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…。
エリス。
…ナディ。
お待たせ。
何もなかった？
なにもなかったって？
賞金稼ぎっぽいヤツが来たとか。
きたよ。
え、マジで。
ナディ。
…は？
しょうきんかせぎ。
…いや、あたし以外で。
なかったよ。
…そ。
なら、よし。
…ねぇ、ナディ。
うん？
よめない。
え？
あれ。
あれ…ああ、看板？
なんてかいてあるの？
あれは…旅行代理店って書いてあるのよ。
旅行ならぜひともうちの店で、とも書いてあるかな。
りょこうだいりてん？
カルロス旅行代理店だって。
自分の名前を店の名前にしてんのね。
…。
ま、あたしたちには関係ない店だけどね。
…あれは？
ん、どれ。
あそこ。
んーー…って、遠すぎて見えないんだけど。
…じゃあ、あれは？
見えるとこでお願いしたんだけど？
そこ。
えーと…住み込み従業員募集中だってさ。
じゅうぎょういん？
店で働いてくれる人募集中ってこと。
ふぅん…。
他には……いつでもにこにこ現金払い？
なんじゃそりゃ…。
…。
もういい？
…うん。
じゃ、行こっ
ナディ。
うん？
今度はどれ？
わからないの。
だから、どれ？
きこえてくる、ことば。
…ことば？
うん。
まぁ、この辺まで来ると北の言葉の方が珍しいし。
しょーがないかもねぇ。
…。
でもさ、ばあちゃんと一緒にいたじゃない？
少しは分かるんでしょ？
…すこし。
どんな話してたの？
ばあちゃんとさ。
……。
ん？
……。
んー……話したくないなら、無理に聞かないけど。
…ナディは。
うん。
わかるの？
そりゃあね。
元々はこっちの人間だし。
こっちの…。
もっと言えばここからもっと南のね。
みなみ…ウィニャイマルカ？
いや、それは違うけど。
…。
エリスとこうやって喋れるのは仕事で必要だったから。
…ま、結果論なんだけど。
…？
まぁ、話すのと読み書きは違うか。
…。
んー…。
……。
とりあえず、行くわよ。
…うん。
…。
…。
……ねぇ、エリスさ。
…。
覚える気あるなら、教えてあげるけど。
…べつにいい。
…あ、そ。
…。
…。
でも、分かるほうがいいと思うんだけど。
…なんで？
でかい町ならともかく。
小さい町や村だったら、ほっとんど、こっちの言葉しか聞くことないから。
…。
あんたは幾らかは喋れるし、分かるみたいだから。
喋ることに関してはまぁ、大丈夫だと思うのよ
多分。
…。
分からなければ、あたしが教えてあげればいいし。
…じゃあ、それでいいよ。
いや、だから。
…。
…でもさ。
読むのと書くのは、喋るのとはまた違うの。
…。
ま、一からだけど…ある意味、一からじゃないから。
北と同じ文字、使ってるしね。
一部、違うけど。
…。
必要ないって言うなら…無理にとは言わない。
…。
けど、少しでも分かりたいなら。
いつでも言ってよ。
…ナディに？
教えるの、そんなにうまくないけどさ。
……。
すぐに、とは言わないから。
……うん。
p a r a d i s e r e g a i n e d
お、朝市やってる。
…あさいち？
そ、朝市。
なんかいいのあるかな。
いいの、あるの？
あったらいいな、って話。
ふぅん。
行ってみよ、エリス。
…。
エリス？
…。
行きたくない？
…いきたいの？
うん、まぁ。
食料、安く買えるかもしれないし。
…。
そだ。
たまには果物とか買ってみようかな。
保存利かないから滅多なコトがないかぎり買うことないけど、ここで食べちゃえば問題ない。
…。
いらない？
…ナディはいるの？
