女は腹に命を宿し。 己の命を懸けて。 産み落とす。 それを繰り返して。 命は続く。 繋がっていく。 …もしも、叶うのならば。 エリス？ ……。 何、見てんの？ …え。 ん？ …なにもみてない。 んー…。 ナディ。 ……。 ナディ。 前も、見てたね。 …！ どこでだったかな。 みてない。 …。 みてないから。 はやく、いこう。 早く行く必要なんて、ないけど？ …。 エリス、先に行かないでよ。 …じゃあ、はやく。 …。 …おいていっちゃうよ。 それはいやだ。 …。 ……。 …ナディ。 ん、今行く。 ……。 じゃ、行こっか。 相棒。 …そう、いってるよ。 S i n a n d W i s h エリス。 …っ。 エリス…。 …いや。 …。 ……。 …本当に？ ……ばか。 本当に、いや…？ …ほんとう、だから。 ん、分かった。 …わかってない。 目、瞑らないでいい…？ ……。 …あんたがいいなら、あたしはいいけど。 ……おもしろくないよ。 面白い…？ …にやにや、してる。 ああ。 ……くされタコス。 …エリスのせい。 ん…。 ……頭の中、エリスばっかりだから。 …。 どうしようも、出来ない…。 …ん…んぅ。 ……。 ……。 ……強情。 ……。 ま、それならそれで…構わないけど。 …ナディ、だって。 ん…。 …つむってない。 エリスが強情だから。 ……いいって、いってない。 うん、言われてない。 ……ずるい。 …。 や…。 ……エリス。 …。 …目、瞑れ？ ……。 …しょうがないなぁ。 あ。 …言ったでしょ？ それならそれで構わないって。 …だめ。 ……。 やだ…。 …素直じゃない。 ……。 でも、かわいい。 ……ばか、うすらタコス。 うん……。 …や、ぁ。 ……かわいい。 ん、ん…。 ……。 ……。 …ふふ。 ……わらわないで。 やっと瞑った、から。 ……ナディの、せい。 …じゃなきゃ、いやだ。 ……ぁ。 …やわらかい。 ……。 …まだ、泣くな？ ……。 これからだから…ね。 …しらな、い。 ……。 ナディ…。 ……ねぇ、エリス。 …え。 キス、どうして目を瞑るんだと思う？ ……。 …本、書いてない？ …。 じゃあ、あたしが教えてあげようか…。 ……ナディ。 なぁに、エリス…。 …ちかい。 うん…。 ちかい……。 …ひとつに、なりたいから。 ……なれないよ。 知ってる…。 なれない…。 …だから、知ってるって。 ……。 …エリス。 ……みえない。 …？ ……けど、あなたをかんじる。 みえてるときより、ずっと…。 …。 だから…。 ……それが、答え？ …。 …そっか。 ぁ……。 教えようと思ったのに…残念。 ……。 エリス…。 …ナ、ディ。 ……感じて欲しい。 …。 あたしも、感じたいから。 …ばか。 だから、知ってるって…。 ……ばか…ばか…。 しょうがない…。 ……せきにん、とって。 責任…？ ……とって。 もちろん…。 ぅ…。 ……あんたが、望むなら。 いくらでも…。 ……。 ……。 ……。 …こら。 や。 …鼻、抓むなって。 いや。 うー…。 …。 …口、塞がられるとやばいかな。 ……。 ん…。 ……。 ……こぉら。 …ぅ。 やばいって、言ったでしょうが…。 ……じぶん、ばかり。 うん…？ …くるしいって、いってるのに。 いつも…いつも。 …あたしは鼻、抓まないけど？ …。 …んん。 ……。 ……。 ……。 ……エリス。 だめ。 …それは、いいんだけど。 まだ、だめ…。 …鼻、抓まないでよ。 わからないから。 …。 …わからないの。 ……。 だから…ぁ。 …夢中になっていると。 …。 息、するのも忘れる…。 ……ナ、ディ。 …息するのも、惜しい。 ……。 エリス…。 …いじわる。 …。 ずるい、ばか、うすらタコス。 …エリス。 ……。 ……泣かすつもり、今はないんだけどな。 …ナディは、わがまま。 …。 わがままで、じぶんかってで…こども、で。 …うん。 