−Un poquito más.





   …?


   ……。


   ナディ?


   んー…。


   どうしたの?


   ……。


   …ナディ。








   ……。


   おきた?


   …え、と。


   おはよう。


   あ、うん、おはよ…。


   …。


   え、と、あたしは…。


   ねてた。


   ねて…。


   よくねてた。


   ……ああ、そう。


   まだねる?


   …つか。


   うん?


   状況がいまいち、飲み込めないんだけど…。


   じょうきょう?


   …。


   ん?


   ……どうして、エリスの膝を枕にしてるのかな、と。


   へん?


   変じゃ、ないけど…。


   オーケイ?


   …オーケイ、と言うか。


   …。


   …とりあえず起きようかな、うん。


   もうすこし、いいよ?


   へ。


   もうすこしだけ。


   あ、いや、でも


   いいの。


   …ぅがッ。


   へんなこえ。


   あ、あんたが押すからでしょうが!


   …。


   な、何…。


   えへへ。


   エ、エリス?


   ひざまくら。


   ……。


   ひざまくら、だね?


   …そう、ね。


   ふふ。


   …何が面白いんだか。


   おもしろいよ?


   何が。


   おもしろいの。


   …あ、そ。


   …。


   ん…。


   ナディ…。


   …えーと。


   ……。


   …じゃあ、あと少しだけ。


   …いえっさ。


   ……。








  −El sol solo para mí.





   ナディ。


   …んー。


   おはなし、して。


   おはなしぃ…?


   おはなし。


   …眠いんだけど。


   ナディ。


   あー…。


   ナーデーィ。


   分かった、分かったから、揺らすな…。
   今、考えるから…。


   ……。


   え、と……。


   …ナディ。


   もうちょっと待ってって…


   …。


   ……最後の太陽の王には、さ。


   うん。


   たくさん、奥さんがいたんだって…。


   …たくさん?


   支配するとそこにいる女の人は…全員じゃないけど、太陽の妻になったとか、そうでないとか…。


   …どっち?


   あと、優れていた女の子は太陽の処女になって、中には…。


   …。


   と言っても正妻の多くは妹だったから…


   たくさんってどれくらい?


   んー…たくさん?


   …10にんくらい?


   いや、もっと…。


   …100にんくらい?


   やー…もっと、かなぁ。


   ……1000にんくらい?


   なんか、もっとおおかったような…。


   ……。


   まぁ、妻と言うより候補みたいな感じだったらしいから…むぎゃ。


   ……。


   へ、へりふ?


   ……ナディ。


   は、はに…?


   あついこいのほのおがもえあがるのだった?


   ……は?


   ……。


   ひょ、ひょっと…。


   ……。


   …つか!


   …。


   何、すんだ。


   ……。


   話せって言うから、眠いのこらえて話したのに。
   いきなり抓られて。


   ……。


   エリス。


   ……たいようにはたくさんいたんだ。


   は?


   …。


   て、エリス。


   ……だめ。


   何が。


   だめ。


   だから、何が。


   …。


   黙ってたら分かんないでしょーが。


   だめなの。


   だーかーら、


   ナディはわたしだけのたいよう。


   ……ぱーどぅん?


   だから、だめ。


   …。


   ……だめ。


   えー…と。


   ……。


   …あのさぁ、エリス。


   …。


   あくまでもお話であって、あたしの事じゃないんだけど。
   大体、あたしは太陽なわけでも


   …。


   …あーもう。


   ……ナディはわたしだけのたいようだから。


   だから、エリスだけでしょうが…。


   …ほかにもほしいの?


   は?


   ほしいんだ…。


   いやいやいやいや、なんでそーなるかな。


   …たいようはうわきしょう。


   や、だからだな。
   それは昔の話であって、そもそもその時は浮気だとかそんなんでもなくて、それが…


   …やっぱり。


   何がやっぱりなんだ、何が。


   ……。


   …あーもぅ。


   …。


   今のは昔のお話で、大体、太陽の王さまは男なの。
   あたしと一緒にするなって。


   …じゃあ、しょうめいして。


   は、しょーめい?


   …。


   …て。


   ナディ…。


   こ、こらこら…。


   …。


   …見せなくても、いいから。


   ……して。


   つか、これは証明にならないでしょーが…。


   …。


   …こんなんじゃあ、さ。


   じゃあ…どうすれば、なるの。


   …。


   …。


   …とにかく、これはならないから。


   ……でも、するんだ。


   うん…。








  −der Schmerz.