たまにはいいかな、て。
朝市ならそんなに高くないし、新鮮なのも多いし。
…。
とりあえず行ってみよ。
買うか買わないか、決めるのは見てからでもいいし。
…うん。
バナナ、イチゴ、マンゴー、パパイヤ、あと珍しいところではサボテンの実ってのもあるかもよ。
そうなんだ。
よし。
じゃ、行こう。
うん。
ああ、そうそう。
結構人がいると思うからはぐれないようにね。
きをつけてね、ナディ。
あんたがだ。
エリス？
そう、エリス。
…。
もしはぐれたら、その場から動かないこと。
動き回るとかえって見つけられないから。
じっとしてるの？
そう。
そっか。
うごいちゃだめだよ、ナディ。
いや、だからあんたがね。
エリスなの？
そう、エリスが。
…。
まぁ、そうそうはぐれるコトはないと思うけど。
一応、念のため。
ねんのため？
そう、念のため。
ナディが？
どーいう意味だ。
…。
たく。
…。
エリス。
…なに。
これ、つかんでおきなさい。
…これ？
そ、ポンチョ。
どうして？
どうしても。
絶対離しちゃだめよ。
…。
わかった？
…うん、わかった。
んん、やっぱいっぱいあるなぁ。
どれにしよっか、エリス。
…。
ほら、気をつけて。
…ひと、いっぱいいるね。
でしょ？
でもま、これくらいならマシな方よ。
ふぅん…。
珍しい？
うん。
はじめてだから。
ばあちゃんと一緒にいた町にはこういうの、なかった？
…。
ん？
しらない。
知らない？
あまり、そとにはいかなかったから。
…ああ。
おかねかせぐときと、かいもののときだけ。
お金稼ぐって、あの手品のこと？
うん。
あれは…かえって目立つと思うけど。
そうなの？
うん。
だって人を集めなきゃいけないでしょ？
…。
悪い人も集まってきちゃうじゃない？
ナディみたいなひと？
そうそう。
…て、おい。
ちがうの？
それは冗談？
それとも本気で言ってんの？
…？
あたしは…そりゃ、今までそれなりなコトはしてきたけどさ。
あんたみたいな女の子に手を上げるようなコトはしたコトないわよ。
でもしょうきんかせぎなんでしょ。
そうだけど…。
…。
…まぁ、いいけどさ。
慣れてるし。
…。
それより。
ねぇエリス、どれ食べたい？
なんでもいいよ。
なんでもいいの？
うん。
食べたいの、ないの？
…。
ん？
…ないから。
え？
たべたこと、ないから。
え、マジで？
…。
果物、食べたコトないの？
…おばあちゃんとはたべなかったよ。
ばあちゃんとは…あ。
…。
え、えーと…そだ。
じゃあイチゴ、イチゴにしよ。
イチゴ？
ほら、かごの中にいっぱい入ってる。
…あれ？
そ。
さすがにあんなにはいらないけどね。
おいしいの？
うん、おいしい。
どんなあじ？
甘酸っぱい、かな。
イチゴはあまいの？
他のも甘いけどね。
今日はこれにしよ。
…。
やだ？
…ううん、いいよ。
よし、じゃそうしよ。
おっちゃん、イチゴをこんだけ、ちょうだい。
……。
エリス、どう？
…どうって？
甘い？
…。
甘くない？
…あまい。
そっか、よかったね。
…ナディは？
もちろん、甘い。
買って良かった。
…。
おまけはしてくれなかったけど。
…。
もっと食べる？
…いいの？
もちろん。
その為に買ったんだからさ。
…。
ほら。
…いいんだ。
なに言ってんの。
当たり前でしょ。
どうしてあたりまえなの？
どうしてって。
エリスはしょうきむぐ。
…し。
む…？
…そういうコト、言わない。
……。
あたしのことを言うのは構わない。
慣れてるからね。
…。
でもエリス、あんたはそーいうコト言っちゃだめ。
特に外では。
…なんで。
