−Stupid wish “A” 手に入らないとわかっているのに あなたの視線に縋ってしまう もしかしたら…もしかして… 愚かな希望に酔いしれる エリス。 …。 エリス。 …。 エーリース。 …! 気が付いた? ……。 ん、まだ寝てる? …な、ディ。 はは、寝惚けてるな。 ……。 今夜はここで野宿。 オーケイ? …。 ま、今の今まで寝てたから? …う。 眠くならないかも、しれないけど。 …い、や。 エリス。 …ッ。 と。 ……。 て、エリス。 …。 どこに行くつもりだ? …はな、して。 どこに行くのか、言うのなら。 ……。 …エリス。 ぁ…。 …言ったはずだけど。 …ぅ…。 離さないって。 ……。 エリス。 手に入らないとわかっているのに この名を呼ばれて思ってしまう もしかしたら…もしかして… 愚かな希望に酔いしれる ……。 野宿の準備、するよ? …ナディ。 あんたはごはんを作る。 オーライ? ……。 あたしは、単純だから。 あんたのごはんを食べるだけで、幸せになれる気がしてさ。 …やめ、て。 エリス。 ……。 こっち、向いて。 震えて、震えて、仕方ないの 怖くて、怖くて、仕方ないの 壊れて、壊れてしまう前に 涙が、溢れてしまう前に この震えを止めて この恐れを消して 今夜も星だらけ。 …。 ねぇ、エリス。 …。 眠れないでしょ。 あんだけ、寝てたらさ。 ……。 …まぁ、良いけど。 退屈だったら、言ってよ。 …ナディ。 ん? うるさい。 …あーそうですか。 ……。 ……。 ……ナディ。 うん。 …おこらないの。 なんで? ……。 ……。 …っ。 ん、寒い? …さむく、ない。 ちょっと冷えるかなって思ってたんだけど。 …。 …震えてる。 ふるえてなんか、ない…。 …。 …ない、の。 ……じゃあ。 あ…。 …あたしが、寒いってことにしておこうかな。 ナ、ナディ…。 …ん。 ……。 ……震えてる。 …さむく、ないのに。 …。 ……ない、のに。 −魔女ノ狩人(時代劇パラレル) そこの赤ッ毛の姐さん、茶か飯は如何ですかい。 …あ? 女二人で旅たぁ、なかなか見上げた根性だ。 嬉しくない。 お天道様が雲に隠れちまってる。 水の匂いもしますし、これは一雨来ますぜ。 かもね。 お望みであれば、酒も肴もありますぜ。 どうですかい。 あー、間に合ってるから。 そうですかい。 ではそちらのお連れさんは如何ですかい。 …わたし? お見受けしたところ、そちらさんも和人ではないようですが。 金さえ頂ければこっちは商売になるンで。 …だって。 寄らない。 もう少し先に行ってから。 だって。 だから、よらない。 左様ですかい。 んじゃ…しょうがねぇな。 …。 ナディ、このひと。 有り金、 ちのにおいが、するよ。 置いて 知ってるわよ。 ……がッ。 大方、ここの主人殺して乗っ取ったとか、そんなとこでしょ。 そっか。 て、てめぇら…。 にしてもこいつの芝居、三文芝居にも程があるんだけど。 さんもん? つかそんな価値すら、ないや。 ……ぅぅ。 さんもんしばい? こんな面して、商売人気取りしたってばればれってコトよ。 おまけに ちのにおい? を、こんだけぷんぷんさせてればね。 ……。 たく。 長脇差(ドス)、よごれちゃったね? まったくだ。 ナディ。 兎に角、先に行くよ。 こいつも言ってたけど、一雨、来そうから。 いえっさ。 あーあ、ほんとロクでもない。 ナディもろくでなし。 あ? むしゅくにん。 あんたもね。 とせいにん? 似たようなもんでしょ。 エリスはエリスだよ? だったら、あたしもあたしだっつの。 そっか。 ほら、さっさと行くよ。 誰かに見られたら面倒だから。 