−die Liminalität -N-
エリスの中に沈んでゆく。
気付いたのは、いつだったか。
はぁ…はぁ…はぁ…ぁッ
…エリ…スッ
青白い躰。
無駄な肉など一切、無くて。胸の膨らみさえもこうして横になってしまえばほぼ、無くなってしまう。
ただ、ただ、蕾だけがその存在を主張する。
柔らかいとは言い難い、けれど、固いとも言えない躰にあたしは夢中になる。
穢れを知らないエリス。知らなかった、エリス。色で言えば白だった、のに。
今は、もう。
あ…ッ、ぁぁ…は…ぁ、ぁ…ッ。
甘い匂い。
頭の中を侵されて、ひたすら、ひたすらに融かされていく。
どろどろ、と。
こんな汚いもの、全部流れ出てしまえば良いのに。
なのに留まって、また、繰り返す。何度も、何度も。
もう、白では無くなってしまったエリス。
あたしの手で、あたしの色に、決して綺麗とは言えない色を混ぜられて。
もう、何度目か分からなくなっていた頃。
あたしは気付いた。
エリスのお腹に、自分の手が沈んでいく事に。
ずぶずぶ、と、実際音は立たないけれど、けれど直接頭の中に響いてくるような音と共に。
初めは指先から。それから手の平、手首、そして最後は。
ゆっくりと、沈んでいく。
エリスは決まって、悦楽とは違う、苦しげな声で呻く。
涙を浮かべて、眉を歪めて、過呼吸に陥りそうなくらいの息遣いで。
自分の躰を犯そうとするものを、拒絶するように。
でもあたしは止まらない。止められない。
エリスの躰の中に沈んでいくのは、たまらなく、心地良いものだったから。
心の中でごめんと繰り返し、けれど、止めることはしない。
滑稽だ。
自分の事しか考えてない。
こんなに大事に思っているのに。
最後にはやっぱり自分の事しか考えてない。
エリスがひどく苦しそうにしているのに。泣いているのに。守ると決めたのに。
あたしは最低だ。クズだ。あたしなんか、死んでしまえ。殺されてしまえ。
あたしなんか。
ナ…ディ…。
名前を呼ばれる。
名無し、と。
そしてそれはエリスがくれた名前。
希望。
…どこが、どこが、どこがッ
あたしの、あたしなんかのどこが…ッ
あたしは根無し草、温もりなんて求めちゃいけなかった。
いけなかったのに、求めた。挙句、手に入れたと思い込んで。
守りたかったのに。ただ、守りたかった。大切にしたかった。傷つけたくなど、無かった。穢したくなど、無かったのに!
エリスのお腹の中に、あたしの躰は半分以上沈んだ。
突き抜ける事は無い。
エリスの中に収まっていく、自分。
エリスを苦しめているのに、自分だけが満たされていく。
ああ、このまま、消えてしまえば良い。
エリスの中で。
エリスの、熱の中で。
融けてしまえれば、どんなにも…。
ぁ…ッ
……けれど、終わりは唐突にやってくる。
エリスの命に触れる事で。
終わりなんて望んでない、けれどあたしの手はエリスの命に触れる。触れてしまう。まるで初めからそれを望んでいたかのように。
エリスの命に触れた瞬間、自分の中で、多分これがあたしの命だと思うそれが、爆ぜる。
爆ぜて、そして、押し出される。
熱い、熱い、熱い、熱い。
エリスの声、エリスの熱、エリスの、命。
それがあたしの中に流れ込んでくる。
声が出ない。息が出来ない。そうだ、このまま死んでしまえば。そうしたらもう二度と、エリスを悲しませる事もなくなる。
そう、エリスはもう二度と…。
…ナディ。
もう一度、名前を呼ばれた時。
気付くとあたしはいつもエリスに抱かれていた。
頭を胸の中に埋め、限りなく優しい腕の中で。
