はい、これ。


    あ、何これ?


    餞別代り。


    餞別?
    あんたが?


    そのままだと全くの丸腰でしょう、貴女。


    …。


    同じ型のもの。
    本当、古いの使ってるわよね。
    使えるのを探すの、大変だったわ。


    んなこと言ったって、仕方無いでしょ。
    それしか無かったんだから。


    ナディ。


    あー?


    そもそもどうして銃なんて持っていたの?


    今更、何。


    あんなもの、子供が持っているような物じゃないでしょう?


    かもね。


    で、どうして?


    起きたら、置いてあったから。


    置いて?


    頭の上に。
    ご丁寧に弾と一緒に。


    ……。


    誰が置いたのか、そんなのは知らない。


    気にはならなかったの?


    別に?
    貰える物は、何でも貰うだけ。
    それが銃であろうとも。


    …貴女らしいわね。


    どーいう意味だ。


    そのままの意味。
    で、そのままその銃を持ち続けたと?


    無いよりはマシだと思って、持ってた。


    子供の体じゃ重かったでしょうに。


    重かったわよ。
    おかげで足も遅くなった。


    …。


    けど、手放すもんかって思った。
    自分の身は自分で守るしか無かったから。


    …使えたの?


    いいや、全然。
    だから足を使う時はどっかに隠した。


    ……。


    寝る時は懐に抱いて寝た。
    なんだか安心するような気がしたから。
    勿論、外からは見えないようにしてね。


    …そう。


    それがいつの間にか手に馴染んで、商売道具。


    ……。


    ま、おかげでエリスと逢えたし。
    銃以外のものを抱いて、安心して、眠れるようになったし。


    …その話、あの子には?


    あんたに話すのに、エリスに話してないわけが無い。


    …あ、そう。


    でもあんたが餞別をねぇ。


    貴女だけの為じゃないわよ。


    あーそうかい。


    馴染んではいないでしょうけど。
    それでも無いよりはマシでしょうから。


    ま、ね。


    …。


    …。


    …大丈夫なの。


    何が。


    あの子。


    ……。


    ナディ。


    大丈夫。
    エリスはそんなにやわじゃない。


    けれど…


    二つの命を一つにして、生んだんだから。


    …。


    やわなわけ、無い。


    …貴女はそれで良いのね。


    良いも何も。
    あたしから言い出したんだし。


    …。


    昔のペースで行く必要も無い。
    今は今のペースで行けば良い。


    あの子に合わせて?


    羽と言うのはね、ブルーアイズ。


    …羽?


    どっちかの羽が勝手をしたら、飛ぶどころか、落ちちゃうのよ。
    それはもう、真っ逆さまに。


    …貴女らしくない、言い回しじゃない。


    あたしのじゃないから。


    …。


    …エリス、未だかなぁ。


    …。


    あのさ、ブルーアイズ。


    …何。


    若しもそん時が来たら。
    あたしもおしまい。


    …は?


    エリスを一人にさせるつもりなんて、全然無いし。


    ナディ、それは…。


    あたしの命は、エリスのもの。
    だから。


    …後を追うって事?


    違う。
    還るのよ。


    還る…?


    そ。


    ……。


    あたしはエリスに命を貰った。
    だからその時は、あたしはエリスに還る。


    ….


    でもって、旅を続ける。
    ずっと、二人で。


    …呆れた。


    どうぞ、ご勝手に。


    全く、貴女って人は…。


    …。


    でももしも、貴女が先だったら?
    その時は


    エリスはあたしだけのものだから。
    絶対、誰にもやらない。


    ……。


    …お。


    ナディ。


    エリス、遅いじゃない。


    これ。


    これ…て。


    ポンチョ。


    どうしたの、これ。


    作ってたの。


    誰が?


    ナディのお嫁さんは、誰?


    エリス。


    旅するナディにはポンチョが良く合うの。


    ……。


    だから。


    …そっか。


    着てみて。


    うん、勿論。


    ……。


    …お、ぴったり。


    ナディの事なら、何でも知ってるから。


    はは。
    ありがとね、エリス。


    どういたしまして。


    本当、良く合ってるわね。
    それ。


    まぁね。


    エリス。


    なに、ブルーアイズ。


    これは貴女へ。


    …?
    なに?


    餞別。
    食いしん坊が一緒だと、大変でしょう?