いつも、わたしのなかで…あばれて。 …。 いつも、わたしのこと…。 …。 ……わたしのこ、と。 ……エリス。 ばか…ナディの、ばか…。 …泣かないでよ。 ……。 ……泣かないで。 …。 ……。 ……。 ……ねぇ、エリスさ。 …。 子供…。 …。 ……作ろうか。 …え。 悪くないかな…て、さ。 …。 …あんたとあたしと、それから。 ……。 …作ろうよ。 いや。 ……どうして？ …わたしは、おんなだから。 もちろん。 …ナディも、おんなだから。 うん。 だから、 いや。 ……。 そう、言ったね。 ……。 出来ない、じゃなくて。 …できないよ。 わたしたちは、おんなどうしだから… だったらどうして、初めに言わなかった？ …あ。 初めに、言うべきだった。 ……。 エリス。 魔女の力なら できない…！ …。 …できない、…できないよ…。 欲しくない。 …え。 あたしの子供なんか、いらない？ …っ。 いらないか、あたしの子供なんて。 …したく、ない。 ……。 したくない、したくないのに…なのに！ …。 …どうして、そんなこというの。 ……欲しいから。 どうして、どうして…。 あんたの子供が、欲しいから。 ……。 …エリス。 ……いや。 …。 いや、いや…。 …。 いやぁ……！ …う。 ……。 ……エリス。 …ナディ、も。 ……。 おんなじなんだ…。 …同じ？ わたしは、まじょだから。 …。 わたしが、まじょだから…だから、そんなこと…。 …。 わたしのちから、まじょのちから… …ばぁか。 ……。 エリス、あたしの目を見て。 …いや。 エリス。 いや…！ …。 …みたくない。 ナディなんか、もう、みたくない…。 …そんなこと、言わないでよ。 …。 言うな、エリス。 …。 見て…あたしを見て、エリス。 ……。 …見ろ、エリス。 あ……。 ……。 ……あ、あぁ。 ……エリス。 ナ、ディ……。 …魔女の力。 ……。 そんなのの為に、あたしはエリスが欲しいわけじゃない。 欲しかったわけじゃない。 じゃあ、なんで…。 …。 なんでいま、まじょのちからなんて…。 …あんたとの子供が、欲しいと思ったから。 ……。 そう、気付いたから。 な、んで…。 …あんたがきっかけ、かな。 わたし、が…。 見てないって、いつも言い張る。 素直じゃない。 ……。 あたしは、あんたが愛しいから。 だから、叶うならば、あんたとの子供が欲しい。 他のなら、いらない。 ずっと、二人で生きよう。 …。 ……エリス。 …、か。 ……。 ……ばか……ば、か…。 …そう、あたしはばかだから。 ……。 あんたを泣かせるつもりなんて、なかった。 …。 …喜んで、欲しかった。 そんなの…！ ……。 そんな、の……。 …なぁに。 ……ぃ。 …なぁに、エリス。 ……うれしくなん、か。 …ない？ なん、か……。 ……。 ……そんなはず、ない。 ……。 ない…ない……。 …それじゃ、分からないよ。 あたしは、ばかだから。 …う。 だから、エリス。 ……。 …。 ……し、い。 ……。 ……うれしい、…うれしい、よ。 エリス。 ……ナディ…ィ。 良かった。 ナディ、ナディ……。 気持ち悪いって、言われたら。 どうしようかと思った。 …うそつ、き。 嘘じゃない。 …ん。 ……嘘じゃない。 ナディ…。 今すぐじゃなくても、いい。 …。 時間なら、あるから。 たくさん、さ。 ……もし、も。 …。 もしも…。 どんな結果でもあたしの、あんたへの想いは変わらない。 何も、変わらない。 ……ナ、ディ。 …エリス。 ん……。 …。 …。 ……愛してる、から。 ナディ…。 愛してる。 …う、ん。 ……。 ……ね、ぇ。 うん？ …わたしの、こども。 欲しい。 …ばか。 そうじゃない…。 じゃあ、なに…？ …どうし、あ。 ……。 な、ナディ…。 …そろそろ、さ。 ……はなしてる、のに。 一回じゃ、足りない…。 …じぶん、…ばか、り。 ……。 …ナディの、ばか。 んー…。 …ねぇ。 ……。 ねぇ…。 …うん？ …。 エリス…？ ……どうして。 うん。 …どうして、おもったの。 なにが？ …。 …エリス、なにが？ ……こども。 …。 どうして…。 …言ったと思うけど。 …。 …ん？ ……どうして、ほしいの。 …。 ねぇ、どうして…。 …オーケイ、エリス。 あ。 …何度でも、答えてあげよう。 ……ナディ。 欲しいから。 だから、どうしてほしいの…。 あんたを愛してるから。 …あいしてると、ほしいの。 あたしは欲しいと思った。 ……どうして。 ……。 …わたし、なんか。 なんか、じゃない。 …なんで。 あたしも聞いて良い？ う…。 エリスはあたしの子、欲しい？ ……。 …さっき、答えを貰ってなかったような気がするから。 …。 欲しい？ ……。 エリス。 ……し、ぃ。 …聞こえない。 ほ…し、ぃ。 ……それは、どうして？ …。 教えてよ…エリス。 ……うすらタコス。 ん…？ うすらタコス…！ ん…かわいい。 …ん、やだ。 ……キスだけ。 もう、だめ…。 …キスだけ、だから。 もう、たくさんしたから…。 …もっと、したい。 だめ…んん。 ……。 …ふ、ぁ。 ……。 だめって、いってるのに…。 …エリス。 ナディ…。 ……あんたに似た子供は、すごくかわいいと思う。 ……。 かわいい…。 ……。 …ん？ ……かわいくない。 …。 かわいくなんて、ない。 …なんで、不貞腐れ？ かわいくなんて、ないの。 …んー。 ……わたしににてるこ、なんて。 ……。 かわいくないに、きまってる。 ああ。 ……。 まだ、作ってもないのに。 ん…。 …やきもち、やくな？ …！ ちが…あぁ、ん！ …子供が、いても。 や、ナディ…も、う。 …こういうコトするのは、あんたとだけ。 だめ…もう、だめ。 ……腰、反応し始めてるよ。 や…、いわない、…。 ……。 …ばか…ばか…ぁ。 なめて、いい…？ や…っ、…あ、ぁ。 …ねぇ、エリス。 ん、んん…。 …いっそ、いっぱい作っちゃおうか。 は…、…ぁ…。 ねぇ、エリス……そうしようよ。 ば…か……。 エリス。 …。 エリス、何見てんの？ …ん。 ん？ ……なにも、みてない。 何も？ …。 でも、何かは見えてる。 目、開いてんだからさ。 …。 エーリス。 …なにも、みてないよ。 ……。 ……。 んー……。 …おわったの？ うん？ …このこの、しょくじ。 うん、終わったよ。 もう、食べられないってさ。 …。 ……。 ……。 …あの人。 …。 赤ちゃん、いるのかな。 …あかちゃん？ そう、赤ちゃん。 …いないよ。 お腹の中に。 お腹、大きいからさ。 …。 あたしはいると思うな。 だって、ほら。 …？ お母さんの顔、してる。 おかあさん…？ そ。 …どうしてわかるの。 そんな感じがするだけ。 分かってるわけじゃない。 …ふぅん。 …。 ……。 で？ あの人のこと、見てた？ みてない。 …。 う。 まぁ、いいけどね。 ……。 …。 ……。 …気になる？ ならない。 そ。 じゃ、あまり見てるな？ みてないの。 そうですか。 ……。 …。 …ひぁ！ お、と。 …ナディ。 ごめん、ごめん。 触れるつもりはなかったんだけど。 …。 エリスはお腹、弱いんだった。 …わざと。 違うって。 ぜったい、わざと。 違う、違う。 うそつき。 わざと、なら。 …あ。 これくらいは、したい。 ……。 …ね、エリス。 ……。 …ん？ ……はなして。 いえっさ。 …。 さて、行こっか。 今夜の寝場所は星の下だ。 …。 エリス。 ……。 …お腹、どした？ …。 ん…？ …ナディの、ばか。 はいはい。 で、どうかした？ …どうもしない、ばか。 そ。 なら、いいけど。 …。 …。 ……。 …素直じゃない、なぁ。 ナディはもう、だまって。 いえっさ、エリス。 ……。 ……。 ……ぅ。 ……。 ……あかるい。 …。 …おなか。 …う、ぅん。 ……。 …エリ、ス。 ……。 