髪の毛を梳かれて、頭を、まるで子供にするように撫ぜられる。
苦しい。
あんなにひどい事をしているのに、したのに。
本当はあたしなんかが触れちゃいけないのに。
…だいすきだよ、ナディ。
苦しげな声ではなく、とてもとても優しい声で。
あたしの目から涙が零れ落ちる、止め処なく流れ落ちる。
それはエリスの躰に染み込む事無く、流れていく。
ごめんなさい…ごめんなさい…。
沈ませていた手を、穢れている腕を、エリスの小さな躰に回す。
抱くとは言えない、ただ縋りつくだけの行為。
それでもエリスは赦してくれる。
いつも、いつも。
……ナディ。
……エリ…ス。
おやすみなさい…ナディ。
穏やかな呼吸、心音に包まれて、あたしは意識が遠のいていく。
夢無き眠りの中に、落ちていく。
冥き光の中へ、堕ちていく。
…ああ、エリス。
どうか。
どうか…。
あたし、を……。
………赦さないで。
−die Liminalität -E-
エリス…。
…ナディ。
ナディの唇が額にそっと触れる。
それだけでわたしはとてもしあわせになれる。
…。
唇を重ねる、角度を変えられて何度も何度も。
ナディがおしえてくれたこと。わたしはその心地よさに夢中になる。
他のことはもう、考えられない。ナディのことだけ。
……エリス。
優しいナディ。
どんなときでも。
わたしはあなたがいれば、それだけでいい。
ナディさえいてくれれば他になにも、いらない。
わたしはあなたがすべてだから。
ナディ…。
ナディがわたしの躰をだく。
わたしはナディの首に手をまわす。
はなれないように。
はなれてしまわないように、わたしはナディの首に回した手に力をこめる。
あなたにわたしのすべてを、あげられるように。
エリス…あたし、は。
そうやって何度ももとめあって。数え切れないくらいの夜をふたりでこえて。
いつからか、ナディはわたしの中に沈んでゆくようになった。
初めはわたしにふれている手、指から。
ずぶずぶと、わたしのおなかの中にゆっくりとおちていく。
その音はふたりからうまれた音。ナディがわたしの膣(ナカ)にはいるときとはちがう音。
頭の中に、ひびいてくる。きっと、ナディの中にもひびいていると思う。ひびいていたらいい、と思う。
は…は…。
ナディの躰が半分しずんだ。それでもまた、私のいのちまではとどかない。
はやく、はやく。はやく、わたしのなかに。ナディの背中に爪を食い込ませて、ねだる。
ぬるりとした感触。ナディの背中にまたきずがひとつ、ふえた感触。
ゆびさきにナディのいのちのしずく。なめたい。ナディの味がする、それを。
…ああ、でも、でも。
はやく、わたしのなかにはいって。はやく、はやく、はやく。
ひとつになろう。なって。おねがい、ナディ。
わたしはあなたをやどしたいの。
ぅ…。
あともう少しで、わたしのいのちにに手がとどくころ。
きまって、ナディはなきだす。
どこまでも優しいナディ。わたしにしあわせをくれたナディ。
なのに、今のナディの顔はつらそうで、かなしそうで。しあわせそうじゃ、なく、て。
胸がいたい。こころがきしむ。しあわせなのに、かなしい。くるしい。
一つになる痛みはしあわせのいたみ。いたいけど、いたくない。むしろ、もっとほしくてしょうがなくて。
けど、これはちがう。
のこったナディのかお、目から流れるなみだがわたしの上に落ちるたび、そこにやけるようないたみがはしる。
あなたのいのちにやかれてしまうのは、かまわない。
だけど…こんなの、たえられない…たえられないよ、ナディ。
ねぇ、どうして……どうして、そんな顔をするの…?
