…。
ナディ。
…ん。
あった。
…。
あの時の、家。
…そっか。
…。
…。
…まだ、あったね。
誰も手入れなんてしてないだろうにね。
…。
なんて言って、誰か住んでたらどうしようかな。
…多分、誰もいないと思う。
気配、無し?
うん。
ん、良かった。
…。
…。
…どうするの?
行くよ。
…。
決めたからね。
…うん。
何よ、その顔は。
ん。
引き返したいって言うのなら今のうち、だけど?
…。
…エリス。
……ナディ。
…。
ナディ…。
…こら、歩き辛いって。
…。
……あのさ、エリス。
…。
川、飛び込まないでよね。
…? 川…?
やむえず飛び込まないといけない時はその前にちゃんと言うこと。 オーケイ?
……トカゲが流れてきた時、とか?
そう。 いえっさ?
…いえっさ。
…。
…。
……掃除、しないとだめかな。
掃除…?
埃、溜まってるとこでは…ね。
…。
…何。
意外ときれい好き?
意外とはなんだ、意外とは。
…えへへ。
全く、失礼なとこは逢った時から変わんないんだから。
失礼じゃないよ?
十分、失礼だっつの。
ナディにしか言わない。
なお、たちが悪い。
掃除、しようね?
ちゃんとやるのよ?
ナディも。
いちいち返して。
…嫌いになる?
なんでそんな事ぐらいで。
…なら、良いの。
…。
…。
あんたを、さ…。
…ん。
埃にまみれたところで、抱きたくないのよ。
…。
だから、ね。
…同じ。
…。
ナディを埃まみれなところでなんて…いや、だから。
…。
……。
…エリス。
…。
腹ごしらえもちゃんとしないと。
…腹?
お腹すいてたら、何も出来ないでしょ?
……。
食い意地張ってるとか、言わないでよ。
…言わないよ。
そ。 なら、良し。
…。
うわ。 なーんか、一雨来そうだなぁ。
あの時と一緒だね。
あん時はもう、降ってたけどね。
そうだった。
…一寸、急ごうか。
うん。
よし。 じゃ、ゴーゥ。
ゴーーゥ。
……あ、う…う。
………。
エ、エリ…くぁ…ぁッ。
……くるしい?
ぁ…ぁ…。
…くるしいよね。
……エ、リ…。
……ごめんなさい。
……。
こんなおもいを、させて……で、も。
……、ス。
…あ。
き、め…た、から…。
……。
…きめ、た、の。
……ナディ。
だ、から……へ…ぃ…き…。
…うそつき。
あ゛、ぁぁ…あっぁぁ゛……。
……。
……げ…る…。
…。
あ……げ………ぅ、か…ら…ッ。
………う、ん。
…あの時。 彼女があたしの腹の中に手を“埋めて”欲しいと言ったものは。
子の種なんかでは無く、あたしの。
…。
…ディ。
…。
ナディ。
…。
ナディ。
…お。
こっちは終わったよ。
あ、うん、分かった。
…。
こっちはあともう少し。
敷布も洗濯したいけど…乾かないかなぁ。
日、傾いてきてるし。
通り雨だったよ?
うん。 それでも夜までには
良いよ、それでも。
でも夜どうするのよ。
今夜じゃなくても良いから。
…。
…ずっと、待ってたから。 だから…一日ぐらい、大丈夫。
エリス…。
…ね、ナディ。
…。
……だめ?
ん、いや……。
……ナディ?
あ、えと…。
待てない…?
そ、そうじゃない、けど…。
ん…?
ただ、一緒に寝ようと思っていたから…。
……。
…する、しない、関わらず。
……大丈夫だよ。
え…?
…いつも、使ってる毛布があるから。
…。
それ、使えば良いの。
……それ、言うなら。
…?
