ねぇ、エリス。 …なぁに? どうしてエリスはさ。 うん…。 ナディが、好きなの? …。 どこが好きなの? ……。 なにが好きなの? …ロント。 なに? ここ。 おいで? うん。 ……。 …エリス? ロントは、どうしてだと思う…? …? ロントは…ナディのこと、好き? ナディ、うるさいんだもん。 手伝え手伝えって。 ロント、手伝ってるのに。 じゃあ、好きじゃない…? …。 口笛、指笛…それから草笛、他にもいろんなこと、教えてくれたのはだぁれ? …ナディ。 ん…。 でも、エリスも教えてくれるよ。 ナディが教えてくれることは、私が教えてあげられないことばかりだから。 でも、うるさいよ。 手を洗えとか、手伝えとか、ごはんは残すなとか、好き嫌いするなとか、無駄使いするなとか。 だって、ロントのお母さんだから。 エリスもそうだよ。 ん、そうだね…。 …。 ロントは、ナディのこと…好きじゃない? …。 …嫌い? ……ううん。 じゃあ…好き? …うん。 そう…良かった。 …エリスは? 好き…。 ……。 …大好き。 どうして? ナディ、だから。 私はそれだけで良いの…。 分かんないよ。 …分からない? 分かんない。 だって、ナディはナディに決まってるもん。 …ふふ、じゃあね。 …。 ナディは…不器用で。 …。 せっかちで…お子ちゃまで…。 …。 たまに、やきもちやきで、軽くて……いつも、くいしんぼ。 …それ、だめなんじゃないの? それから、鈍感で……とても、心配性で。 …。 とても、優しくて…いつも、私達のことを守ってくれていて。 ……。 …何も無かった私にたくさんの事を教えてくれて、たくさんのものをくれた。 そう、このしあわせだって…あの人がくれたの。 …。 誰かとしあわせになること…ナディが、教えてくれたの。 …ふぅん。 それからね、貴女をくれた。 …わたし? そう…ロントのこと。 ……。 そのせいでナディの左手は……。 …。 …けど、良いって言ってくれた。 …。 こんな私でも…ナディは、ずっと傍にいてくれるって。 言ってくれたんだよ…。 ナディ、エリスにべた惚れだから。 ふふ…。 エリスは、ナディがいっぱい好きなんだね。 うん…好き。 ……。 全部、好き…大好き。 ナディだから? そう、ナディだから…。 ふぅん…。 あの人は…私のウィニャイマルカだから。 ウィニャイ…? …いつか、ロントにも。 ん…。 きっと…。 こーーら。 あ。 あ、じゃない。 手伝えって言ったでしょうが。 ふふ。 エリスも。 つかロント、あんた何エリスの膝の上なんかに座って寛いでるわけ? 私が言ったの。 ね、ロント? うん。 エリス、今日は畑作るって言ったでしょうが。 うん、聞いたよ。 ロントにも手伝わせるって。 それも聞いた。 だったら、 お休み? …あ? 何か飲む? あ、いや、だからねエリス、まだやり始めてから ナディ、来て。 ……。 ナディ。 …ああ、もう。 なに…。 …もっと。 もっとって。 もっとはもっとだよ…? …。 わたし、じゃま? …んなこと、言ってない。 じゃ、いる。 …あんた、後で分かってるでしょうね。 分かんない。 …このやろ。 ナディ、早く。 …しょーがないな。 これで ナディ…! …わ。 …ぎゃう。 ふふ、土のにおいがする…。 ちょ、エリス、急になに…。 く、くるしい…。 ってエリス、ロントが潰れて… …大好き。 は…。 あなたの全部が…大好き。 い、いきなり何… …うぅ。 つかロント、ロントが… おしまい。 …は? ロントもおしまい。 ごめんね? …うー。 急にどうしたのよ。 大事な事だよ? だからって… ナディ。 …はいはい、なに。 ロント。 なに? 大好き。 …。 うん、わたしも好き。 ナディは? あー……うん。 分からない? あー……エリス。 はい。 …好き、よ。 聞こえない。 …。 ん? …ぎゅうっとしちゃえばいいのに。 ロントは黙ってなさい。 いつもいちゃいちゃしてるくせに。 うっさい。 と言うか、いつもじゃないっつの。 うそつき。 ああ? ううん、ナディの場合は素直じゃないだけ。 それから恥ずかしがりなの。 ちょっと、何の話よ。 内緒。 ないしょ。 は、何それ。 それより、ナディ。 …。 ナディは? …言ったのに。 聞こえない。 エリ ちゅう、しちゃえばいいのに。 いつもいっつもしてるんだし。 …ロント、あんたには後で山ほど手伝って貰うからね。 えー。 えー、じゃない。 そもそも ナディ。 …う。 私の事、好き? …当たり前でしょ。 それじゃ分からない。 うー…。 ナディ。 …ロント、あんたエリスからどけて。 しょーがな、わぁ。 早くどけろっつの。 むーー。 …え、と。 エリス。 …ん。 なんでこんなコトになってるのか、分かんないけど…。 …。 ……好きよ。 ……もう一度。 …好きよ、エリス。 もう一度…。 …こんなに近くで言ってるんだから、聞こえてるでしょ。 何度だって、聞きたいから…。 … 良いコトなんだよ…? …はいはい、そうね。 ナディ…。 ……好きよ、エリス。 うん…私も、大好き。 …。 大好き…。 …エリス。 やっぱりいちゃいちゃしてるしさー。 やかましい。 ほら、行くよ。 えぇ。 ロント、エリスとまだ うるさい。 行くって言ったら、行くの。 あーエリスーー。 ふふ、行ってらっしゃい。 ナディ、ロンティタ。 それで、エリス。 うん? 昼間、何話してたの。 昼間? ロントと。 …。 …あたしが一人で頑張ってた時。 ん…。 …あいつはいっつも、あんたんとこでさぼる。 あんたが甘いから。 …ナディも甘いよ? あんたほどじゃない。 …どっちも、どっち? あのなぁ…? ……。 …こら、エリス。 話はまだ、終わってない。 …させてくれたら、話す。 うそつけ…。 …つかないよ。 それに…まだ、飲み終わってない。 もう、今夜はだめ。 …て。 まだ、大して飲んでないんだけど。 だめ。 …あんたが作ってくれたんでしょうが。 …。 あんたが作ってくれるのは…少し甘くて、おいしい。 …好き? ん、飲みやすいしね…。 ……。 …こらこら。 だめだって。 …やだ。 じゃあ、話せ? …。 そしたら…乗っても良いわよ? …座らせてくれないと、話さない。 …。 …。 …そうきたか。 どうする…? …どうするかな。 知りたいんでしょ…? …まぁ、知らなくても困るわけじゃないし。 …。 …ん? うそつき。 …お。 ……知りたいくせに。 …。 …ナディ。 つか、ほんとにお気に入りよね…。 …。 …そんなに、良いもの? うん…。 …最近は向かい合わせが好きよね? …。 横だったり、後からだっこしろって言ったり…エリスはほんと、あまえんぼ。 ナディの方があまえんぼ。 いーや、あんたの方があまえんぼ。 ナディ。 エリス。 ナ…ん。 ……。 ……ナディ。 …ま、あたしも大概だけどね。 ナディ…。 これ、飲んじゃうから。 …。 …だって折角、あんたが作ってくれたのに。 勿体ないじゃない…? また、作ってあげる…。 …ありがと。 …。 ……ふぅ。 …。 あーあ、もう少し味わいたかったのにな…。 …良い? ん、おいで。 …。 …。 ……ふふ。 なにがそんなに楽しいんだか…。 …目線、ほとんど一緒。 横になっても、一緒だけどね…。 …これはこれで違う味。 味ってなによ。 …味は、味だよ? なんだそりゃ…。 …。 …それで? 話、してくれるんでしょうね? …。 …つか、しろ? ん……。 …ほぉら、早く。 ……やきもち? は? ふふ。 やきもちって、誰に。 …だぁれ? …。 …ふふ。 あのね、エリス。 …ん? しないから。 …。 してな、ん。 …。 …エリス。 お酒のにおい…。 …ついさっきまで、飲んでたから。 それより、 本当に、してない…? …してない。 しない…? しない。 …もう? もうって…。 …気にしてるくせに。 別に気にしてるわけでは 気にしてないのに、聞くの…? う…。 …。 …あたしのコト、話してたんでしょ? うん。 …そこは素直なんかい。 …。 …エリス、話はまだ終わってない。 …。 これは…話が終わった後で。 …する前も。 したら…話、出来なくなるでしょ。 火、ついちゃうから…? …。 …。 …そうって、言って欲しいんでしょ? ううん…欲しくない。 …うそつけ。 ん…。 …ほぉら、エリス。 キス、して欲しいなら… …ふふ、くすぐったい。 さっさと教えなさい…? …。 …。 …ねぇ、ナディ。 うん? …本当に、してない? してません。 …もう、しない? もうって、なに。 ……。 ……こら。 ここ…。 …触らせないで良いから。 もう、出ない…。 え…? …もう、出ないの。 …。 …。 ……エリス。 …ん? それ、お願いだから思い出させないで…。 忘れてたの? …。 …本当に? ……勘弁して。 …。 あの時は…んん。 ……うそつき。 …。 …。 …ああ、もう。 話がちっとも進まないじゃない…。 あのね…。 …手、どかして。 だめ、このまま…。 …。 …じゃないと、教えない。 あんたは…。 あ…。 …。 ナディ…。 ……その手にはもう、乗らない。 …ひっかからない? どんだけ一緒にいると思ってんだ…。 …あの旅から、ずっと。 …。 その前にも…。 …だからもう、そんな手には乗らない。 つまらない…。 …こら。 えへへ…。 …で。 手、このまま…? …。 …このまま。 ……。 ん、ナディ…。 …分かったから、早く話せ。 ……狼ナディが出てくる前に? …。 あ、ん…ッ。 …そうよ。 だから、早く。 …乗らないって、言ったのにね。 で…? ……。 …エリス。 ナディは、ナディだから…。 …ん? …。 て、エリ… …ナディは、不器用。 いちいち…ん。 …せっかちで…お子ちゃま。 キス、しな… やきもちやきで、軽くて…いつも、くいしんぼ。 …。 それから、すごく鈍感で……とても、心配性で。 …。 はずかしがりで…。 …それ、ロントに? あと…ん。 もう、良い。 …良いの? 子供にそんなコト話すな、もう。 …ほんとのことなのに? あたしの立場ってものがだな…。 立場? 良いトコ、一つも無いみたいじゃない。 あるよ? どこがだ。 全部。 …あ? ナディは、怖がりで……素直じゃなくて、わがまま。 だからもう良いって。 だめ。 む。 聞いたのはナディ。 …そうだけどさぁ。 ナディは… …ほんとにもう良いんだけど。 とても、優しい人…。 …。 いつも、私達のことを守ってくれていて… ……。 …私にしあわせをくれた。 ……。 教えてくれた人…。 エリス…。 それから…あの子をくれた。 …それはあたしだけじゃ、 ううん…? ……。 …ナディがくれたの。 ナディが許してくれなかったら… …良いも何も。 言ったでしょ? …。 …嬉しかったって。 だから、許すも何も無いんだって。 ……だから。 …。 私は、ナディが好き。 …うん。 ……ん? おしまい。 …て、エリス。 結局、あたしの 好きな理由。 …え、と? 聞かれたの。 …。 だから、全部好きって。 言ったの。 …全部? ナディは、ナディだから。 私はそれだけでいいから。 ……。 大好き。 あ、ああ…。 …ナディ? ん、と、なんとなく分かったけどさ。 うん。 結局、あたしの立場はどうなんだって言う…。 …? 別に威厳とか、そんなのはどうでも良いんだけどさ。 …。 あー……。 …いやだった? あ? 怒った? …いや、別に怒ってないけど。 …けど? 怒ってないわよ。 …。 まぁ、エリスらしいと言うかね…。 私らしい? …そ、エリスらしい。 ん……ナディ…。 …それで、ロントは? あいつ、なんて言ってた…? …それ、だめなんじゃないのって。 言ってた…。 ……。 …だけどね、ナディ。 ……なに。 ナディのこと、好きだって…。 言ってたよ…。 ……。 …言ってた。 …。 …。 …あーあ。 …? …言うこと、ますます聞かなくなったらどうしてくれる。 あ、ナディ…。 ……。 や…。 ……うそ、つくな。 あん…ッ。 ……もう、かたくなってる。 …はぁ。 たいしたこと… う、ん…。 …まだ、してないってのに…さ。 それ、は…。 …それは? ……ナディの、せい。 言うと思った。 …ああんッ。 …触らせておいて、いつもそう言うんだ。 あんたは。 ……も、う。 …。 …いい? 良くない。 ナ、ディ…。 …おさまらない。 …。 …だから、エリス。 ちがうよ…。 …。 …おはなし、おしまい? …。 …。 …エリ、ん。 ね…。 ……。 …つれていって? …。 ベッドに…つれていって。 …お姫さまにでもなったつもりなんだから。 ね、つれていっ…ん、あぁ。 …。 ナ、ディ…。 …ちょっと。 ……。 本気でおさまりそうにない。 ……せっかち。 うるさい…。 ん、ん…。 ……ちゃんと、しがみついてて。 …ひだり、て。 ついてて、ほしい…。 ……。 ……つめたてても、かみついてもいいから。 いや……。 ……だけど。 …? ……。 ナディ…? ……。 …ねちゃったの? ねてない…。 …よかった。 でも、ねむい…。 …いっぱい、したから。 そんなに、してないって…。 …ベッドにきてからも、したよ。 それは…だって。 …がっつかれちゃった。 …。 ふふ…。 ……ねぇ、エリス。 なぁに、ナディ…。 こんやはさ、このままでいいかな…。 …。 …だめ? いいよ…。 …。 ナディが、したいなら…いいよ。 …ありがとう。 …。 ……あたし、さ。 ん…。 …あまえんぼ、かな。 うん、とてもあまえんぼ…。 …あいつのこと、いえないかなぁ。 ナディのほうが、あまえんぼ。 …。 …でもそれが、わたしはうれしい。 だめって、いわれそうだけどね…。 …こども、は。 …。 いつか、おやからとびたっていくものだから。 …。 …でもね、ナディ。 うん…。 …ふうふは、ずっといっしょ。 しぬまで… …しんでも。 …。 ……ちがった? ううん、ちがわない…。 …だけどね、エリス。 ん…。 …あいつが、とびたったとしても。 あいつは…あたしたちのこどもで、 …わたしたちはかぞく、だから。 …。 …それがなくなることなんて、ない。 うん…。 ……ナディ。 …。 ずっと、すきだから。 だいすきだから。 …。 …だからナディも、わたしをずっとすきでいて。 あたりまえだ、ばか。 あ、ん…。 …ずっと、いっしょなんだから。 ずっと、すきに… …。 …ずっと、あいしてるにきまってる。 うん…。 エリスが、エリスであればいい…。 それいじょうのりゆうなんか、いらない…。 …うん……うん…。 …。 …ナディ。 ……あぁ。 …もう、ねむる? こうしてると…あんたが、まもってくれているようで…。 …。 あんたの、むねのなかが…いちばん、あたしは…。 … …あたしは、ずっと…、 あんたに、まもられて…。 ……。 ……。 …ずっと。 ん…。 …わたしが、まもってあげる。 ナディが、いつでもあまえられるように…。 ……。 ナディが、わたしをまもってくれるように…。 ……ん。 ……。 ……。 …ナディには、わたしだけだよ。 …。 わたしには…あなただけだから。 …。 …。 ……いまさら、だ。 …。 ばぁか…。 ……ふふ、ねてなかった。 それは惚気話だと思うなぁ。 のろけばなし? そう、惚気話。 って、なぁに? エリスはね。 うん。 ナディがとっても大好きだってこと。 それをロントに話してくれたんだよ。 …。 それが惚気話。 …よく分かんない。 エリスはナディが大好きでしょう? うん。 ナディは エリスにべた惚れなんだよ。 ふふ、そうだね。 それがのろけばなし? それを人に話すのが惚気話。 ふぅん…。 もう少し大きくなったら、分かるかも。 そうなの? 屹度ね。 そっか。 じゃ、大きくなる。 うん。 リリオだって、抜かしちゃうんだ。 それは楽しみだね。 ねぇ、リリオ。 なぁに、ロント。 わたしが大きくなったら、けっこん、してよ。 どうしようかな。 ちゃんと、大きくなるよ。 リリオよりも、ずっと! じゃあ、好き嫌いしないで食べないと駄目だね? しないよ、してないよ。 本当? うん、ほんと。 ちゃんとお肉も食べてる? たべてる。 お野菜も。 大好きだよ。 じゃあ、お魚は? …たべてる、よ。 じゃあ、お豆は? ……。 好き嫌い、無いんだものね? …ない、よ。 目、泳いでる。 目っておよぐの? どうやって? 私の目、ちゃんと見てない。 う。 ほらね。 見てるよ。 さっきは見てなかった。 見てたよ。 ううん、見てない。 見てた。 見てない。 うう。 ロント。 まめ、ちゃんとたべたら。 けっこん、してくれる? お魚も食べないと。 私、お魚が好きだから。 たべる! 約束? やくそく! だって、ナディ。 ほぉーーう。 …あ。 じゃあ今夜のごはんは豆づくしで。 エリスに言っておくわ。 えーー! 食べるんでしょ? リリオと約束、したものねぇ? …う。 ロント? た、たべるよ! その言葉、忘れるんじゃないわよ。 …。 ロントは忘れないよね? …うん、わすれない。 そ。 なら、良し。 豆はごはんの次に好きだから、楽しみだなぁ。 エリスの手料理ならなんでも好きなんだよね、ナディは。 まぁ、辛すぎなければね。 そんなの、初めから作らないと思うけどな。 ナディのエリスは。 あー…リリオ、あんたも食べてく? 良い? 良いわよ。 ご馳走様です。 いいえ、どういたしまして。 リリオもすっかり、大人になったわねぇ。 あの頃のナディとエリスの歳、とっくに抜かしちゃったもの。 そっか。 もうそんなになるんだ。 ナディとエリスはまだまだ若いね。 あの時とあんまり変わってない。 それはありがと。 …ねぇ、リリオ。 うん? わたしがなんさいになったら、けっこん、してくれる? そうだなぁ。 その前にあんたは豆、食べられるようになるのが先だ。 …たべるよ? だと、良いけど。 ねぇ、リリオ、リリオ。 早く大きくなってくれないと、私、おばさんになっちゃうけど。 おばさん? ロントより、ずっと年上だから。 そんなの、関係ないよ。 関係ない? だってわたし、リリオが好きだから。 関係、ない。 じゃあ私の為に、今直ぐ、大きくなってくれる? うん、なる! て、なれるかって。 なれるよ! なれないっつの。 なるもん! ふふ。 ねぇ、ロント。 なになに、リリオ。 おばさんな私でも、ずっと好きでいてくれる? ? それともやっぱり、嫌になっちゃう? 関係ないって、いったよ? 本当に? だってリリオはリリオだもん。 わたしはそれだけいい。 …。 …へぇ。 だから、関係ない! そっか。 うん。 だから、わたしとけっこんしよ、う。 ばか。 気が早いっつの。 あううう。 リリオ、ごめんね。 莫迦で。 ふふ、いつ見ても面白いね。 たくもう。 大体簡単に好き好き言うけど、それがどんな意味かろくすっぽ分かってないし、 そもそも、結婚ってのがどんなもんかも分かってない。 分かってるもん。 いーや、分かってない。 ふーふになったらいちゃいちゃして、ちゅう、する。 あ? いってらっしゃい、おかえりなさい、おはよう、ただいま、それから… てロント、あんた エリス、してるの? うん、いつもしてる。 てエリス、あんたまで。 夫婦はそれだけじゃ あと、ごめんなさいするの。 これはナディばっかり!! ちょ、ロント、あんたね、 そうなの? うん、そうみたい。 ね、ロント。 なに? ありがとう、が抜けてるよ? て、 そうだった! エリス…勘弁してよ、もう。 夫婦の約束? だとしてもだな、わざわざリリオのいる前で言わなくても、 知ってたけど。 改めて聞くと本当にただの惚気話にしか聞こえないね。 ……。 約束。 …あぁもう。 ねぇ、リリオ。 キスはね、口にしないとだめなんだよ? 口? そう、口。 ふーふは、ほっぺたじゃないの。 …エリス。 もっと食べる? …うん、食べる。 くいしんぼ。 …うっせ。 おいしい? …うん、おいしい。 味も、豆の煮具合も、全部。 …良かった。 あとね、夜になったらひざの上にのせていっぱいキスして、それからカラダにさわったりするんだよ。 ぶ…ッ。 飛んだ? ナディとエリス、いつもしてるもん。 え、と…そうなんだ。 …げほッ。 げほッ、げほ…ッ。 お水、いる? ナディがエリスにさわると、エリスはいつも ロ、ロントぉ…! わ! は、話はもう、良いから…げほッ。 えー。 ロント。 ふえ? そのお話はおしまい。 ……。 ちゃん食べて? …でも、 食べて? …うん。 リリオも。 いっぱい食べてね。 ふふ、ありがとう。 ううん、どういたしまして。 あ、ナディと一緒だ。 うん? あ、あたしと…? 言い方。 そっくり。 だって、ナディ。 うーん…ま、リリオがそういうなら。 落ち着いた? …なんとか。 水、ありがとう。エリス。 どういたしまして。 ……。 あ、もしかして照れてる? …勘弁してよ、リリオ。 ナディはかわいいね? うん、いくつになってもかわいい人なの。 …もう、なんとでも言いやがれ。 …。 ん? …。 ロント、あんたが少しでも多く食べられるようにってエリスが考えて作ってくれたのよ。 …ねぇ、ナディ。 そんなんじゃリリオと結婚、出来ないぞー? …。 ロント、大きくなったらリリオと結婚するんだよね? …うん、する。 じゃあ、食べないと、 大きくなれないね? ……。 頑張れ、ロント。 …うん、がんばる。 て、やっぱりリリオの一言が一番なわけね。 分かりやすいね。 単純、と言うか。 ナディにそっくり。 あたしはここまでじゃないぞ? ふふ。 ……。 涙目になってるけど、でも …たべた! お。 あ。 たべた! おー偉い偉い。 うん、偉い偉い。 リリオ、リリオ。 良く食べられました。 えへへ。 じゃ、けっこん は、未だかな。 え。 大きくなってからじゃないとね? え、えー。 ははは。 ま、頑張んなさい、ロント。 ううー。 結婚はね、ロント。 …うん。 ただ好きなだけじゃ、だめなの。 …? ね、ナディ。 うん、まぁ…そうかな。 なんでだめなの? それは…ロントが考えること。 ロントが自分で見つけないとだめなこと。 …エリスは見つけたの? うん、見つけた。 ナディも、見つけてくれた。 ナディも? まぁ、ね。 …ふーん。 それにねロンティタ、夫婦はキスするだけじゃないの。 キスも大事だけど、それだけじゃない。 カラダ、さわるんでしょ? ううん、それだけでもない。 …ね、ナディ。 いや…それ以上は言わんで良いから。 …ふふ。 糖分、本当にすごいなぁ。 うぅ…。 …ナ…ディ…。 やれやれ。 寝ててもナディの名前、呼ぶんだね。 うん? エリス。 …まぁ、いつもじゃないけどね。 ナディも呼んでるのかな。 …。 エリスの名前。 …さぁ、どうかな。 今度、エリスに聞いてみようかな。 ……。 ねぇ、ナディ。 …ん。 エリスを見ている時の瞳はいつだって、とても優しい色をしているよね。 …そうかな。 自分じゃ分かんないけど。 昔と変わらない。 あの旅をしている頃からナディはエリスに優しかった。 そう、いつだって。 …。 あの頃からもう、好きだった? エリスの事。 …うん、好きだったよ。 誰にも渡したくなかったし、どこにも行って欲しくなかった。 …。 と言っても、あたしは鈍感だから。 なっかなか、気付かなかったんだけどね。 ふふ。 …そのせいでかなり、待たせちゃった。 気付いた後もぐだぐだしてたし…。 でも、そんなナディも好きなんだよね。 エリスは。 …参ったなぁ。 エリスも…ナディを見ている時の瞳はいつだって優しい色。 あと、それから… …。 甘えた色。 私が初めて二人に会った頃はそうじゃなかったんだけど…。 …ま、賞金首と賞金稼ぎ、だったからね。 けど…いつからか、甘えの色が入るようになったんだよね。 