−いちがつついたち。
あけまして、おめでとう?
…はい、おめでと。
年、越せてよかったね。
おかげさまで。
…。
…なに、その手。
おとしだま?
なんでやねん。
どこのひと?
つか、どこでそんなコトを
目が青い人?
それ、あたしらもだけど。
どっかのえらい人?
…あの女、余計なコトを。
おとしだま、もらえるんでしょ?
我が家にお年玉はありません。
むしろあたしが欲しいくらいだ。
じゃあ、あげる。
え、マジで?
手、だして。
はいはーい。
…ん、と。
へへ、言ってみるもんだ。
……。
…ん?
はい。
ちょっと待った。
うん?
まさか、と思うけど。
それ落として、お年玉って言うんじゃ
だめ?
……。
はい、ナディ。
…いらんわ!
あー。
…喜んで損した。
おとしだま。
…まだ言うか。
ブルーアイズからのだったのに。
…いつかマジで三回殺す。
エリスの。
…て!
それ!
おとしだま?
ちょっと、それいくら入ってんのよ。
だめ。
は?
ナディには見せちゃだめって。
あいつが?
取られるからって。
取るか…!
つか生活費よ、生活費!
ごはん代は大事でしょ?
うん、だいじ。
ナディ、おなかすいてると動かなくなっちゃうから。
外れてはいないけど、なんか腹立つな。
はい。
うん?
せいかつひ?
…。
…?
…いいわよ、別に。
いい?
あんたが貰ったんだから、あんたが好きに使えばいい。
でも無駄使いはしないこと。
いい?
…。
つかあたしが使ったなんて知れたら、あの機械女に何言われるか分かんない。
なんて言われるの?
皮肉か嫌味か、とにかく、むかつきそうなコト。
そうなんだ。
…よいしょ、と。
ナディ?
どこに行くの?
どこにも。
でも
雑煮、作るのよ。
ぞうに?
餅、一緒に買ってきたでしょ。
…。
…餅、食べたことは?
ない。
だろーね。
もちってなに?
食べ物。
…。
昨日のそばの残りの汁で、と。
湯、注さないとしょっぱいかなー。
ナディ。
あん?
えへへ。
何よ。
言っておくけど、餅が入ってるのなんてご馳走なのよ。
具がもやしだけとか、ましてや何も入ってないで汁だけとかだと、新年早々、泣けてくるんだから。
モヤシ?
そう、もやし。
貧民のミカタ?
…そう、ヒンミンのミカタ。
豆もやし?
くだらない事は覚えるのが早い。
…えへ。
気に入るか、分からないけど。
ハポンの正月と言えば、おせちと雑煮だから。
ちなみにうちの家計だとおせちは無理。
…。
と、思ったけど暮れになる前にかまぼこだけ買っておいた。
うん、贅沢。
…賞味期限、切れてるの?
やかましい。
少しくらい切れてても食べられる。
おなか、強いもんね?
あんたもね。
えへん。
褒めてないから。
そっか。
そうそう。
そーいうわけだからエリス、あんたも手伝う。
こたつ、一人じゃもったいない。
えー。
なに、そのえーは。
寒い。
節電とエコ。
一石二鳥。
…。
ほら、エリス。
さっさとする。
…いえっさ。
よし。
…。
……て。
…あったかい。
エリス。
…えへへ。
抱きつくなって。
これじゃ動けないでしょーが。
…。
あーもう。
……ねぇ、ナディ。
あー?
…ことしも、よろしくね。
…。
よろしくね。
…今年も、ね。
そう、今年も。
あー……。
よろしくじゃない?
……いつまで、続くか分からないけど。
…。
まぁ、いいや。
よろしく、エリス。
…!
うん!
あ、こら、動けないって言ってんでしょーが。
……えへへ。
−Premonición.
ねぇ、エリス。
…。
エリスって野宿するの、初めて?
…のじゅく?