別に良いんじゃないか…て。
…。
…今夜、でも。
あ。
で、でもまぁ、今夜は…。
…。
……エリス。
…。
……洗おうか、折角だから。
…うん。
よし、そうと決まれば。 エリス。
うん。
私が手をほんの少し動かしただけでも彼女は悶え苦しんだ。 それでも彼女は私の腕を掴んで、それを赦した。 躰が焼かれてしまいそうなひどい熱の中で、私は。
ん、これで少しはきれいになったかな。 どう、エリス。
上出来。
この、偉そうな。
えへへ。
んじゃ手ぇ洗ってごはんにしようか。
わーい。
心のこもってない返事、ありが
私が作るね?
…。
うん?
…わぁい。
嬉しい?
…聞くな。
おいしい方が良い?
わぁるかったなぁ、相変わらず下手で。
好きだから、大丈夫。
…味覚音痴。
ありがとう。
…まぁ、良いんだけどね。
じゃあナディは
毛布、取ってくるわ。
…。
ん?
…ううん、行ってらっしゃい。
…。
…。
エリス。
…なに? あ…。
…行ってきます。
…。
まぁ、普段ではあまりないやり取り…だし。
…みたいだね。
なに。
新婚夫婦。
…。
…ふふ。
…じゃ、行ってくるから。
うん、行ってらっしゃい。
帰ってきたら手伝うから。
うん。
…。
…。
…。
…どうしたの?
いや、なんか凄い照れる…照れた。
…。
え、えと、行ってきます。
……かわいい。
Sin ti me siento tan sola.
あなたがいないと、わたしはこんなにもひとりぼっち。
Sin ti no puedo más.
あなたがいないと、どうにもできないの。
Sin ti....sin ti.....yo..
あなたなしでは…あなたなしでは…わたしは…。
ただいま。
…。
エリス?
…おかえり。
ん、ただいま。
毛布、大丈夫だった?
少しだけ湿ってたから干してある。
夜までには…まぁ、なんとかね。
ひどく濡れてるわけじゃないから。
そっか。
どう? 何を手伝えば良い?
まずは火を起こして。
いえっさ。
それから、お芋の皮むき。
ん、任せて。 水汲みは?
良い?
もちろん。 後は?
あとお皿。 折角だから。
ん、りょーかい。 でもその前に。
…?
……。
…なに?
大丈夫そうね。
…。
ぼうっとしてたみたいだから。
…してた?
一度じゃ気付かないくらいには、ね。
…。
…大丈夫? ぼうっとしたまま料理したら、危ないわよ。
うん…大丈夫だよ。
なら、良し。
……。
なに、作るの?
プラト・カンペシーノ。
おー。
嬉しい?
うん。 あれ、おいしい。
ナディが好きなの。
うん、好き。 でも作れるの?
うん。 本で読んだから。
へぇ、それは凄い。 けど一発勝負かぁ。
だめかな。
いや、エリスなら大丈夫でしょ。 あんたは意外と料理がとても上手だから。
意外じゃないよ?
はいはい。 特にジャガイモのトルティーヤなんて、本当にうまいもんね。 卵が無いと出来ないけど。
ナディが褒めてくれたから。
単純でこっちも楽。
お互いさま。
あはは、そうかもねぇ。
でも卵が無いの。
んー…まぁ、それは仕方が無い。 旅には向かないしね。
それでも良い?
もちろん! うーん、楽しみ。
…。
んじゃ、ちゃっちゃと起こしちゃおうかな。 でもって、剥いちゃおう。
うん。
…。
…。
…あのさ、エリス。
ん…。
あたし、あんたのごはんを食べないともう、やっていけないと思う。
…。
そりゃあ毎食なんて、言わないけどさ。
…。
…それだけ、なんだけど。
…。
さ、さて…。
…私もだよ。
……。
私もナディのごはん食べないと…だめなの。
…あまりおいしくないのに?
ううん、おいしく出来る時もちゃんとあるよ。 ナディはただ、不器用なだけだから。
焦げたソーセージが良い例?
うん。
気をつけてるんだけどなー。
ふふ。
はは…あ。
……。
…おなか、すいた。
そうみたい。
エリス、出来るだけ早くおねがい。
お腹と背中がくっつく前に?
