−Ich weiß den Namen dieser Blume noch nicht.





   …ね、ナディ。


   うん、どした?


   あのね…。


   …うん。
   うん…?


   …ふふ。


   何を言い出すかと思えば…。


   …だめ?


   て、言われると言えない。


   …だめなんだ。


   だから、言えないって言ってる。


   ふふ。


   たく…しょうがないな。





   ……。





   あ、ロント…。


   うん?


   ……。


   お帰り。
   さ、こっちにおいで。


   ……。


   どうしたの?


   …。


   じゃあ、こっちにおいで?


   …。


   ロンティタ?


   …。


   ロント、どした?


   ……。


   …ナディ。


   仕方無いな。
   よっこいしょっと。


   …。


   今日も見事に汚れてきたなぁ。
   顔にまで土が付いてる。


   …うー。


   ん?
   …お。


   ……。


   ロント?


   うーー!


   それじゃ分かんないって。
   なんだ、さっきから変なヤツだなぁ。


   ……っこ。


   なに?


   っこ…!


   お…。


   ……。


   ナディ。


   …やれやれ、しょうがないな。


   ……。


   その花、エリスに?


   …う。


   なら、潰してしまわないうちにあげないと。


   …。


   だってさ、エリス。


   ありがとう、ロント。


   …。


   とりあえず、顔と手だけは先に拭こうか。
   エリスが汚れてしまう。


   ……。


   …うん、これで良い。


   ……っこ。


   分かってるから、一寸待ってろ。


   ……。


   よいしょ、と。
   んー、日に日に重たくなってる気がするな。


   …ナー。


   んー?


   ……。


   …エリスは大丈夫だよ、ロント。
   心配、要らない…。


   ……。


   はい、到着。
   じゃあ、ロント。


   ……。


   エリスに。
   あげるんでしょう、その花。


   ……。


   ロンティタ?


   …う。


   ありがとう、ロンティタ。
   嬉しい。


   …!
   と…?


   うん、本当。
   ありがとう。


   …っさ!


   空き瓶、あったかな。
   水入れて、そこに入れて…


   …。


   何、エリス。


   ううん。


   …お。


   えへへ。


   こら、花が潰れちゃうって。


   ロント、ロンティタ。


   …?


   ロンティタも、ね?


   …う!


   て、こらこら…。


   …えへへ。


   …うー。


   エリス、汚れるよ。
   ロント、着替えさせてないから。


   …うん。


   うー、うー。


   やれやれ。
   二人して、今日は酷く甘えただな…。


   …したく、なったの。


   …。


   したく、ね…。


   …だめ、だった?


   ……。


   駄目では無いけど。
   でも、これじゃ動けない。


   ……。


   ……。


   …あぁ、もう。
   まぁ、良いか…。








   ……。


   …ロント。


   ……。


   …。


   …この花、エリスは好きだった。


   かわいい花…。


   …エリスはいつも、喜んでくれた。
   ナディはいつも、瓶に水を入れて…。


   ……。


   …二人が、いつも遠いところにいるように思えた。
   抱いてもらって、キスをもらって…それでも。


   ……。


   けど、この花を摘んでいくと……。


   ロント…。


   …エリスはベッドの上で、いつも笑ってくれた。
   ナディは、そんなエリスとわたしをいつも、包んでくれた…。
   わたしは、その瞬間が、大好きだった…。


   ……。


   …この花の名前、わたしはまだ知らない。


   この花の、名前…。


   …聞けなかった。


   ……。


   リリオは、知ってる…?


   …この花の名前は。


   ……。


   この花の名前はね…。








  −“Re-CODA”





   …わたしの声が、あなたの心の温もりであって欲しい。





   ナディ。


   …。


   ナディ。


   …ん。


   どうしたの?


   …なんでもない。


   …。


   ん…?


   …。


   …なに?


   ……なんでもない。


   なんでもない…て。


   ……。


   ……。


   …エリ


   さむいね。


   え…?


   …さむいから。


   ……。


   …。


   …でもあんたの手、冷たいんだけど。


   ……。


   …まぁ、いいけどね。


   ……。


   …エ


   ナディ。


   …なに。


   ナディ。


   だからなに?