星の下で寝るコト。
…。
ま、あるわけないか。
…。
あんの?
…。
エリス?
…。
…まぁ、いいや。
ナディ。
うん?
きづいたら、おばあちゃんのまちにいたから。
…。
だから、わからない。
…そっか。
なにをしてるの?
火を起こす支度。
ひ?
日が沈むまでにね。
どうして?
暗くなったら見えないでしょ?
それに夜は昼間と違って冷えるから。
みえないの?
見えない。
あかるいよ?
月と星の光だけじゃ限界があるの。
ふぅん。
と、言うことだから。
のじゅく?
そう、野宿。
…。
あんたも手伝うのよ。
なにを?
そりゃ、色々と。
いろいろ?
そう、色々。
もたもたしてたら日が沈んじゃう。
…。
ほら、ぼんやりしてない。
…なにをすればいいの?
あたしが火を起こしたら、あんたはお湯を沸かす。
…。
分かった?
…。
って、聞いてる?
…ナディ。
うん?
あかい。
あかい?
そら。
ああ、夕焼けって言うのよ。
つかあんたには赤く見えるのね。
ゆうやけ?
そう、夕焼け。
こういうトコで見るの、初めて?
…。
…分かんない、か。
…。
きれい?
…きれい?
そ。
なんで?
いや、なんでって。
…。
んー…ま、いっか。
エリス。
…なに。
気が済むまで、見てなさい。
…のじゅく、は?
あたしがやる。
ただし、今夜だけね。
…。
次からはちゃんと手伝うこと。
オーライ?
…。
そこはオーライって返すのよ。
…じゃあ、オーライ。
よし。
…。
て、こんなコトしてらんない。
…。
ああ、まだ沈むな、沈むな。
ナディ。
…あ?
あかいね。
空?
ううん、ナディ。
あたし?
うん。
…あんたも、だけどね。
エリス?
そう、エリス。
エリスはあかくないよ。
赤いわよ。
真っ赤。
…。
日に照らされて、ね。
…うぅ、ん。
お…。
…。
触られるの、いや?
…。
えと、ごめん。
…。
…。
…。
…えと。
ひ、しずんじゃうよ。
は?
ひ。
て、それはまずい!
…。
エリス、やっぱあんたも手伝って。
……。
二人で始めた旅、なんだからさ。
二人でやんないと。
……でも
オーライ?
…。
エリス?
・・・オーライ、ナディ。
・
エリス。
…。
エーリース。
…なに?
それはこっちのセリフ。
ん?
野宿の支度。
早く手伝え。
…。
ほら、いつまでも空眺めてんなって。
…いえっさ。
よし。
ナディ。
あー?
あかい。
…あ?
そら。
そりゃ、夕方だから。
せかいも。
そりゃ、ね。
まっか。
…て。
ずっと前もこんなやり取りをしたような…。
…ずっとまえ。
まぁ、良いや。
んなコトより、ごはんの支度してくれんかね。
またソーセージ?
またって言うな。
…。
たく。
…。
て、なに。
…あかい。
……。
…。
…だから、あんたもだって。
…うん。
…。
…。
…荒野の夕焼けなんて、今となっちゃあ別に珍しいもんでもないでしょーに。
さわってくれない。
あ?
…まえは、さわってくれたのに。
…。
…。
…いやがったくせに。
…。
エリス。
…ん。
あんたの髪の毛、今はあたしと同じ。
ナディと?
赤。
…。
まぁ、エリスの方が明るい赤だけどね。
つーより、オレンジに近いかな。
…えへへ。
…。
…。
…さて。
支度、沈む前にしないと。
…。
エリス、も…。
…。
…。
…。
…あたし、赤い?
うん…。
…。
…。
…気、済んだ?
…。
そろそろ支度。
オーケイ、相棒?
…オーケイ、あいぼう。
うん。
…。
…。
…。
…?
…。
…なに?