どんなヤツが聞いてるか、分からないから。
…。
それこそ…あたしみたいなヤツが聞いてたら、狙われるでしょ？
あんた曰く、さ。
…ナディみたいな。
そ。
…でもナディはエリスときてくれるよ。
へ？
ウィニャイマルカまで、いっしょに…。
……。
…だから、ナディはちがうよ。
エリス…。
…。
…たく、あんたって子は。
ん…。
なぁに考えてるんだか、ちっとも分からない。
…。
でもま、一緒だったからいっか。
…いっしょ？
イチゴ。
甘い、ってさ。
…。
手、イチゴまみれになっちゃったね。
どっかで洗えるかな。
…ナディ。
なぁに？
……なんでもない。
あ、そ…て、こらこらこら。
…ん？
人のポンチョで拭くなって。
…。
シミになるでしょーが。
…だめ？
だめ。
…。
だからって自分の服で拭かないの。
じぶんのでもだめなの？
だーめ。
…。
ハンカチなんて気の利いたの、持ってないしなぁ。
…。
…仕方ない。
…？
よ、と。
ほら。
…なに？
切れ端。
…きれはし？
どうしたの、なんて聞かないでよ？
どうしたの？
聞くなって言った。
…。
…ポンチョの内側にね、ポケットみたいのをつけてたのよ。
ぽけっと…？
まぁ、そういうことよ。
…わかんない。
ほら、さっさと拭く。
とりあえず、その場しのぎくらいにはなるから。
…ふいて、いいの？
その為に引きちぎった…あ、いや、いいから早く拭いた拭いた。
…うん。
きれいになった？
…うん、なった。
それは良かった。
…。
ありがとう、は？
…なんで？
こういう時に言うものなのだから。
どうして？
いや、どうしてって。
…。
…あんたはどっか抜けてるトコがあんのかな。
なにもぬけてないよ。
ばあちゃんには言われなかったのかね。
なにを？
人に親切にされたらありがとうって言う、とか。
…。
…とにかく。
そーいうもんなの、覚えておきなさい。
おぼえておくの？
そ、覚えておくの。
でもしってるよ？
そうそう、知って…ぱーどぅん？
…。
エリス、あんたね。
はい、ナディ。
あ？
かえすね。
…はいはい、どうもありがとう。
どういたしまして。
…て、違うから。
ああ、もう…。
…ナディ。
あー？
あさいち、まだみるの？
そうねぇ…。
…。
見たい？
…どっちでもいい。
あーそう…。
…。
もう少し、回ろうかな。
うん、わかった。
…。
なに？
いや、素直なんだかそうじゃないんだか…と。
エリスはすなおだよ？
あーそうね、はいはい。
…。
それじゃ、行こっか。
うん。
の前に、エリス。
うん？
さっき、人に親切にされたらありがとうって言うって言ったけど。
うん、きいた。
それ、何でもかんでもじゃないから。
…？
中には親切心を装って、実は下心持って近付いてくるヤツがいるから。
そーいうバカには言わないでいいの。
どういうひと？
そうねぇ…。
ナディみたいなひと？
…て、なんでだ。
ちがう？
違います。
そうなんだ。
そうなの。
…。
たく、あんたは…。
…えへへ。
お…。
…なに？
いや…。
…。
……ちゃんと笑えるんだ。
わらえるよ？
そっか。
なら、いいや。
…。
よし。
じゃもうちょっと見て回ろうか、エリス。
うん、ナディ。
んー…これと言ってめぼしいものはないかなぁ。
めぼしい？
いいものがないってコト。
ま、でもおいしいイチゴが食べられたし、良しとするか。
…。
ん、エリス？
あそこ。
どこ？
ほんがおいてある。
おー、古本かなんかかな。
見てみる？
うん。
興味、あるんだ？
きれいだから。
本が？
きれい。
そっか。
…だめ？
いいよ。
さ、行こ。
…うん。
なんかいいの、ありそ？