   ナディ。


   ……。


   …ナディ。


   ……変なヤツ。


   ……。


   …でも、ありがと。


   …。


   エリス、さ。


   …なぁに?


   しばらく、このままでいてよ。


   …。


   …いや、ならいいけど。


   …いいよ。


   …。


   …。


   …ありがと。


   ん…。


   ……。


   ……。


   …ひとりに、しない。


   …。


   ……どんな運命が待っていても。


   …。


   …しないから。


   ……うん。


   …。


   …ナディのて。


   …。


   ……あったかいね。


   あんたよりかは…ね。


   …。


   …でも。


   …?


   あんたは…いるだけで。


   …。


   それだけで…あったかい、から。


   …ナディ。


   な、なんて。


   …。


   …え、と。
   エリス。


   …なぁに。


   ……。


   なに…?


   …声、聞かせてよ。
   もっと…。


   ……。


   …それだけで寒いの、どっか行くような気がするから。


   あ…。


   ……え、と。


   ナディ。


   なに…。


   …ううん。


   何よ。


   …だいすき。


   う……。


   …いったよ?


   う、ん…。


   ……もっと、ききたい?


   ……。


   ナディ…?


   …うん、聞きたい。


   ……。


   ……。


   いえっさ、ナディ……。








   ・


   ・








   携帯、持ちなさい。


   …は?


   携帯。


   ……。


   業務で必要な連絡を取る為よ。


   いらない。


   人の話、聞いてた?
   仕事で使うと言っているの。


   金がかかる。


   連絡を取り合うのも仕事の一つよ。


   店にある電話で十分でしょ。


   店にいる時は、ね。


   店にいない時まで必要だって?


   必要、よ。
   業務連絡は店にいる時ばかりだとは限らないわ。


   ……。


   ナディ。


   …そんな金、無い。


   あったら、良いのね?


   あってもいらない。
   あるなら、違うとこに使う。


   もう一度だけ、言うけれど。
   これは仕事の話よ。


   …。


   社会に適応しろとはこの際、言わないわ。
   けれど最低限必要な事だけはして頂戴。


   ……。


   はぁ。
   プリベイド式で良いから。


   …プリ?


   予め料金を先払いしておく携帯よ。
   前払いしてある金額の分しか使えないわ。


   …だから?


   それなら使い過ぎる事も無いわ。


   前払い、しないと思うけど。


   ……。


   ……。


   …貴女は賞金稼ぎだった時も持ってなかったわよね。


   根無し草だし。
   そんな金も無い。


   良いわ。
   はい。


   …は?


   もう、前払いはしてある。
   と言っても貴女はかけないと思うけど。


   …。


   仕事で使った分は会社が支払う。
   持っていて、損は無いと思うわ。


   …好きじゃないのよ、これ。
   いつでも居場所が知られているようで。


   好き嫌いの問題では無いわ。
   仕事に好き嫌いなんて挟めるわけが無い


   …あ、そ。


   私の番号も入れてあるから。
   何かあったら連絡をして。


   何かって?


   何かよ。


   …なにそれ。


   仕事以外でも良いわ。


   別に無いと思うけど。


   今は無いとしても。
   先の事なんて分からないでしょう?








   それで、受け取っちゃったの?


   …押し付けられたんだって。


   ……。


   あたしはこんなの、いらなかった。


   ……。


   …何。


   ううん。


   …て、顔か。


   触っても良い?


   良いんじゃないの。


   ……。


   …。


   …ふぅん。


   それで?


   携帯?


   …そりゃそうだ。


   かかってくるの?


   業務連絡とやらで。


   ふぅん…。


   こっちからはかけない。


   …これがブルーアイズの番号?


   知らない。


   名前が入ってるよ?


   じゃあ、そうなんじゃないの。


   …。


   …。


   ……。


   ……何。


   不機嫌?


   …別に。


   私といるのに。


   …。


   …二人なのにね?


   別に不機嫌なわけじゃ…


   ……。


   …エリス。


   ……。


   …それ、返してくる。


   どうして…?


   なんか、いやだ。


   …なんか?


   ……。


   …見られてるみたい?