ん、いや…。
…。
…きれいだな、て。
…。
あと、触られてもいやがらなくなったなって。
…いやじゃないよ。
え…。
いやじゃない…。
…そっか。
よかった。
…よかったの?
うん。
……そっか。
さ、エリス。
手伝って。
いえっさ。
−Nieve inocente.
…。
エーリス。
わ。
ふふ、吃驚した?
うん、した。
それは良かった。
…酔ってる?
止めたの、あんたも知ってるくせに。
少しなら飲んでも良いよ?
その口が良く言う。
この口?
そう、この口…。
ん……ナディ。
…ふふ。
……酔ってる。
飲んでないって。
大体、一緒にいるんだから分かるでしょーが。
…。
で、やっぱ見てるの?
…ん、見てる。
好きよね。
うん、好き。
ナディは苦手。
だって寒いし。
転ぶし?
転ばないって。
そうかな。
失礼なヤツめ。
そんなヤツには…。
…そんなヤツには?
こーしてくれる。
…ふふ。
ほっぺた、こんなに冷たくして。
でも今はナディがいるから。
窓際って結構、冷えるのよね。
ん…。
積もるかな。
…少し。
少しなら…まぁ、良いかな。
…。
…。
…きれい。
溶けるときれいじゃなくなるけどね。
…ナディ。
はは、ごめんごめん。
…。
…。
…。
雪、かぁ。
…元気、かな。
…。
…。
…多分、ね。
そっか…。
…エリス。
ん…くすぐったい。
…。
……ねぇ、ナディ。
ん…?
北はもっと、降ったよ。
…。
…いっぱい積もった。
……そ。
でも…今はもう、どうでもいいコト。
…だったら、言うな。
ふふ…。
…笑うな。
ね、ナディ…。
…なに。
雪だるま、作ろう。
は、雪だるま?
うん、雪だるま。
んー…。
作ろ?
…でも、なぁ。
ん…。
…。
…あったかくすれば、大丈夫だよ。
あったかく、ねぇ。
…ナディ。
しょーがないなぁ。
でもちゃんと、あったくするのよ?
…いえっさ。
つか、作れるほど積もるかな。
…。
…まぁ、ちっちゃいのでも
ナディだるま。
…は?
作るの。
あたし?
ナディ。
…無理じゃない?
あたしは。
やってみないと分からないよ?
エリスだるまの方が出来そうじゃない?
私?
そ、エリス。
…。
でさ、ふたつ作って並べれば良いじゃない?
並べるの?
そ。
……。
ま、出来たらの話だ
並べよう。
…お。
がんばろうね。
…頑張るほどのコトかな。
ナディ、寒がりだから。
熱いお茶、淹れてくれるって約束してくれたら頑張っても良いかな。
淹れてあげる。
じゃ、頑張ろ。
約束。
ん、約束。
…。
…。
…いっぱい積もれば良いな。
や、流石にそれはちょっと…。
−Calor de tu palma.
ナディ。
なにー。
…。
て、なに。
太陽が沈んで、空に月と星が輝く頃。
ごはんも食べて、お茶も飲んで、ゆっくりと続いていたお話も途絶えて、後は寝るだけになった頃。
私は決まって、彼女の躰を寄せる。
…エリス。
…。
……しょーがないなぁ。
そう言ってナディは私の背中に手の平をのせる、のせてくれる。
のせられたところから、その温もりは私の中に染みていく。
…ほら、そろそろ良いでしょ?
…だめ。
あのなぁ…。
もっと近づけるように、ナディの首に腕を絡めて、肩に鼻先をうずめる。
ナディの呼吸が私の耳を撫でて、少しくすぐったい、けど。
それはまだ、熱を孕んでなくて。
まぁ、温いから良いけどね…。
…ナディもして。
してるじゃない。
…ちゃんと、抱き締めて。
そろそろ手の平だけの熱じゃ足りない。
もっとナディの熱を感じたい。
でもそんなこと、言わない。
…ほんと、しょーがないやつ。
……うん。
言わなくても、ナディはくれる。
じんわりと背中じゅうに伝わったナディの手の平の熱。
その上から抱き締められて、私の熱も急速に上がっていく。
ナディの熱と私の熱、ナディの呼吸と私の呼吸、みんな混ざって混ざって、どっちのものか分からなくなっていく。
……エリス。
なぁに…。
…。
ナディ…?