    うん、そうなの。


    て、おい。
    何の話だ。


    食費、かしら。


    いつだって貧乏。


    つか、人を大食漢のように言うな。
    そこまで食べないでしょーが。


    えへへ。
    ありがとう、ブルーアイズ。


    どういたしまして。
    気をつけてね。


    うん、ありがとう。


    たく。


    ナディ。


    あー?


    行こう?


    …。


    …行こう?


    よし。
    じゃ、行こっか。


    うん、行こう。


    ナディ、エリス。


    ん?


    なに?


    教えてくれて、ありがとう。


    黙って言ったら、


    後で何言われるか分からないから、だって。


    良く分かってるじゃない。


    ふん。
    じゃあね、社長(ブルーアイズ)


    元気でね。


    貴女達も元気で。
    それからナディ、責任の事、忘れないでね。


    …へいへい。


    じゃあ、行ってらっしゃい。


    …ん。


    ん、行ってきます。








    さぁて、先ずはどこへ行こうかね。
    相棒。


    おばあちゃんのところ。


    ばあちゃん?
    サルマの?


    うん。


    なんでまた?


    二人が初めて逢った場所だから。


    …。


    だから。


    …でも。


    二人の想い出はそこから始まったから。


    …。


    だから、ね?


    …なるほど。
    それは良いや。


    えへへ。


    んじゃとりあえず北、だ。


    南じゃないね?


    うん、南じゃないね。


    逆だね。


    うん、逆。


    でも、ナディと一緒なのは一緒。


    うん。


    あの子の空も、青いかな。


    さぁて、どうかな。
    でも空はどこまでも続いてるから。


    ん。








    …。


    …。


    へへ。


    何がおかしいの?


    空、高いから。


    …。


    うん、やっぱり届かない。


    届かないね。


    でも太陽になら届くよ。


    …。


    ほら。


    私は太陽じゃないよ。


    例え?


    …。


    伸ばして、伸ばして。
    やっと届いたんだって。


    鈍感、だから?


    そ。
    だから実際はそんなに伸ばさなくても届いていたんだって。


    …。


    ウィニャイマルカ、かぁ。
    楽しみ。


    …。


    ねぇ。


    うん?


    また、話をしてよ。


    話?


    エル・カザド。


    もう何度もしてるじゃない。


    面白いんだもん。
    飽きない。


    …。


    魔女、ウィニャイマルカ、魔女を追う者、リヴァイアサン、それから。


    希望と言う名の太陽。


    うん。


    好きだね。


    うん、好き。


    ウィニャイマルカに行ったら、どうするの?


    どうもしない。


    行ってみたいだけ?


    うん。


    と言うより、旅をしたいだけなんだろうけど。


    えへへ。


    …本当にそっくりだね。


    何に?


    貴女も良く知ってる人達に。


    そうかなぁ。


    …。


    なに?


    ううん。
    それで、とりあえずどっちへ行くの?


    南。


    …。


    ウィニャイマルカと言えば、南。


    でもそれは二人が出逢った所から見たら、だよ。


    え?


    二人が出逢った町はここからずっと北。


    あー…。


    どうする?


    まぁ、いっか。
    んじゃ、二人が逢った町に行ってみよ。


    …。


    そっから南に行けばいい。


    …別にそんな事しなくても良いんだけど。


    え、何?


    ううん。
    じゃあとりあえずは北?


    うん、北。


    でもどうやって行くの?


    歩いて。


    干からびちゃうと思うけど。


    やっぱり?
    でもま、何とかする。


    なんとか、ね。


    そ、なんとか。


    …。


    あーー。


    楽しい?


    うん、一人じゃない。


    …。


    一人旅は無しって太陽が言ってた。


    …。


    それに、今頃。


    今頃?


    空の下だ。


    …?


    んーー。


    …


    高いなぁ、やっぱり。


    低かったら、怖いと思うけどな。


    あはは。
    じゃ、行こっか。


    そうだね。


    て、違うよ。


    違うって?


    そーいう時は、さ。








    そういやさー。


    なぁに?


    あんたは何を言おうとしたの?


    ?


    ほら、あたしが旅をしようって言った時。


    ああ。


    結局、聞きはぐっちゃったから。


    エリスに夢中になっちゃったから?


    …う。


    一生懸命、がっついてたね?