   ……。


   見えるの…?


   …んなわけ、ない。


   じゃあ…どうして?


   …。


   ナディ…?


   …なんかは、なんか。


   ……。


   ……。


   …お子ちゃま?


   うるせ。


   ……。


   …あたしは、ただ。


   ただ…?


   ……。


   …教えて?


   ……あんた、と。


   …。


   繋がっていられたら、それで良い。


   …。


   …だからそんなの、いらない。


   ……。


   …じっと、見るな。


   ……ナディ、は。


   …。


   …ふきげんのときのほうが、すなおだね。


   ……。


   すなおな、かんじょう…。


   …うるさい。


   ……。


   …。


   ……。


   …ナディ。


   ……。


   きもちいい…?


   …。


   …ねぇ。


   ……うるさい、ばか。


   ん……。


   ……。


   …すなお。


   ……どこが。


   じぶんに、ちゅうじつ?


   …。


   …それでも、やさしいけど。


   どこがだ。


   …。


   ……。


   …これ。


   ……。


   かえすの…?


   …かえす。


   いいの…?


   …いらないから。


   ……。


   ……。


   …これが、わたしたちのばんごう?


   そんなの。


   あ…。


   …そんなの、いじってないでよ。


   ……。


   もちこまないでよ。


   ……。


   …そんなの、さわってないでよ。


   ……。


   ……そんなもの。


   …なら。


   なら…?


   …ナディはわたしに、なにをさわっててほしい?


   ……。


   …ねぇ、ナディ。


   ……。


   いってみて…?


   …いじが、わるい。


   ……。


   …むかつく。


   ……。


   ……。


   ナディ…。


   ……。


   …おこらないで。


   ……。


   ナディ、わたしのかわいい…。


   …こどもあつかい、すんな。


   ……。


   ……。


   …ねぇ、ナディ。


   …。


   もういっかい、しよう…?


   …もう、しない。


   しよう…?


   …いやだ。


   どうして、いやなの…?


   …そんなやさしいこえ、だすな。


   ふつうにはなしてるだけ…。


   ……。


   …ね、しよう?


   ……。


   やっとかお、あげてくれた…。


   …エリス。


   なまえ、やっとよんでくれた…。


   ……。


   …ねぇ、もういちどだけ。


   …。


   ナディのぜんぶ、ぶつけて…?


   …エリ、


   ……。


   ……ばか。








   Cualquier personas que esté sola...
    (人はだれも孤独で…)


   ……。


   Siempre puede acercarse a alguien...
    (いつも誰かと寄り添う…)


   ……。


   La soledad que existe en mi corazón...
    (心のどこか淋しさを…)


   ……。


   Se llana solo con tu voz...
    (うめるあなたの声…)


   ……。


   ……ナディ。


   …こんどは、どこで。


   ……。


   おぼえてきた…?


   …ナディのなかで。


   ……。


   …ううん、ちがうね。


   ……いみが、わからない。


   あなたが、わたしのなかにはいってきて…。


   …。


   …あなたが、わたしのなかにのこしていくもの。


   ……。


   …こんやみたいなひは、とくに。


   ……なにも。


   …。


   なにも、のこしてない…のこせない。


   …ううん、のこしてるよ。


   ……。


   あなたは…いつも。


   ……このからだでは。


   …。


   なにも、あげられない。


   …ちがうよ?


   ……。


   …もちろん、あのこをくれたことはいまでも、うれしい。
   しあわせ…。


   ……。


   …でも、それだけじゃないんだよ。


   ……。


   …ねぇ、ナディ。


   ……。


   あなたのこえは…こえが、わたしのこころにぬくもりをくれた。
   いまでも。


   ……。


   …なにもなかったわたしに。


   ……。


   …わたしのこえは。


   …。


   あなたのこころに…ぁ。


   ……エリス。


   ……。


   ……。


   …ねぇ、これ。


   ……。


   もってよう…?


   …なんで。


   これがわたしたちのばんごうだから。


   …そんなの、どうでも


   ううん?


   ……。


   …ふたりの、ばんごう。
   ふたりで、ひとつだけ…。


   …あんたは。


   ね…ナディ。


   ……。








   ああ、だからなのね。


   …だから?