…。
これ、は…エリスにはちょっと難しいかな。
…。
北の言葉のがあればいいけど…ない、かなぁ。
…。
…ん、言葉？
あ、そっか。
エリス。
うん？
これとこれと…それから、これ。
あとは、これかな。
どれがいい？
…どれ？
そう。
……。
とりあえず、好きだなぁと思う絵はどれ？
なんとなくでもいいから。
…。
この中にはない？
…これ。
これ？
これが気に入った？
うん。
オーケイ。
おばちゃん、これちょうだい。
ナディ？
え、ちょっと高くない？
少しでいいからまけてよ。
…。
ちょっと、ちょっとでいいから。
ね、お願い、おばちゃん！
このとーり！
…。
やった！
ありがと、おばちゃん！
さっすが、美人だと懐が広いね！
…。
やったね、エリス。
やったの？
うん、やったの。
はい、エリスもお礼言って。
いうの？
そ、言うの。
…ありがとう。
はい、よくできました。
…ナディ。
うん？
あたま…。
ちゃんと言えたから。
…。
ほんとにありがと、おばちゃん。
…。
じゃ、エリス。
はい。
…わたしがもつの？
あんたの本だから。
わたしの？
そ、あんたの。
ほしいなんていってないよ？
そうね。
でもあんたにあげる為に買ったから。
わたしに？
そう。
いってないのに？
そ。
だから、はい。
…でも、よめないよ。
大丈夫、あたしが読んであげるから。
ナディが？
そう、あたしが。
…。
絵本はさ、丁度いいと思うのよ。
なにがちょうどいいの？
絵と一緒に覚えることができる。
…なにを？
例えば…あ、邪魔？
ごめんごめん、おばちゃん。
じゃね、ほんとありがと。
あっち行こ、エリス。
あ…。
ほら、早く早く。
…て。
あ、ごめん、痛かった？
…ううん。
良かった。
…あつい。
え、なに？
あっち、いくんでしょ？
そうそう。
さ、行こ。
…。
よし、ここならいいかな。
…。
なーに、まだ納得できないって言うの？
…とちゅう、だから。
途中？
…なにを、おぼえるの。
ああ、そーだったね。
…。
それはね……やっぱ、内緒にしようかな。
…ないしょ？
そ、内緒。
…なんでないしょなの。
すぐに分かるから。
じゃあ、おしえて。
今は内緒。
…。
とにかく、それはあんたの本だから。
…いらない。
いいから。
いらないよ。
持ってないと、分からないわよ？
わからなくてもいい。
…て。
ほんなんて、いらない。
……うーん。
…。
分かった。
じゃあこれはあたしが持っておく。
…。
欲しくなったら、いつでも言いなさい。
そしたら
いわないよ。
…そしたら、あげるから。
いわないっていったよ。
そんなの、分からないじゃない。
…わからない？
そ。
人の気なんて、すぐ変わるもんだからね。
…かわらないよ。
さぁ、どうかなぁ。
…。
なんにせよ、これはエリスの本だから。
あたしは預かっているだけ。
…いらないのに。
意外と頑固ねぇ、あんた。
…なんでわらってるの。
さぁて、ね。
……。
「La leyenda del hornero」。
ふぅん、カマドドリの伝説かぁ。
へぇ。
…カマドドリ？
気になる？
……ならない。
あ、そ。
…。
ま、読むのは後でゆっくりするとして。
そろそろ、行こっか。
…どこに？
そりゃあ、南でしょ？
…。
朝市、もうちょっと見たい？
…もう、いい。
そ。
じゃ、行こう。
…。
そうだ。
ガソリン、ガソリン入れないと。
…。
エリス、なにしてんの。
行くわよ。
……。
ほら、おいてっちゃうわよ？
……いいよ。
え？
…。
って、どこ行くのよ。
いくんでしょ。
そうだけど。
そっちじゃなくて、こっち。
…。
エリスってば。