いつからだったっけ…。 …リリオ。 うん? いや、子供って良く見てるなって。 大好きだから。 …。 ナディとエリスの事。 …ありがと。 それ、エリスも喜ぶと思う。 ……。 ……。 …ナディは本当に、エリスの事、愛してるんだね。 ……うん。 でも。 ん…? ロント。 …ロントがどうかした? この子を見ている時の二人の瞳の色は、お母さんの色。 同じ優しい色なのに、ちょっと違うの。 …。 ロントは…二人の子供なんだね。 …うん、そうよ。 …。 にしてもリリオ、あんた結構強いわね。 え? 酒。 ちょっと驚いた。 これでも初めてなんだけど。 とは、思えない。 つか、あいつと飲んだ事も無い? まだないなぁ。 今、どこにいるのかも分からないし。 連絡、くれるような人でもないから。 今度会ったら、一緒に飲んであげたら? 喜ぶかもしんないわよ? でもきっと、会話は弾まないと思うんだけどね。 普段からあまり喋らないけど、お酒が入ってもそれは変わらないから。 はは、確かに。 でも今度、飲んでみようかな。 ね、ナディは飲みたい? あいつと? ううん、ロントと。 どうかなぁ。 エリスに似てたら弱いと思うし。 似てるかな。 分かんないけどね。 …リ…オ…。 たく、親子して。 そっくりだね。 でしょ? ナディにも。 …。 ね。 んー…リリオ、今夜は泊まってく? もう、遅いし。 うん、ありがとう。 どういたしまして。 でもこいつと一緒のベッドになっちゃうけど、良い? うん。 だってさ、ロント。 良かったな? う、ぅぅ…。 ふふ、これなら明日まで起きないかな。 だと、良いけど。 じゃないと困るしね? 色々と。 …リリオ。 でもこの様子だと困らないかな。 エリスも良く寝ているようだし。 むしろ、残念だったりして。 あー…。 ふふ。 私、ロントを連れていくね。 それでそのまま寝ちゃうから。 ああ、うん。 でもこいつ、前より重たくなってるけど大丈夫? うん、これくらいなら。 そっか。 じゃ、頼んだ。 うん、頼まれた。 …よいしょ、と。 重いでしょ。 …うん、前より重い。 でも大丈夫。 そっか。 ナディはエリスを連れて行くんでしょ? まぁ、ね。 何しろ、お姫さまだから。 …。 なんて、さ? …ふふ。 ねぇ、リリオ。 なぁに? 良いヤツ、いたりしないの? …。 もしもいたら、 いるよ。 …そっか。 ま、リリオの年頃なら ロント。 …え。 歳、関係ないんだって。 …。 なんてね。 …ほんっと、参ったなぁ。 ふふふ。 …ナディ。 うん? ……。 エリス。 ……ここ。 ベッド。 ……。 途中で寝ちゃったのよ。 酒なんて慣れないもの、飲むから。 潰れたって言った方が良いかな。 …つれてきてくれたの? じゃないと、ここにはいないでしょ? ……だっこ? 教えなーい。 …。 ん…? ……えへへ。 ふふ。 ロントは…? あの子も途中でね。 ま、ベッドにいてもおかしくない時間、とうに過ぎてたし。 …リリオがいたから。 はしゃいじゃって、まぁ。 …ふふ。 よっぽどリリオが好きなのねぇ。 うん…。 ま、これからどうなるか分かんないけど。 …リリオは? かえったの…? ううん、泊まっていくって。 ロントと同じベッドだけど、構わないってさ。 …そっか。 さ、あたし達も寝よ。 …ねぇ、ナディ。 うん…? もしも。 うん。 ロントがリリオとけっこんしたら… …。 リリオは、わたしたちのこどもになるの…? …ああ。 まぁ、そういうことになるのかなぁ。 …そっか、たのしみ。 おいおい。 ん…? 出来るかどうか、分かんないでしょうが。 いくらあの子が本気でも、リリオがいやだって言えば出来ない。 …。 結婚は一人でするもんじゃないでしょ? …もしも。 …。 リリオが…ロントを、すきになったら。 …なったら? できるかもしれないよ…? …まぁ、そうだけど。 こればっかりはなぁ。 …。 ロントは確かに、リリオの事が好きだけど。 それが恋と呼べるものか分かんないし。 リリオが今のロントにそういう気持ちを持つかどうかも分からない。 とりあえず今は無いよなぁ。 こい…。 …ま、これに関してはあたし達がとやかく言ってもね。 あくまでも本人達次第だし、ロントだって変わるかもしれない。 …。 それにあんたも言ったでしょ? ただ好きなだけじゃだめだって。 …でも、わたしは。 …。 ナディのこと、ただ、すきだった。 ナディだけを、ただ、ただ。 ……おいおい。 …。 ロントにはあんな事を言っておいて。 それかい。 …でも、ロントはちがう。 …。 ロントのは、まだ…それとはちがうから。 ……まぁ、まだ子供だしね。 ううん、それはかんけいないよ…。 …。 ただ、しらないだけ…。 …知らない? こいの、せつなさを。 …。 こいの、いたみを。 …。 なきたくなるくらいの、くるしさを。 …。 …まだ、しらないの。 エリス…。 …わたしは、ナディがすきだった。 ただ、ただ、ナディだけがすきだった…。 …うん。 だから…ん。 …。 ナディ…。 …エリス。 …。 ……む? でも、あのこは。 ……。 …ナディに、にてるから。 え、と…? …そういうの、ないかも。 …。 なさそう…。 …つかさ。 うん…? ……キス、したいんだけど。 …。 …なに。 やっぱり、おなじ。 …同じって。 ……。 …てか、あたしだってさ。 それなりにはあったわよ。 …あったの? ありました。 …。 そりゃ、あんたのとはちょっと違うけどさ…。 …うん、しってる。 …。 …。 …指、邪魔なんだけど。 おあずけ…? あたしは犬か。 …ううん、ナディはナディ。 いつもはねだってくるくせに、どうしてこういう時…は。 ……ナディ。 …。 …。 ……ん。 …リリ、お? うん? うー……。 ロント? ……えへへぇ。 わ…。 リリオ、だぁ……。 …。 ……。 …寝惚けてたのかな。 …。 ふふ…やっぱり、ナディとエリスに良く似てる。 面白い…。 う…。 …二人の小さい頃も、こんな感じだったのかな。 ああ、でも…。 ……。 …睫の形、長さ、エリスのに良く似てる。 色はナディなのに…。 …。 …二人の性質を半分ずつ、持っている。 どちらかだけのじゃない…。 うぅ…。 二人分、ちゃんと貴女の中にあるんだね……。 …。 ……ふふ、本当に小さい。 顔も、手も、それから唇も…。 …。 ……。 ……ん。 …。 …。 …貴女がもう少し大きくなって。 それでも気持ちが変わらなかったら…。 …。 ……その時まで、今夜のことは内緒。 でも…。 …。 変わってしまったら、このコトはずっと私だけの秘密。 …。 …おやすみなさい、小さな太陽。 これからは考えないといけないかな…。 …なにを? 見られてるとは思わなかった…。 …? …だから、ほら、あれよ。 どれ…? …。 …ナディ? あんたを膝に乗せて…それで、その、色々してたこと…。 …セックス? …。 …ん? ……はっきり言うなって。 でも、いつもじゃないよ…? …そう、いつもではないんだけど。 キスはいっぱいするけど…。 …。 それから、からだにもいっぱいさわってくれる…。 …いっぱいじゃないって。 そう…? …大体、コトに及ぶ事なんて滅多に… …。 ……ないと思うんだけ、ど。 あんたの躰のこともあるし…。 …ナディのひだりてのこともあるね? だから、いつもいつもは…さ。 …ね? …。 …。 ……ああ、失敗した。 ナディ、むちゅうになっちゃうから…。 …あんただって。 だって、ナディがむちゅうにさせてくれるから。 …。 …ナディのまほう? それを言うならあんただってさ…。 …わたしは、まじょだから。 …。 こいのまほうを、いつもかけてるの。 ナディがいつまでもわたしのこと、すきでいてくれるように…。 …じゃあ、やっぱりあんたのせい。 ちがうよ…ナディのせい。 …あんたがあたしに魔法をかけるから。 でもそうさせるのは、ナディだから…。 …つかそんな魔法、もう必要ないと思うけど。 でも、かけるの…。 …なんでよ。 かけたいから…。 …あたしは、そんな魔法なんか無くたって。 あんたが…。 …わたしが? …。 …。 …なんにせよ。 あの子も色々と分かってくると思うからさ…。 …もう、できない? あまりしない方が良いかな…。 …がまん、できる? て、あたしだけじゃないでしょ…。 …ん。 ……あたしのせいばかり、して。 …えへへ。 …。 ……あのね、ナディ。 ん…。 …ほんとは、すこしだけしってた。 …? なにを… みられてたの…。 …え。 ……とめたよ? …。 …。 ……マジ? マジ。 …。 …。 ……あぁぁぁぁぁ。 ナディのせい? つか、もっと強く止めてよ。 かみのけ、ひっぱったよ? そんなの、 …だめっていったよ。 だから、 でも、ふさがれちゃうの。 あまい、あまいキスで。 ……。 …それに、ナディがわたしのなかにはいってきたら。 もう、とめられない…。 ……。 …ふふ。 ……それ、どこまでが本当の話? どこまでだとおもう…? …全部、本当じゃなければ良いと思う。 …。 …エリス。 だいじょうぶ、ぜんぶはみえてない…。 ……。 …さわってるのだけ。 ……それだけでも問題だと思う。 おやがなかよしなのは、いいことだよ…? そうだけど、だからって…ああ、もう。 …ねぇ、もうしないの? …。 そんなの、いや…。 …でも、エリス。 いや…。 …。 …。 ……もし同じようなことがまた、あったら。 うん…。 …その時はちゃんと、止めて。 キスはとめないよ…? …。 …。 ……キスは良いけど。 それ以上の時は…お願いだから、止めて。 …。 あたしも、その…頑張るから。 …いえっさ。 …。 …ナディ。 …。 つづき。 …なんの? まほうなんかかけなくても…なに? …。 …かけないと、だめ? いらないわよ。 じゃあ…ん。 ……。 …ごまかしちゃ、だめ。 そんなつもりじゃない…。 …だったら。 …。 ……魔法なんか、かけられなくても。 あたしは、あんたが…好き。 …。 これからも、ずっと。 …。 大体、魔法の力なんかであんたを好きになったんじゃない。 あたしは、あたしの意思であんたを好きになったの。 だから、魔法なんて必要ない。 …。 …言ったけど。 ちゃんと聞いて うん、ちゃんときいてた…。 S ó l o T i e m p o エリス。 …うん? …。 ナディのお手伝い、終わったの? …ううん。 お腹、すいた? …。 すいてない? …少し、すいた。 でも、ごはんはまだだよ? うん、知ってるよ。 だけど今日はね? …? ロントとナディの好きなトレスレチェス。 作ってるの?! うん。 やった、やった!! でもね? いつできるの? もう、できてるの? どこにあるの? 食べてもいい? だーめ。 むぎゅ。 ナディのお手伝い、ちゃんとやらないとだめ。 してるよ。 じゃあ、どうしてここにいるの? …。 ん? …つかれちゃった。 疲れちゃったの? うん。 じゃあ、仕方ないね? えへへ。 私の手伝いなら、してくれる? うん、する! トレスレチェ、トレスレチェ! ふふ。 ねぇねぇ、なにすればいい? 今は無いよ。 え、ないの? 今はスポンジが焼きあがるのを待ってるだけだから。 ミルクの じゃあミルクにひたすの、やる、やりたい! うん、分かった。 やった、たのしみ! でも。 でも? 焦がしちゃったら大変だから。 見張ってないとだめなの。 じゃあ、わたしも見はってる! うん。 たのしみ、たのしみ。 ねぇ、ロント。 なになに? 何か聞きたいこと、あった? なんで? そう、思ったから。 うーん。 無い? ねぇ、エリス。 なぁに、ロント。 好き、ってなに? 好き? ただじゃない好きって、あるの? ただじゃない? ただ好きじゃ、だめなんでしょ? ああ、結婚のこと? エリスはナディが好き。 だからけっこん、したんでしょ? うん、して貰ったの。 