まだ、はやい……。 …。 む…。 …ばか。 …。 …うすらタコス。 む、ぅ…。 …いじわる。 …。 ……ばか。 …ふてくされエリス。 …。 …どこにいくつもりだ？ ……あさ、だから。 そうだねぇ…。 …あさだよ。 ……うん。 …。 …こぉら、どこいく。 …。 …ん？ ……。 …と。 ……きがえるの。 かえるふくなんて、きてないけど…？ …！ じょうだん。 ……ばか、うすらタコス。 エリス、ほら…。 …。 …もどって、おいでよ。 いや。 …。 …ナディもふく、きて。 …。 きて。 あー…わかった、わかった。 …わかってない。 んー……。 …。 …ねぇ、エリスさ。 ……なに。 あかい、あと。 …。 もっと、のこしたかったな。 ばか。 …と。 ……。 おーおー…ふてくされてるなぁ。 …。 …よいしょ、と。 おはよ、エリス。 …おはよう。 うん。 …んーーーーー！ …。 朝だ。 …だから、おきて。 起きたって。 …。 で、エリス。 …なに。 服、着ないの？ 丸見えなんだけど。 …ッ！ まぁ、いいけどね。 ……。 ん？ ……で。 なぁに？ …みないで！ …。 …。 …ふふ。 ……おかしくない。 と。 おかしくないの。 そう、おかしいわけじゃない。 ただ、かわいいだけ。 …。 いつまでたっても。 ……。 あんたはかわいい。 ……かわいくない。 言うと思った。 …。 じゃ、着替えるかな。 ……。 ん、エリス？ …。 わ……。 ……ナディ。 …なに、どした？ …。 やっぱり、もう少しこのまま いない。 …そうかい。 で？ …。 エリス…？ ……おなか。 うん。 …。 …お腹が、どした？ ……おおきく、なったら。 大きく…？ ……わたし、の。 …。 ……。 …食べすぎで、とか？ …。 ……冗談。 …ばか。 名前より、そっちの方が多くない？ 最近。 ……じごうじとく。 はいはい…。 …。 ……あんたが。 ぅ…。 …それが、いいなら。 あたしはそれでいい…。 …ほんと、う？ ん、本当…。 ……。 …でも、急がないからさ。 …。 あんたが決めた時にしよう。 ……う、ん。 ……。 ……。 ……エリス。 ナ……ひぁ！ …。 ……。 …わざとじゃない、んだけど。 うそつき。 ほんとだって。 ばか、うすらタコス。 わざとだったら。 …ぁ。 こうする。 こうしたい。 ……。 …涙目になってる。 …。 …離してって、言わない？ ……いっても。 …言っても？ ……どう、せ。 …そんなことない、けど。 ……。 そんなこと、ない…。 …うそつき。 ……。 うそ…つき…。 …だって、言わないから。 ……。 …暗くしてあげようか？ ……きの、う。 …。 あんな、に……したの、に…。 ……。 した、クセに……。 …どれだけ、したって。 あ、や……。 …足らない。 や、ナディ…。 …今、暗くしてあげる。 ……。 エリ……む。 …。 ……エリス。 あさ、だから。 …。 ……もう、おきるの。 …でも。 だめ。 ……。 ナディ。 …いえっさ。 エリス。 …。 何か食べようか。 折角、町にいるんだし。 …。 何か食べてから出発しよう。 何がいい？ …。 ね、エリス。 …。 エリス。 ……え。 お腹。 空いてない？ …。 ん？ ……。 …エリス？ ……。 お腹、どした？ …ん。 ん…？ …なんでもない。 なんでもない？ ……なんでもないよ。 …。 …ぁ。 ……想像、してる？ …！ 当たり？ し、してない！ そう？ ……。 あたしは…してみようかな。 え。 …もしも、ってさ？ だ、だめ！ なんで？ だめなの。 いいじゃない。 だめっていったら、だめ！ ……。 ナディ…！ …分かった、分かったから。 ……。 …そんな耳まで赤くして。 うるさい、ばか。 …はいはい。 ……。 エリス。 …。 必ず、叶えてあげるから。 …。 あんたが望んでくれるなら。 ……。 ……。 ……。 …ねぇ、エリス。 …？ なに…？ ちょっとやりたいことが出来たんだけど、いい？ …もう、だめ。 それじゃない。 …だまされない。 エリス。 ……。 ……。 …なにが、したいの。 だっこしたい。 …だっこ？ 寝そべって、後からあんたを。 …そんなの、いつも。 いつもとは、違う。 …。 お腹の子供ごと、抱き締めたい。 …。 今はまだ、いないけどさ。 なんと言うか、予行練習かな。 …きがはやい。 だめ？ …まだ、つくるって。 …。 ……。 …。 …すこしだけ、だよ。 いえっさ。 ……。 ……。 …ナディ。 ふふ、あったかい。 …まだ、いないのに。 あんたが。 …。 あったかいのよ、エリス。 ……。 …いのちの、おんど。 ……らしくない。 …あんたなら言いそうだなって。 ……。 ……ナディ。 産みたい…？ …え。 ……あたしの子供、ここに宿して。 ……。 …産んで、くれる？ ……。 ん…？ ……ナディのばか。 …あーあ。 …。 ついてないなぁ。 …。 どうせなら町にいる時だったら良かったのに。 …。 ま、しょーがないか。 天気は人の力じゃどうしようもないし。 …。 ねぇ、エリス。 ……。 …エリス？ もしかして寝てる？ …ねてない。 寝ててもいいよ。 もうしばらく、止まないと思うから。 …ねない。 そ。 じゃ、起きててよ。 一人じゃつまんないから。 ……。 …急ごしらえだけど。 もってくれるかなぁ。 ……ナディのせい。 うん？ ナディがいうこと、きかないから。 む。 …しゅっぱつ、おそくしたから。 そう、なんだけど。 …そうなの。 はい、ごめんなさい。 ……。 …ま、強くならなきゃいいや。 ……。 ……。 …あめのおと。 うん？ しか、しない…。 …そんな事、ないよ。 …。 …あんたの声が、聞こえる。 …。 …あたしの声、聞こえてる？ ……うん。 なら、良かった。 ……。 …ん？ ……こえだけじゃ、ない。 …。 こえだけじゃないよ…。 ……うん。 …。 …こうしてると。 世界に、二人だけ。 …。 エリスとあたし、他に誰もいない。 ……。 なんて、さ。 ……。 …エリ …。 ……。 …？ ナディ…？ ……向こう、光った。 え…？ …しばらく、止まないかもしれない。 あしどめ…？ そうなる。 …どうするの？ これ以上強くなったら、さすがにやばいかな。 布の屋根なんて、ひとたまりもない。 …。 けど…丁度いい雨避けもない、し。 どうしたもんかな。 ……。 …あたしのせい、か。 ごめんね、エリス。 …だいじょうぶだよ。 うん？ …あれは、こっちにこないから。 …。 こない…。 …分かった、あんたを信じる。 ん……。 ……。 …あ。 ……向こう、ひどい事になってるかもしれない。 ……。 雷、怖くない？ ……ナディが、いるから。 …そっか。 ……。 ……。 ……ナディ。 ……。 ナディ…。 ……。 ナディ。 ……。 ナディ、ナディ。 …なに？ ……。 なに、エリス？ …どうしてへんじ、してくれないの。 したよ。 …してくれなかった。 ……。 ナディ。 …ごめん。 気を取られてたかもしれない。 …いや。 …。 いや。 …うん、ごめん。 ……。 言ったっけ。 …？ あたし、雷が苦手でさ。 昔、酷い目に遭ったから。 …うん。 だから…… ぁ…。 ……いやって、言わないでよ。 …。 …言わないで欲しい。 ……いわない。 ん、よかった…。 ……。 エリス…。 …ナディ。 ……。 ……。 ……。 ...Crucemos por la noche tormentosa. （…嵐の夜に交わりましょう。） …？ Unidos por esta intensa pasión... （この激しい情熱を重ねて…。） …エリス？ ...Yo rezaré para volver a verte. （…私は祈るの、あなたに逢う為。） エリス、それ……。 …しぃ。 ん…。 …。 …。 ......No puedo hallar a nadie como tú. （…私は見つけられない、あなたのような人を） ……。 