そうそう。
いえっさ。
がんばるね。
あたし達がその場所をこんな懐かしい家に決めたのは。 これから人間、いや、生物ではあり得ない交わりをしようとしているから。 然う、誰も居ないところが良かった。人間と言う、決められた枷から逃れないのは分かってはいるけれど。 世界の隅っこで、誰にも知られずに朽ちていったこの家の主のように。
誰にも知られること無く、あたし達は。
ごちそうさま。 あーおいしかった。
本当に?
あん?
ナディのお母さんが作ったように
そりゃ、違うけど。
…。
でも、おいしかったよ。 あの店で食べたよりも、ずっと。
…本当?
言ったでしょ? あたしはもう、あんたの味じゃないとやっていけないの。
…。
て、何度も言わせるな。
…えへへ、良かった。
けど、本当にエリスはごはん作るのがうまいなぁ。 普通、本読んだだけで出来るもの?
出来たよ?
出来たねぇ。
うん、出来た。
しかも文句無しにおいしかった。 あー満足、満足。
もう、嫁だから。
ん?
いつでも嫁に行けるっていう、あれ。
…。
エリスはとっくにナディの嫁だから。
…なぁに言ってんだか。
大事なこと。
と言うか言わないから。
そうなの?
そうなの。
つまんない。
言って欲しかったの?
うん。
じゃあ言ってあげようか? 今からでも。
今は、いい。
あ、そ。
これから、どうするの?
これから?
掃除も、腹ごしらえもしたよ。 あとは?
んー…とりあえず、食べたのを片付け、かな。
今?
もう少し休んでから。 あーもう、本当においしかったぁ。
…嫁、だから。
あたしの、ね。
…。
なに。
んーん。
……。
エリスは、ナディの家族。
ん、そうよ。
えへへ。
しあわせもの。
しあわせもの?
あたしは、ね。
…。
奇跡なんて、大して信じてなかったんだけど。
…きせき?
そう、奇跡。
…。
今は、少しは信じても良い気分。
…どうして?
…。
聞きたい。
…心の底から必要としている人がいて。
…。
て、何よその顔。
教えてくれるの?
聞きたいって言ったのはあんたでしょーが。 それとも本当は聞きたくなかったとか?
ううん、聞きたい。
…続けても良い?
うん、続けて。
…その人もあたしを必要としてくれている。
それってエリス?
…。
…ナディ。
他に、誰がいるの…?
……。
ん…?
……いない。
でしょ…?
…えへへ。
……。
……。
…あたしにしてみれば家族とかのあったかさは、失ったあの日から、ずっと無縁の世界だった。 ずっとそう思って、思い込ませて生きてきた。 けど、あんたがあたしを必要としてくれたから。
……ナディが私を必要としてくれたから。
…うん。
……。
エリス…。
…ん。
……。
……私も、しあわせもの。
…。
…。
……良かった。
…。
…さて。 片付けようか。
二人で?
そう、二人で。
作ったのは私だよ。
ちゃんと手伝いましたから。
そうだった。
よし。 じゃ、片付けようか。
いえっさ、ナディ。
…。
ナディ、水を…?
……。
ナディ?
…ん、いや。
…?
ちょっと思っただけ。
なにを?
新婚って言うには…ちょっと、遅いけどね。
……。
こんな感じなのかな、て。
…私たちにとっては、そうなんだよ。
お…。
…ずっと、そうでも良い。
いや、それはちょっと難しいんじゃない?
ここ。
ん?
心〈ココ〉次第。
…。
なんだよ?
…なるほど。 けど、さ。
…。
熟年も、良いと思うよ。 それだけの積み重ねがあるって事なんだろうからさ。
…。
これからもずっと、同じ時間を生きていくんだから。
…うん。
…。
…。
……お茶。
…?
片付けたら、飲もうか。
誰がいれるの?
あたしが良い?
うん、ナディが良い。
よし、じゃいれてあげよう。
やった。
No me dejes sola.....
わたしをひとりにしないで…。
Te necesito....
わたしはあなたがひつようなの…。
Mi sol, por favor......quédate..