ねぇ、ナディ…。
…。
わたしはどうしたらいいの。
どうしていいか、わからない。
わたしはナディにしあわせをもらったのに、わたしはナディにあげられない。
それどころか、なかせて、くるしませてばかりで…。
…おねがい、そんなかおしないで。
ナディ、ナディ…
……すき。
わたしを、こばまないで。
……エリス。
わたしに、あなたをしあわせにできるちからを。
そうすれば、ナディはきっとわたしのなかにかえってきてくれるから。
魔女のちからなんて、いらない。
わたしがほしいのは、あなたをしあわせにするための、ちから。
あなたをなかせなくていいように、くるませなくていいように。
どうか、どうか。
……。
…ふたりを、ひとつにするちからを。
−Su compañera vieja.
…シャワー。
ん、ああ。
出た?
…けんじゅう、だしてる。
手入れはこまめにしないといけないから。
いざという時に使えないでしょ。
…エリスをまもってくれるとき?
簡単に言えば、ね。
…そっか。
思えば、こいつには世話になりっぱなしだわ。
せわ…。
…付き合い、長いのよ。
どんなヤツよりもね。
…そう、なんだ。
…。
…ねぇ、ナディ。
んー…。
…。
…!
だめ!!
……。
触っては、だめ。
前にも言ったでしょ。
……どうして?
触らなくても良いから。
…。
これは、だめ。
……いえっさ。
…。
…。
…エリス。
…なに。
大きな声出して、ごめん。
…ううん。
…。
…。
…。
…ナディ。
…ん。
……もう、さわらないから。
うん。
…。
…。
……ナディ。
…。
……。
…なぁに?
…ううん、なんでもない。
そ。
…。
エリス。
…。
そんなに離れなくてもいいから。
…。
かえって気になるじゃない。
…。
…。
…そばにいてもいいの?
ばーか。
…。
そんなの、当たり前でしょうが。
…。
……ほら、エリス。
うん…。
でもこれには触っちゃだめよ?
…わかった。
よし。
さ、おいで。
…。
…。
……つきあい。
ん?
…いつからなの?
うーん、そうねぇ…。
…。
内緒。
…なんで?
なんとなく。
……。
大したことじゃないから。
…あるよ。
…?
エリ…
…ずっと、いっしょにいたんでしょ。
このこと…。
…まぁ。
でも、この子って言うほどのものじゃ…。
……どんなひと、よりも。
…。
…。
…どうしたの。
今夜はなんか変よ?
……へんじゃないもん。
変なコト、言い出すし。
……。
ん、どした?
……いつまで、やるの。
え…?
ていれ。
ああ。
あんたが邪魔しないでくれれば、もう少しで終わるわよ。
…はやく、おわらせて。
言われなくても、終わらせるって。
…はやく。
分かったって。
…。
そんなにじぃっと見なくても。
まってるの。
あ?
おわるまで。
…分かった、分かった。
じゃあ、待ってなさい。
まってるっていったよ。
…ああ、はいはい。
……。
……変なヤツ。
−Luna de miel.
…。
…。
…ふ。
…?
くしょん…ッ
…かぜ?
いや、なんか鼻がむずむずしただけ。
…さむい?
寒くない。
…。
あんたが、いるから。
…うん。
…。
…。
…あー、なんだかゆっくり。
…だめ?
と言うより、あまり慣れてないから。
…。
悪くないなぁ…こういうの。
…。
旅も良いけど…こういうのも、悪くない。
…。
…こういうあたし、好きじゃない?
…ううん、だいすき。
…。
…ナディ。
エリス…。
…。
…。
だいすき…。
……ん。
ナディ…ナディ…。
……こら。
…。
朝だって言うのに。
……おはよ?
そう、おはよう。
…。
て、おいおい…。
……だいすき、だから。
…。
だから…。
……まったく。
あ…。
朝だって言うのに…。
…ナディ。
……火ぃ、つけてくれるんじゃないわよ。
…ナディだってひとのこと、いえない。
なんだとぉ…。
…えへへ。
…。
…?
どうしたの…?
良く笑うようになったなぁって。
…。
……かわいい顔、してくれて。
ねぇ…。
…ん。
もっと、すきになってくれる…?
…。
もっとわらったら、もっと…あん。
……あーあ、ほんとどうしてくれよう。
もっと…なって。
……もう、全然気が済まない。
ナ、ディ……。
−No me gusta.