うん。 特に、役人のヤツらに。 あのふたり? は、流石にここまで来ないでしょ。 わからないよ? 勘弁して。 あいつらを相手にするのは面倒なのよ。 やくにんじゃないみたい? 少なくとも泰平の世に要る腕じゃないっつの。 でもわるいひと、いるよ? それは役人どもがサボってるから。 ごろつきと繋がって懐潤してるようじゃ、世の中、お仕舞いだっつの。 じゃあ、いるね。 あ? うで。 …。 うで? …それは、ともかく。 ともかく? この調子で行けば、追いつける。 なにに? こら。 …いたい。 あんたが言い出したんでしょーが。 わたし? そう、あんた。 桜を追いかけるって。 そうだっけ。 そーよ。 えへへ、そうだった。 おいつける? あんたが歩くの飽きたって言わなければね。 じゃあ、いわない。 なら、歩け。 つかれた。 …。 つかれた? …こいつは。 べつに、いいの。 あ、なにが。 らいねんも、あるから。 …なんだとぅ。 ナディとたび、できればいいの。 ……。 ふふ。 …はぁ。 宿場まで、あともう少しだから。 今夜はそこで休むよ。 おふとん? そう、布団。 ひさしぶりだね。 そうねぇ。 ふふ。 なに、その笑い。 ひとつで、いいよ。 …。 いいの。 ばか。 いいから、さっさと歩け。 いえっさ。 −El que no necesitamos. …バイバイ、ナディ。 …つ。 …ナディ? ……。 どうしたの? …何が? …。 なんでもないわよ。 でも、ん。 なんでもないって。 さ、寝る支度寝る支度。 ……。 ほら。 …。 …と。 …。 なに、どしたの。 なんでもない。 …。 なんでもないの。 …なんでもない、ね。 …。 …ま、いいけど。 …。 …。 …。 …エリス、さ。 …なに。 バイバイって、もう言うんじゃないわよ。 …え? 好きじゃないのよ、別れの言葉はさ。 …。 それだけ。 水、飲んだ? …それは。 あ? …わたし、だから? …。 わたしが、いったから? 別にあんたに限った話じゃないわよ。 …。 元々苦手なのよ、そーいうの。 感傷的になってさ。 …。 賞金稼ぎのくせしてさ、らしくないのは分かってんだけどね。 …バイバイ。 …。 もう、いわないから。 …今、言ったじゃない。 もう、いわない。 …うん、そうして。 …。 んじゃ、 ナディ。 な…お。 …だいじょうぶ。 ……。 ナディ…。 …こら、くすぐったいんだけど。 ……はだ、きれいだね。 嫌味か。 …いやみ? ずっと太陽の下にいて、荒れないわけない。 …でも、きれい。 …。 …。 …ありがと。 わたしは、あれてる? あんたは…。 …。 …きれいよ。 会った頃と、変わらない。 …かわったよ。 …。 ナディといっしょにいるから。 …。 ナディは……、だから。 …なんだって? ないしょ。 …ま、いいけど。 …。 …で、いつまで撫でてるつもり? いい、っていうまで。 …。 …いうまで。 あ、そ…。 ん…。 …。 ……ナディ。 なに…。 ……バイバイ。 …。 いらない…って、いって。 ……言った。 いってないよ。 …。 …いって。 ……いらない。 …。 そんな言葉…、 …そんなことば? ……あたしたちに、は。 …。 ……ほら、もういいでしょ。 …。 エリ…と。 ……はなれない。 …。 ナディがわたしをはなさない、から。 …はいはい、そーよ。 ……はなさないで。 …。 …。 はなさないわよ、ばか。 ……いえっさ。 −Nur die Ziet. 知らなければ、淋しいなんて思わない。 …。 …だから、愛したくなんかなかった。 …。 ……知りたくなんか、なかった。 …うん。 …。 でも…。 ……触らないでよ。 