   …。


   …。


   ……エリス。


   …。


   いつまで…。


   …まだ。


   …そんなことしても。


   しってるよ。


   …。


   しってるの…。


   …う、ん。


   …。


   エリス…。


   …けせないことくらい。


   …。


   ほんとうは…。


   …はぁ。


   でもナディはきっと、だめだっていうから…。


   …。


   …だから、なめるの。


   …。


   …。


   …動物みたい。


   どうぶつ…。


   ……ま、人もそうだけど。


   …。


   う…。


   ……ナディ。


   …。


   ナディ…。


   …気ぃ、すむまで。


   ……。


   なんて、言えそうにない…。


   …ぁ。


   …。


   ナデ…ィ。


   …うっすらと、残ってる。


   …。


   ここ、結局消えなかった…。


   …うん。


   ……。


   う、ぁ…。


   あたしが…。


   …ナディがくれたもの、だから。


   こんなの、あげたくなかった…。


   …。


   …あげたく、なかったのに。


   ん、しってるよ…。


   ……。


   ごめんね、ナディ…。


   …。


   …ごめんなさい、ナディ。


   …。


   …ナディ。


   …。


   …けさないで。


   …ッ!


   けさないで…ナディ。


   こんな、ことで…。


   …


   ……消せるわけ、ない。


   うん…でも。


   …。


   おねがい…ナディ。


   …いや。


   …。


   消したい…消したいの、どうしても。


   …だめ。


   どうしてよ。


   …どうしても。


   あんただって…。


   …しらないから。


   しらない…?


   …わたしにあうまえのは、しらない。


   ……。


   ナディはやさしいから。
   きっと、いろんなひとにやさしくしてきたとおもう。


   …そんなこと


   ミゲル。


   ……。


   ほかにも…いっぱい、いたんだよね。


   …いない。
   あたしは、やさしくなんかない。


   …そのせい、で。


   う…。


   …そんなの、ゆるせない。


   エ、エリス…。


   わたしのじゃないなんて…いや。


   …。


   ……だから。


   …。


   …。


   …これを見ると。


   …。


   いやでも思い出すの…。


   …しってる。


   引き金の感触も、守れなかった事も、温かかったエリスが冷たくなっていくのも…!
   全部、思い出すの…!


   …わたしも、おぼえてるよ。


   …。


   ふれたナディのからだがとてもつめたかったこと…いっしょう、わすれない。


   …。


   …。


   ……いや。


   …。


   もうあんなのは、いや…。


   うん…。


   だか、ら…。


   …でも、おなじことをいうとおもう。


   ……。


   おなじことになったら…きっと。


   …。


   わたしをころせるのは…ナディだけ、だから。


   いや…そんなの、いや…。


   ナディだけなんだよ…。


   また殺せと言うの…?


   …おなじことになったら。


   …。


   …。


   ……愛してる人を二度も殺すなん、て。


   わたしも、ころすから。


   あ…。


   …ころしてあげる、から。


   ……。


   きずは、ふたりだけのものだから。


   ……エリ、ス。


   ふたりだけのものだよ…ナディ。


   …。


   …。


   ……あたし、は。


   …。


   あんたに殺されるのね…。


   …うん。


   そっか…。


   ……いや?