…顔、あげて。
…。
あげて。
…うん。
躰を少しだけ離して顔をあげれば、ナディのきれいな目と視線が絡まる。
その呼吸が、さっきよりも少しだけ、速くなってるのも気付いてる。
あと…あと、もう少し。
…。
…待って。
…?
……好きって言ってから。
…。
……言って、ナディ。
…しょーがない、なぁ。
耳元に、熱い息と「好きよ」のコトバ。
でもナディはそれだけじゃすまさなくて、私の耳をかりっと噛んだ。
びくりと震えると、ひそやかにナディが笑う。
…言ったよ。
…噛んで、なんて言ってない。
したくなった、から…。
…それ、私の。
…良いじゃない、たまには。
ナディの唇が、私のと重なる。
言おうと思ったコトバは、入ってきたナディに簡単に押し込まれてしまった。
でも、そんなのは、どうでもいい。
だって私は、もう…。
−Have you been to the amusement park?(From Ep.26)
…。
…ナディ?
もう、ねてるの?
…。
ナディ。
…さて、どうかな。
…。
…。
…おきてる。
エリス、さ。
うん?
遊園地、行きたい?
…。
ロベルトとニーナの誘い。
…ナディといっしょなら。
あたしと一緒なら?
……いく。
そっか。
…。
あんたは行ったコト、ないんだっけ?
…うん、ない。
行ってみたい?
…。
ん?
わからない。
いったこと、ないから。
ああ。
ナディはあるの?
見たことなら、あるよ。
みるだけ?
一人で行ってもね。
ひとりだと、だめなの?
いいけど。
行っても、むなしいから。
…むなしい?
遊園地、ねぇ。
…わたしはどっちでもいいよ。
そ。
…。
エリス。
…。
エリス。
…なに。
ここ。
…。
そんなとこに突っ立てないで、こっちにくればいいじゃない。
水、もう飲み終わったんでしょ?
…うん。
ほら。
…。
て、こらこら。
こっちだって。
…でもわたしはうえだから。
そうだけど。
こっちにおいでって。
…。
ほら、おいで。
…だって。
だって、なに?
…。
おいで、エリス。
……うん。
て、ちょっと遠いんだけど。
……だって。
だって?
……さいきんの、ナディ。
最近のあたしが、なに?
…すぐ、こういうことする。
そりゃ、ねぇ。
…。
あんたが嫌って言わないから。
…いったら、しないの?
うん、しない。
…。
…エリス。
……だめ。
と…。
だめ。
…なんでよ。
しないって、いったのに。
いや、とは言ってないでしょ?
…へりくつ。
いや?
…シャワー。
シャワー?
まだ…だから。
……。
…。
…あたしが?
……ナディが。
…。
だから…まだ、だめ。
…いえっさ。
あ…。
…じゃ、ちゃっちゃと浴びてくるわね。
だめっていったのに…。
キスくらい、許してよ。
…あとで、いっぱいするくせに。
キスだけ、ね。
……。
だから、エリス。
……。
今夜の寝床は上じゃなくて、下。
オーライ?
…さいきん、ずっとそうだよ。
だってエリスの事、好きだから。
…。
だから、したいのよ。
……。
…。
…。
…ねぇ、エリスさ。
…。
いつか。
…!
……。
だ、め…。
…いつか、連れて行ってあげる。
え…。
遊園地。
…ゆう、えんち。
いつか、必ず。
…ニーナ、と、
あたしが言ってるのは。
二人きり、でよ。
…。
…二人で行こう、エリス。
ナディ…。
二人で、行きたい。
う、ん…。
…ん。
さて、あたしもシャワー浴びてくるかね。
…。
続き、する為にもさ?
