それで、みたの?


    うん、見られたよ。


    どんなとこだったの?


    …。


    ねぇねぇ、エリス。


    …内緒。


    えーなんで?


    気になる?


    なるよぅ。


    じゃあ、ナディに聞いてごらん?


    ナディに?


    ナディが連れていってくれたから。


    うー。


    教えてくれるかも?


    くれないよ。


    どうして?


    けちだもん。


    …けち?


    ねぇねぇ、どんなところだったの?
    ナディとみたんでしょ?


    うーん…。


    ねぇねぇ。


    …うん、ナディと見たよ。


    うん!


    ナディと一緒に…見られた。


    どんなだった?どんなだった?


    内緒。


    えーー。


    だって教えちゃったら、つまらないから。


    むぅぅ。


    自分の目で、見たくない?


    みたい!
    みたい!みたい!


    ね、だったら


    つれてって!


    うん?


    つれてって、エリス。
    ロント、いきたい!


    じゃあ、ナディにお願いしないと。


    ナディに?


    そう、ナディに。
    私を連れていってくれたのは、いつだって、ナディだから。


    …。


    ペンギンはまだ、見てないけど。


    じゃ、ペンギンもみよ!


    ふふ、そうだね。


    ナディにいわないと!


    うん、ナディに言わないと。


    ナディ!!


    ふふ。


    ナディ!ナディ!





    人の名前を大声で連呼するな、やかましい。





    あ、ナディ!


    ナディ。


    つか何、さっきから騒がしいんだけど。
    エリス、体調は大丈夫なの?


    つれてけ!


    は?


    見たいんだって。


    何を。


    つれてけー!


    わ、ちょ、何。


    みずうみ!


    は、湖?
    て、なんの事よ。


    ふふ。


    エリス、今日は何の話をしてたのよ。
    と言うか、体調は


    ロントが生まれる前の話?


    あ、そ。
    で?


    うん?


    みずうみ!みずうみ!!


    あーもう、やかましい!


    むぎゃ。


    話が全然、分からない。
    湖って何。何の事。


    ふふ。


    エリス、ロントに何を話したの。


    見たい。


    は、何を。


    ペンギン。


    …ペンギン?


    サボテンの下に、巣を作るペンギン?


    …あぁ。
    そういやまだ、見てなかったっけね。


    うん、見てない。


    じゃあ、あんたの体調が良くなったら久しぶりに


    ちがうよ、みずうみだよ!


    だからあんたは何を言ってるんだ?


    みーずーぅーみーー!


    …エリス。


    ふふ。


    だから笑ってちゃ、分からないって。


    見たいんだって。
    ロントも。


    だから、何を。


    空。


    …空?


    そう……あの、どこまでも広がってる…。








    話は、分かった。


    連れていって、あげる?


    ……。


    ナディ?


    …別に、構わないけど。


    けど?


    うーん…。


    …?


    ……良いんだけど。


    なんとなく、いや?


    …いやじゃ、ないんだけど。


    ……。


    …二人で見た、最後のものだから。


    …。


    ……行くとしても、今はなぁ。


    ナディ。


    …なに。


    大好き。


    …。


    でも、ロントは貴女の子だよ?


    …分かってるわよぅ。


    ふふ。


    エリスは…。


    …ん。


    また、見たい…?


    …。


    …一度見たから、


    見たい…もう、一度。


    …今度はロントも一緒に?


    ……。


    と…。


    …あの思い出は貴女と二人だけの思い出だから。


    ……。


    だから、一緒にはしないの。


    ……。


    ……ねぇ、ナディ。


    うん…?


    コイユルに、会いに行こう…?


    コイユルに?


    うん。


    それは良いけど…。


    …私達の子供、まだ見せてないから。


    …。


    それにチャスカ達にも。


    …。


    …行こう、ナディ。
    旅とは言えないけど…でも。


    ……エリス。


    連れて、いって…?


    …分かった。
    じゃあ、行こっか。


    いつ…?


    …とりあえず、あんたの体調が落ち着いたら。


    分かった…がんばる。


    頑張らないで良いから。


    …ん。


    高熱出したら、どうすんだ?


    …行けなくなっちゃう。


    分かってれば…良し。


    えへへ…。


    …忘れてたわけじゃないんだけど。


    うん…。


    …あの子が生まれてからは、あっと言う間でさ。
    正直、考えてるゆとりもあんまり無かったな。


    そうだね…。


    ……。


    …元気かな。


    うん…。


    …私達の事、覚えてるかな。


    絵本。


    …。


    …あの絵本を大事にしてくれていたら。
    屹度。


    …うん。


    ……。


    …ねぇ、ナディ。


    うん?


    絵本、取って…?


    …良いけど。


    ……。


    はい、エリス。


    …ありがとう。


    ……。


    …カマドドリ。


    あんたのお気に入りの話。
    今でも。


    …ロントも、好きだよ?


    親子だなぁ。


    …うん、親子なの。


    はは。


    ……今夜。


    ん…?


    読んで…?


    ……。


    …聞きたい。


    ……しょうがないな。


    やった…。








    一週間の休暇?


    友人に会ってくる。


    ……。


    駄目なら、辞める。


    …貴女、社会を舐めてる?


    あたしはそもそも、そういうのには無縁な根無し草だし。


    ……。


    …前から、考えてた。
    エリスもあたしを良く分かっている。
    一番。


    …どうするの、辞めて。
    食べていけるの。


    ……。


    貴女一人だけなら、良いわ。
    でも今の貴女には家族が居るのよ。


    …畑を。


    畑?


    やろうと、思ってる。


    貴女が?


    元々は、そういう民の出身だし。


    ……。


    …甘くないのは分かってる。
    分かってるけど、そうすればエリスの傍にいられる。


    …はぁ。
    だからって今直ぐ、始められるものでは無いでしょうが。


    丁度、小さい畑があった。
    少し荒れてはいたけど、あれならなんとかなる。
    し、もう、手は入れ始めてる。


    ……。


    あたし達の前の住人が作ったんだと思うけど。


    …ええ、屹度然うね。


    お金なんか、必要最小限あれば良い。


    …お金持ちになりたいなんて、言ってたのが嘘のようね。


    あれば、仕合わせになるってもんじゃないし。


    …。


    無いのは、慣れてるし?