   …。


   ナディ…。


   …生きて欲しい。


   あ…。


   あたしは、あんたに。
   生きて欲しい。


   ……。


   でも。
   あんたがあたしを殺したいのなら…それで、いい。


   …。


   いいよ…エリス。


   …ナディはころしてくれないの。


   …。


   ねぇ…。


   …もう、殺せない。


   …。


   あたしは、あんた、に…。


   ……。


   ……生きて、エリス。


   …。


   どんな事になっても…


   わたしがせかいをこわしても。


   …。


   わたしがぜんぶ、やいてしまっても。


   …それでも。


   そんなの、いや。


   …。


   わたしは、いきていたくない。
   わたしは、ころされたいの。
   ナディに。


   エリス…。


   まじょとしてじゃなくて…ナディのものとして、きえたい。


   …。


   …わたしをこわして。
   きずだらけにして…ナディ。


   …。


   …わたしだけのものになって、ナディ。


   ……ばか。


   ぁ…。


   もう、してるくせに…。


   …。


   …エリス。


   …。


   ……もしも、あんたが世界を壊しても。


   …や。


   もしも、すべてを焼き払っても。


   いや、ききたくない…。


   …あたしはずっと、あんたの傍にいる。


   …。


   二人で…どんな世界でもいい、生きよう。


   …ッ。


   どんなあんたでも、あたしはあんたに生きていて欲しい。


   ……。


   …傷が二人だけのものなら。
   命だって、二人で分けよう。


   ナ、ディ…。


   …だから。


   ……おしえて。


   …。


   わたしがナディのものってこと…。


   …。


   ……からだだけにわかる、








  −Lo importate es que recarguemos.





   いいこと、しよう?


   …は?


   いいこと。


   …つかさ。
   あんた、意味分かって言ってんの?


   あついこいのほのおがもえあがるのだった?


   …。


   ちがう?


   う…。


   …ちがった?


   …とりあえず、迫るな。


   ?
   せまってないよ?


   …。


   どうして、さがるの?


   あんたが迫ってくるから、だ。


   …。


   ほ、ほら、離れた離れ…わッ。


   …しよう?


   ……エリス。


   すてきな、こと…。


   …素敵って、何がよ。


   ちかくにいくこと。


   …十分、近いでしょうが。


   もっと。


   もっとって、あんたねぇ…。


   じょうねつと、あいを。


   ぅ…。


   しよう…?


   …。


   なかよし、だから…。


   …別にこんなコトしなくて、も。


   ……。


   しなくても、あたしたち…は、


   …いや?


   じゃ、なくて…。


   …じゃあ、いい。


   エリ、ん…。


   …。


   …。


   …やった。


   ……何がやった、なの。


   キス、できた。


   …。


   えへへ。


   …そんなに嬉しいの。


   うん、うれしい。


   あたしと…その、キスできて?


   うん。


   …。


   だいすきだから。


   …人の気も知らないで。


   …?
   き…?


   何でもない。


   …。


   …なに。


   じゅうでん、できた?


   …。


   …できた?


   ……おかげさまで。


   よかったね?


   …。


   だいじなこと。


   …こいつは。


   ん?


   …はぁ。
   エリス。


   な…あ。


   ……。


   …なぁに、ナディ。


   ……やっぱ、足りない。


   …。


   …。


   …たりないの?


   足りない。


   そっか。


   …。


   ん…?


   …今の状況、分かってる?


   おしたおされた?


   …最初にしたのはそっち。


   うん。


   …嬉しそうにするな。


   だいじなことだから。


   あのなぁ…。


   …よっきゅうふまんは、だめなんだよ?


   …してばっかりも、どうかと思う。


   でも…。


   っ…。


   …ナディは、げんきだから。


   …あんただけには言われたくない。


   すぐ、たまっちゃうの。


   …たまるとかゆーな、もう。


   ほんとのこと…。


   …もう黙れ、ばか。


   ……いえっさ。








  −Vamos a fugar al fútbol !





   …。


   エリス?


   あれ。


   ん、なになに?


   こども。


   おー元気良く遊んでるね〜。


   …。


   フットボール、かぁ。


   フットボール?


   サッカーとも言う。
   ほら、ボール蹴って遊んでるでしょ?


   …。


   知らない?


   しらない。


   そっか。


   ナディはしってるの?


   そりゃあ、まぁ。


   ふぅん。


   やった事はあんまりないけど、ね。


   …。


   なに、興味あるの?


   ない。


   …あ、そ。
   のわりにはじぃっと見てるけど。


   …。


   フットボールってのはさ。


   …?


   ボールをゴールって呼ばれてるところに入れるの。


   ゴール?


   ここではあの壁に書かれている“アレ”がそうみたいだけど。


   いれてどうするの?


   それで一点。
   多く入れた方が勝ち。


   …ふぅん。


   フットボールはボールになるものが一つあれば出来る遊びだからね。
   わりと簡単なのよ。


   ……。


   …エリス?


   ナディ。


   うん?


   たのしそうだね。


   え?


   たのしそう。


   ……。


   ……。


   …よし。


   ?


   混ぜてもらおう。


   まぜて…?