わたしのいとしいひと、おねがい…ここにいて。
……。
……。
……。
…ナディ。
ん…。
静かだね。
…まぁ、何も無いからね。
まわり。
うん……。
…お茶。
おいしいよ。
…。
…あったかくて、おいしい。
…そ。
なら、良かった。
ナディみたい。
…あったかいのは良いとして。
おいしいってのは納得いかないな?
おいしいよ?
どーいう意味だ。
そのまんまの意味。
…。
…。
……ぷ。
…ふふ。
思えば、色んなことがあったわね。
いきなり?
ふと、思いまして。
聞いてほしい?
寧ろ、エリスも話せ。
私も?
そう。
うん、分かった。
うん、良い子だ。
エリスはいつだって良い子。
自分で言うな。
ナディの心を代弁。
…。
ね?
…ともかく。
色々、あった。
うん、あったね。
逢った時は結婚するなんて、思ってなかったな…。
見つけたって言ったよ?
そりゃあ、仕事だったから。
仕事じゃなかったら…。
…逢ってなかったかもね。
…。
……そしたらあたしはずっと独りだったわけだ。
そんなこと、ないよ。
…あんた以外の人と、って?
…。
…エリ
ううん、私たちはちゃんと出逢ってたよ。
…。
ちゃんと、結ばれるの。
…世の中、本に書いてあるようにはいかないけど。
ちゃんと探すから。
知らないのに?
ナディも探してくれる。
…。
そして見つけたって、言ってくれるの。
それ以前に、知らないのに。
でも。
…。
…あなたは見つけてくれる。
きっと…。
そうだったら良いな…。
…そうだよ。
でもさ、あんたが先にあたしを見つけるかもよ…?
私が…?
だってあんたも探してくれるんでしょ?
…。
でさ、やっと見つけたって…言われるのよ、あたし。
私が、ナディを…。
それもありかなー、てね。
…。
…ま、今となっては確かめようはないんだけどね。
…。
でも、そうだと嬉しい。
…うん。
…。
そうだと、いいね。
そうなんだって。
自分で言ったんでしょうが。
…えへへ、そうだった。
ちゃんと見つけなさいよ?
あたしのこと…。
…いえっさ。
…。
…。
エリス…。
…ん。
……。
…ナディ。
そばにいなさいよ、ちゃんと。
……。
…いて。
……うん、いるよ。
…。
……ナディ?
…あの時。
…?
あたしの前から、いなくなろうとした時。
……。
…あの時のこと、今でも忘れられない。
……ごめんね。
…。
…。
…今なら、聞いても良い?
…なに?
あの時、どこに行こうとしたの?
あいつと一緒に…。
…。
…あたしじゃないヤツ、と。
…どこか、遠くへ。
……。
私たちの事、誰も知らないところ…。
…行って、どうするつもりだったの?
どうもしないよ。
あの時はただ…。
…もしあのまま、行ってしまっていたら。
ここにいるのはあたしじゃなくて、あいつ…L.Aと、もしかしたら…。
ナディ。
…ごめん。
けど、あいつは…。
…もう一人の私だった。
え…?
あの人は。
……。
もう一人の私だったんだよ。
力は…持っていなかったけど。
…うん。
だから…今なら、分かる気がするの。
…何を?
私はあの人を見るのがいやだった。
自分を見せられるようで。
…。
博士と…ナディと出逢ってない私。
ローゼンバーグに利用されるだけの、存在…。
……。
…だから。
私は…。
…本当は。
…。
言うほど、嫌いじゃなかったんでしょ…?
…。
エリス。
……嫌いだったよ。
…。
嫌い…だった。
……そっか。
…。
…。
……あのね、ナディ。
…なぁに?
……。
エリス…?
…この世界から消えてしまうことを望んだの。
え…。
ナディを…あなたを傷つける私なんて、いらなかった。
だから……。
そんなことを…。
……でも。
…。
あなたは私を探してくれた…。
…当たり前でしょ。
いなくなったら、絶対に許さないって…抱き締めてくれた。
…冷たい躰、まだ覚えてるよ。
私も、忘れないよ。
ナディの躰はとても……。
…。
…今みたいに、あたたかった。
……。
…あたたかいの。
……。
……。
……エリス。
なに…?