    はぁ。
    で、始めたところで収穫は先でしょう?
    蓄えで凌ぐの?凌げるの?


    春にパパの種芋を植えた。


    え?


    子供の時の記憶が頼りだったんだけど…思ってたより、躰が覚えててさ。


    ……。


    帰ってきたら、収穫する。
    出来てたら、だけど。


    …貴女、いつの間に。


    まぁ、ね。


    ……。


    辞めたら、畑をもう少し大きくする。
    そしたらサラを植える。
    パパとサラがあって…あとはそうだなぁ、クイでも育てればなんとかなるんじゃないかな。
    あれならエリスにも、ロントにだって世話する事が出来る。
    他にも必要なものがあれば、ま、物々交換でもするわよ。


    それ、エリスには?


    夫婦、だから。


    ……。


    で、ブルーアイズ。


    …一週間で足りるのね?


    何事も無ければ。


    …分かったわ。
    貴女の代わりは手配しておく。


    ありがとう。


    けれど、貴女には未だ続けてもらう。


    …。


    もう少し蓄えを作っておきなさい、ナディ。
    なんだかんだ言ってもお金は必要よ。


    ……。


    あの子はこれから、大きくなる。
    若しかしたら教育が必要に…いえ、なるわ。


    教育?


    学校。
    どうするつもりなの?


    ……。


    貴女も、エリスも学校での教育を受けていない。
    だから、では無いわ。


    …で?


    若しも通うとなれば、家を離れないといけなくなるかも知れない。
    あの辺りには学校が無いから。


    …エリスがなんて言うかな。


    親ならば。
    子供の将来を考えなさい、ナディ。


    ……。


    一ヶ月。


    …あ?


    季節外れのバカンスにしておくわ。


    そんなに要らない。
    畑が


    貴女が良くても、エリスの躰には?


    ……。


    畑は…然うね、何をすれば良いのかしら?


    …最低、草取り。


    そう、じゃあ定期的にやらせるわ。


    誰に。


    彼に。


    …収穫があるんだけど。


    じゃあ、それも。


    あんなひ弱な野郎には無理。


    …。


    …十日で良い。
    草取りは産婆のばあちゃんにでも頼む。
    ばあちゃんちの畑、手伝った事あるし。


    じゃあ、二週間。
    それならば?


    …あんたも大概。


    ええ、然うね。
    自分でも思うわ。


    ……。


    けれど、ちゃんと帰ってくるのよ。
    貴女はうちの大事な戦力なのだから。
    分かっているわね。








    だって、さ。


    …ふふ。


    面白くないって。


    じゃあ、辞めないの?


    …みたいよ。


    そっか。


    ……。


    …ナディ。


    ……。


    私はちゃんと知ってるよ。


    …ん。


    ナディが…本当は嫌じゃない事。


    そうでもないけど…。


    …縛られるの、苦手だから?


    元根無し草、だし?


    ふふ。


    ……。


    …ねぇ、教えて?


    うん?


    クイの世話の仕方。


    ああ、それは勿論。
    ロントにも教えるし。


    うん。


    …。


    …ん、ナディ。


    ……。


    …私、なんでもするから。


    うん…。


    ……。


    …ああ、そうだ。


    なぁに?


    コイユルに教えてもらおうかな。


    コイユルに?


    クイの世話。


    …私?


    いや、ロント。
    あんたにはあたしが教える。


    …でも、どうして?


    お姉ちゃん、でしょ?


    …あ。


    まぁ、あっちはどう思ってるか分かんないけどさ。
    教えてくれそうだったら…ん。


    …ナディ。


    なに…。


    …えへへ。


    だから、なに…。


    私も教えてもらおうかな。


    …?


    楽しみ。


    …だから、あんたにはあたしが教えるって。


    手取り足取り?


    そう、手取り足取り…て、なんでだ。


    …良いよ?


    クイの世話で何が良いんだか…。


    …だって、これを教えてくれたのはナディだから。


    こら…。


    …ん?


    これとは関係ない…つか、今夜はしないって。


    ……。


    …体調、まだ万全じゃないんだから。
    旅、行けなくなったらどうするんだ…?


    だから、触るだけ…。


    …いつも、触ってる。


    だから、少しだけ…。


    …エリス。


    ん……。








    たび?


    そう、旅。


    ま、本当のじゃないけど。


    たび、でるの?


    そうだよ。


    たび……。


    エリス、持って行くものは?


    ナディとロント、私。
    あと詰められるだけのごはん、お水、それから少しのお金。


    オーケイ、相棒。


    オーケイ?


    ……。


    ロント、荷物はあまり持っていけないから。
    ま、すぐ帰ってくるし。


    ……たび!


    お。


    うん?


    うぃにゃいまるか!


    ウィニャイマルカ?


    とは、違うんだけど。


    えう・かざど!


    エル・カサドール?


    かざど、かざど!


    あ、こら、家の中で走るな。


    たびー!


    て、飛び跳ねるな。


    エリス、エリス!


    ん?


    エリス、ナディとしたんでしょ?


    旅?


    たび!


    うん、そうだよ。


    ういにゃいまるか!


    そう、ウィニャイマルカ。
    ナディが連れていってくれたの。


    ほかにもいっぱい、したんでしょ?


    うん、色んなところへ行った。
    ナディと一緒に。


    ナディ!


    何。


    ひとりたびは、なし!


    ……。


    エリスといっしょなら、どこでもいけるの!


    …エリス。


    私、言ってないよ?


    本当かぁ?


    …リリオ、かも。


    リリオ?


    そう、リリオ。


    あー……。


    …ふふ。


    やっぱりあんたでしょ。


    …やん。


    て、こら。


    …ナディは強引。


    ば


    まじょ、まじょ!


    …。


    ……。


    たびと、まじょ!
    えいえんのばしょ!


    …ロント。


    むぎゃ?


    今回の旅は、人に会い行く。


    ひと?
    だれ?