   見てるだけじゃなくて、やってみればいいのよ。


   …。


   ほら、エリス。


   あ。


   ねーぇ、あたしたちも入れてよ。


   …。


   オッケー?
   やったね、エリス。


   …。


   エリス、はい。


   …。


   さぁ、こい。


   …なに?


   試しに蹴ってみ。


   ける…。


   そうそう。


   ……わかんない。


   今、あたしがしたようにすればいいのよ。


   ナディが…。


   足で…ね?


   ……えい。


   そうそう、じょうずじょう…て、あ。


   …?


   エリス、取られた!


   とられ…?


   取り返さないと。


   とりかえすの?
   なん


   言ったでしょ?
   多く入れた方が勝ちだって。


   うん、いわれた。


   ほらエリス、早く!


   …。


   エリスー!


   …いえっさ。








   あぁ、疲れたぁ。
   やっぱ子供は元気だなぁ。


   …。


   つか忘れてた。


   ?


   あんたの、運動神経。


   …。


   でもま、何でもなかったし、いっか。


   ……。


   楽しかった?


   …たのしかった?


   あんた、言ったでしょ?


   なにを?


   たのしそうだね、て。


   …。


   エリスは、楽しかった?


   …。


   きょとんってしてるし。
   分かんない?


   …うん。


   そっか。


   …。


   エリスエリス。


   …?
   な、ん。


   顔、汚れてる。


   …。


   ああ、手じゃ落ちないか。


   ナディのてもよごれてる。


   あはは、確かに。


   かおも。


   お…。


   …よごれてる。


   こんなに遊んだの、久しぶりで。
   ちょっと張り切っちゃった。


   そうなんだ。


   うん。


   ナディはたのしかった?


   うん、楽しかった。


   そっか。
   よかったね。


   エリス。


   なぁに?


   本当によかった。


   うん。


   あんたのそういう顔、見れて。


   …どんなかお?


   さぁ、どんな顔でしょう。


   …。


   ね、エリス。


   …なに。


   とりあえず、顔洗おっか。


   かお?


   真っ黒だからね。
   近くに川、あったでしょ。


   うん、あった。


   そこにゴーゥ。


   …。


   て、こらこら。
   あんたも言うの。


   ゴーゥ?


   そう、ゴーゥ。


   ゴーゥ。


   うん、よろしい。


   ……。


   さ、行こ。
   エリス。


   …いえっさ!








  −das Aufwachen -E-





   目が覚めたら、彼女がいない。
   最初はなにもかんじなかった。
   わたしは賞金首で、彼女は賞金稼ぎだから。
   お金がほしい、と彼女は言ったから。
   彼女がほしいのは、わたしじゃない。
   わたしの首にかかった、おかね。
   ただ、それだけ。


   …そう。
   わたしじゃ、ない。





   …。


   …。


   …あれ、エリス?


   …。


   おかしいな。
   良く寝てると思ったんだけど。


   ……。


   …と。
   どした?


   …。


   …明日も早いから。
   ちゃんと寝ないとね。


   …ナディも。


   勿論。


   …。


   ほら、エリス。


   …うそは、だめ。


   え?


   ナディは、あまりねない。


   そんなこと


   …わるいうそ。


   ……。


   …。


   …あのね、エリス。
   あたしはこういうコト、慣れてるから平気なのよ。


   …。


   賞金稼ぎって仕事はね、そんなもんなの。
   慣れる、と言うより、慣れてしまうもんなのよ。


   …。


   だから…心配しないでおやすみ。


   しんぱい…?


   違うの?


   ……。


   …ほら、エリス。
   寝よ?


   …。


   エリス。


   …ナディは。


   ん?


   おかねが、ほしいから。


   …。


   だからわたしといっしょにいてくれるの…?


   …エリス。


   …。


   …言ったでしょ。
   ばあちゃんと約束したって。


   …。


   南へ、ちゃんと連れて行く。


   …。


   ……それまで、守るから。


   おかねは…


   …そりゃ、欲しいけどさ。
   でも、違うのよ。


   …なにが、ちがうの。


   それだけじゃないってこと。


   …。


   あたしは……。


   ……。


   ……。


   ナディ…?


   …とにかく、もう寝ないと。
   あんたは昼でも隣で寝てられるけど、あたしはそうもいかないしね。


   …。


   さ、エリス。


   …いえっさ。


   …。


   …。


   ……エリス、さ。


   …なに。


   …。


   …?