あー、今夜は飲んだ飲んだ。
…。
んー…気分良い、かも。
…
エリス、エーリースー。
…なに。
シャワー、一緒に浴びるー?
…。
んー?
…ひとりではいる。
まぁたまたぁ。
…。
嬉しいくせにぃ。
…ナディ、よってる。
やだなぁ、酔ってないってば。
ちょっと気分が良いだけで。
…。
ねぇ、エリス?
…おさけくさい。
う、お。
くさい。
え、エリス、首、首が…。
…。
……。
…。
……今のはやばかった。
…。
もう、エリスは
きらい。
え。
よっぱらいはきらい。
いや、だから、酔ってないってば。
…うそつき。
エ、エリス?
…。
あ、ちょっと待って。
…ナディのうそつき。
嘘なんか吐いてないってば。
…。
飲んだって言ってもビン一本だけだし。
あれだけじゃ酔わないって。
…。
エリス。
…でも、おさけくさい。
や、それは…まぁ。
…。
あ。
…ナディ、こんやはいす。
え、えぇ。
…なれてるんでしょ。
そ、そりゃそうだけど、でも最近は…。
…。
ちょ、エリス。
…もう、ねる。
シャワーは?
…あさ、あびる。
いや、でも
ねる。
……。
……。
…あの、エリス?
あたしは…
ナディはあっち。
えー…。
あっち。
や、でも、折角久しぶりのベッドだ、し……。
…。
…ねぇ、エリス。
いす。
…う。
…。
…えと。
あのね、エリ
いす。
…。
いえっさ、は?
……いえっさ。
−Pero te quiero!
エリス。
…。
エリスー。
…。
エーリース。
…。
このぉ、とっとと起きやがれ。
…ふが。
て、変な声。
……ナディ。
おはよ、エリス。
朝よ。
……おはよう。
良く眠れた?
…うん。
そ。
それは結構。
…。
起きたら支度。
…。
二度寝はだーめ。
…。
て、聞いてる?
…きいてる。
そうそう、ベッドからはさっさと出る。
じゃないと誘惑に負けちゃうから。
…。
はい、エリス。
上着。
…ナディ。
ん、なに?
まだ眠い?
…。
こらこら、エリス。
起きろー。
ナディ…。
…お。
…。
…なに、どうしたの。
……ナディ。
え、と…。
…。
…自分で言ったくせに。
……だって。
確かにくさかっただろうけど。
…だって。
……よしよし。
…こどもじゃないもん。
はいはい、そうね。
…。
…ほら、いつまでもくっついてないの。
だって。
…。
…ひさしぶり、だったのに。
…うん。
…ほんとうはいっしょに
お酒。
…?
ちょっと控えようかなぁって。
…。
大体、そんな大好きってもんでもないし。
…そうなの?
嫌いでもないけど。
…。
…けど。
…けど?
嫌われるの、嫌だしね。
…だれに?
それは教えない。
おしえて。
いやだ。
お・し・え・て。
い・や・だ。
お・し・え・て・く、ん。
…。
……。
…残ってた?
……ううん、へいきだった。
良かった。
…。
エリス、そろそろ離れる。
…もうちょっと。
こらこら。
もうちょっと。
…やれやれ、仕方ないなぁ。
…えへへ。
−Príncipe mío.
ナディ。
ん?
これ、かってもいい?
どれ?
これ。
…紙?
うん。
紙なんてどうするの?
…。
エリス?
…いわなきゃ、だめ?
そりゃあ…。
…。
…何枚、欲しいの?
にまい。
んー…。
……。
そんなに欲しいの?
…うん。
…。
…。
…ま、いっか。
良いわよ。
ほんとう?
うん。
ナディ!
て、こらこら。
紙、選ばないで良いの?
そうだった。
えへへ。
まったく。
で、どの色にするの?
あか、と、あお。
へぇ、もう決まってるんだ。
うん、きまってるの。
で、どうすんの?