……うすらタコス。
−There is nothing.
……。
…。
……。
…何か、付いてる?
わ…。
いくら部屋ン中だからって、風邪、ひくわよ。
そんな格好で突っ立ってると。
…ナ、ディ。
あったかいでしょ、あたし。
……。
ん。
…あ、あの。
離れない。
……。
ほら、ベッドに戻ろ。
折角お金払って泊まってるんだから、さ?
……。
…ん?
…。
…で、何か付いてた?
え…?
躰。
…。
それとも…。
ぁ…。
…付けられ、足りない?
…!
もっと、欲しい…?
ナ、ナディ…!
…お。
……。
エリス。
…もう、きょうは
したくない?
……。
…エリス、ベッドに戻ろう?
…。
さ、おいで。
…。
……エリス。
ナディ、わたし…。
…違い、とうとう見つけた?
ううん…。
でしょ?
でも、
違いなんて、ない。
何度でも言ってあげる。
…。
…ないのよ、エリス。
あたし達に違いなんて。
……。
…そう、最初から。
う、ん…。
…うん。
…。
じゃ、戻ろっか?
その涙はベッドの中で拭いてあげる。
…。
ほら、いえっさは?
…はずかしい。
−One.
…め、…だめ。
…エリス。
や…あ。
…はぁ。
…だめ…だめ…や…。
…。
だめ…だめ……だ、め…ッ。
…。
や、だ…いや…ぁ…、
……エリス。
ナディ…ナディ…ッ。
彼女は終わりが近付いてくると決まって、上擦った声で否定の言葉を、繰り返す。
その意味が、あたしの鈍った頭ではいまいち分からなくて。
…。
…エリス。
……ん。
向かい合わせ、ではなく、エリスはあたしの胸に背中を預けて息を整える。
ほんとはこっち向いて欲しいんだけど…彼女はいつもこの姿勢。
それが少し不満、でも、この姿勢が嫌いかと聞かれたらNOと答える。
だって決して嫌いなわけじゃないのだ。
エリスのお腹に手を回して、彼女の息がゆっくりと整ってゆくのを感じているのはひどく心地が良い。
自分と彼女、今、ここにはそれだけしかない。
…。
……なに。
少しぶっきらぼうなところは相変わらず。
これでも出逢った頃に比べたら大分、感情は豊かになった。
良く笑うようになった。拗ねるようにもなった。おまけにやきもちまで。
それから…あの時の表情。
いっぱいに溜めた涙をこぼして、耳まで真っ赤にして、躰全体で息をして、あたしの背中に爪を食い込ませて、そして。
……。
…なに、ナディ。
…。
ナディ…?
…。
……いたいよ、ナディ。
…。
いたい…。
……ねぇ。
…。
まだ、いたい…?
…まだ?
…。
…ナディ、
ほんとうは、いやなの?
…。
ねぇ、エリス。
…わかんない。
…。
ナディがいってること…。
……だって、あんたが。
わたしが…?
…だめって言うから。
いってないよ。
…今じゃなくて。
ナディ、くるしい。
…。
…くるしい。
……ごめん。
…。
…。
…あのさ、エリス。
なぁに。
セックス、したくない?
……。
したくないなら…言って欲しい。
…なんで?
…。
なんでそんなこと、いうの…?
…いつも言うから。
…。
だめって。
いやだって。
いつも、言われるから。
…いつも。
………の、とき。
……。
だから…。
…。
…?
エリス…?