Nunca hallaré a nadie como tú.... （決して、出逢えないの…） ……。 わたし、は。 ……。 みつけられない…。 …。 ……あなたのようなひとを。 ……。 もう、にどと……。 ……。 ナディ……。 …びっくりした。 …。 あんたがそんな歌、歌えるなんてさ。 知らなかったな。 …。 …思えば。 逢った頃に比べたら、大分…。 …ナディが、おしえてくれたから。 あたしより本にじゃない？ ううん…。 …。 …ナディだよ。 いつもナディがおしえてくれた…。 …。 …。 …それで。 そんな歌、どこで覚えたの…？ …。 エリス…？ ……そんなの。 ん…。 …いまは、どうでもいいから。 ……。 どうでも、いいの…。 …そっか。 それもそうだ。 ……。 …ねぇ、エリス。 ……なぁに。 もう一度、歌ってよ…。 …。 …もう一度、だけ。 うん……。 ……。 …ぁ。 ……。 ナ、ディ…。 …触ってたい。 ……。 あんたのお腹は…あったかい。 ……。 お腹だけじゃないけど…だけど、今は。 …。 …エリス。 ……いまだけ、なら。 …。 いまだけ…だから。 ……いえっさ。 ……。 ……。 ……。 ……ん。 ……。 エリス…。 ……おきた？ え…。 ……。 …ああ。 そっか…。 …ねぇ、ナディ。 ん…。 …かみなりのひかり、は。 いねを、はらませるの…。 いね…稲？ ……とおいくにでは、そういわれてたんだって。 …孕ませる、ねぇ。 ……。 …でも、なんで？ ……しらない。 あぁ、そう…。 …。 …ま、どうでもいいか。 ……あめ。 …。 …よわまってきたね。 うん…そうだね。 ……。 そろそろ、出発出来るかな。 …んぅ。 ん…？ ……ナディ、もう。 ……。 …おなか。 ……ああ。 …。 ……。 …ナディ。 ……。 もぅ……。 …イリャパが孕ませる、ね。 ……ぁ。 ……。 ナ、ディ…。 ……あんたを孕ませるのは。 や、だめ…。 ……イリャパ、じゃない。 ……。 …。 ……わたし、は。 …。 いね、じゃ、ないよ…。 …。 ……じゃない、から。 だから……。 …。 ……ここじゃ、いや。 ……。 いや……いや…。 …しないって。 二人で…いや、あんたを泥だらけになんて、したくない。 ……。 したくない、けど… だ…んん。 ……。 ……ナ…、ん……。 ……。 …………ィ。 …さて、行こっか。 これくらいなら進め…いた。 ……。 …ごめんって。 ……ばか。 髪の毛、引っ張らないでよ…。 ばか、うすらタコ… ……。 ……。 …ごめん？ ……もう、ナディなんてしらない。 …。 …しらない……しらないから。 ……。 ……。 …エリス。 ……ほんとうに、しらない。 …。 …。 ……。 ……。 ……エリス。 …。 知らなくても、構わない。 …ぁ。 ……それでもあたしは、あんたを。 離さない…離すつもりなんて、ないから。 ……。 …それだけ、知っておいてくれればいい。 …。 だから、エリス。 ……いや。 …。 それだけじゃ…。 ……良かった。 う…。 …好きよ、エリス。 ……。 …好き。 ……。 ……。 …ね。 ……ばか。 …はいはい、ごめんね。 ……き。 …。 ……すき、だいすき。 …うん。 ……、て。 うん、なに…？ …。 …なぁに、エリス。 ……なんでも、ない。 …。 ……。 …さぁて、行こっか。 ……いえっさ。 …もしも、叶うのならば。 誰よりも好きなこの人の命を。 何よりも愛しいこの人の命を。 この身に。 そう、思うのは。 願ってしまうのは。 魔女である私の、 違うよ、エリス。 …え。 ……。 ナディ…？ なんとなく、言いたくなった。 ……。 なんでかな。 …わからないよ。 そりゃそうだ。 何しろ、あたしでも分からないんだから。 …。 でも、違うから。 ……。 さ、また天気が崩れる前に行こっか。 エリス。 …いえっさ、ナディ。 |