    コイユル。


    ……。


    エリスにお話、強請るだけ強請って、聞いてなかったとか言わせないぞ?


    …こいゆる。
    コイユル…!!


    …分かった?


    ロントの、おねえちゃん!


    …。


    …。


    おねーちゃん、おねーちゃん!


    …エリス。


    ん…。


    じゃあ、チャスカにもあえる?
    アキラは?


    うん、屹度会えるよ。


    ばーちゃんも?じーちゃんも?クシも?


    うん。


    結構、ちゃんと覚えてるもんだ。


    ぼうし!


    て、帽子?


    ロントの、コイユルとおそろいなの!


    ああ。


    被っていく?


    いくーー!!


    良い?ナディ。


    身に着けるものだし、ね。


    良いって、ロント。


    えへへ。


    出発は明日の朝早くだから。
    今夜はちゃんと寝ておきなさい。


    はぁい!
    たび、たび!


    …やれやれ。


    やっぱりナディの子供だね。


    …。


    …なぁに?


    いや、大丈夫そうかなって。


    …。


    …さて。
    あたし達も今夜は


    …ナディ。


    ……。


    …慣れない。


    うん……。


    …でも、大丈夫だよ。


    ん……。


    たび、まじょ、うぃにゃいまるか!


    ……。


    …無理、するな?


    大丈夫…。


    …なんだったら、言わせないようにするけど。


    お話、だから…。


    …でも。


    大丈夫…。


    まじょ、えう・かざど、ふたりのえいえんのばしょ!


    …え。


    ……。


    ねぇねぇ、しってる?
    まじょはね、えう・かざどとしあわせになるの!


    …しあわせ、に。


    うぃにゃいまるかでなるの!
    リリオがいってた!


    ……。


    エル・カサドール、ね。
    …と言うか、ラ・カサドーラだけど。


    ナディ…。


    …なってない?


    ……なって、る。


    たび!たびーー!








    ロント。


    あーーーー。


    ロンティタ。


    ナディ!エリス!
    ほし!きょうもほしがすごい!


    そんなん、いつもと変わらんでしょうが。


    おちてきそう!


    でもナディ、ロントのいつもとは違うから。


    おちてこないかなー。


    そうかな。
    あたしには違いが分からないけど。


    エリス、そしたらエリスにあげる。


    ありがとう、ロント。
    ロントは初めてだから。


    ナディにもあげるー。


    はいはい、ありがと。


    コイユル、コイユル。


    ロントにとっての初めての旅だから。


    チャスカ、チャスカ。


    旅とは言えないけど。


    コイユル、チャスカ、コイユル!


    でも、そうなんだよ。


    いっぱーーーい!!


    ロント、いい加減戻っておいて。
    もう、寝るよ。


    でもほし、まだとってない。


    そんな簡単に落ちてくるもんじゃ…


    ……。


    て、エリス。
    どこ行くの。


    ナディも来て?


    あたしも?


    ロント。


    エリス!
    ほし、すごいね!


    うん、凄いね。


    いっぱい!


    ん、いっぱい。


    えへへ。


    私ね、ロント。


    なぁに?


    空にこんなに星がたくさんある事、知らなかったの。


    ロントも!


    嘘付け。


    あ、ナディもきた。


    私が呼んだから。


    星はずっと、そこにある。
    昔からずっと。


    むかし?
    むかしって、いつ?


    それを教えてくれたのはナディだから。


    エリス。


    見えてなかったから。


    ……。


    ねぇ、ナディ。
    むかしって、いつ?
    きのう?


    それもまぁ、昔だけど。
    あたしが言ってるのはもっと昔。


    …きょねん?


    もっと、よ。


    ロントがうまれるまえ?


    あんたどころか、あたし達が生まれる前よりもずぅっと前。


    …あがー。


    て、どんな声出してんだ。


    むかし、むかしー!


    …分かってないな。


    ふふ。


    …まぁ、良いけど。
    ほら、ずぅっと上見てたら首、痛くなっちゃうって。


    くび?


    そう、首。


    いたくないよ?


    今はね。


    南十字星。


    みなみ?


    そう、南十字星。


    て、なぁに?


    あの星と…あの星。
    それから…ナディ?


    ああ、はいはい。
    ロント、エリスが指した星は分かった?


    …あれ。


    違う。


    うー…。


    しょうがないなぁ。
    エリスが指したのはあの星と、あの星。
    分かった?


    …わかんない。


    いっぱいあるから。


    あんたはわりと直ぐ分かったけど。


    ロント、わかんないよぅ…。


    んー、どうしたもんかな。


    ロンティタ。


    …。


    ここから、覗いてごらん?


    …ここ?


    覗かない方の目は閉じて?


    いえっさ。


    エリス、何する気?


    ナディ。


    うん?


    もう一度、教えてあげて?


    良いけど。


    ロント、良く見てて?


    うん。


    あの星と…


    ……。


    あの星。
    それから、あの星とあの星。


    …。


    周りより明るい星四つだよ、ロント。


    …あ!


    分かった?


    わかった、ロントわかった!


    で、その四つの星を……こう繋げて。
    で、こっちもこう繋げると十字になる。


    じゅうじ?


    そう、十字。


    なんでそうつなげるの?


    昔の人がそう決めたから。


    なんできめたの?


    昔の人にはきっと、そう見えてたんだよ。


    ふーん…。


    四つの星、二つずつ繋げると十字になる。
    そんでここは南だから、それで南十字星。


    みなみじゅうじせい。


    そう、南十字星。
    ナディが私に、最初に教えてくれた星座。


    …そうだっけ?


    そうだよ?


    あんたがそう言うなら。
    エリス、手、もう良いんじゃない?


    ん。


    ……。


    ロント。


    うん?


    星、いっぱいあるね。


    うん!
    いっぱい!


    二人とも、星は晴れてりゃ明日の夜でも見られるから。
    いい加減、寝るわよ。


    えー、もうすこし。


    もう少し?


    エリスまで何言ってんだ。
    ほら、明日も早いんだから。


    うぅー。


    ロント。


    …いえっさー。


    ほら、エリスも。


    ねぇ、ナディ。


    ん?