…あたしは追っかけたと思う。
…え。
あんたを見つけるまで、ずっと、ずっと探し続けたと思う。
んで…。
…見つける?
初めて逢った時のように、ね。
やっと見つけた…。
…たとえ、引き裂かれたとしても。
……。
あたしはあんたを諦めることなんて、出来ない。
ナディ……。
愛している人間を諦めることなんか。
出来るわけ、ない。
…ッ!
…言うのは、あんたより遅かったけどね。
ナディはどんかん、だから。
うるせ…。
……。
……泣き虫。
ナディのせい…。
…。
…。
…愛してる。
うん…うん…。
…あんたは?
愛してるよ、ナディ…。
あなたのすべてが欲しい…。
……。
……。
……あたしも、欲しい。
あんたが…もっと。
…あげる。
ぜんぶ…。
……。
だから……。
……うん。
……。
……。
……。
……もう、寝よっか。
…毛布、乾いたかな。
湿ってただけだから、ね。
…敷布も。
……。
……多分、大丈夫だよ。
空気、乾いているから…。
…。
…。
…寝よっか、エリス。
うん、ナディ…。
Sin ti no puedo vivir...
あなたなしではわたしはいきることができないの…。
Sin ti ya no....
あなたなしでは、もう…。
Mi vida ya ha sido tuya...
わたしのいのちはもう、あなたのものだから…。
…。
……も。
ん、なに…?
…。
エリス…?
……ゆるされてる。
…ゆるされ?
……。
…どうした?
…ナディ。
ん…。
…わたし。
…。
自分勝手、だよね。
…何を、今更。
いたい…。
…そこまで強く小突いてない。
…ばれた。
ばれるわい。
…えへへ。
……でも、さ。
…?
自分勝手じゃないわよ。 あんたが思ってる程には、ね。
…。
あんたは優しいから、自分が傷付く方を選ぶ。 いつだって。
…やさしくないよ。 いつもナディに
あたしが言うんだから、間違いないんだって。
…自信家?
自分の事じゃないけどね。
……。
…あんたは。
ずっと我慢してきた。
…。
…こんな小さな躰の中に、大きな力を持たされて。
…ッ。
…でもね、エリス。 たとえ世界が…あんた自身が、あんたの存在を要らないと言っても。 あたしにはあんたが必要。
…。
…もう、分かってると思うけど。
……ゆるされてる、よね。
うん?
…わたし、いても良いんだよね。
…。
ナディの中にいて、も…。
…ばぁか、決まってるでしょ。
……。
あんたは…あたしが、守る。 だからあんたはいつも、あたしの傍にいるの。 いなきゃだめなの。 オーケイ?相棒。
……オーケイ、相棒。
…。
…。
……敷布、本当に乾いてたね。
…うん。
気持ちいい。 洗って良かった。 ね、エリス。
うん…。
…。
…。
……ねぇ、エリス。
一つだけ、聞いてもいい?
…一つだけ?
多分、一つだけ…。
…いいよ。
いつかさ、あたしに生んでって言った事があったじゃない?
…。
あれ、本気でしようとした…?
……。
それとも…。
…あの時は。
…。
いや、だったから。
…いや?
……リカルド。
…。
ナディがリカルドの…。
…まさか、とは思うけど。
…。
想像なんか、してないわよね…?
…。
わぁ、止めて止めて。
本気で勘弁してよ、もう。
…。
ああもう、鳥肌が立った…うぅ。
…ざらざら。
あん時も言ったけど、絶対、嫌。
想像されるのもごめんだわ。
…ごめんなさい。
たく、あんたは…。
…でもね、ナディ。
うん?
…ひどく、たかぶったの。
ひどく…?