…おいてっちゃうよ。
は？
……。
エリス。
…。
…ま、いいけどさ。
…。
エリス、もうちょっとこっちにおいで。
…。
火からそんなに離れてたら体、冷えちゃうって。
…いいの。
良くないって。
ほら、早く。
…。
ほら、エリスってば。
…。
あたしのコト、警戒してるのは分かるけどさ。
風邪、ひいちゃうって。
…しょうきんくび、だから。
だからって今すぐあんたをお金にしようなんて思ってないって。
…いまは、でしょ。
いや、だから
いつか、エリスをおかねにするんでしょ。
…。
…。
…そうかもしれないけど。
今はあんたと一緒に南に行くから。
…おかねのために？
…。
……しょうきんかせぎ、だから。
…。
…。
…何よう、もう。
…。
あー、仕方ないなぁ…。
…。
これ、頭からかぶっておけばいいでしょ。
…いらないよ。
あんたの体は素直だけどね。
…。
あったかいでしょ、毛布。
…ううん。
あのね…あんたが思ってるより、体は冷えてるのよ。
……。
食べるものも食べたし、それにくるまってもう寝なさい。
…ナディは？
あたしのコト、心配してくれるの？
…してないよ。
あ、そ。
だよね。
…。
……たく、なんだかなぁ。
…。
これ、そんなにいらなかったのかなぁ…。
…いらない。
あーそう…それはごめんなさいねぇ。
…。
…カマドドリ。
我ながらにいいと思ったんだけどなぁ。
…。
あーあ…。
……から。
あ…？
……おしえて、くれないから。
…。
…。
……もしかして、それだけ？
…。
まさか拗ねてるの？
…すねる？
あんたの今の状態。
…すねてないよ。
いや、拗ねてる。
何よ、拗ねてるなら拗ねてるって言ってくれれば
すねてない。
…。
……くしゅ。
ほら、冷えてる。
ちゃんとくるまって。
…すねてないのに。
分かった、分かった。
教えてあげるから機嫌、直してよ。
…おしえてくれなくてもいいよ。
…。
…もうねるから。
分かった。
じゃあ、勝手に言う。
…かって？
これから言うコトはただの独り言だから。
そう、たーだーの、独り言。
…。
本を買ったのは、さ…。
…。
…と、言うわけなんだけど。
それでも、いらない？
…。
どうしてもいらないなら…仕方ない。
次の町で…
…ナディ。
うん？
どうしてかってくれたの。
…。
…どうして、わたしに。
今も言ったけど。
あんたが言葉を覚えられるように。
…どうして。
覚えたくない？
…。
て。
エリスが聞いてるの、そんなコトじゃないか。
…わたしは、しょうきんくびなのに。
だから？
…。
賞金首が言葉を覚えちゃいけないなんて、誰が決めたの。
…でも、
誰も決めてない。
だから賞金首だとかそんなの、関係ない。
……。
それとも、得体の知れない賞金稼ぎからなんか貰いたくない？
…。
ねぇ、エリス。
……よめないよ。
うん？
よめない。
…。
……。
ふふ。
…なにがおかしいの。
いーや、なんにも。
エリス、やっぱりこっちにおいで。
…。
早く早く。
……なんで？
なんでも。
ほら、早く。
…。
ここ、ここにおいで。
あたしの隣。
…。
ほーら、エリス。
…すわるの？
もちろん。
…。
火、あったかいでしょ？
…うん。
…。
なに。
…ん、いや。
きたよ。
ん？
…ナディの、となり。
うん、来たね。
……。
カマドドリってね。
…カマドドリ？
そう、カマドドリ。
…。
仲のいい夫婦の象徴なんだって。
なかのいい…？
つがいで一生懸命巣作りをするから、そう見えるんだってさ。
…。
それから…En
casa con nido de horneros no caen
rayos.