   …手、繋ごっか。


   て…。


   よく、眠れるように。


   …ナディが?


   あんたが。


   …ナディは?


   あたしは…あんたがちゃんと隣にいる、それを感じられるように繋ぐ。


   かんじる…。


   そう。


   ……そっか。


   オーケイ?


   …オーケイ、ナディ。


   …。


   …かんじる?


   うん、感じるよ。


   …わたしも、かんじる。


   …。


   ナディは、ここにいる…。


   …うん。


   ナディ…。


   …。


   …。


   …Gute Nacht, Ellis.


   ……。








  −das Aufwachen - N -





   最近、彼女が良くやるようになった事。
   空を見上げて、手を伸ばすこと。
   高く高く、伸ばしては、何かを掴む仕草をする。
   太陽、雲、月、星、時には風さえも。
   届かないと、何度も言っているのに。
   それでも、なお。


   …そして、あたしは。
   それを見ては、心がざわめくのだ。
   まるで消し損ねた残り火が、また…。





   …。


   …。


   …エリス。


   …?


   届かないって言ってるでしょ。


   …うん。


   どうして、するのよ。


   …なんとなく。


   は、何よそれ。


   …ナディ?


   もう、止めなよ。
   どうせ、届きやしない。


   …。


   何も、掴めない。


   …どうして、おこっているの。


   は?


   ナディ、おこってる。


   どうして。
   怒ってなんか、ない。


   うそ。


   …けんか、売ってるの。


   うってない。


   あたしは怒ってなんか、いない。


   …。


   ほら、そろそろ仕事をしなさい。
   目を離せば、寝てばかりで。


   ……。


   …!
   エリス…!


   あ…。


   …止めろって言ってるの。
   どうして分からないの。


   …。


   エリス。


   …やめない。


   どうして!?
   あたしは止めろって言ってんのよ!


   いや。


   …ッ!


   ……。


   …ああそう。
   じゃ、好きにすればいい。
   いつまでもそうやっていればいいのよ。


   ……。


   あんたなんか、も……う。


   …。


   ……。


   ……ナディ。


   なに、を…。


   …ごめんね。


   …。


   ごめんなさい…。


   ……エリス。


   わたしね、ほしいものがあるの…。


   …。


   ……だから、てをのばすの。


   でも、届かない。
   何も…何も、手に入れることなんて、できない。


   …そんなこと、ない。


   嘘。


   …。


   …あたしは、何も。


   …ほんとうに?


   ……。


   ナディはきづいてないだけ。


   …気付く?
   何に?


   …ここに、いるのに。


   エリス…?


   ……。


   ……とりあえず、離してよ。


   …。


   エリ


   ほしいものは、ひとつだけなんだよ。


   …。


   ひとつだけなの…。


   ……太陽でも欲しいとでも言うの。


   たいよう…。


   空に手を伸ばして。


   ……そうだよ。


   あんた、本気で言って…


   ……。


   ……仕事、しないと。


   ナディ。


   ……。


   …すき。


   …!


   すき、だから…。


   ……離して。


   …。


   …洗濯、干しなさい。
   皺になる前に。


   …。


   ……あたしはもう、戻る。
   いつまでも店を空けておくわけにはいかない。


   ナディ…。


   ……。


   ……。


   …っ。


   …おねがい、ナディ。


   エリス、いいかげんに…


   わたしを、みて。


   …。


   ………みて。


   …今更、何を見ろと言うのよ。


   …。


   旅をして…旅が終われば、おしまいだと思っていたのに。


   ……おわりにしたかった?


   …。


   したかったの…?


   ……。


   …ナディが、そうしたいのな


   …。


   ………ナディ。


   …できるくらいなら。


   ……。


   出来るくらいなら…!


   ……。


   ……こんなきもちになんか、ならなかったの、に。


   …。


   ……。


   …ナディの、ほしいもの。


   あ……。


   …。


   …あたし、は。


   ……あげる、から。


   ちが、う……。


   …ちがくても、いいんだよ。


   …。


   ただしいのなんてきっと、どこにも…。








  −después de episodio 19.





   …ねぇ。


   …。


   やっぱり、運転しづらいんだけど。


   いいの。


   いいのって。
   そりゃ、あんたは運転するわけじゃないからいいだろうけどさぁ。


   まぁいっかっていったよ。


   言ったけど。


   …。


   エリス。


   …いいの。


   あーもう。


   …。


   あんたが寄り掛かってるとね、片手が使えないわけ。
   分かる?