    ロントにも教えてあげてね。


    …。


    星。
    私に教えてくれたように。


    …いえっさ、エリス。








    こんにちは。


    あ。


    この辺りじゃ見かけない子だけど…もしかして、旅人さん?


    …?


    お父さんとお母さんはいないの?
    でもこんなに小さな子一人でこんな所まで…


    たび、してるの。


    一人で?


    んーん。


    そっか。
    良かった、安心した。


    …。


    お父さんとお母さんは?
    先に来ちゃったの?


    ……。


    あれ、その帽子…。


    きた。


    え?





    先に行くなって言ってるのに、あんたって子は。





    あ…。


    ナディ、おーそーい。


    エリスを置いて、さっさと歩けるか。


    あ、あ…。


    エリス、エリス。
    こっち、こっちー。


    私は大丈夫なのに。


    だめ。


    …ナディは心配症。


    エリス。


    …いえっさ。


    ナディ…!
    エリス…!!


    あ?


    え?


    ナディ、エリス…!!


    て。


    ああ…。


    来てくれた…来て、くれた…!








    久しぶり。


    久しぶりだね。


    うん…。


    あたし達の事、


    覚えてて


    忘れるわけ、ない。


    あー、うん…。


    ……。


    ずっと待ってた。
    ずっと、ずっと、待ってた…。


    ん…。


    …うん。


    ナディ、エリス…!


    お…。


    わ…。


    私、もう病気治ったよ。


    ん、見れば分かるかな。
    あの時よりずっと、元気そうだから。


    良かったね。


    ナディとエリスが、助けてくれたから。


    …。


    …。


    だから私、ここで生きてるの。


    うん…。


    あ、そうだ。
    見て。


    ん?


    この帽子、覚えてる?
    ナディがくれたの。


    ああ。


    被ってくれてるんだね。


    だって、私の大切なものだもの。


    そう言ってくれるとあげた甲斐、あったかな。


    …照れてる?


    エリス。


    ん?


    …余計なコト、言わんで宜しい。


    いえっさ。


    ふふ、ナディとエリスは今でも仲良し夫婦なんだね。





    んー、んー…♪





    こら、ちょろちょろするな。


    ねぇ、ナディ、エリス。


    …ん?


    なに?


    あの子、あの時のお腹の子だよね?
    ね、そうでしょ?


    ま、そうかな。


    そうだよ?


    良かった、無事に生まれたんだね。


    うん。


    ナディが、いてくれたから。


    ねぇ、名前なんて言うの?


    …う?


    あんたの名前だってさ。


    こっちに来て、教えてあげて?


    いえっさ!


    名前、私に教えてくれる?


    うん!


    ありがとう。


    どーいたしまして?


    ふふ。
    あなたの名前はなぁに?


    ロント!


    ロント?
    ロントって言うの?


    うん、ロント。


    ロント…たまご?


    そ、たまご。


    ナディがつけたの?
    それともエリス?


    ああ、それは


    ねぇねぇ、おねえちゃんは?


    え、私?


    おねえちゃんのなまえ。
    ロント、きいてないよ?


    ああ、そっか。
    まだだったね。


    うん、まだ。


    私は…








    ナディさん!


    久しぶり、チャスカ。


    あぁ、エリスさんも!
    元気ですか?


    うん、元気だよ。


    ロントー!


    わ。


    こら、ロント。


    むが。


    いきなり大きな声を出すな。
    チャスカが驚いてるじゃない。


    うー、うー。


    この子、もしかして。


    まぁ、あの時のお腹のね。


    私達の子供。


    ああ、やっぱり。
    エリスさんに似てるもの。


    私に?


    はい、特に瞳の色なんて


    でも、良く言われるのはナディだよ。


    …ナディさん?


    ね、ナディ。


    らしいね。


    …確かにナディさんにそっくり。
    赤い髪、肌…不思議だわ。


    …。


    …不思議?
    どうして?


    エリスさんのお腹の子なのに、どうしてナディさんにこんなに似てるのかなって。


    それは


    チャスカ。


    はい?


    その話は、聞かないで欲しいかな。
    出来れば、だけど。


    あ…すみません。


    まぁ、良いって。


    ……。


    …エリス。


    ……うん。


    ごめんなさい、エリスさん。
    私、その…。


    …ううん、良いよ。


    ところで、チャスカ。
    クシは?


    あ、ああ、あの人なら畑に。


    二日酔い、してないんだ?


    しっかり、働いて貰わないと。
    この子達の為にも。


    二人、か。
    ま、頑張らないといけないかな。


    いいえ、四人なんです。


    四人?
    でも、


    上の子はクシと一緒に畑に。


    へぇ。
    じゃあ、もう一人は…


    もしかして、お腹にいるの?


    …はい。


    あー、なるほど…ねぇ。


    …四人。


    あの人、もう二人くらい欲しいって言うんですよ…。


    良いんじゃない?
    ま、大変そうだけど。


    …もう、二人くらい。


    大変ですけど…村のみんなが手伝ってくれるので。


    村で生まれた子供は、村の子供だからね。


    はい…。


    ……四人、五人、六人。


    エリス、さっきから何言ってんの?


    …ナディ。


    ん?


    …ナディも欲しい?


    え、何が?


    …子供。


    は…?


    ……もっと、欲しい?


    ……。


    …ナディが、欲しいなら。


    …え、と。
    エリス、その話は後でにしようか。


    ……。


    そういえばお二人は子供、一人だけなんですか?


    うん、まぁね。


    …そうですか。


    ナディが欲しいなら、


    その話は二人の時にしよう、エリス。


    ……。


    …オーケイ?


    ……オーケイ。


    ……。


    ん?
    何、チャスカ。


    …いえ、なんか見てちゃいけない気がして。


    あー……。





    ねぇねぇ、チャスカ?





    うん?


    チャスカ?


    はい、そうです。
    初めまして、ロント。


    チャスカ!


    ふふ、可愛いですね。


    年々、生意気になってくけどね。


    チャスカの子供の名前はなんて言うの?