あいして、くれた…。 …ちがう。 ううん、ちがわない…。 …だから。 だって、いったよ…。 …。 …あいしたくなんか、なかったって。 ……。 さびしいから。 …。 ……ひとりは、いやだから。 …。 きっと、ひとりではいきていけないから。 あたしは、生きてきた。 …しってる。 ずっと。 これからもあたしは独り。 …ううん。 …。 もう、ひとりじゃない。 …あんたが わたしはもう、ひとりじゃないから。 …は。 結局、自分の事だけ。 …。 そうよ。 あんただって… …。 …こんなの、長く続かない。 続く筈、無い。 ……どうして、わかるの? 分かるから。 …どうして? だから、ん。 ……わからない。 …。 …わたしたちには、わからないの。 …。 そう、わたしたちには…。 …止めてよ、そういうの。 …やめない。 止めてよ、もう。 …いや。 ……。 …やめないよ、ナディ。 ……どうしてよ。 もう、良いじゃない…。 …。 もう、ひとりにしてよ…。 …しない。 …あたしに、おもいださせないで。 おもいださなくても、いい。 …。 わたしが、おしえてあげる。 …。 ナディが、おしえてくれたこと。 …あたしが? いま、ここにあるのがほんとうのこと。 …そんなの、教えてない。 ううん…おしえてくれた。 …。 そう…ほんとうの、こと。 ……そんなもの。 ナディ。 …。 あなたが、わたしのすべて。 …。 …ナディはあったかい。 ……。 これが…わたしのすべて。 ……今だけに決まってる。 …。 …そんな事言って、言ったって、最後には。 あしたなんて、いらないの。 …。 いまがあれば。 それで、いい。 ……ばかじゃないの。 わたし、いったよ。 …。 わたしたちには、わからない。 …いらないんじゃなかったの。 うん、いらない。 いま、ここに、ナディがいてくれれば。 ……。 でも。 …でも? いまが、つづけば。 それは、きっと、あしたになる。 ……。 …なるんだよ。 ……あぁ。 …? あんたと話してると、ばからしくなってくる。 …。 自分が。 …うん、ナディはばか。 ……。 さきのことなんて、わたしたちにはわからないのに。 …予測って言葉、知ってる? しってる。 けどそれは、わかる、じゃないよ。 ……。 でも、いまは、このしゅんかんのことはわかる。 ナディとわたしが、ここにいて……あいしあっている。 …。 ……わたしは、ナディがすき。 あたしがあんたを… …あいして、くれてる。 さびしさを、しっているから。 ……。 …ナディがいったこと。 ……。 …ナディがいないと、わたしはさびしい。 ひとりは、いや…。 ……エリス。 …。 あんたは… やっと、よんでくれた。 …え。 ……なまえ。 わたしの、なまえ…。 ……そんなことで。 うれしい。 …。 …うれしい。 ……。 ……ナディ。 …あんたはよびすぎ。 …。 ……けど。 ん……。 −Tócame, mi sol. 最近のナディは疲れているみたい。 ……がぁ。 …。 ぐぅ……ぐぅ…。 …つまんない。 ふが。 なんとなしに鼻を抓むとそれは止まる。 それは少しだけ、面白いのだけど。 …やっぱり、つまらない。 うぅ…。 旅をしている時のナディは、疲れているところをあまり見たことがない。 口では疲れたと言っていても。 だからやっぱりナディは旅をしている時が一番なんだ、と思う。 ……ぐぅ。 ナディ…。 旅の一時中断。 私の躰を思って、のことは分かってる。 ナディは心配性で、いつも私の心配ばかりしてくれる。 特に今はこんな躰だから、特に。 それはもちろん嬉しいし……とても、しあわせなコトだと言うことも分かってる。 んぅ…エリ……。 ……なに、ナディ。 今夜はなんだか眠れない。 退屈しのぎに鼻を抓んでた指で今度は褐色の柔らかいほっぺたをつつく。 けど、まったく起きてくれない。 名前らしきものを呼んでくれたのは嬉しいけど、それよりも起きて相手をして欲しい。 …ぐぅ…。 ……。 ぐぅぐぅ、と眠りこけるナディ。夢の世界から戻ってきてくれないナディ。私を見てくれないナディ。 でも、それはちょっとだけの不満。ちょっとだけの我侭。 本当の不満は、我侭は、考えなくても分かってる。 そう、一番不満なのは。 ナディとの時間が、極端に減ったこと。 …ぐぅ……ぐぅ。 ……。 一時的な寝場所。 一時的な営み。 一時的と言えど、“食べられなければ”それはなりたたない。 いいかげんそうなナディだけど、そこについてはわりとしっかりしてて。 多分、一人でいるのが長かったからなんだろうけど。 他はいいかげんでくいしんぼで、あまえんぼで…うすらタコス、なのに。 ナディ……つまんないよ。 ……う。 朝からおしごとに行ってしまうナディ。 たまにお昼に帰ってくることもあるけど、でもほとんどは夕方にならないと帰ってこないナディ。 ほんのたまに暗くなっても帰ってこないナディ。 ごはんが冷めてしまっても帰ってこない、ナディ。 ……うすらタコス。 うぅ……エリ……ごめ…。 …知ってる。ほとんどは私の為。 分かってる。ナディはいつだって私の事を優先してくれる。 でも、だったら、ずっと一緒にいて欲しい。 ナディとずっと一緒にいたい。 いたい、いたい、いたい、いたい、いたい。 ……ばか。 …だ、か……ごめ…て……んぅ。 離れてるのがいや。 私と一緒じゃない時に、誰かに笑顔を向けているのがいや。 私以外に優しくしているのも、いや。 一緒でもいや。 いや、いや、いや、いや、いや…。 …あ。 ………殺す気か。 おきた。 …そりゃ、起きるわ。 よく、ねてたのに…。 …誰のせいだ。 …。 …で、なに。 どしたの。 …どうもしない。 どうもしなくて、呼吸止められてたまるかい。 キス、は、いやじゃないけど、呼吸困難にされるのは困るっていつも言ってるでしょーが。 ……。 …ん、なぁに。 …ナディ。 ……どした? …。 …眠れない? ……うん。 で、人をおもちゃにしてたと? うん。 おい。 ……えへへ。 …しょーがないなぁ。 ……。 ふぁ…。 ……ねむい? うん、まぁ…。 ……ごめんなさい。 …。 …。 ……エリス。 ん…。 …夜更かしは躰に障る、けど。 眠れない時ぐらい、あるから。 …。 …まぁ、しょーがないかなぁ。 ……あのね。 うん…? …いびき。 いびき? ……の、せい。 …。 …えへ。 悪かったわねぇ…。 …ううん、わるくない。 あ…? ナディ…ナディ…。 お……。 …。 ……やれやれ。 ほんとにしょーがないなぁ…。 …。 …ん? …。 エリス? …だめ? んー。 …。 …ちょっと、こそばゆいけど。 …。 まぁ、いいや。 …いい? うん、いいよ。 ……えへへ。 お…。 ……だめ? んー…。 …わ。 ……どうせなら。 …。 …いや? ……ううん。 なら、よかった。 …あついって、いわない? 今は、夜だから。 …よるならいいの? まぁ、夜は冷えるし…。 …あついときもあるよ? …。 …。 ……ねぇ、エリスさ。 ん…。 …。 …ナディ? やっぱ、なんでもない。 あ…。 …さ、もう寝なさい。 あんたが寝るまで、握っててあげるから。 …はなれちゃうの? あのままじゃ、寝辛いでしょ? …。 と…。 …ねづらくないよ。 …。 …このほうが、いい。 エリス…。 …だから、このまま。 …。 …このまま。 ……ほんと、エリスはしょーがない。 −La riña de amantes. 「ナディ」 「あー?」 「ねぇ、ナディ」 「なに?」 「ナディ」 「なぁに、エリス」 「…ナディ」 「ん、どした?」 「……ナディ」 「…どした? 眠れない?」 「ナァディィ」 「あーもう、今度は何よぉ」 「ナディ……」 「…しょーがないなぁ」 ……思うに。 …。 でれっでれよね、貴女。 …うっせ。 鼻の下を伸ばしている、とまでは言わないけど。 甘過ぎるわ。 …。 そもそも貴女、あまり怒らないわよね。 エリスには。 怒ってるわよ。 へぇ、例えば? …なんであんたに話さなきゃいけないのよ。 参考までにと思って。 なんの参考よ。 今後の? 意味分かんない。 貴女が言いたくないなら良いわ。 エリス。 うん? ちょ、ブルーアイズ。 貴女がどんな事をすると、ナディは怒るの? んー…。 エリス、言わなくていいから。 つか、考えなくていいから。 …。 え、なに…。 えへ。 …うわ。 ナディは、おこらないよ。 然うなの? おかしいわね、ナディが主張している事と違うのだけれど。 たまに、ふてくされるけど。 ちょ、エリス! それはどんな時に? …。 言わんでいいから。 つか、言うな。 …えへへ。 お願いだから、言わないで。 だって。 ごめんね? それは残念だわ。 つか、あんたね。 ブルーアイズにはよくおこるね。 然うなのよ。 けんか? は、誰がこんなヤツと。 私もそんな暇は無いわね。 んだと。 大体、あんたがいつも ……。 …え、なに。 ちわげんか? は? エリス、それは ……。 エ、エリス…? …ナディ。 な、なに…。 けんか、して。 …は? しよう? しようって。 あんた、何言って ずるい。 はぁ? ブルーアイズとばっかり。 いやいやいや、意味分かんないから。 …。 エリス、誤解しているようだから言うけれど。 私とナディは一度だってそんな事、した事無いわよ。 寧ろ。 …? つ、つかエリス、痛い、握ってるとこ、痛いから…! 今、貴女達がしている事こそが、 …わたしたち? エ、エリス、食い込んでる、食い込んでるから…!! 痴話喧嘩、よ。 …。 エ、エリス…! …わたしたち、してる? ええ、まさに。 エリスゥ…!! …そっか。 そうなんだ。 ええ、然う。 ……あぁ。 ナディ。 あーぁ、痕残ってるし…。 ナディ。 たく、あんたは。 もう少し、手加減しろって言って えへへ。 ……今度は、なに。 ちわげんか、だって。 …へ。 なかよしふーふ? ……。 ちがうの? …つかね、エリス 私から見るとそれを超えているようにも見えるけれど。 ブルーアイズ、もう余計なコト言わないで…。 ナディ。 …もう、なによぉ。 ナディとエリスは 仲良し夫婦、よ。 だから、エリス。 ん? これ、痛かった。 そっか。 そっか、じゃないでしょ。 ごめん? なんで聞くの。 ごめん。 …。 ごめんね、ナディ。 …うん。 分かればよろしい。 ん…。 たく、しょーがないんだから。 えへへ。 ふふ。 ……やっぱり。 あ? でれっでれよね、貴女。 −Tú y Yo. …。 …。 …ん? …。 な、んんッ? …。 ……いきなりなにすんだ。 …いたい。 …。 …。 …まぁ、それはごめん。 でもあんたが ……。 て、エリス。 …うすらタコス。 だから、ごめんって。 …。 て、どこに行くの。 …。 こんな時間に じかんだけ? …。 …。 …そんな格好で、どこへ行く気だ。 いかないよ、どこにも。 …。 …。 ……あー、エリス。 …。 夜は冷えるから。 …。 悪かったって。 …いたかった。 …。 …。 ……エリス。 …。 ほら、おいで。 …。 その、してあげるから。 …あげる? …。 …。 …しよう。 いえっさ! う、わ…ッ。 …ふふ。 あー……。 …しよう? これじゃ、出来ないんだけど…。 …? 起き上がれない。 …このままでも、いいよ? このままって…。 …ん? …。 …。 …とりあえず。 体勢、直させて。 …うえ? そーいうことじゃなくて…や、もう、それでいい。 …。 …ほら、どいて。 ちからづく。 …は? ちからづく? …こいつ。 たまには…ごういんなのも、いいんだよ。 あのなぁ…。 ナディ…。 ……もう、いい。 ん…。 …エリス。 ……いたかった。 ごめん…。 …。 …傷にならなくてよかった。 ねぇ、ナディ…。 ん…。 …いっぱいして。 …。 …して? いっぱい、ね…。 うん…。 −Las personas que no vinieron. ナディ。 んー。 結婚式。 したでしょ? うん、した。 余韻、残ってるのは分かるけど。 えへへ。 …。 …ん。 あれから、一週間か…。 …。 …早いような、それともこんなもんなのか、分かんないけど。 ナディ…。 …。 …手、熱いね。 あんたより、高いからね…。 …懐かしかったね。 ん…。 いっぱい、来てくれた。 …ああ。 リリオ、ニーナ、ロベルト、ホアキン、アントニオ、マルガリータ… フリーダ、ロペスのじいちゃん、それからマリア…。 …。 …て、誰か忘れてるような。 ううん、忘れてないよ。 …。 …。 …リカルドとペドロ、わざと言わなかったな? ブルーアイズ、忘れてたね? …まぁ、良いけど。 ……。 結婚式かぁ…。 …ねぇ、ナディ。 うん…? イリス、どうしてるかな。 イリス? …。 …誰だっけ。 ……銀の十字架を探してた人。 銀の…。 …。 んーー…んー……。 …わすれんぼ。 思い出したわよ、今。 そういえばいたっけね。 …。 あんたと名前、似てるってとこで思い出した。 …そこ? 間違えたし。 でもどうしてんのかな、イリス。 まだ掘ってたりしてね。 …。 ん、なに? …ナディは私のことばかり。 は? …エリス、イリス。 …。 …。 つか、あの時はまだ… …まだ? だったと、思うけど。 ……他にも。 ん…。 シスターたち。 シスター? どこの? おかまの人たちに追われてた時に逃げ込んだ修道院。 ああ。 いや、流石に無理じゃないかな。 なんで? まぁ、色々とね。 色々? そう、色々。 だから神父だって、ブルーアイズの部下だったし。 …。 でもま、あの人達なら案外… …案外? ……祝福、してくれたかもしれないね。 …。 …今度、会いに行こうか? うん、行く…。 …。 …。 …エリス。 あと。 …お。 オルテガ? ……。 銃の人。 ………ああ。 キス、してあげればって言った。 ………。 言った。 ……ごめんなさい。 どうして謝るの? な、なんとなく。 …なんとなく? う…。 …。 …だから、止めたじゃない。 ちゃんと。 …そういう問題? いや、だから… …。 …つか、あいつは来なくて良かった。 マジで。 私、あの人嫌い。 …。 嫌い。 あ、ああ、そう…。 なのにナディ、 だから、ごめんって。 …。 あたしもあいつは好きじゃない。 エリスのこと、いやらしい目で見てやがっ… …。 …。 …。 ……ごめんって。 …ナディは、ばか。 つか、そんな昔のことを今更…。 …。 ……ごめんなさい。 もう、言わない? …うん、もう言わない。 ゼッタイ? …絶対。 ……絶対だよ? 絶対、言わない…。 ……。 …だから。 だめ。 …う。 まだ。 ……エリス。 まだ。 ……出来れば、早くして欲しいんだけ、ど。 …。 …で? トマト、もらった。 トマト…トマト、ね。 …車、直してくれたよ。 