   うん。


   となると、片手で運転しないといけないの。
   しづらいと思わない?


   ナディはうんてん、じょうずだから。


   え、そう?


   うん。


   そうかなぁ。


   …たんじゅん。


   ……。


   ん?


   …こいつは。


   だいじょうぶ。
   まっすぐだから。


   そういう問題か。


   まえからもこないよ。


   でも全く来ないわけでもないでしょーが。
   今は来ないだけで。


   きたら、おしえてあげる。


   教えてもらわなくても


   ナディよりよく、みえるから。


   ……そーかもしれないけど。


   そうだよ?


   あのね、エリス。


   …。


   あんただってずっとその姿勢でいたら疲れちゃうと思うけど。


   へいき。


   ああそう、平気なの。


   うん、へいき。


   …て。
   そーじゃなくてだな。


   いやなの?


   は?


   ナディはいやなの?


   嫌と言うか、


   なら、いやじゃない?


   …まぁ、嫌じゃないけど。


   …。


   な、なに…。


   えへへ。


   なによ、その笑い。


   なかよしふうふに、みえる?


   ……だからだな。
   夫婦は男と女であって


   みえる?


   …人の話を聞け。


   ……。


   あ、こら、エリス。
   そのまま寝るなって。


   …。


   エリスってば。


   もうすこしだけ。


   …。


   だめ?


   …もう少しって。


   …。


   …あぁもう。
   少しだけだからね。


   いえっさ。








   …つか、エリス。


   …。


   あんた、今夜はこのまま寝るつもり?


   なかよしだから。


   あのなぁ…。


   …おやすみなさい。


   あ、こら…。


   …。


   …。


   …えへ。


   ……たくもう。


   …ナディ。


   なに。


   きてくれた。


   …当たり前。


   そうなんだ。


   そうなの。


   …そっか。


   つかさぁ。


   …?


   あんた、本当は


   ナディはリカルドとなかよしふうふになりたいの?


   は?


   …なりたい?


   なんでよ。


   …。


   なんであたしが。


   …たのしそうだったから。


   はぁ?


   …。


   別に楽しくなんか…


   …。


   …なかったわよ。
   あいつ、人のフォロー無視しやがったし。


   …たのしかったんだ。


   だから!


   ……。


   つかさ、あんたやっぱり


   ちがうよ。


   …。


   ちがうの。


   …あ、そ。
   じゃ、そーいうことにしておく。


   ちがうのに。


   はいはい、そーねぇ。


   ……。








  −Mucho, mucho, mucho.





   ……。


   …。


   エリス…。


   ん…ぁ…。


   …エリス。


   ……。


   …はぁ。


   ……くす。


   …。


   ……。


   …笑うな。


   わらってないよ…?


   笑った。


   …。


   …これでも一生懸命やってるんだから。


   しってる。


   わ…。


   …しってるよ。


   ……。


   しってる…。


   ……エリス。


   ん…?


   …うごけない、んだけど。


   …。


   エリスってば…。


   ナディ。


   ……。


   だいすき。


   う、うん…。


   …ナディは?


   あ、あたし?


   うん。


   ……え、と。


   …。


   好き…だけど。


   …だけど、なに?


   う。


   だけど…なに?


   あ、いや…。


   …。


   ……好き、よ。


   だけど?


   …それはなし、で。


   なしでいいの?


   う、うん。


   …。


   …好き、だから。


   …だから?


   だ、だから…。


   あ…。


   ……好き。


   …。


   エリス…エリス…。


   …ふふ。


   ……。


   …。


   ……あぁ、もぅ。


   …しないの?


   つか…さ。


   …ん?


   無意識だったらタチが悪いんだけ、ど。


   むいしき?


   …くそぅ。


   へたでも、いいよ?


   …悪かったな、へたで。


   ぶきようなのが、いいところ。


   …フォローになってない。


   ほめてるのに。


   …どうせ、へたですよ。


   ふふ。


   ……。


   ナディ?


   …。


   やめちゃうの?


   …。


   やめないで。


   ……へた、だし。


   いいっていったよ?


   だか、ら…。


   ……きもちいいの。


   ぅ…。


   ナディにさわってもらう、と。


   ……。


   …だから、もっと。


   …。


   ナディ…。


   ……そーいうこというな、ばか。


   ……ぁ。








  −Al final de un día.