    ああ。
    一番上の子はロカ、こっちの子がオックロ、それからサラ。
    この子たちは双子なんです。


    へぇ、双子。
    そういや、良く似てる。


    ロカ、オックロ…サラ。


    ロカは強い。
    オックロは純粋。
    それからサラは…


    …とうもろこし。


    豊かな実りをたくさん、つけられるように。
    コイユルがそう言って、つけてくれたんです。


    そっか、コイユルが…。


    …エリス。


    うん…。


    チャスカ、お腹の赤ちゃんは?


    もう、決まってるの?


    それはまだですけど…男の子だったらアマル。
    女の子だったら…





    ナディさん、エリスさん。





    アキラ?


    アキラ。


    本当に、来てくれたんですね。


    …それ、コイユルにも言われたかな。


    ああ、本当に…。


    アキラ、コイユルは?
    アキラを呼びに行くって言ってたけど、一緒じゃないの?


    はい、チャスカさん。
    コイユルさんはチャスカさんの実家、行きました。


    え、ばあちゃんち?


    おじいちゃんとおばあちゃんも元気?


    はい、とても。


    …だよね。


    ナディ。


    …なに。


    飲み過ぎ、駄目だよ?


    分かってるわよ、つか、まだ行くとは…


    いいえ、ナディさん。


    へ。


    母の耳に入ったら、間違いありません。


    ……。


    …酔っ払いは、嫌い。


    だからまだ飲むとは言ってないでしょうが。


    よっぱらい、よっぱらいー。


    ロント。


    エリスにきらわれちゃう。
    そしたらナディ、ないちゃう。


    泣くか。
    本当、口ばっかり生意気にな


    …泣かないの?


    ……エリス。


    ……。


    …泣くというか、分かってるでしょうが。


    後で聞く…。


    …ああ、もう。


    エリスさん。
    この子があの時のお腹の子、ですか?


    うん。


    そうですか…。


    ロント!


    初めまして、ロントさん。


    ロントサンじゃないよ、ロントだよ?


    え、ああ、すみません。
    えと、ロント。


    よろしい。


    こら、ロント。


    むご。


    ごめんね、アキラ。


    …。


    ん?


    アキラ?


    …いいえ、お二人ともとても元気そうだから。
    それに、あの時のお腹の子がもう、こんなに…





    ナディ…!
    エリス…!





    …げ、あの声は。


    元気そうだね。


    …だねぇ。









    コイユルはリャマ、みてるの?


    うん、そうだよ。


    いっぱい?


    サチャの家のリャマは全部、私が見てるの。


    クイも?


    うん、クイも。


    おもしろい?


    面白い、とは違うかな。
    でもね、楽しいよ。


    ふぅん。
    ロントにもできる?


    うん、出来るよ。


    やった!


    ね、ロント。
    明日は私が育ててるクイ、見てみる?


    うん、みる!


    じゃあ、明日ね。


    うん、あした!


    ふふ、かわいい。


    …?
    ロント、かわいい?


    うん、かわいい。
    本当の妹みたい。


    ……。


    …そう、本当の。


    コイユルはおねえちゃんなんでしょ?


    え。


    エリス、いってた。
    コイユルはロントのおねえちゃんだって。


    ……。


    ちがうの?


    …ね、ロント。


    なぁに?


    その、私の事…。


    …?


    …あの、お姉ちゃんって


    おねえちゃん?


    …あ。


    ぼーし、おそろい!


    …うん。
    うん…。


    む…。


    …エリス…ナディ…。


    くるしいよぅ…。


    …あ、ごめんね。


    はふぅ。


    ……。


    コイユル。


    …なぁに?


    えへへ。


    ……。


    おねえちゃん!


    …ん。





    ……はぁ。





    あ、よっぱらい。


    誰が酔っ払いだ。


    エリスがきらいなの。


    だから、酔うまで飲んでないっつの。


    ナディ、大丈夫?


    うん、チャスカが逃がしてくれた……て、あれ。
    エリスは…?


    エリスなら…


    ねてる。


    寝てる?


    疲れちゃったんだね。


    ……。


    ナディ?


    …良かった、熱は無い。


    …。


    エリス、まってた。


    あたしを?


    うん。


    そっか。
    で、あんたはまだ寝てないのかね?


    ロント、コイユルとおはなししてたの。


    そっか。
    ありがと、コイユル。


    ううん。
    まだ、そんなに遅い時間じゃないし…それに。


    うん?


    …お姉ちゃんだから、私。


    ……。


    ……。


    …そっか。
    じゃ、妹の面倒を見るのは当たり前か。


    うん…!


    じゃあ今夜はロント、任せようかな。


    いいの?


    下の面倒を見るのは、決まって、上の役目でしょ?


    …!


    と言うわけだからロント、今夜はコイユルと寝なさい。


    いえっさ!


    駄々、こねんじゃないわよ。


    ロント、ナディじゃないよ?


    どういう意味だ。


    いちゃいちゃ?


    は?


    ロントみてないと、ナディはすぐエリスといちゃいちゃするの。


    こ、こいつ…。


    あはは、ロントは良く見てるんだね。


    うん、みてる!


    コイユル。


    ごめんなさい。
    でも、良かった。


    何が。


    今でもナディたちがカマドドリで。


    ……。


    …?
    ナディ?


    ん、いや。
    それ、エリスが聞いたら喜ぶかなって





    ……ナ、ディ。





    エリス。


    …おわったの?


    ん、抜け出してきた。


    …そっか。


    ごめんなさい、エリス。
    うるさかった?


    …ううん、だいじょうぶ。


    エリス、ロントね、コイユルとねるの。
    だから、ナディといちゃいちゃしていいよ。


    するか、莫迦。


    あぅ。


    ふふ。


    ……。


    …エリス、疲れた?


    だいじょうぶ…。


    …。


    …でも、おこして?


    しょうがないなぁ。


    ふふ…。


    エリス、大丈夫…?