あー…あーー…。 ナディ、キスした。 ………。 おじいちゃん。 ……あんた、さ。 …。 どうしてそういうことばかり、覚えてるかな…。 忘れないよ。 …。 忘れない。 つか、あれは挨拶みたいな… …。 …ごめんなさい。 もう、しない? …しません。 絶対? …絶対。 エリスだけ? …うん、エリスだけ。 …。 て、何言わすんだ……。 …ナディ、軽いから。 …。 すぐ、調子に乗るし。 …もうしないし、言わないから。 もう、勘弁してよ…。 …。 エリスぅ…。 ……ふふ。 …。 …ねぇ、エリスだけ? もちろん…。 ん…ん…。 …あんたも、あたしだけでしょ。 …。 …て、なにその顔。 …どんな顔? まさか、違うって言うんじゃ…。 言わない。 …。 …。 …なら、良いけど。 ナディはエリスに夢中…。 …恥ずかしいから。 エリスも…。 …。 …ナディに、夢中。 …。 …あなたしか、見えない。 …! あなただけ…。 エリ…むッ? …。 んー、んー、んーーー。 …面白い。 ……て、こら。 ふふ。 人の唇、つかむなっ… ナディ。 …なに。 キス、して。 …。 私だけに、して。 …じゃあ。 …。 …もう、止めないでよね。 ん、もう止めない…。 ……。 ふふ…。 …笑うな、ばか。 ナディ、必死だから…。 …そうさせたのは誰だ、ばか。 エリ…ん。 ……エリス、もう。 ん……。 −Amor eterno. 何度でもあなたに。 ナディ。 …んー。 どこ? ここー。 …。 ここだって。 …どこ。 ここよ、エリス。 …わ。 ふふ、吃驚した? …。 で。 なぁに、エリス。 …。 エリス? …え。 どうしたの。 そんなに吃驚した? …うん。 へぇ、珍しいコトもあるもんだ。 妙に素直で。 ……。 調子、どう? …それ、さっきも聞かれたよ。 そうだっけ? まぁ、良いじゃない。 ……。 でも丁度良かった。 今、呼びに行こうと思ってたのよ。 …私を? 他に誰がいる? …いない。 エリス、こっちおいで。 …どっち? こっち。 …。 おいで、エリス。 早くしないと …手。 手? …ん。 ああ、そうだった。 エリス。 …。 足元、気をつけて。 転ばないように。 …。 て、だからってそんな足元ばかり見てるのも… …。 …エリス? あ…。 て、顔赤いじゃない。 な、なんでもない…。 なんでもなくない。 どれ、 ……。 …て、エリス。 …。 …本当に平気なのね? ……う、ん。 なら、良いけど…。 あ、ナディ…。 …少し熱いような気がするけど。 …ぅ。 うん…? …。 …大丈夫なのね? う、ん…。 …。 …。 …虹。 …? はっきりと見えてさ。 ほら、さっき雨降ったじゃない? にじ? きれいだから、あんたにも見せたくて。 虹…。 縁起が良いのよ。 …そうなんだ。 だから、余計ね。 ん…。 …生まれてくるこの子にも。 …。 もうじきだね。 …うん。 おなか、あまり大きくならなかったから心配したけど…。 ……。 ちゃんと大きくなって良かった…。 …くすぐったいよ、ナディ。 ふふ。 ナディ…。 …名前も決まってるし。 でしょ? …ないしょ。 あーそうかい。 …。 エリス。 …ナディ。 おいで。 一緒に見よう? …。 さぁ、エリス。 ……ん。 …。 …。 …エリス。 ……き。 なに…? ……すき。 …。 ………すき。 …知ってる。 …。 …でも。 …。 ……顔、真っ赤。 ……。 …お。 ……。 …ほんと、珍しいなぁ。 …何度も、何度だって。 私はあなたに、あなただけに恋をするから。 −Stupid wish “B” あたしを試しているのなら この指とまれと囁いて 迷わずあなたの指に あたしの指を絡ませる ……。 …ぁ……あぁ。 ……エリス。 ん、ナディ……ナディ…。 …震えてる。 はぁ……はぁ…あッ。 ……。 ナディ…ナディ…! ……怖がらないでよ。 今夜はこれ以上、しないから…。 ん、あぁ…。 …エリス。 ……い…、こわい…。 ……。 …これ、だけで。 …。 …わたしが、わたしじゃなくなっていく。 なくなって、なくなって…わたしは。 …。 ……それが、うれしいのに。 ……エリス。 このさきを、もっと、のぞんでいるのに…。 …。 わたしじゃ、なくなるのが…うれしい、のに…。 …。 …わたしは、あなたのなに。 ……。 まじょのわたしを、ひつようと、しない。 まじょのわたしに、ちがいなんてない、っていう。 あなたは、わたしのなにが… そんなの、決まってる。 あ…。 …エリス、あたしは わたしが、ほしいのは。 ……。 ……もしかしたら、もしかして。 …。 あなたが、わたしを、すきだったら。 ほんとうに、すきだったら…そう、おもうだけで。 ……。 …これも、きっと、とてもしあわせなのに。 ……。 …おろかな、ねがい。 どこが。 …。 …あたしは。 あんたが、好きだから。 ……ききたく、ない。 …。 ききたくない…。 …聞かせるよ、何度でも。 あんたが、本当に開いてくれるまで。 ……。 …もっと、縋って欲しい。 もっと、欲しがって欲しい。 ……。 あたしを、好きになってよ。 もっと、もっと、好きになって欲しい。 …そんな、の。 そう思うのは、願うのは。 愚かなんかじゃ、無い。 ……う。 …ぜんぶ、あたしのものになってよ。 ナ、ディ…。 魔女のあんたが欲しくないなんて、一言も、言ってない。 魔女だって、あんたの一部。 一部にしか過ぎないけど、それでもあんたの一部だから。 ……。 …あんたの震えが止まるなら。 あたしはなんだって、する。 …。 …ずっと、待ってた。 けどもう、待たない。 必要が、ない。 あ、ん…。 …あんたの熱を覚えたから。 覚えてしまったからもう、戻れない。戻らない。 ……。 …あたしは、あんたを手に入れる。 ……。 忘れてるかもしれないけど、あたしは賞金稼ぎだった。 だから欲しいものは、手に入れる。 手段なんか、選ばない。 …。 入った試しなんか、ずっと、なかっただけどさ。 けど、今度は必ず。 ……まえ、に。 ……。 …わたしが、こわれてしまうまえに。 ……壊さない。 ううん、もう…。 ……。 …あなたのてが、わたしをこわしてる。 あなたのおもいが、あなたへのおもいが…。 ……。 …あなたが、すき。 だいすき…。 …。 もしかしたら、もしかして…わたしは、あなたの、わたしとして、いきられる。 ふれられるたび、みつめられるたび、なまえをよばれるたび、ことばを、かさねるたび……それだけで、わたしは。 …。 まじょのくせに、つくられただけのそんざいなのに、ナディとはちがうのに、それでも。 ……。 …そうおもっても、いいの。 好きなだけ、思え。 ……。 …好きなだけ、望むだけ、思って。 それが、あたしは嬉しいから。 ……。 …それが愚かだと、言うなら。 言ったとしても、それがなんなの。 …。 …この先を、しよう。 これから先、何度でも。 …あぁぁ。 ……。 わたしのふるえを、とめて…。 …あんたが、望むなら。 とまらないかも、しれない…それでも。 …最初から、決めつけるな。 やってみなきゃ、続けなきゃ、分からない。 あぁ……。 …あたし達の時間はいっぱいある。 寧ろ、始まったばかりだと思えばいい。 ナディ…。 …開いて。 ……。 エリス。 …ナ、ディ。 ……。 う……あ、あぁぁ…! 愚かなる、願い 愚かな願い:笹川美和 |