……うすら、タコス。
…いた。
…。
エリス、爪、爪が
…あなたに、ほうふくを。
いたい、いたいって。
…。
エリ
ナディのうすらタコス。
…そうよ。
だから、分かんないのよ。
…。
あたしはばかだから。
たまにあんたから躰を寄せてきてくれるとそれだけで嬉しくなって、それから許されてるんだって勝手に思っちゃって。
今夜だって…嬉しかったから、だから。
…。
…でも。
我慢してるようなら
ナディ。
…。
……いたくないよ、もう。
…。
もう、いたくない…。
……なら、なんで。
だめって、いやって言うの。
…。
…。
…だめ、なのは。
うん…。
いや、なのは…
…。
……おわっちゃう、から。
終わる…?
ずっと、なかにいてほしいのに…。
なかに…。
ずっと、かんじていたいのに…それなのにナディ、いっぱいあばれるから。
……あばれるって。
あらくれもの…。
…そればかりはどうしようもない、かな。
だって…
…あ、だめ。
あんたの中はすごく気持ち良いし…。
…。
…それに。
感じられてる、と思うと……それだけでもう、ね。
…。
…でもまぁ、つまり。
エリスがいやなのは…
…。
…終わっちゃう、こと?
……。
そうなの…?
……う、ん。
…。
…。
…そっか。
……。
エリスは、あたしにいてほしいんだ。
…。
エリス…。
…まだ、だめ。
聞こえない。
ナディ…。
…そんなコト、聞かされたら。
きいてきたのは…ナディなの、に。
…うん。
まって…まって、ナディ…。
…あんたの我侭、叶えてあげる。
あ…。
……まぁ、ずっとは無理だけど。
…ナ、ディ。
エリス…。
…うすら、タコス。
うん…。
ん…ん…。
…あまり動かない。
……。
動くな、とは言わないけど…。
…わがまま、
…。
なのは…
……お互いさま、かな。
……。
…エリス。
ナディ…。
……しばらく、こうしてるから。
…。
してても、いいんでしょ…?
…ばか。
ばか…。
はいはい…。
……。
…。
……ナディ。
…ん。
………すき。
…。
すき…。
…かわいい。
…。
かわいい…エリス。
…かわいく、ないよ。
…。
かわいくなんか…ないの。
…そーいうところも、かわいいんだって。
んぁ…。
…と。
…。
……まだ、ね。
…うすら、タコス…。
−Licht, schon verlor.
やっと形を成したそれは、産声をあげる事すら無く。
…え。
…。
ナディ…。
…駄目だった。
だ、め…。
……産声をあげる前に、もう。
うそ。
…。
わるいうそ。
……。
だめ…だめなんだよ、ナディ。
…。
ねぇ……。
…エリス。
ぅ、あ……。
…産まれる前には、もう。
うそ…!
…。
ねぇナディ、どうしてそんなうそつくの…。
…。
ねぇ、ねぇ…。
……。
い、や…。
……。
いや、いや、いやぁぁぁ…。
……エリス。
ロント、ねぇロントは…。
…見ない方が良い。
いや、みせて。
…。
みせて…みせて…。
……分かった。
…。
……エリス。
ロント…。
…。
…ああ、やっとあえた。
あえた…。
…。
ほら、ナディ…わたしたちのあかちゃんだよ…。
…うん。
やっと、やっと……あえた、のに。
…。
どうして…どうして、こんなにつめたいの…。
…。
ねぇ、ナディ…。
……。
どうして、ロントはないてくれないの…。
…。
うまれたら、なくんでしょ…。
…。
ねぇ、どうして…どうして…。
…それは。
やっと、うまれてきてくれたのに…。
やっと、やっと…あえた、のに。
……あたし達が普通じゃないからよ。
ふ、つう…。
……だから、今までも。
……。
エリス、それもロントにはなれなかった。
…ちがう。
違わない。
このこは、このこも、ロントだった。
ロントだった…!
……。
…わたしたちのあかちゃんなんだよ、ナディ。
…。
ほら、ロント…。
…それは。
ナディは、あなたの…。
…それは命になれなかったのよ、エリス。
…!