ないしょ。
…ほぉ。
でも、ちゃんとおしえるよ。
今は内緒だけど?
うん。
…まぁ、良いや。
んじゃ、ほい。
ありがとう、ナディ。
どういたしまして。
ナディ、ナディ。
うん?
あげる。
お、なになに?
これ。
これ?
うん。
…これ、なに?
オリガミ。
…オリガミ?
そう、オリガミ。
…て。
これ、この間買った紙?
そうだよ。
そういやあの後、何かこそこそやってたみたいだけど。
これ、つくってたの。
これを?
うん。
…なんか、よれよれじゃない?
…。
あ、いや、別に悪く言ってるわけじゃないわよ。
うん。
…これ、ナディなの。
へ。
オダイリサマ。
オダ…なんだって?
オダイリサマ。
オダサマ?
オ・ダ・イ・リ・サ・マ。
…あー。
…わかってない。
え、と。
その、何とかさまがあたしってどういう事?
エリスはオヒナサマ。
…はい?
オヒナサマ。
オヒサナマ?
オ・ヒ・ナ・サ・マ。
……あー。
…やっぱり、わかってない。
やかましい。
で、あたしがこの赤いので、エリスはその青いのってのは分かった。
ほんとうはあおいのがオダイリサマ。
…は?
でもナディはあかいから。
赤いって。
わたしのたいよう。
…だっから、恥ずかしいっつぅの。
かお、あかい。
うるさい。
で、エリスはなんで青?
青くないじゃない。
いいの。
…理由、ないんかい。
ナディがあかだから、エリスはあお。
…あーそうかい。
えへへ。
…で。
結局、何なの。
なにが?
いや、だから
オヒナサマとオダイリサマはなかよしふうふなの。
……。
ナディはエリスのオダイリサマ。
…じゃあ、あんたはあたしのオなんとかさま?
オヒナサマ。
……で。
なかよし。
今度は何の本を読んだ?
ハポンの。
…またか、ハポン。
ぶんか。
…どんな国だ、ハポン。
なかよしふうふ。
…。
ナディ?
…あ、うん、そうね。
…。
え、と。
ありがとう、エリス。
…。
な、なによ。
…なかよし?
うん、まぁ。
…。
…え。
…。
ちょ、こ、ここで?
…なかよし、だから。
や、でも、
…。
……ああ、もぅ。
ん…。
……。
……もう、おしまい?
…流石にこれ以上は出来ないわよ。
…。
あ、や…つ、続きはまた後でというコトで。
…ほんとう?
いずれ、近いうち…。
…。
きょ、今日も星の下だし…。
…ほしのしたでも
あー!
その先は言わんで良いから…!
−Primero beso.
…。
…。
…。
…え、と。
なに、エリス。
…。
う、お…。
…ナディ、は。
う、うん。
したこと、あるの?
は、何を?
…。
え、エリス?
…キス。
はい?
キス。
……ぱーどぅん?
キス、したことあるの?
……。
ナディ。
つ、つかいきなり何を言い出すのよ。
…。
人の事、じぃっと見てると思ったら。
…あついこいのほのおが
て、エリス!
……。
そ、そもそもそんなコト聞いてどうするのよ。
…ききたい。
いや、だから
…あるんだ。
はぁ…?!
したこと…。
や、待った待った!
誰もそんなこと言って
…ミゲル?
…ッ!
…そう、なんだ。
エ、エリス…!!
…こえ、へん。
てか、なんであんなヤツと…ッ!
…むかしのおとこ。
つか!!
ミゲルとはそんなんじゃないから…ッ!!
…あついこいのほのおが、
だぁから、違うっての!!
あんたも知ってるでしょーが!!
……くわしいことは、しらない。
アイツには金を取られたの!
それだけ!
…でもナディからあげた。
う。
あげたのはナディ。
そ、それはそうなんだけ、ど…。
……。
だ、だからってあいつとキスなんてしてないから!
いや、本当に!!
…ナディ、ひっし。
や、た、確かにおでこにされたって言えばされた、けど…!