   「ナディ」


   「…んん」



   返事をしてくれたわけじゃないと思うけど。
   でもここにはナディと私しかいないから。


   眠るナディにそっと顔を寄せる。
   あたかかい。
   躰に腕を回して、足を絡める。
   やっぱり、あたたかい。
   あたたかい、以外、ないけれど、
   それだけで、しあわせだから、それでいい。



   「よしよし」



   そう言って、頭をなでてくれたのがさいしょ。
   ふれられたところが、いつまでも熱いのに気がついたのがさいしょ。
   それから。



   「そんな悲しいこと、言わないで」



   オンセンで、抱きよせてくれた時。
   お湯もとても気持ちよかったけど、それよりもナディの体温の方が心地よかったのは今でも教えてない。教えてあげない。
   あの時もしも、いやだって言われていたら。
   そんな事を思うと、急に怖くなる。
   ナディの熱がここにあって、自分のと分からなくなってしまうくらいの距離にいるのに、それでも。
   言えばきっと「ばか」って言われると思う。
   けど。



   「離さないよ…何があっても」



   雨の中。
   強く、強く、腕をつかまれて。
   躰を引きよせられて、抱きしめられたあの日。
   振り解こうと思えば、出来たこと。私は人間じゃないから。人間のナディよりも力があるから。
   でもしなかった。出来なかった。したく、なかった。
   熱い腕、躰。息。言葉。
   ナディの中に私がいること。
   これからもいたいということ。
   ナディが、教えてくれたこと。
   熱も、想いも、ぜんぶ。



   「…大好きだよ、ナディ」


   「……」



   眠ってるナディは子供みたい。でも起きてる時も子供みたい。
   言うと、あんたに言われたくないって言われるけど。



   「.....Hasta mañana, Nadie」



   ナディに教えてもらった言葉をおくって、そっと目を閉じる。
   明日もいい日になればいい。
   そんな事をちょっとだけ思いながら。








  −A la apertura de un día.





   「エリス」


   「…ん」



   呼んでみても、ほっぺたをつついてみても、起きる気配はない。
   小憎たらしいくらいにすやすやと寝てる。
   それはもう、しあわせそうに。


   目が覚めると、ほぼ毎回と言っていいくらい、あたしにぴったりと寄り添っているエリス。
   腕なんか、回されて。たまに足なんかも、絡められて。
   寝てる間に離れてしまってもおかしくないと思うんだけど、離れてないのだから不思議な話。
   以前にナディは寝相、悪いね?なんて悪びれることなく言われていたから、余計。



   「朝だぞ、この」



   頬を撫ぜてみる。当然、これくらいで起きるわけがない。相変わらず、気持ち良さそうに寝てる。
   枕はあたしの腕と、勝手に決めてしまったエリス。
   あたしの意見なんぞ、まるで聞きやしない。そもそも、元から聞きゃしない。
   おかげで慣れるまでは腕が痺れて、えらい目に遭った。
   今では少し慣れて、と言うか乗せるポイントが分かってきたと言うか。
   でもやっぱり、慣れたとは言い切れないわけで。



   「…この、わがままエリスめ」



   仕方ないから、体勢を直すついでに腕を回し返してやる。
   で、その途端に。
   顔をすり寄せてくるんだ、これが。ふわふらな髪の毛がこれがまた、くすぐったいんだ。
   思わず顔を覗き込んでみるけどやっぱり起きてないから、無意識なわけで。
   おまけにその仕草がやたらにかわいくて、もっと言えばえらく愛おしくて。
   やっぱりあたしは離す事が出来ないんだって、思い知らされるわけで。



   「あーあ…」



   エリスの温もりと匂いに包まれながら。
   昨夜の事を少し、思い出す。
   いつもはお子ちゃまな相棒が、そうでなくなる瞬間。
   くすくすと笑うその声はあたしの耳朶を舐めあげ、挙句に心を侵してくれる。
   どんなに自制心だの理性だのを総動員させたところで、そんなエリスに、あたしの柔な心が敵うハズもなく。
   違う、エリスだから敵わないのだ。あたしは…エリス曰く、心底エリスに惚れてしまっているから。