    …ありがとう、コイユル。
    ロントとあそんでくれて…。


    ううん、いいの。


    ん…。


    …そうだ。
    ちょっと待ってて。


    …?
    うん…。


    どこいくの?
    ロントもいく。


    うん。
    おいで、ロント。


    いえっさ!


    …。


    …。


    …懐いたもんだね。


    うん…。


    …お姉ちゃん、か。


    ……。


    …エリス?


    ……うれしい。


    ……。


    ナディ…。


    ……ん。








    ナディ、エリス。
    これ、見て。


    ん、どれ?


    どれ…?


    この絵本、覚えてる?


    ああ。


    おぼえてるよ…。


    ずっと大切にしてたの。
    この絵本と帽子を大事にしていたらきっと、ナディとエリスは会いにきてくれるって。


    …。


    …。


    今日、お願いが叶った。
    嬉しい。


    …コイユル。


    ……。


    エリス?
    どうしたの?
    なんで泣いてるの?


    …ううん、なんでもないよ。


    でも、どこか痛いの?
    大丈夫?


    ん…だいじょうぶだよ。


    ナディ?


    …大丈夫。


    うん…。


    ねぇねぇ。


    なぁに?


    このえほん、なんのおはなし?


    これはね、カマドドリのお話。


    かまどどり?


    そう、カマドドリ。


    ロント、すき。


    え?


    それね、二代目がうちにあんの。


    二代目…?


    無くても、エリスは忘れないけど。
    でもエリスは欲しがった。
    あんたをただの思い出としない為に。


    …エリス、そうなの?


    ……ん。


    ……。


    …コイユル?


    ……わた、し。


    …。


    …。


    …もう、会えないって。
    思ってた…。


    …。


    …。


    …だってナディとエリスは旅をしているから。
    だから…。


    …わすれないよ。


    ……。


    わたしたちは、わすれない…。


    ……うん。


    ねぇねぇコイユル。


    …ん?


    えほん、よんで。


    …ん、いいよ。


    やった。


    じゃあ…私の部屋に行こっか。


    いえっさ。


    いい?
    ナディ、エリス。


    今夜はコイユルに任せるって言ったでしょ?


    よろしくね…?


    いえっさ…!








    …さて。
    ちょっと早いけどあたし達は寝ますか。


    ……。


    …エリス。


    ……えへへ。


    ん、なに…。


    …いちゃいちゃしていいんだって。


    ……。


    …。


    …ばか。
    そんなとこ、聞いてんなって…。


    …ねたから、だいじょうぶだよ?


    ばぁか…。


    …ばかじゃないもん。


    ……。


    ん、ナディ…。


    ……ばぁか。


    ……。


    ……。


    …ね。


    ん…。


    …アキラと、はなせた?


    いや……。


    …はなせなかった?


    あの場では、ちょっと無理。


    …そっか、そうだね。


    ……だから、明日。


    …。


    …ね。


    ん……。








    ナディさんとエリスさん、旅に戻ってから。
    わたし、手紙を書きました。


    あの藪医者に?


    はい。
    この村、一ヶ月に数回、郵便屋さんがきます。
    村の手紙、ワマンの家で預かります。


    ワマン…?


    おじいさんの名前です。
    知らなかったですか。


    そういや、じいちゃんの名前だけ聞いてなかったかも。


    ワマン…鷹。


    そう、鷹。


    みんな、ちゃんと意味があるんだね。


    名前はとても大切なものだからね。
    適当につけるもんじゃないの。


    うん。


    で、アキラ。
    薬、あいつから送って貰ってたの?


    はい。
    ナディさんから貰ったお金、使わせてもらいました。


    …そ。


    オレホンは元気?


    ……。


    …?


    アキラ…?


    …最近、手紙来ません。
    書いても、来ません…。


    …あいつ。


    でもきっと、コイユルさんの病気良くなったから。
    それが分かったの、オレホンのおかげ。


    この村に来たの?


    いいえ。


    じゃあ、どうやって。


    手紙、書いてくれました。


    手紙?


    お医者さんへ。
    お金もオレホンが。


    …へぇ、あいつが。


    多分、ナディさんたちからもらったお金だと思います。
    あの人、何も言いません。


    ……。


    ……。


    パルジファル、覚えてますか?
    あの人のもう一つの名前。


    覚えられない。


    覚えてるよ。


    あの名前、元々は無垢で愚かな若者の名前。


    …無垢?


    愚か…?


    はい。


    無垢って。
    どこがだ。


    故郷(くに)、出る時。
    彼はまだ、若かった。


    …。


    …。


    何も知らない、愚かな者。
    そう、あの人は言ってました。


    …ふぅん。


    ……。


    わたしをつれて、故郷、戻った時。
    故郷、もうなかった。
    知ってる人、だれもいなかった。


    …。


    どうして?


    わからない。
    だれも、知らない。
    もう、地図にも載ってないって。


    ……地図にも、ね。


    ナディ……。


    ま、あいつの話はもう良いや。
    で、コイユルはもう、大丈夫なのね。


    はい、大丈夫です。
    この村で育って、とても明るくなりました。
    全部、ナディさんとエリスさん、そして村のみんなのおかげ。


    一人、足りない。


    アキラ。


    ……わたし、そばにいただけ。
    だから、


    だから、今のコイユルがある。


    ありがとう、アキラ。


    …いいえわたしは、





    お母さん!





    …あ。


    ナディ!エリス!


    お。


    あ。


    リャマ、リャマ!


    ロント、あまりはしゃいでるんじゃないわよ。


    クイはもう見たの?


    んーん、これから!


    コイユルの話、ちゃんと良く聞くのよ。


    コイユル、ロントをお願いね。


    うん、ナディ、エリス。


    コイユルさん。


    なに、お母さん。


    あ、あの…


    ?
    変なお母さん。


    ……。


    じゃあ、また後でね。
    行こう、ロント。


    いえっさ!


    ……。


    …お母さん、ね。


    そんな、わたしは…


    お母さん?