だから
やめて…。
…。
ロントを、わたしたちのあかちゃんを「それ」なんていわないで。
……。
…いわないで。
……ごめん。
……。
…エリス、少し眠ろう。
このままだとあんたの躰が壊れてしまう。
躰だけじゃない…。
…。
エリス。
……。
…さぁ、エリス。
……もう、いちど。
…。
だいて、ナディ…。
…もう、止めよう。
…っ。
止めよう、エリス。
もう…。
…いや。
いや、いや、いや…。
……。
おねがい、ナディ…わたしを、だいて。
…聞けない。
ナディ…ナディ…。
もう、出来ない。
そんなの、いや。
…。
ねぇ、ナディ…また、わたしのなかにうんで…。
…。
ナディ…ナディ…ナディ…ィ…。
……エリス。
あ……。
あんたの躰はもう、限界だと思う。
げんか、い…?
…躰だけじゃない。
心も、もう…。
どうして、どうしてそんなことをいうの…?
…。
やっぱり、こうかいしているの…?
…後悔なんか、無い。
だったら、して…して、ナディ。
…もう、出来ない。
わたしがまじょだから…?
ナディのからだ、こわしちゃったから…?
そんな事、関係無い。
わたしのこと、もうすきじゃないから…?
莫迦な事、言うな。
だってわたしが、わたしが、ナディを…
エリス、あたしは!
……。
…エリス、今は眠って。
少しでも休めないと…
……わたし、ね。
…。
わたし、うれしかったの。
とても、うれしかった。
…知ってる。
ナディが、わたしといっしょになったから。
…。
だってナディはもう、にんげんじゃない。
わたしが、そうさせたから。
…。
それが、うれしかった…うれしかったの。
……あたしも嬉しかったよ。
あ…。
嬉しかった。
あんたと一緒になれて。
…。
…嬉しかった。
……。
……。
…わたしは、わるいまじょだから。
いっしょのものが、ほしかった。
ほしかったの…。
…知ってる。
だから、あたしは。
だって、おなじものはもう、いないから。
もう、このせかいには…。
だからあたしは、受け入れた。
あんたと生きる為に。
……えるえーは、もう、いない。
わたしとおなじだった、あのひとは…。
そう、あいつはもう居ない。
居たとしても、あたしは。
…。
…あたしはあいつを殺してでも、あんたを譲る気は無かった。
仮令、あんたが悲しんだとしても。
ナディ……。
あいつだったら、若しかしたら、エリスの願いを叶えられたかも知れない。
そう、男のあいつなら。
…。
この子だって…ううん、この子だけじゃない。
「ロント」になれなかったあたし達の子供達は…若しかしたら。
……ナディじゃ、なければ。
…。
でも、わたしはナディじゃなきゃいや…いや、だから。
…う。
はぁ…。
…エリス、止めて。
またひとつに、なって…。
エリ、ス。
わたしと、ひとつに……なろう、ナディ。
…いま、は。
なんどでも、なって……。
……う、ぁ。
はぁ……はぁ…。
……、ぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!
…!
……はぁ、はぁ。
ナ、ディ…。
はぁ……。
いや、いや…。
…。
あなたのあかちゃんがほしい、ほしいの…。
…。
ねぇわたしを、わたしをだいて、こわし、んん。
…。
……な、でぃ。
…もう一度だけ。
……。
しよう。
…ほんと、う?
でもそれは今じゃない。
…。
そう。
その為に、今は。
…。
…眠ろう、エリス。
ん……。
…。
……ほんとうに、してくれるの。
する。
…あ。
……しよう。
…ぜったい、だよ。
エリス…。
……ナディ。
…この子も一緒に寝ようか。
今夜だけは一緒に…。
……うん。
…。
…ちいさいね。
赤ん坊だから。
…。
…。
……つめたいね。
…うん。
……でも、こんどは。
…。
ね、ロンティタ…。
……ロント。
こんどは、きっと…。
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