それってただじゃない好きだったから? え、と…。 ナディも? エリスのこと好きなのは、ただじゃないから? …あ。 ただ好きじゃだめなんでしょ? 好きってなに? ロント。 ねぇねぇ、 ナディに聞いてごらん? え。 ナディ。 …えー。 ん…? ナディにきくの? そう、ナディに聞いて? でも、なぁ。 きっと、教えてくれるから。 ナディが? そう、ナディが。 うーん。 ほら、ロント。 まぁた、さぼってやがるし。 ……。 そもそも。 子供のうちからじゃないと、身にならない。 …。 そうやって、ナディも教えてもらったの? そうよ。 そっか。 だって、ロント。 …なんども聞いてるし。 何かを始めるのに歳は関係ない。 けれど、道理と言うものは幼いうちから教えなければならない。 それこそが、年長者のすべきものだ。 かと言って己の培ってきたもの全てが正しきものとは限らない。 だからこそ、年長者とは、目を濁らせては決してならない。 ナディのおばあちゃんの教え? そりゃあもう、無駄に厳しかった。 うん、知ってる。 …。 で、ロント。 朝、あたしはあんたになんて言った? …畑の手伝い。 そう。 それで今、あんたがしてることは? エリスの手伝い。 そういって抜け出したの、これで何度目? …だって。 エリス、悪いけど傷薬取ってくれる? うん。 ロント、手、見せて。 …。 たく。 どうして言わないのかな、あんたは。 …。 どっかの誰かもそうだったけど。 我慢したって治らないし、むしろ、酷くなるだけだっつの。 それってエリスのこと? はい、ナディ。 さぁ、誰だったかな。 ありがと、エリス。 さ、ロント。 …痛いから、やだ。 放っておくと、もっと酷くなるわよ。 ……。 …潰れてるね。 強情と言うか。 我慢強いと言うか。 誰かと同じだね? さて、誰だろうね。 ロント、手をよぉく洗ってきなさい。 やだ。 ロント。 しみるからやだ。 つか、そんな手じゃエリスの手伝いだってまともに出来ないでしょうが。 その時は洗うつもりだったよ。 その時は、ねぇ。 ほんとだもん。 だったら、さっさと洗ってきやがれ。 今は見はってないといけないんだよ? あ、何を。 スポンジ。 スポンジ? そういや、良い匂いが…。 トレスレチェ、作ろうと思って。 あ、マジで? うん、マジで。 やった。 エリスが作るの、おいしいのよねぇ。 ……。 …て。 あーまぁ、なんだ。 早く洗ってきなさいって。 でも あんたがいない間はエリスが見張ってる。 でしょ、エリス。 うん。 だから、行ってらっしゃい? …いえっさ。 …。 …。 …やれやれ。 ねぇ、ナディ。 うん? ナディも小さい頃、畑のお手伝いしたんだよね? うん、まぁね。 ふぅん? …まぁ、ロントみたいなもんだったけど。 親子? …ねぇ。 …。 …でも、教えてもらった事が結果的に生きている。 今、思えばさ。 …うん。 畑の仕事が、あの仕事に繋がったわけじゃないし。 全ての教えを守れたわけじゃないけど…それでも。 …ナディのおばあちゃんはすごいね。 …。 ナディに色々、教えてくれた。 …ほっとんど、忘れてたけどね。 けど、躰は覚えてたよ。 だからナディは… …あたしは、あんたと逢えた。 …。 生きてこられたから…ね。 …うん。 …。 それに、ちゃんと思い出せた…。 …。 …だから、私もあの子もここにいるよ。 …。 …ナディがいたから。 あんたが駄々を捏ねたから。 …。 あの時は…そりゃあもう、大変だった。 必死だったね。 お互い、ね。 おかげでろくすっぽ、覚えてないし。 ん…。 でも、 …ただいま。 おかえり、ロント。 ちゃんと洗ってきた? …。 じゃ、見せてみ。 …。 うん、これなら良し。 良い子。 …えへへ。 んじゃ、ロント。 薬、つけるわよ。 …。 あ、こら、引っ込めるな。 やだ、やだやだやだやだ! しみるから、や 大丈夫。 …。 痛いけど…大丈夫。 だから、ね? ……。 …ま、沁みるけどね。 ナディ。 はいはい、ごめんなさいねぇ…と。 う……。 大丈夫…大丈夫。 ……。 …よし、おしまい。 ロント、間違っても皮を向いちゃ駄目よ。 新しい皮が出来るまで、いじらないこと。 良い? …いえっさ。 ロント、良く我慢したね。 良い子、良い子。 うん! …。 …。 どう? ん、おいしい。 おいしい! 良かった。 やっぱりエリスが作ったトレスレチェが一番だ。 だね。 ロント、分かってるんじゃない。 うん、分かってる。 よしよし。 でもリリオのもおいしいよ。 うん? 食べたこと、あるの? うん、ある。 て、いつ。 前? 今じゃないね。 あんた、いつの間に…。 ロント。 なに? リリオのと私の、どっちが好き? エリ、う。 嘘は駄目だよ? うそじゃないよ。 今はエリスのが好き。 今は…ね。 上手だね? たく。 ねぇエリス、まだある? あるよ。 食べる? 勿論。 もちろん! て、あんたは働いてないから駄目。 はたらいたよ? 結局、エリスの手伝いもろくすっぽしてなかったでしょーが。 したもん。 おさらと、フォーク、だしたもん。 お茶の支度も手伝ってくれたよね? うん! だって。 あんたはロントに甘い。 やきもち? なんでだ! ふふ。 …たく。 ロント、食べたら手伝いなさいよ。 食べてすぐ動くのはばかがするコトなんだよ? あ? ばか。 …エリス。 私じゃないよ? じゃあ、誰が。 だぁれ? あたしが聞いてるんだって。 ばーか、ばーか。 こら、ロント。 だめ、ロント。 …ごめんなさい。 それに食べてすぐ動くなんて言ってない。 お休み? そう、お休み。 やった。 て、エリス。 一人はつまんない。 おいおい…。 …冗談。 に、聞こえないのがあんたなのよねぇ。 …えへへ。 ……。 ん? なに、ロント。 ロント、口のはしっこについてる。 う。 ふふ。 あ。 …ん? なんで食べるのかな、それ。 …やきもち? いや、だからだな。 ナディにもついてる。 ついてない。 ついてる。 