   とても嫌そうだったから。


   …。


   直ぐに突っ返されると思っていたのよ、本音を言うとね。


   返すって言ってたよ。


   持ち帰った時も正直、驚いたわ。


   うん。


   確かに「仕事だから」で押し切ったのだけど。
   でもそう、エリスが。


   …。


   ありがとう、エリス。


   お礼を言われること、私はしてないよ。


   でも、言わせて。
   今後の連絡がスムーズになるし、何より今、こうして貴女と会話が出来ているのだから。


   ……。


   けど、持ち歩かないところはナディらしいわね。
   携帯の意味、分かっているのかしら。


   居場所が分かるみたいだから、だって。


   だからって常に見張っているわけではないのに。
   私だってそんな暇は無いし、そんな趣味も無いわ。


   感覚の問題だから。


   困った子ね。


   私は困らないよ。


   …。


   困らない。


   …ふふ、然うね。
   ところで、体調はどう?


   …うん、普通。


   普通、ね。
   最も判断が難しい返答ね。


   熱はないから。


   そう。
   ねぇ、エリス。


   何?


   仕事、またする気は無い?


   ないよ。


   …即答ね。


   うん。


   それはナディが言うから?


   ううん。


   体調が落ち着かないから?
   なんなら、在宅でも構わないわ。
   必要なものはこっちで準備するから…


   ううん、しない。
   ごめんね。


   …然う。
   貴女に直接、断られてしまったら仕方ないわね。


   ありがとう、ブルーアイズ。


   いいえ、私こそお礼を言われる事はしてないわ。


   そっか。


   ええ、然うよ。


   …あ。


   うん?


   ………。


   エリス?
   どうかしたの?


   …呼んでる。


   え?


   ……行かないと。


   エリス、誰かいるの?
   ナディ?


   ……。


   …泣き、声?


   ブルーアイズ。


   ん?


   またね。


   ちょっと待って、エリ


   ばいばい。








   ナディ。


   うん?


   忘れ物。


   忘れ物?


   これ。


   ……ああ。


   わざと?


   忘れてた。


   そっか。


   慣れてないし。


   うん。


   まぁ、無くても困らないし。


   意味、無いね?


   そんなもんよ。


   ナディらしい。


   だから、返すって言ったんだけど。


   うん、言ってた。


   …なんか、楽しそうなんだけど。


   ナディが、帰ってきてくれたから。


   そりゃ、帰ってくるわい。


   …だから、嬉しい。


   ……。


   ふふ。


   …エリス。


   ね、今日は忙しかった…?


   …まぁ、ちょっとね。


   疲れた…?


   ん、そんなには。


   …そっか。


   ……。


   ……。


   …え、と。
   ロントは?
   今日はどうだった?


   泣いて、ミルク飲んで、眠って。


   …まぁ、そうなんだろうけど。
   何か変わったコトは…。


   笑うとナディに似てる。


   …。


   よく。


   …あたしはあんたに似てると思うけど。


   …。


   よく。


   …ん。


   ……。


   ……。


   …そういえば。
   これ、かかってきた?


   …。


   まぁ、かかってこないとは思うけど。


   内緒。


   …は?


   ……。


   内緒ってなに。
   かかってきたの?
   誰から?


   聞きたい?


   聞きたいと言うか…。


   じゃあ…。


   …て、おい。


   だめ?


   …う。


   ……。


   …ちゃんと教えてよ。


   ちゃんとしてくれたら。


   ……。


   ……ナディ。


   ……ただいま、エリス。


   …おかえりなさい、ナディ。


   ……で?


   …。


   エリス。


   …ブルーアイズ。


   ……。


   困った子って言ってたよ?


   …あのやろ。








   ・








   …もしもし?


   ……。


   また、忘れていったね…?


   …と言うかさ。


   うん…?


   …店には電話、あるし。


   ……。


   エリス、店の番号は…


   …入ってたよ?


   ああ、そう…。


   …忙しかった?


   いや、今落ち着いたところ。


   …そっか。
   良かった…。


   …?
   エリス…?