……。
で、でも!
口にはしたこと、無いから…!!
……だれとも?
そう、誰とも…!!
ほんとうに?
う、嘘なんか吐くかい…!!
……。
…あ。
…そう、なんだ。
あ、いや…。
ナディ…。
て、てか、エリスこそどうなのよ…!?
エリス?
そう、あんた!
…わたしは
え、あ、あるの?
…。
…まじで?
…ないよ?
……へ。
ないよ。
……。
…ナディがとめてくれたから。
あたしが…?
…じゅうのひと。
……ああ、そういえばそんなヤツもいたっけね。
…どうして?
え…。
いいって、いったのに。
や、それは…。
…。。
だ、だから…。
…ナディ、へんなかお。
…なんでだ。
…。
あ、ああもう…。
…?
なぁに、やってんだか…。
…。
…なんかすんごい疲れた。
…ナディ。
エリスが変なコト言い出すから
ナディ。
…あー今度は何よぉ。
キス。
…だから、したことないって言ってるでしょ。
あーないわよないわよ、どうせな
…。
…い?
……。
え、え…えぇぇ?
…キス。
いや、てか、え、あ、その…えぇぇぇ?
…。
ちょ、エ、エ、エリス…。
…だめ?
う……。
…ナディ。
あ、や…。
…。
……エ、リス。
…。
…。
………。
………。
……ナディ。
……。
……えへへ。
うー…。
…はじめて。
…!
……うれしい。
……あー。
…。
…てか、さぁ。
なぁに?
…そういう顔は、その、色々と反則だと思うんだけど。
…?
はんそく?
…。
ナディ…?
……ああ、くそぅ。
ナディ、かおあかい。
あ、あんたもでしょうが。
…。
な、なに。
…ナディとキス、できた。
…ッ
ああああもう…ッ
−Como niña pequeña.
エリス。
…。
エリス。
…。
それ、そんなに面白い?
…うん、おもしろい。
ふぅん。
…。
…どんな話なの?
こいのおはなし。
…あんた、そういうの好きよね。
べつにそうでもないよ。
でも、読んでる。
おもしろいから。
そういうのは好きって言うのよ。
そうかなぁ。
そうなの。
ナディがいうならそれでいいよ。
…。
ナディもよむ?
あたしはいい。
そういうの、面白いと思わない。
ナディはおことぎらいだもんね。
…て、こら。
えへ。
…。
…。
…ねぇ、エリス。
…なに?
…。
…ナディ?
……なんでもない。
なんでもない?
…そう、なんでもない。
…。
…なんでもないのよ。
……。
…。
…きょうのナディは。
……。
すこし、あまえんぼう。
…ちがうわよ。
…。
…ちがうの。
…。
…。
…ナディがそう、いうのなら。
…。
そういうことにしてあげるね。
……ちがうのに。
…。
…。
…ナディ。
……読まなくて、良いの?
うん、きょうはもうおしまい。
…面白いんじゃなかったの?
うん。
じゃあ…
でも。
…。
……ナディのほうが、すき。
……何よ、それ。
そのまんまだよ。
…。
ナディ…。
……本と比べられるなんて、面白くない。
…。
…。
…きょうのナディ、ちょっとおこちゃま?
…うるさい。
…。
…。
…ナディ。
…。
ナディ。
……。
…おいで、ナディ。
…もう、来てる。
もっと…だよ。
…。
もっと…。
……。
……おいで。
わたしの……。
−La pastel de la boda.
ああ、疲れた…。
お疲れさま。
…。
なぁに?
…いや、うん。
変なナディ?
…んー。
すぐに部屋に行く?
うん、行きたいかな。
人が多いと疲れる。
ナディは都会が似合わないもんね。
あんたもね。
エリスは都会の女だから。
何言ってやがる。
あたしと同じ匂いさせてるくせに。
ナディと同じ?
そう、同じ。
田舎くさいってこと?