カマドドリの…
巣がある家には雷が落ちない。
どうしておちないの？
ねぇ、なんでだろ。
…しらないの。
絵本を読めば分かるかも。
…。
読んでみる？
……。
エリス、一緒に読もう？
…いっしょに？
そ、一緒に。
……。
いや？
……ううん。
そっか。
良かった。
…ナディ。
うん？
……。
どした？
……なんでもない。
エリス？
また読んでるの？
うん。
…。
…。
…ま、いいけど。
エリス、寝る前にお茶飲む？
あったまるよ。
のむ。
そ。
…。
ま、熱心なコトはいいこと、かな。
ナディ。
うん？
ここ。
どこ？
よんで。
んー、どれどれ…。
…。
えーと…y
se juraron amor
eterno,
…。
そして、永遠の愛を誓い合った。
えいえんのあいってなに？
へ？
えいえんのあい。
えー…と。
ずっと好き…ってことかな。
ずっと？
うん、ずっと。
多分、死ぬまで。
しぬまで…。
いや、死んでも、かなぁ。
ま、あたしにはそんな経験、ないから分かんないけどね。
ないの？
ない。
ふぅん…。
…なによ。
なに？
…いや、別に。
つかさ。
…。
一人で大分読めるようになっちゃったな、て。
エリスは結構、覚えが早いのかも。
…。
これならあたしはもう、読まなくてもい
ナディ。
お、とと。
こら、急になにするの。
危ないでしょーが。
…。
たくもう。
…。
はい、お茶。
熱いから、気をつけて。
それから、絵本にこぼしたら大変だからどけておきなさい。
…ん。
ありがとう、は？
…なんで？
なんでも。
…。
エリス。
…ありがとう？
なんで聞くんだ。
…。
で、なに。
…あつ。
言ったのに。
…。
で？
…なに？
いや、なにって。
…。
呼んだでしょ？
だれを？
あたしを。
だれが？
あんたが。
人のポンチョ引っ張って。
…。
用、なかったの？
…。
エリス。
…よんで。
え、なに？
よんで。
でももう、読めるじゃない。
…。
エリス？
…いっしょによもうっていったのはナディ。
それは…そうだけど。
けどさ、その絵本はもうほとんど読めるんでしょ？
…。
そろそろ、違う本でもいいかな…。
…。
…安い辞書ってあるかな。
じしょ？
ま、そのうち、ね。
…。
ふぁぁ。
…ねむい？
うん、そろそろ。
あんたも飲み終わったらもう寝なさい。
…。
絵本は逃げないって。
…。
明日はシャワー、浴びたいなぁ。
ねぇ、エリス。
……。
…。
…。
…エリスさ。
…。
今度はさ、あたしに読んでみてよ。
ナディに？
そう、あたしに。
…。
それでも一緒に、でしょ？
…そっか。
そうそう。
…て、こらこら。
ん？
今日はもうおしまい。
また明日。
あした？
そう、明日。
…あした。
うん、また明日。
ね？
…いえっさ。
いえっさ？
…。
…まぁ、いっか。
飲み終わった？
うん。
よし。
じゃ、寝よ。
ん。
……。
…ねるんじゃないの。
わ、びっくりした。
…。
なぁに？
まだ起きてたの？
ナディはねないの。
寝てるよ。
おきてるよ。
今は、でしょ。
ちがうよ。
あ？
ナディは…あまりねてないよ。
…。
…ねてない。
あたしはさ…ほら、こんなだから。
こんなって、なに。
賞金稼ぎ。
…だから？
そもそもこんなトコで女の子二人、寝るわけにいかないでしょ？
おんなのこ？
そう、女の子。
ナディも？
もちろん。
…。
どうして黙るかな。
ねないの？
人の話、聞いてた？
…。
寝首、かかれたくないでしょ？
ねくび？
それにね、これでも寝てるのよ。
ねてないよ。
おきてるよ。
今は、ね。
あんたはぐっすり寝ていいから。
さ、おやすみ。
……。
…なに。
…。
…。
…。
…賞金稼ぎなんてやってるとね。
ちょっとぐらい寝なくても平気になるもんなのよ。
どうして？
なるものだから。
…どこにいっていたの。
どこにも行ってないよ。
ちょっと回りを見てただけ。
…。
さ、もういいでしょ。
寝なさい。
…。
…。
……ナディ。
んー…。
…。
眠れなくても、寝るの。
…。
…。
……。
エリス。
…わたし、しょうきんくびだから。
だから？
…ねなくても、いいの。