   …ふふ。


   なんか、楽しそうなんですけどー。


   嬉しいんだよ?


   嬉しい?
   なんで?


   ナディの声が、聞こえるから。


   …。


   不思議だね…?


   …まぁ、それが電話だし。


   ……。


   黙らないでよ。


   …ナディ。


   ……。


   ナディこそ…黙らないで?


   エリス。


   …なぁに?


   携帯…悪くないかもしれない。


   ……。


   …あいつには口が裂けても言えないけど。


   じゃあ、言っておく?


   やめて。


   …いえっさ。


   ……。


   ……。


   …エリス。
   今日は早く帰るから。


   …うん、二人で待ってるね。








  −Pure again.





   今夜は、冷えるなぁ。


   …。


   ねぇ、エリス。


   …そうだね。


   丁度良い宿が見つかって良かった。


   …うん。


   お湯も十分にあるようだし。


   …。


   それであの値段は、助かる。


   …うん。


   ほら、エリス。
   浴槽もあるよ。
   広くはないけど、狭くもない。


   …うん。


   ……。


   ……。


   …ねぇ、エリスさ。


   …。


   …一緒に、入ろうか。


   …。


   ……いつかは、入れなかったからさ。


   …。


   エリ


   だめ。


   …どうして?


   どうしても。


   …。


   だから、ここをえらんだの。


   …だから?


   ……おふろ。


   別にそういうわけじゃない。
   手ごろな値段で、ぼろくなかった。
   大体、浴槽があるなんて知らなかった。


   …。


   初めての町、初めての宿で。
   あたしはなんでも知ってるわけじゃない。


   …。


   だから。
   全部、たまたまの話。


   ……。


   …今夜は、寒いから。


   へやのなかは、あったかいよ…。


   …まぁ、外よりかはね。


   ……。


   …二人で、あったまろうよ。


   ……。


   …寒い日は、人肌が恋しくなる。


   ……だれ、でも。


   ん…?


   だれでも、いいの…。


   …なんで、そうなるかなぁ。


   ……。


   …寒い日は、エリスの肌が恋しくなる。


   ……。


   酷く、恋しい…。


   ……。


   …知らなかった頃は、こんな事、なかったんだけど。


   ……しらなかったころは、どうしてたの。


   どうもしてないよ。


   ……。


   …だって、知らなかったしさ。


   …。


   …あんたを抱くまで、知らなかった。
   人の肌が、こんなに恋しくなるもんだなんて。


   …。


   …本当に、知らなかったよ。


   ……。


   あんたは…あたし以外の温もり、知ってる?
   知ってた…?


   …。


   エリス…。


   …わけ、ない。


   ん…?


   しってるわけ、ない…。


   …そっか。
   あたしだけじゃなくて、よかった…。


   …ばか。
   ばか…。


   …入ろう、エリス。
   二人であったまって、二人で眠ろうよ…。


   …ねかせて、くれるの。


   …。


   ……。


   …それはエリス次第、かな。


   ……ばか、うすらタコス。








  −La regla virgen.





   …。


   ……。


   ……。


   …エリス。


   なぁに…?


   …目、瞑ってよ。


   …。


   …その。
   なんか、しづらい…。


   ねぇ、ナディ。


   …あに。


   どうして、つむるの?


   …は?


   キス、するとき。


   ……。


   どうして?


   …それ、わざと言ってない?


   わざと?


   …じゃあ、聞くけど。


   …?


   あんたはどうして、瞑るのよ。


   …。


   なんで?


   ナディ。


   うん?


   きいてるのは、わたし。


   …。


   わたしだよ?


   …なんか、ずるいような気がする。


   ずるいの?


   …。


   ナディ?


   …瞑らないで、したら。


   …。


   なんか、変じゃない…。


   …。


   …なに。


   どうして、へんなの?


   ……。


   …?


   …小首を傾げるな、くそう。


   …。


   …とにかく、瞑れ。
   早く。


   ……。


   じゃないと、


   できない?


   ……。


   …いいのにね。


   うるさい、早く。


   …。


   エリス。


   みて、いたいから。


   …。


   だから、つむらない。


   …勘弁、してくれ。


   ……。


   …。


   …。


   …見てるなって。


   みてたい。


   …面白がってない?