    エ、エリスだって…!


    うん、私もだから。


    …。


    お互い様?


    うぅ…。


    …かわいい人。


    て、エリス!


    ん?


    あ、あたしが聞きたいのはだな?!


    エリスが言おうとした事?


    …分かってるなら、苛めるな。


    分かってるから、だよ?


    ……。


    わざと。


    …ですよね。


    ふふ。


    ……。


    ん…?


    …かわいいのは、あんただ。


    なに?


    ……なんでもない。


    聞こえたけど。


    …。


    …聞こえたよ?


    …。


    ふふふ。


    ……いいんだいいんだ、もう諦めてるし。


    …。


    …けど。
    ああ、くそぅ…。


    ねぇ、ナディ。


    …なによぉ。


    聞きたい?


    あ?


    エリスが言おうとした事。


    そりゃあ…気になるし。


    そっか。
    じゃあ…。


    …。


    …。


    …エリス?


    ねぇ、ナディ。


    え、何?


    …欲しい?


    へ?


    欲しい?


    て、何を?


    …。


    エリス?


    …もう、一人。


    もう…?


    一人。


    …え。


    ……。


    エ、エリス…?


    ……欲しい?


    あ、いや…。


    ん…?


    …てか、まさか。


    …。


    え、ええぇ。


    …ふふ。


    や、でも、そ、そういう事は


    …したよ?


    し、したけど!
    けど、力は…


    だから、いないの。


    は…。


    …今、は。


    今、は…て。


    …。


    え、えと…。


    …。


    …あー。


    …。


    一人で…十分、かな。


    十分…?


    あんたは…その、欲しいの?


    …。


    …エリス?


    欲しいって言ったら…?


    え、マジで?


    …マジ。


    え、ええーと…。


    …。


    …じゃ、じゃあ。


    本当…?


    や、でも、躰の調子とかあるし。
    それにもうそんな歳でもない、し…。


    …関係無いよ。


    いや、でも…


    …ナディは今でも若いから。


    …。


    …一生懸命だし。


    …。


    …。


    ……悪かったな。


    褒め言葉。


    に、聞こえないって…。


    …。


    けど、真面目な話。
    あたしは、ん。


    …そんなナディが好き。


    …。


    …本当はね。


    …?


    ナディと一緒だったの。


    …あたしと?
    て、あたしは


    旅の話。


    …あ。


    目が輝いてるナディが…って言いたかった。


    …。


    言いたかったけど、言われちゃったから。


    …ああ。


    だから今言うね。


    …別に良い。


    言わせて?


    …。


    ナディ。


    …仕方無いなぁ。


    良い?


    どうぞ。


    やった。


    …。


    ナディ。


    うん。


    目が輝いてるナディが、好き。


    …ありがと。


    だから、行こう?


    …。


    ナディ。


    …よし。
    行こう、エリス。


    うん。


    て、もう行ってるけどね。


    今度は北だね。


    そ。


    おばあちゃん…。


    …。


    …。


    エリス、さ。


    …ん?


    その、本当に欲しいなら.…。


    …ううん、もう貰ったから。


    …。


    だから…十分だよ、ナディ。


    …そっか。


    …。


    …エリス。


    ん…。


    ……好きだよ、エリス。


    うん…私も好き。
    ナディが大好き…。


    …。


    …。


    …よし。
    行くか。


    もう、行ってるよ。


    良いんだって。


    良いの?


    そう、良いの。


    そっか。


    エリス。


    ナディ。


    二人が始まった場所へ。


    始まった場所へ。










    そーいう時は、さ。
    こう、言うんだよ。










    「「「いえっさ!!!」」」















    r o m a n e s q u e















   鼠と猫。


   …はい?


   東の小さな国で以前、こんな実験が行われたの。


   実験…?


   雌の卵子を掛け合わせる実験よ。


   卵子を…?


   そして、それは成功した。


   けど、卵子同士では受精出来ないんですよね?


   ええ、然うよ。
   普通の卵子ならば、出来ないわ。


   普通の…じゃあ。


   卵子の特定の遺伝子パターンを精子のそれに改変するの。


   …。


   卵子になる前の呼び方を、貴女は知っている?