んなわけ、ないでしょ。
賞金首だろうが、なんだろうが…？
…。
エリス…？
……みんな、わたしをねらってるから。
…。
……だから。
今は大丈夫よ。
…。
狙ってるヤツはそりゃ、いるけどさ。
あたしがいるでしょ。
…ナディが？
そう、あたしが。
だから、大丈夫。
…
あ、賞金稼ぎって言おうとしたでしょ。
…してない。
そ。
なら、良し。
しょうきんかせぎ
て、言ってるし。
…でも、へいきじゃないよ。
え？
……。
……。
…。
…え、と。
エリスさ。
…なに。
眠れないなら、話でもしよっか。
はなし？
そう、話。
なんの？
それは今から考える。
…どうしてしょうきんかせぎになったの。
…。
ナディ？
…まぁ、色々とね。
けど、その話はなし。
ききたい。
聞いてどうするのよ。
…。
それに…あまり、言いたくない。
……。
……。
…。
…生きるのに、お金が必要だったのよ。
ただ、それだけ。
…そう、なんだ。
エリスはさ。
はかせをころしたから。
あ？
しょうきんくびになったの。
…いや、そうじゃなくて。
？
エリスはさ、甘いのが好きよね。
あまいの？
そう、甘いの。
イチゴとかさ？
…うん、すき。
そっか。
ナディは？
あたし？
あたしは辛くなければ、大抵のものはいけるかな。
からいの？
辛いのはねぇ、苦手。
そうなんだ。
口がひりひりしちゃうじゃない？
うん、する。
でしょ？
うん。
…。
…。
…。
…おしまい？
空。
…そら？
そう、空。
…。
どこまでも続いてると思わない？
…つづいているの？
そう思うんだけど。
…。
きっと、いや必ず、ウィニャイマルカはあるよ。
この空の下に。
…ほんとう？
うん、本当。
…。
…エリス。
なに？
…。
ナディ？
…想いもね。
…。
伝わるんだって。
そう、この空の向こうまで。
…。
…胡散臭い話けどね。
うさんくさいってなに？
いんちきくさいってコト。
いんちき？
そう、いんちき。
て、なに？
あー…本当じゃないってコト。
ほんとうじゃない…。
だって想いなんて…？
…ウィニャイマルカ。
あ、いや、それはあるから。
…どこにあるの。
そりゃ、確かにどこにあるか分からないけど、でも、あるって。
うん、あるある。
…うさんくさい？
あるの。
…。
あるから。
……うん。
エリス、何か見えない？
…。
エリス。
…。
エリスってば。
…うん。
そろそろ町に着くと思うんだけど…看板とか、見えない？
スタンドでもいいんだけど。
…。
て、エリス？
……う、ううん。
寝てるし。
だから言ったのに。
…。
たく、しょーがないなぁ。
…。
……でもま、いっか。
…。
て、こっちは良くないな。
ガソリンが、やばい。
…。
なくなったら、ただの荷物になっちゃうなぁ。
…ナディ。
お、起きた？
……。
て、起きてないし。
…。
ま、なんとかなるかな。
多分。
……。
…飛べたら、車なんか要らないんだけどな。
…。
オガライティーの両腕は二枚のツバサに変わり、体は次第に小さくなった。
…。
そして明るくさえずりながら、空を飛んでいった。
その声を聞くと
…エイレテーもことりにかわった。
…。
オガライティーといっしょになるために。
…起きた？
おきてたよ。
うそつけ。
カマドドリ。
ん？
えいえんのあいをちかったふたりは、ずっといっしょなの？
そうみたいね。
にんげんじゃなくても？
そんなの、関係ない。
姿がどうであれ、オガライティーとエイレテーはそれでしあわせなんだから。
しあわせ…。
そ、しあわせ。
…そうなんだ。
たとえ人間に戻れなくても。
好きな人と一緒に生きられれば、さ。
…ナディも？
あたし？
うん。
あたしは…さて、どうだろうね。
…。
エリスは？
わたしは……ふぁ。
ふふ。
いいよ、まだ寝てても。
うん…。
でも寝すぎて夜、眠れなくなるとかはなしね。
……、から。
うん、なに？
ナディといっしょに、よむから…。
…。
よんで、あげるね…。
…ん。
……。
...dos
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