どっちに行ってもだめだろうし。
もどる？
それか、待ってるか。
まってるの？
これくらいなら…まぁ、夕方前には。
とおれる？
と、思う。
そっか。
じゃあ、まってる？
んー……。
おひるね？
…ま、それもあり。
じゃあ、おやすみ？
いや、まだそうと決めたわけじゃない。
そうなんだ。
さて…。
まわりみち、する？
どっちにしろ、戻らないと。
そっか。
…。
わたしはどっちでもいいよ。
…。
…。
…。
……ナディがかんがえてる。
そりゃ、あたしだって考えるわ。
ちえねつ、でない？
怒るぞ？
ごめんなさい。
…ま、急がないしねー。
うん、いそがないね。
…。
…。
…。
…よし。
戻ろっか。
もどるの？
うん、戻る。
じゃあ、もどろう。
戻って、寝る。
ねるの？
うん、寝る。
正直なことを言うと昨日、全然寝てない。
うん。
ま、ここで昼寝してもいいんだけど。
あんたに任せて。
まかされた。
でも気付くとあんたも寝てるからなぁ。
がんばるよ？
て、言うから任せたら、あたしにくっついて寝てたのは誰だ。
エリス？
他に誰がいる？
いないね。
そう、いないの。
いたらだめ。
そうね。
…て、あのな。
えへへ。
……まぁ、いいけど。
よかった。
…ちょっと、ゆっくりしようかな。
こんな時ぐらい。
エリスと？
…。
ん？
そ、あんたと。
わ…。
…。
ナディ…。
…ゆっくりさせて。
いえっさ！
…や、今じゃないから。
あとで、たっぷり？
…たっぷりってなんだ。
たっぷりはたっぷりだよ？
…あーそうかい。
うん、そうなの。
…ま、たまには。
いやしてあげるね？
……。
あたま、いたいの？
…痛い。
たいへん。
あ、や、だから…
…あとで、ね。
……。
いまがいい？
…や、後で。
うん。
……。
…かお、わらってる？
うるせ。
…。
……あーもう、見んなって。
…ふふ。
…。
はい。
はい、って。
たっぷり。
…。
おいで？
…いや、そう言われてもだな。
いったのはナディ。
…だからってな。
そんな構えられてもだな…。
おいで、ナディ。
…。
おいで。
んー……。
…。
………んじゃ。
…。
…え、と。
ナディ！
わ、ぷ…。
…。
ちょ、エリス…。
…おやすみなさい。
て、待って待って。
ん？
これで寝ろって…？
うん。
うんって。
…たっぷり。
もうそれはいいから。
…。
エリス…。
…たまにはエリスのなか。
……。
いつも、ナディがしてくれるから。
……。
できないかもしれないけど…でも。
……。
ナディ…？
……エリス、さ。
なぁに？
…これ、悪くない。
あ…。
……やっぱり、悪くない。
…よかった。
……。
おやすみなさい、ナディ。
…ねぇ、エリス。
ん…？
…。
…なぁに、ナディ。
…。
……ナディ。
……。
…もう、だいじょうぶだから。
…。
……どんなあらしが、きても。
わたしが、いるから…。
……ん。
おやすみなさい…ナディ。
んーーーーーー。
…。
よく、寝た。
ねられた？
うん。
そっか、よかったね。
…。
ナディ？
…ありがと。
…。
…。
…。
…ひとりぼっち。
…。
でもいまは、ふたりぼっち。
…そんな言葉、ないんだけど。
つくった。
…。
…。
…ま、悪くないかな。
|