   おもしろ?


   …ああ、もう。


   なえた?


   …そういう、言葉は。


   ?


   覚えなくて、いい。


   …でも。


   でも、じゃない。


   …。


   …萎える、萎えないとか。
   そういうんじゃない。


   どうしてしないの?
   め、つむらないから?


   …。


   ナディ?


   …あー。
   もういい、なんでもいい、どうでもいい。


   いいの…?


   …。


   あ。


   ……エリス。


   ナディ…。


   …いつまで、開けていられるか。


   ん…。


   試して、やる。


   ……。


   …笑うな。


   おしたおされた、から…。


   …あんたが、分からないことばか…り?


   …。


   …嬉しそうに、するな。


   できない。


   …。


   …どうやったら、できるの?


   あたしに、聞くな…。


   …ナディは。


   …。


   なんでも、しってるっておもってた…。


   …んなわけ、あるか。
   むしろ、知らないコトばっかりだ…。


   …。


   …特に、あんたのことは。


   わたしの、こと…。


   …。


   ナディも、こどもだった…。


   …お子ちゃまって、言いたいのか。


   いってない。


   …どうだか。


   いってないのに…。


   ……。


   …ん、だめ。


   うるさい。


   …。


   む…。


   …だめ?


   ……エリス。


   なえない?


   …だから。


   なえないで…?


   …いいから。


   ん、ナディ…。


   ……いいから、早くやらせてよ。


   …。


   て、そうじゃ……あーー。


   …やらせて、ほしい?


   あーーーー……。


   ……。


   ……。


   …わすれるね?


   ……そうして。


   …。


   …最低。


   ね、ナディ…。


   …なに。


   キスが…さき。


   …。


   こまらせて、ごめんね…?


   …。


   …なかないで。


   泣いてなんか。


   …め、つむって。


   …。


   つむる、から。


   ……うん。


   ナディ……ん。


   ……。


   ……ナディ。


   …ごめん。


   …?
   どうして…?


   …どうでもよくなんか、ない。


   …。


   なんでもよくなんか、ない…。


   …しってる。


   エリス……。


   …しってる、から。


   う、ん……。








  −Las canciones de mi amor.





   …♪


   ……。


   …wieviel ich dir glauben sollte,


   ……んー。


   ……♪


   あの頃、は。


   …ん。


   あんたが歌うなんて、思いもしなかったな…。


   …あのころ?


   出逢ったばかりの頃。


   …。


   …それが今じゃ、さ。


   ん、ナディ…。


   …残念なのは、意味が分かんないことだけど。


   ……いや?


   あまり。


   …あまり?


   ……出来れば、あたしが分かる言葉が良い。


   …。


   …でもま、あんたの歌は好きだから。


   ……。


   どこで覚えてきたのか、いまだに分からないけどね。


   …。


   …続き、聞かせてよ。


   …。


   ほら、エリス…?


   …ねぇ、ナディ。


   ん…?


   …うたわせて。


   …?


   ナディが。


   …え、と?


   そしたら。


   …。


   ナディをもとめて、うたうから。


   ……。


   …わからない?


   分からない。
   あたしがっ……て。


   …。


   ……エリス。


   あなたをもとめて、うたうから…。


   …これ、は、違うと思う。


   ちがわない…。


   …エリス。


   ナディ……。


   …あんたは、どこの詩人だ。


   しじんじゃないよ…エリス、は、エリス。
   ナディの…あなただけの、こいびと。


   う…。


   …ナディ。


   だから……く、ぁ。


   …。


   ……。


   ……ナディ。


   …声。


   ん……。


   …嗄らすんじゃ、ないわよ。


   それは、ナディしだい…。


   …ばーか。
   言ってろ…。


   ……ん。








  −Ein leeres Herz.





   手を伸ばす。

   真っ直ぐに。

   でも。





   何に向かって?





   エリス。


   …。


   エリス。


   …ナディ。


   何を、掴むつもり?


   …。


   何も、掴めないよ。


   …わからない。


   虚しくなるだけよ、そんな事しても。


   …。


   それでも。


   …なにも、つかめない。


   ……。


   なにを、つかんだらいい?