    ………。


    良いじゃない。


    …。


    …アキラが、いてくれて。
    良かった。


    ……コイユルさん、待ってました。


    …。


    …。


    ナディさんとエリスさんのこと、ずっと。
    働きながら、夜はあの絵本を抱きながら…ずっと。


    …うん。


    ……。


    コイユルさん、病気治った。
    だったらもう


    生みの親に会うのが残ってる。


    …うみ、の。


    あいつの手紙には何も書いてなかったの?


    …あまり、詳しくは。


    ……。


    でも、少しずつ…少しずつって。
    そう、書いてありました…。


    …そ。


    アキラ、帰りたい?


    ……。


    アキラ…。


    …エリスさん、わたし、やっぱり強くない。


    …。


    …みんな、きっと、そんなに強くない。
    だから、誰かが欲しい。
    誰かと、歩きたい…そう、思います。


    ……。


    …あなたがナディさんと歩くように。


    うん……。


    ナディさん、あなたがエリスさんと歩くように。


    …ん。


    …わたしは、今だけは、コイユルさんのお母さんだから。


    今だけじゃない。


    え…。


    今だけじゃないよ…。


    ……。


    …。


    …。


    …赤ちゃん。


    …。


    …。


    元気に生まれて、良かったですね。
    コイユルさんといつも、話してました。
    元気に生まれるといいね、と。


    …ありがと。


    …ありがとう。


    ナディさんの腕、どうですか?


    うーん、天気にもよるんだけどね。
    それでも前よりかはマシかな。


    そうですか。
    エリスさんのこと、ちゃんと大事にしてますか?


    え。


    …してる?


    してる…けど。


    だって。


    ふふ。
    エリスさん、体調はどうですか?


    …うん、大丈夫だよ。


    でも、無理はいけませんよ?
    ナディさんを、悲しませたくないのなら。

    …うん。








    もう一日くらい、いてくれれば良いのに…。


    ごめんね、チャスカ。
    これでも仕事があってさ。


    ありがとう、チャスカ。


    いいえ、いいえ。
    次は…お腹の子に会いに来てください。


    その時にはこっちの子達はもっと大きくなってるかな。


    はい。


    六人、になってるかも。


    …はい。


    はいはい、ごちそうさま。


    ごちそうさま。


    …どうか、パチャママの恵みがありますように。


    ん?


    パチャママ…。


    ナディさんとエリスさんがこれからの道もずっと、二人で歩めますように。
    ロントが健やかに大きくなりますように。


    チャスカ達にも、


    …パチャママの恵みが、ありますように。


    ありがとうございます。
    ロント。


    …。


    私達の子と遊んでくれてありがとう。


    …。


    また、おいで。
    私達は貴女をいつだって、待っています。


    ……。





    ナディ、エリス。





    『コイユル。』


    今度は、私から会いに行くね。
    必ず、行くから。


    ん。


    うん、待ってる。


    ロント。


    ……。


    …ナディとエリスのお手伝いをちゃんとすること。
    私は、お姉ちゃんは…出来ないから、あなたがするの。
    いい?


    ……。


    ロント、返事は?


    …やだ。


    ロント。


    もっといっしょにいる。
    いたい。


    ……。


    ロント、コイユルを困らせるな。


    …うぅ。


    ロントはここにいたいの?


    ……。


    それは駄目だよ。


    …。


    ロントはナディたちと…お母さんたちと行かなくちゃ。


    ……。


    コイユル…。


    ロント、ロンティタ。
    きっとまた会える。
    離れていても、どんなに離れていても。
    生きていれば、必ず会えるんだよ。


    …。


    私は忘れないから。
    お母さんたちが私を忘れないでいてくれたように。
    私はあなたを忘れない。


    ……。


    …ロント。
    返事は?


    ……うぅ。


    ロント…きっと、また会おうね。
    その時は…。


    …ロントのクイ、みせたげる。


    うん、楽しみにしてるね。


    ……。


    ナディ、エリス。


    もう、完全にロントのお姉ちゃんだ。


    うん、そうだよ。
    だって私、お母さんたちの娘だもん。


    …コイユル。


    ナディ、エリス、私を助けてくれてありがとう。
    二人がいなかったら…私はここに、いなかった。


    …。


    …。


    ロントにもアキラ母さんにも、この村のみんなにも会えなかった。
    みんなで笑うことがこんなに楽しいんだって、知ることもできなかった。


    ……。


    ……。


    そして…
ママも。
    いつか、私は
ママにも会いに行く。
    その為に
ママは頑張ってるって、アキラが教えてくれたから。


    …うん。


    ……。


    きっと、会いに行くから。
    今よりもずっと大人になったら、きっと。
    …ああ、でも。


    ん…?


    …?


    ナディとエリス、また旅してるかも。
    そしたら…探して、見つけるね。


    見つける、ね。


    …世界は広い、けど。
    意外に、狭いから。


    じゃあ、見つけてくれる?


    うん。
    必ず、見つけるよ。


    ロントは?
    ねぇ、ロントは?


    勿論、ロントも。
    必ず、会いに行くから。





    …ナディさん、エリスさん。





    『アキラ。』


    どうか、元気なままで。
    そうすればまた、会える日が来ます。


    アキラも、


    元気なままで…。


    ロントさ…ロント。


    ……。


    どうか、元気なままで。


    ……いえっ、さ。


    ん、良い子ですね…。


    ……。


    ねぇ、アキラ。


    はい。


    いつか、オレホンのところに…


    今は、帰りません。


    …。


    …。


    でもあの人は…わたしの大切な人。
    それは今でも変わりません。


    …そっか。


    ……。


    ありがとうございます。


    …え。


    …アキラ。


    わたしに……


    …お母さん。


    ……もう、二度と抱くこと、ない。
    ずっと、ずっと、そう思ってた……。


    …。


    …。


    …どうかお二人がずっと一緒で。
    ずっと、しあわせで、あるように。


    『…ありがとう、アキラ。』


    ロント。


    …。


    あなたも。


    …。


    どうかたくさん、しあわせに。
    もっともっと、しあわせに。
    なりますように。








    …よし。
    それじゃあ、行こうか。


    …ん、ナディ。


    ……。


    ロント。


    ロンティタ。


    ……。


    帰るよ、


    私達の家に。


    ……。


    じゃあね、チャスカ。


    また、来てくださいね。
    きっとですよ。


    バイバイ、アキラ。


    はい、また会いましょう。
    元気なままで、必ず。


    『コイユル。』


    …ずっと、言わないよ。
    さようならは、ずっと言わない。
    だって、私は…


    うん、言わなくて良い。


    またね、お母さん。
    どうか、元気なままで。


    ありがとう、コイユル。
    コイユルもどうか、元気なままで。


    ロントも、またね。


    …コイユル。


    あなたは私の、かわいい妹だから。


    …。


    ね。
    だから、笑って?