   知りません。


   卵母細胞、と言うそうよ。


   …。


   それが卵細胞になって、最後には卵子と呼ばれるものになる。
   それまでの過程を生物学的に説明するのはこの際、割愛するわ。


   …受精は普通、精子があって始めて起こるんですよね。


   ええ。
   だから通常は男性と女性の交わりでしか、有り得ない。


   卵子と卵母、それについては?


   ゲノムインプリンティング。


   ゲノム…?


   簡単に言えば、卵子と精子には遺伝子の働きが役割として刷り込まれているらしいわ。
   然う、作られた時に。


   …。


   だけど、非成長期卵母細胞ならばそれが無いらしいの。


   …。


   何かしらの技術を用いて精子のパターンに変換された卵母細胞を、未受精卵に移植する。
   私はこういった方面の学者では無いから、うまく説明は出来ないけれど…。


   とにかく、それを受精させれば…と言う話なんですね。


   そんなまとめ方をしてしまうのは、乱暴すぎるけれど。
   でも、然うでしょうね。


   私も詳しくありませんから。
   そんな話があったのだって、知りませんでしたから。


   魔女と、卵子だけで生まれた子。


   …。


   …卵子だけで生まれたマウスは普通の受精卵で生まれたマウスよりも、寿命が長く免疫率も高いそうよ。


   ああ、分かる気がします。
   あの子は似てるだけで済まされないところがありますから。


   ええ、本当に。
   ただ体格が少し小さいそうよ。


   ああ、それは少し気にしていました。
   けどそれを補っても余るほどの体力があるんですけど。


   手、焼いていたわ。
   誰に似たんだ、て良く言っていた。


   ふふ。
   それで。


   うん?


   猫、はなんでしょう?


   …猫の交尾を知っている?


   猫の…?


   人間の構造とは違うのよ。


   やり方は一緒ですよね?


   …そう、なんだけど。
   可愛い顔して結構、言うわね…。


   伊達にあんな父を持っているわけではありませんから。


   …貴女、若しかして。


   実践はありません。
   今のところは。


   今のところは、て。


   無言で銃を突きつけそうで。


   相手は居るの?


   居ませんよ、未だ。


   そ、然う。
   …大変ね、リカルドも。


   それで違いってなんですか?


   …人の排卵は一ヶ月に一度でしょう?


   はい。


   けれど猫は交尾の刺激で排卵が起こるのよ。


   へぇ。


   だから妊娠率が高いの。


   もしも人間がそれだったら、大変ですね。
   避妊、しっかりとしておかないと。


   え、ええ、然うね。


   ……つまり。


   …。


   それらをしたんですね、あの二人。


   …可能性の話だけれど。


   でも、それしか無いでしょう?
   多分。


   …問題はどうやって、だけど。


   魔女の力を使うしかありません。
   普通の人間では無理ですから。


   それは然うなんだけれど…。


   ああ。
   確かに普通の形状では無理ですね。
   中に入らないと。


   ……リカルド、同情するわ。


   けど形状を変化させるのだって…魔女の力を使えば。


   ええ、簡単にとは言わないけれど、出来るかも知れない。


   たとえ、何かしらの後遺症を残す事になっても。


   …ナディの左手はそれのせいかも知れない。


   エリスの躰が弱くなったのも、ですね。


   …けれど、そうまでしても。


   エリスは欲しかったんです。
   ナディとの証を。


   そんな事しなくても、ナディはエリスの傍に居るわ。


   それでも、です。


   ……はぁ。


   許せませんか?
   魔女の力を使って人間と言う倫理を、いえ生物の根源を破壊する事を。


   …いいえ、この際そんな事はどうでも良いわ。


   良い、とは言えない気がしますけど。


   ……。


   あ、でも。


   …何?


   形状を変えたのなら、ナディは今でも。


   …。


   …でもそんな風には見えないなぁ。


   貴女って子は…。


   はい?


   …いいえ、良いわ。
   若しかしたらエリスの力に反応して起こるのかも知れないわ。
   だとしたら説明がつくでしょう?


   ああ、そっか。


   …で。


   はい。


   あの子にその力は、あるの。


   …。


   リリオ。


   …ブルーアイズ。


   うん?


   あの子はやっぱり、ナディとエリスの子供なんだなって。
   思うの。


   ……。


   ブルーアイズの話を聞かなくても、やっぱりあの子は。
   方法とか、そんなの、どうでも良くなるくらい。


   …良く、似ているものね。


   ナディにもエリスにも、本当に似てる。


   あと、リリオ。


   え?