   …そんなの、知らない。


   …。


   少なくとも、あたしの手は。
   何も掴んでいない。


   …。


   …あたしの手は。
   奪ってばかり。


   …。


   …ほら、行くよ。
   もう少し、先に進みたいから。


   ナディ。


   …置いてくよ。


   ……。


   ……。


   …わたしのて、は。


   …。


   なにを、つかめばいいの。


   …だから、知らない。


   あなたのて、を。


   …。


   つかんでは、いけないの。


   …こんなの掴んで、どうするのよ。


   どうかしないと、いけないの。


   ……。


   ……。


   …汚れるだけだから。


   …。


   こんな血生臭い手、そんな綺麗な手で触ったら。
   簡単に犯すよ。


   …それは。


   …。


   いけないこと、なの。


   ……。


   …。


   …進んで汚れる必要なんて、無い。


   ……どうして。


   …。


   そう、きめてしまうの。


   ……エリス。


   わたしのても、うばう。


   …。


   わたしのては、きれいなんかじゃない。


   …。


   ナディ。


   …。


   わたしは、あなたをつかみたい。


   …だから。


   だから、のばすの。
   あなたに。


   ……。


   あなたが、すきだから。


   …笑わせないでよ。


   わらって、ない。


   …行くよ。


   ……。


   ……。


   …エリス。


   わたし、は。


   ……。


   …つくられたいみを、しりたい。


   ……。


   おしえて、ナディ。


   …そんなの、知らない。


   しらなくて、いい。


   意味が分からない。


   あなたが。


   エリス、いい加減に


   わたしに、いみをもたせて。


   …そんな事!


   どんなかたちでも、いい…。


   ……他、当たってよ。


   …。


   あたしは…


   ……。


   …止めて、エリス。


   …。


   離して…離せ。


   ……。


   エリス…お願い、だから。
   あたしなんか、求めないで。


   …だれも、とめられないの。


   …。


   ……だれも、どうしていいか、わからないの。


   …。


   ……あなたが、すきなの。


   こうかい…


   …。


   …するに、決まってる。


   ……だれが、きめるの。


   …。


   だれも、きめられない…。
   だれも、とめられない…。
   だれも…だれも…。


   ……。


   …あなたのて、は。


   …。


   こんなに…あたたかい。


   ……も、う。


   ぅ……。


   …どうなるか、わからない。


   わからなくて、いい…。
   わからないことに、わかろうとしなくていい…。


   ……。


   …ただ、ひとつだけ。
   あなたのて、で…。


   ……。


   …わたし、を。








  −Cien Años de Soledad.





   …エリス?


   …。


   寝てるの?


   …。


   …エリス。


   ……。


   ……


   …なに。


   わ。


   …。


   …起きてるなら、言ってよ。


   おきてる…。


   …今、言うな。


   ……。


   ……。


   …ねつ。


   …。


   のこってる…。


   …あー。


   ナディ…。


   …なに。


   さびしいの?


   …は?


   ……。


   …別に。
   あんたが、いるし。


   …。


   …エリス。


   ん…。


   ……。


   …いいよ。


   ……。


   …そんなかお、しないで。


   エリス…。


   …するひつよう、ないの。


   ……。


   ナ、ディ……。


   …さびしく、ない。


   ……。


   もう…。


   …うそ。


   ……。


   こどくは、いつもあなたのなかにある…。


   …そんなもの。


   わたしのなかにも。


   ……。


   …ひとをすきになること。
   いいことばかりじゃ、ないから…。


   …。


   …さびしいときは、ぬくもりをもとめて。
   わたしは、いつだって、あなたのとなりにいるから。


   …エリス。


   わたしも、もとめるから。


   エリス…。


   ……からだを、あわせて。


   …。


   それでも、たりないときは…ん。


   ……ほしい。


   ……。


   ねないで、あたしをみて。


   …うん。


   あたしだけを、


   みせて…。








  −“Take Me Home, Country Roads”





   かんとりーろーど、ていくみーほーむ♪


   ……。


   とぅざぷれーいす、あいびろーんぐ♪


   ……。


   うぇすとばーじにあー、まうんてんままー♪


   ……。


   ていくみーほーむ、かんとりーろーど♪


   …ロント。


   うん、なに?