ナディが私以外の人と…してるの。
ちょ…。
すごくいやで、なのにすごく…たかぶったの。
殺したくなるくらいに…。
エリス…。
だから、私…。
…もういい。
ごめん、エリス。
…どうして?
聞いちゃいけなかった。
…。
ごめん。
……自分で、したの。
エ、エリス。
…自分で、ナディのこと、思いながら。
もういいって
ナディ。
…ッ。
この指がナディの、だったら…て。
……。
…ナディだったら、て。
思いながら…。
エリス、もう良い…もう、良いから。
…気持ちよくて、
エリス、もう止めて。
……それが悲しかった、辛かった。
エリス…!
……。
…ごめん、エリス。
ううん、悪いのは私だよ…。
…。
…汚くて、ごめんね。
そんなこと、ない。
…けど、私。
もう、いいから。
そーいうコトをする事は別に悪いコトじゃ、ないから。
……。
…でもそんな想像は二度と、しないで。
ひどく悲しくなるから。
ナディ…。
…あんたが泣くのは、いや。
…!
……分かった?
う、ん…。
…。
…私ね、ナディ。
…。
やっぱり自分のお腹で…生みたい。
…。
私のお腹の中でナディの…。
…。
…我侭でごめ、ぁ。
しよう。
ナ、ディ…。
ずっと、待たせてた。 ごめん。
…ううん、謝らないで。 だって本当はこんなこと…
…しぃ。
……。
待たせてた事には、変わりない…でしょ?
ん…。
……エリス。
ナディ…ナディ…。
……。
ん、ん…。
…エリ、む。
……。
エリス…?
…。
…どうしたの?
……ナディ。
不安になった…?
…こわくないの。
うん…?
ナディは怖くないの…?
…どして?
だって、この間…。
…まぁ、ね。 そりゃ、苦しかったよ。 あんなの、生まれて初めてだったしね。
…。
…怖くないと言えば、嘘になる。
…。
でもまぁ、一回死んでるし?
…。
…て、これは笑えないか。 ごめん、エリス。
…。
…。
……ナ
エリス。
…あ。
言ったでしょ。 もう決めたって。
…。
だけどあんたが嫌なら、しない。 だから、あんたが思うようにすれば良いの。
…。
あんたもあたしに言うじゃない? 好きなように…好きなようにしてくれたら、嬉しいって。
ナディ…。
…どうする? 今夜は…ううん、もうこんな事はやらないって決める?
…。
…あんたが思うようにすれば良いのよ。 あたしは、それが嬉しい。
……て。
…。
…しよう、ナディ。
…。
しよう…して…。
…こら。
う。
するのは、あんたでしょうが。
……。
いや、抱くのはあたしなのかもしんない…けど。 ほら……さ?
…そう、だった。
…。
…。
……あたしは、大丈夫。
…。
あんたがあたしを壊すなら、壊したいなら。 あたしもあんたを壊す、壊してあげる。
ぁ…。
…エリス、あたしの全てであんたを犯してあげる。 だから。
はぁ…あ、ん…。
好きにすれば良いの。
ん…んん。
…してよ、エリス。
……ナ、ディ。
……。
おかして、ナディの全部で…わたしを…。
…もう、そう言った。
ひ、ぁ…!
…。
あ、だめ……そんな、とこ、なめ…な…。
…口ばっかり。
…あ、…ぁ。
もう、何度もされて。
や、やぁ…あ、あ……。
……何度もそんな声、あげてるくせに。
は、ぅ…あ、あ、あ…ぁぁッ!
……。
ナディ…ッ、ナディ…ナディ…ッ!!
……いい?
や、やだ…あぁぁッ
……きもち、いいんでしょ?
ナ、ディ…!
………。
…いい…いいよ、いいよ…ナディィッ!
……。
あ、あぁ…あぁぁ…ッッ
…。
……あ…ぁ。
……。
ナ…ディ……。
は、ぁ…。
……。
…今夜は長くなる、かな。 あたし、もう止まんないと思うし。
…止まらないで。
……。
……うすらタコス、だから。
知ってるって…てか、こんな時にそんなコトゆーなって。
……ん。
……。
……。
…エリス。
…。
しよっか。
……もう、したくせに。
や、だから…ん。
…。
…。
……しよう、ナディ。
…。
いえっさ…?