    ……そうか。


    …。


    お前達も酔狂な事だ。


    …気が向いただけよ。


    アキラは…。


    ……。


    …変わらないって、言ってたよ。


    ……口ではなんとでも言える。
    人とはそういう生き物だ。


    は、素直じゃないヤツ。


    ……用はそれだけか。


    コイユルの母親。


    ……。


    どうなの。


    …さぁ、な。


    教えて、オレホン。


    聞いてどうする。
    お前達に出来る事は何も無い。


    …は。
    相変わらずな事で。


    完全に抜ける事は無い。
    お前も知ってるだろう。


    ……。


    …じゃあ、コイユルのお母さんは。


    それでも、だ。


    ……。


    ……。


    …その意志を、捨てない限り。
    道は途絶えないさ。


    ……。


    ……。


    然うだろう?
    元賞金稼ぎと元賞金首。








    さぁて、そんじゃ家に帰ろうかね。
    エリス、ロント。


    …知ってたんだね。


    うん?


    私のこと。


    …ま、ああいう道で生きてるとね。


    そっか…。


    でも今はもう関係無いし、狙われることも無い。
    でしょ?


    あのオカマの二人組が来ても。


    …て、また懐かしいコトを。


    ナディが、守ってくれるから。


    …。


    でしょう…?


    …誰が来ようとずっと、ね。


    うん…。


    よし。
    じゃ、ロント。


    …。


    いい加減、落ち込むのは止めろって。
    また会えるんだから。


    …うー。


    帰ったら早速、クイを連れてくる。
    そしたらあんたが世話を見る。
    良い?


    …。


    コイユルが…お姉ちゃんが教えてくれたように。
    ね、ロンティタ。


    …また。


    …。


    …。


    あえる…?


    コイユルは会いに来るって言ってたけど、


    ロントが会いに行けば良いんだよ。


    …ロントが?


    今は、無理でも。


    今よりももっと、大きくなれば。
    だって貴女は…ナディの子供、なんだから。


    …。


    て、あんたの子でもあるでしょうが。


    …えへへ。


    あいにいく。


    …。


    …。


    ぜったい、ぜったい!















    ……。


    ……。


    …これを、あんたに見せたかった。


    ……。


    旅を休む前に。
    あんたと、見たかった。


    ……。


    天空の、鏡。


    …てんくうの、かがみ。


    見渡す限り、空。
    上も下も、横もずっと。


    ……。


    ……。


    ……。


    …エリス。


    ……。


    終えるわけじゃ、無い。


    …う、ん。


    また、出よう。
    今度は三人で。


    うん……うん…。


    ……。


    …ナディ。


    ん……。


    空の中に…。


    ……。


    …いる、みたい。


    うん……。


    …どこまでも、広がってる。


    そう、空はどこまでも…。


    ……。


    ……。


    …エリス。


    ナディ……。


    ……。


    …この、空を。


    ……。


    また、見せて……。


    ……。


    必ず、また……。









    …お、起きた?


    ……てんじょう。


    よ、と。


    ……そっか。


    ん?


    …かえって、きたんだ。


    ……。


    わたしたちの、いえに…。


    …うん、そうだよ。


    ロンティタは…?


    …初めての芋掘りで。
    はしゃぎすぎて、土に顔から突っ込んだ。
    もう全身土だらけだからさ、今、身体を洗わせてるところ。


    ……。


    …鼻の頭、ちょこっと擦りむいたけど。
    あれくらいなら洗って、傷薬ぬっときゃ治るから。


    …パパ、とれた?


    まぁ、最初にしては良いんじゃないかな。
    今夜は早速、ごはんにするよ。


    …ふふ、そっか。
    たのしみだね…。


    …食べられそう?


    ん、たべたい…。


    …ん、良かった。


    ……。


    ……なんか、見てた?


    なにか…?


    夢。


    ……。


    ここがどこか、分かってないみたいだったから。


    ……かがみ。


    鏡…?


    てんくう、の…。


    ……ああ。


    あおいそらも、そらいっぱいのほしも…。


    …。


    そらをうつす、みずうみ…あのとき、ナディとみたもの。


    うん…。


    ……ナディ。


    うん?


    …たび、ほんのすこしだけだったけど。


    ……。


    やっぱりナディにはたびがにあってた…。


    …エリス。


    ひろいそら、かぜをかんじて…。


    ……。


    …いつか、きっと。


    ……。


    …みんなにまた、あいたいね。


    ん、そうだね…。


    …ん、ナディ。


    ……必ず、連れて行くよ。
    必ず…。


    ナ…





    あらってきた!





    …お、来たな。
    じゃあ、エリス。


    …。


    …エリス?


    ……ねぇ。


    ん…。


    …なんにん、ほしい?


    え?


    …はなして、なかったから。


    て、何の話?


    …こども。


    え…。


    …ごにんくらい?





    あれ?





    …つか、今言うか。


    ん……。


    …まぁ、何人でも良いけど。


    ……。


    …赤くなるな。


    ナディも…。





    ナーディー、どーーこーー?





    …あいつが、探してる。


    ん…。


    …もし、次があるのなら。
    あんたに似ている子が欲しい。


    …私は貴女に似てる子がいい。


    あたしに似てるのはあいつだけで十分、だ…。


    …ううん、たりない。
    もっと、ほしい…。





    あ、いた!





    …と。


    ロント、おかえり…。


    また、いちゃいちゃしてる!


    んー…。


    ね、ロンティタ。


    なぁに、エリス?


    貴女は…








    妹、欲しい…?