   北の言葉の発音、全然、上手くならないね。


   そう?


   子供の頃と変わらない。


   でも、分かるし。
   良いんじゃない?


   そうだけど。
   あと。


   なに?


   歌、下手。


   おう。


   子供の頃の方が上手だった。


   うーん。


   勝手に作詞作曲して歌った方が良いんじゃない?


   エリスは褒めてくれたけどなぁ。
   いつも。


   それはエリスが貴女の母親だから。


   でも、ナディには下手って言われた。
   いつも。


   ナディは素直じゃないから。


   あっはっは。


   笑い事?


   わたしにとってはさ、リリオ。


   うん。


   二人が仲良し夫婦なら、それで良いんだ。


   …。


   ん?


   なーんか。


   …おわ。


   悟ってるみたいで、生意気です。


   …?
   どういう意味?


   自分で調べなさい。


   どうやって?


   辞書。


   ないよ、ここには。


   私は教えてあげない。


   んー…。


   …。


   まぁ、良いや。


   …そういうとこ、ナディにそっくりだよね。


   そうでもない。
   ナディはエリスの事となると、それじゃ済まなくなるから。


   …へぇ。


   かんとりーろーど、ていくみーほーむ♪


   ロント。


   うん?


   その歌、違う歌詞のもあるのは知ってる?


   違う歌詞?
   知らない。


   昔のハポンの映画で使われたの。


   へぇ、どんなの?


   歌詞はハポネス。


   おー。


   だから、意味までは分かりません。


   …。


   …何。


   あはは。


   何がおかしいの。


   リリオ、歌ってみて。


   は?


   ハポン版かんとりーろーど。


   …だからね、ロント。
   私の話、聞いてた?


   楽しみ。


   ……。


   エリスの歌声には敵わないけど、リリオの歌も好きだよ?


   …。


   うん?
   …わ。


   む、か、つ、く。


   わぁ、ごめんなさい。


   …。


   ははは。


   面白く、ありません。


   歌って、歌って。
   聞きたい。


   死んでも嫌です。


   死ぬくらいなら、歌う方が良いんじゃない?


   たとえ、です。


   ねぇ、歌って。


   いやだ。


   なんで?


   な、ん、で、も。


   歌ってくれても良いと思う。


   …。


   ん?


   長い。


   エリスがこうやって言うと、ナディ、いつも折れてたから。


   私はナディじゃありません。


   でも、好きだったんでしょ?


   それとこれとは話が別。


   ふーん。
   じゃあ、歌って。


   と言うか、ロント。


   うん?


   この歌の歌詞の意味、ちゃんと分かってる?


   分かってるよ。


   ……。


   でも、分からない。


   何、それ。


   まだ帰りたいと思った事、ないから。


   ……。


   いつか、そう思う日が来るかもしれないけど。
   まだ、分からない。


   …はぁ。


   リリオは、帰りたい?


   帰っても良いの?


   帰りたいなら。


   …そういうとこ、二人に似てない。


   一人になっても、リリオが好きなのは変わらないよ?


   ああ、そう。
   そうですか。


   …お。


   浮気、したら許さないから。


   うわき?
   なんで?


   若い子の方が良くなったとかで。


   ?


   それか、もっと綺麗なお姉さんが良いとか。


   リリオ。


   …なに。


   好きだよ?


   ……。


   かんとりーろーど、ていくみーほーむ♪


   …。


   とぅざぷれーいす、あいびろーんぐ♪


   …あの町に。


   …?


   続いてる気がする。


   …。


   カントリーロード。


   今、何て歌ってたの?


   教えない。


   ハポネス?


   ロント。


   うぉ。


   ばーか。


   …。


   うすらタコス。


   …んー。


   行こう。
   日が沈む前に。


   リリオ。


   …。


   まだ、帰らないで良いよ。


   …。


   帰りたくなっても、帰さないけど。


   ……。


   これでいい?


   だから。


   おう。


   生意気です。