   あの子の貴女への懐きぶりを見ていると、貴女の小さい頃を思い出すわ。


   私の?


   貴女もナディとエリス、とりわけエリスには良く懐いていたから。


   ええ、大好きでしたから。
   それは今も変わりません。


   …。


   魔女の狩人と魔女の子。
   これからどうなるか分かりませんけど。


   …今のところ、その力は現れないのね。


   私が知らないだけかも。


   …怖い事、言わないで。
   若しもあの力が世の中に知られたら…。


   ローゼンバーグみたいなのが?


   …無いとは言い切れないわ。


   けどあの人、ただの子供でしかもロリコンにしか見えなかったけどな。
   今、思えば。


   ……。


   あまり眉間に皺を寄せていると残ってしまいますよ。


   …見えないでしょうに。


   あの子の力についてはエリスも気にしているみたい。


   …。


   今でこそ、少しは自分の一部として捉えられるようになってきたけど。
   でも、今でも…ううん。


   …。


   ナディが居るから。
   ナディがその力をもひっくるめた、エリスの全てを変わらず愛しているから。
   だから。


   …凄いわよね。
   人の思いは移り変わっていくものなのに。


   でも、それがあの二人の普通だから。


   ええ。


   けどブルーアイズ、そんな事を言ったら浮気願望があるように聞こえるよ。
   まぁ、人なら誰しもが少なからずはあるのかもしれないけど。
   優秀な遺伝子を残す為に。


   …ああ、この子は。


   父も私なんか気にせずに誰かと結婚…は、向かないかな。
   まぁ、結婚なんて形に捕らわれる必要もないし。


   …兎も角。


   はい。


   あの子の事、宜しくね。


   私が?


   だって、懐かれているでしょう?
   今更嫌とでも言うのかしら?


   …うーん。


   魔女の力さえ、押さえていてくれれば。
   後は好きにしても良いわ。


   私は見張りですか?


   有体に言えば、ね。
   でもそれだけでは無いわ。


   うん?


   貴女達を見ていると、昔のあの子達を見ているようなのよね。


   ええ。


   似てはいないのだけど。


   似てませんね。


   けど、どこか似ているのよね。


   だとしたらあの子に要因があるのかも。
   何しろ、二人分だから。


   ああ、然うかも知れないわね。


   …。


   じゃあ、リリオ。
   体には気をつけて。


   ごめんなさい、ブルーアイズ。


   ん?


   仕事、投げ出してしまって。


   ああ、それならば大丈夫よ。
   何とかなるから。


   ベックマン?


   貴女ほどじゃなくても、優秀には変わりないから。
   それに。


   それに?


   責任、押し付けておいたから。


   けど、まんまと逃げられてしまった?


   然うなのよ。
   親子して、でしょう?


   ふふ。


   さて、そろそろ日常に戻らないと。


   ねぇ、ブルーアイズ。


   なに?


   貴女もいつか、


   然うね、いつか。
   けど“大人”は何かと大変なのよ。
   責任があるから。


   それだとナディが無責任みたい。


   ふふ。
   じゃあ、また。


   はい、また。








   あ、終わった?


   待ってなくても良かったのに。
   こんなコトして、またナディに怒られるよ?


   よ、と。
   大丈夫、ナディはエリスには弱いから。


   そうだけど。


   あー。


   どうしたの?


   ごはん、食べてくれば良かった。


   どうせ、考えなしだったんでしょ?


   エリスのごはん、美味しいのに。
   ナディ、全部食べちゃっただろうなぁ。


   食いしん坊だから?


   そうなの。


   タコスでも食べる?


   それよりリリオのごはんがいい。


   だーめ。


   えーなんでー。


   なんでも。
   タコスでも食べる?


   うーん…。


   お腹と背中と、くっついちゃっても知らないよ。


   …しょーがない。
   タコスにしよ。


   アミーゴ?
   それとも?


   青い目のおねーさんがおっかないから。


   ふふ。
   それじゃあ…。


   ゴーゥ。


   …。


   れ、リリオ?


   ねぇ。


   なぁに?


   やっぱなんでもない。


   んー…ま、いいや。
   早く行こ、リリオ。


   うん。