そうとは言ってない。
つか、エリス。
えへへ、ごめんなさい。
たく。
ねぇ、ナディ。
あー?
ナディと同じ匂いってどんな匂い?
…。
どんな?
…そうねぇ。
…。
土くさい、かな。
荒野の匂い。
土…。
そう、土。
…なんて
そっか。
…納得するなって。
でもナディは太陽の匂いもするよ。
…。
エリスはしない。
月、だから。
…あー。
太陽のお嫁さんなの。
……うん、そうね。
えへへ。
んー…と。
部屋、行こっか。
うん。
今夜はふかふかだね。
ま、ね。
ホテル、だしね。
楽しみ。
うん。
ふかふかのベッドなんてなかなか
…それだけ?
え…。
……。
……あー、うん。
…一緒にお風呂も?
え…。
…だめ?
あ、いや…。
…。
……はい。
やった。
……つか、なんでブルーアイズは
お礼、言わないとね。
…はいはい、そーねぇ。
ナディとお風呂、楽しみ。
…そもそも、なんでこんな高そうなホテルの宿泊券をタダで
あ、ナディ。
うん?
見て。
どれ。
ケーキだよ。
大きいケーキ。
ああ、本当ね。
きれいだね。
そうだねぇ。
すごいね。
うん、すごいね。
近くで見てもいい?
良いわよ。
大丈夫?
うん?
疲れてるんでしょ?
まぁ、これくらいなら。
行ってもいい?
うん、行こ。
わぁ…。
ウェディングケーキ、だってさ。
これ。
うん、見れば分かるよ。
そうかい。
三段になってる。
なってるね。
あのね、ナディ。
うん?
一番下のケーキは式に来てくれた人に振舞うんだって。
へぇ。
真ん中は来られなかった人たちに。
じゃ、一番上は?
…。
ん?
…赤ちゃんが生まれた時、食べるの。
へぇ、赤ちゃんかぁ。
それか結婚一周年をお祝いして食べるんだって。
ふぅん。
て、一周年って。
それまで取っとくの、これ?
そうだよ。
大事に大事に取っておくの。
…腐らない?
厳重に保管?
て、言っても…
大丈夫なんだよ、きっと。
…そんなもんなのかねぇ。
良く分かんないけど。
……きれい。
…。
……。
…エリス、さ。
…なぁに?
こういうの、欲しい?
…。
その、あたし達の時、も。
ううん、いらないよ。
でも
共同作業はもう、したから。
…共同作業?
ばきゅーん。
……。
ローゼンバーグ。
……て、あれは無しでしょ。
無し?
論外よ、論外。
夫婦最初の共同作業がアレなんて、嫌すぎる。
そっか。
たく、何を言い出すかと思えば。
大体、あの時はまだ夫婦じゃ…。
……。
…やっぱり欲しいんじゃないの。
見てるだけだよ。
ふーん。
もう、満足。
…。
部屋に行こう?
…ねぇ、エリスさ。
なに?
真っ白いドレス着たあんたと、こういうの、多分合うと思う。
すごく。
…。
……ごめん。
なんで?
なんとなく。
…。
……見たいなぁ。
もう、見たよ。
へ?
ナディと二人で。
だから、満足なの。
エリス…。
行こう?
…。
…?
ナディ…?
……エリス。
…。
…頑張るから。
…二人で?
…。
夫婦は二人でなるものだから。
…そうか。
そうだね。
…ナディ。
よし、力が出てきた。
…。
エリス、行こ。
ナディ。
うん?
…今夜は、眠れない?
は…?
…。
い、いや、エリス、そういう事じゃなくて…。
…久しぶり。
う、あ…。
…嬉しい。
…。
…。
…と、とにかく。
行こ、エリス。
…ん。
……。
…。
……疲れてたんだけど、な。
ナディは元気だから…。
…どーいう意味だ。
…知りたい?
…。
…ん?
……今は、止めとく。
じゃあ後でね…?
…それも遠慮しとく。
しなくてもいいのに。
…するって言ったら、するの。
……ふふ。
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