…いえっさ、エリス。
う、ん…。
そういう風にプログラムされているものを、魔女の力によって書き換える。 最初聞いた時は驚いた、けど、どこか納得してしまった。 それなら種は要らないし、つまりはあたしが男になる必要がない。
それから…男が要らないと言う事、それが無性に嬉しかった。
そもそもあたしは彼女を男なんかに…限らないんだけど、他の誰かになんてやりたくなかったのだ、本当は。 あたしは彼女の事となると直ぐに莫迦になる。それこそ、自覚している以上に。曰く、うすらタコス。曰く、元々。 勿論、それは生物本来の姿じゃない。少なくともあたしが知っている生き物でそんなのはいない。
だけどもう、そんなのはどうでも良い。神さまだとか、なんだとか。それがどうした。
見てるなら、見せ付けてやる。だけど止めさせはしない、絶対に。 強いて言えば一つ、彼女にその力を使わせる事が……ああ、でも。 それでも彼女は、あたしのだから。
はぁ…はぁ……。
……く。
はぁ…はぁッ、はぁ……ぁッ。
…はぁ、ナディ、ナディ……くあぁッ。
……エ…リ、ス…。
わたし、は…だいじょう…ぶ、だから……。
く…あ、はぁ……はぁ……。
く、ぅ……。
…ッ! あぁぁッ、あぁぁぁぁぁ……ッ!!!
…!
う、うぅぅぅッ、ぅぅあ゛ぁぁぁぁァ゛……ァァッ!!
ごめん、ね…ごめん…ね……。
ぐぅぅぅぅぅ……。
くるしぃ…よね……いたぃ、よ…ね………で…も…。
……ぃ、か…ら。
ぁ……。
は、ぁ………じょ、はぁッ、…ぅ…ぶ…。
ナ……デ……ィィ…。
……はぁ、エリス。
あ。
……あともう、すこし…で、あんたに、あげられ…る。
あぁ…あぁぁぁ…。
あた、しも……、うれし…ぃ、から……。
ナディ、ナディ…ッ!
あ……。
あ、と…もう、すこし…だか、ら…。
………アァああああああああ゛あァああああああぁッッ、……ッ!!
だ、か……らッッ!!
酷い熱の中、世界が明滅を繰り返し、やがて見えなくなった。然う、彼女以外のものは。 だけど本当はその彼女すら、あやふやで。だけど分かる。彼女こそが求めているもの。彼女の命こそ、欲しいもの。 湧き上がる感情、今まで以上に。強く、強く、より狂う程に。 知らなかった、こんな感情、知らなかった。命を求めると言う事がこんなにも。 …あぁァ。 早く、早く……ハヤ、く。
…………エリ…。
…はぁ、はぁ。
エリ…す。
……ナデ…ィ。
………。
…おわった、よ。
……。
も、ぅ……。
……ウ。
…あ。
はぁ…はぁ……はぁ…。
………ナディ。
いイ…?
……。
イい、よ…ね…?
……。
イいって、ハヤ…く、いッテ…よ……。 ジャ、ないト…あた、シ…は……。
……。
アンた、が…ほしク、て、オカ…し、く…。
……。
きット…ヒド…い、こと…ヲ……。
いいよ。
ア……。
わたし…も、まってる…か、ラ。
……。
……ハヤ、く…あなたの……、にあい…た、イ…って。
ア…あぁぁ……。
…アイに、きテ。 ハヤ…ク…。
エ、リ………。
……うん、で。 わたし、のナ…か、に。
……エリスゥッッ!!
あァ…。
エリスッ、エリ…ッ、エリ…スゥッッ!
あッ、あぁ…ッ。
うぅぅぅぅ……ッ。
………ナ、ディ。
……ぁぁあ゛ぁぁ…ッ
……………やっ、と。
何かが重なって、生まれる音。
それは、確かに。
...cuatro
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