ついてな……あ。 …。 …エリス。 ついてた。 や、だから……てああ、もう。 ねぇ、ねぇ。 …なに。 ナディはエリスが好きなんだよね? あ? 好きなんでしょ、エリス。 …まぁ、そうだけど。 まぁ、なの? …好きよ。 聞こえない。 好きよ、好き。 …なげやり? …。 ん…? …好きよ、エリス。 世界中の誰よりも? 世界中の誰よりも…て、どさくさに紛れて何言わすんだ。 …えへ。 ……。 で。 急になに、ロント。 ナディ。 うん? 好きってなに。 …あ? 好き。 ……。 ねぇ、なに? 好きってなに? …エリスに聞きなさい。 だって、エリス。 だめ。 む。 ちゃんと、教えてあげて? …て、エリス。 あんた、まさかあたしに… うん。 ……マジかい。 マジ。 …あー。 ねぇねぇ、好きってなに? えと、それはだな…。 ナディはエリスが好きだからけっこんしたんでしょ? …。 ちがうの? …違わない。 好きだから、誰よりも好きだからエリスと結婚したの。 ……。 好きだから、してあげたんたでしょ? …? してあげた? エリス、言ってたよ。 してもらったって。 ……エリス。 ……。 エリス、あんたこの子になんて言ったの。 …。 エリ ナディ、どうしたらけっこんしてもらえるの。 …。 ねぇ、ナディ。 ……エリス、あんたには後で話があるから。 ……。 ねぇ、ねぇってば。 ロント。 あたしは、してあげたんじゃない。 …? あたし達は、したの。 してもらったとか、してあげたとか。 そんな片一方の想いでしたんじゃない。 かたいっぽう? あたしは一度だって結婚してあげたなんて、思ったことない。 …。 結婚と言うのはね、ロント。 うん。 空を飛ぶ鳥と同じなのよ。 とり? そう、空を飛んでるあれ。 あんたも良く、見てるでしょ。 なんで鳥なの? 鳥はどうやって空を飛んでる? 羽! そう、羽を使って。 でも、それがなに? 左右のバランスが崩れたら、どうなると思う? バランス? 人の手と同じように左右にあるでしょ、羽は? 片方だけじゃない。 ……。 夫婦とは、一つの鳥になること。 それぞれがそれぞれの羽となること。 結婚とは、それを固く約束すること。 …カマドドリ。 してあげた、とか、してもらったとか。 そんな片一方の想いだけじゃ空は飛べない。 うまく飛べたとしても、ずっとは続かない。いつかは落ちる。 落ちて、それで、おしまい。 ……。 もしもこの話をもっと詳しく知りたいならエリスに聞きなさい。 良いわね、エリス。 …ナディ。 この話、元々はあたしのじゃない。 でしょ。 …うん。 ねぇ、ナディ。 ふーふはみんな、鳥なの? カマドドリ? まぁ、世の中色んな夫婦がいるから。 みんなじゃ、ないわね。 でもナディとエリスはそうなの? そうでしょ、エリス。 …。 エリス、そうなの? …うん、そうだよ。 聞こえなーい。 私は…私はナディと結婚したいと思った。 強く、強く…。 で、あたしもエリスと結婚したいと思った。 …だから。 私達は結婚して…… ん…。 …ロント、貴女が生まれたんだよ。 ふぅん…。 ま、好き好き言ってるだけじゃ到底、出来ないってコトよ。結婚は。 大体、愛だけじゃ腹はふくれないし。 あなたとなら玉葱とパンでもかまわない? 玉葱より芋の方が良いな、あたしは。 ふふ。 …。 ごちそうさま。 もう、良いの? うん、おいしかった。 良かった。 さて。 ちょっと昼寝でも 私もする。 …。 する。 …あーはいはい。 ロント、あんたも 好きって、よくわかんない。 …。 …。 むーー。 ロント。 う? そういうのは多分、人に聞くもんじゃない。 なんで? 聞いたところで、それが自分の欲しい答えになるとは限らないから。 …。 あたしに聞いて、 分かった? ぜんぜん、分かんなかった。 だから、 自分で見つけないと駄目なの。 …むー。 ま。 ちょっと、ずるいかもね。 かも。 大体、あんたが だって、聞きたかったから。 …。 …聞きたかったの。 あんたはいつまで人を試す気だ…。 いつまでも…。 …なんだとぅ? ……えへへ。 たく…。 ねぇ、ナディ…。 …ん。 嬉しい…。 …。 …嬉しい。 それはやっぱり、あの二人だけだと思うよ。 ナディとエリスだけ? ナディとエリスを基準にしたら結婚なんてきっと、出来ないと思う。 あの二人の関係は特別だから。 とくべつ? そう、特別。 ずぅっと一緒にいるのに、いまだにあんなに仲良しなんだもん。 倦怠期なんて言葉、二人には無いみたい。 多分これからも、ずっと無いのかも。 けんたいきって、なに? それになると、ちっちゃなコトで喧嘩ばかりするようになっちゃうんだって。 けんか? ドキドキしなくなっちゃうから。 ねぇロント、ナディとエリスは喧嘩する? しない。 だってなかよしふーふだから。 ふふ、そうだね。 でも、喧嘩には見えない痴話喧嘩なら結構、してそうだけど。 青目のおねーさんは、あの二人にはいつも見せつけられるって言ってた。 ああ、分かるかも。 でも結局、教えてもらえなかったんだね? …? 好きって何か。 自分で見つけなきゃだめって言われた。 …。 リリオは見つけた? どうだろう。 私もまだ、見つけてないのかも。 そうなの? 時だけが知ってる、そんな歌、どこかで聞いたっけ。 …? 思えばあの二人だっていきなり仲良し夫婦になったわけじゃない。 ……。 ねぇ、ロント。 一緒に見つける? リリオと? そう、私と。 うん、見つけるー! じゃあ、一緒にね? やった! あの二人のようにはなれないだろうけど。 でも、あの二人はあの二人だから。 リリオといっしょ、リリオといっしょ! ふふ。 ねぇねぇ、リリオ。 またあのお話、して。 あのお話? まじょの! ああ。 して、して。 じゃあ、ちょっとだけね。 うん! これはロントが生まれる前の…。 …。 人の手によって創られた魔女と、一人の賞金稼ぎの エル・カザドー! …そう、エル・カザドのお話。 |