   「……このねぼすけ」



   柔らかい髪の毛に顔をうずめて、ぎゅうと抱き締める。
   あたしよりも少し低い体温。この温さが心地いい。
   暑い昼も、冷える夜でも。いつでも。
   エリスの熱、エリスがここであたしと生きててくれている証。
   エリスがあたしにくれるもの、くれたもの。
   あたしのしあわせ。あたしのすべて。



   「…もう、傷つけたくないのに」



   あの雨の日。
   体温を奪われて冷たくなっていたエリス。
   あたしの腕の中で微かに震えていたエリス。
   後になってそれは寒さだけのせいじゃなかった事を聞かされたんだけど。
   その時は確かにエリスの心までが震えているようで、たまらなかった。
   もう二度と離すもんかって思った。
   もう二度、と。



   「……どんな夢、見てんのかね?」



   しあわせそうに寝てるエリスにやれやれと思いつつ。
   あたしといることがエリスにとってのしあわせなんだって、自惚れ気分に浸りつつ。



   「Buenos días, Ellis..」



   目覚めるきざしを一向に見せないお姫さまに、キスを一つ。
   今日もいい日になりますように、なんて、らしくない事を願いながら。








  −Te quiero entender más.





   ねぇ、エリス。


   …。


   少しはこっちの言葉、分かるみたいだけど。
   どうやって?


   …。


   あー…え、と。


   …おばあちゃん。


   おばあちゃん?
   …ああ、ばあちゃんね。


   …。


   それまではどうしてたの?


   しらない。


   知らないって。


   わからない。


   でも


   ……。


   …まぁ、いいや。


   …。


   じゃあさ、どうやってこっちに?


   …。


   …て、これもいっか。
   今エリスはここにいる、それで良し。


   …。


   ん、なに?


   なにって?


   じっと見てるから。
   なにか言いたいことでもあるのかな、て。


   ないよ。


   …ああ、そう。


   …。


   …。


   ……あー。


   …。


   エリスさ。


   なに。


   北の言葉も分かるには、分かるんだけどさ。


   …?


   南、目指すんだったら。
   こっちの言葉も覚えてみない?


   どうして?


   あ、いや、どうしてって。


   おばあちゃんにおしえてもらったよ。


   そう、なんだけどさ…。


   …。


   んー…。


   …。


   ……ま、いっか。
   分かんないわけじゃないし…。


   …。


   …。


   ……ああでもなぁ。


   どうしたの?


   え、なにが。


   ナディ。


   あたしが、なに?


   …。


   ん?


   …。


   …て、無視ですか。


   ナディは。


   あ?


   どうして、はなせるの?


   話せる?


   きたのことば?


   ああ。
   仕事が仕事だからね。
   話せないと仕事にならないの。


   しょうきんかせぎ?


   そう、賞金稼ぎ。
   こう見えてもね、北で仕事したことあんのよ。


   ふぅん。


   …どうでも良さそうだな。


   …。


   …。


   ……Tiene dientes y no come,


   …?


   tiene cabeza y no es hombre.


   なに?


   なぞなぞ。


   なぞなぞ?


   意味は、分かった?


   …。


   歯があるのに、何も食べないで、


   あたまがある、ひとじゃない。


   まぁ、そんな感じ。
   ね、なんだと思う?


   しらない。


   あ、いや、だからそれを考えるのがなぞなぞなんだって。


   かんがえるの?


   そう、考えるの。


   …。


   これ、あたしが子供の頃に聞いたものなんだけどね。
   あたしはそういうのが苦手でさ。


   …。


   こっちの言葉じゃなくてもいいよ。


   …。


   さ、分かる?


   …わかんない。


   分かんない?
   ちゃんと考えた?


   うん。


   そっか。
   答え、聞きたい?


   ううん。


   …。


   …。


   …どーでもいいってか。


   …。


   あーもう!
   答えはajo!


   …アホ?


   そう、アホ!


   にんにく?


   そう、にんにく!


   なんで?


   全体をcabeza、剥いた一片をdienteって言うから。


   そうなんだ。


   そうなの!


   へぇ。


   …。


   おもしろいね?


   …お。


   …。


   …え、と。


   …。


   エリス。


   なぁに?


   あたしはあんたと話がしたい。


   わたしと?


   それだけ。


   …。


   ま、分かればどこの言葉だっていいけど。


   …ナディ。


   うん?


   おばあちゃん、ちょっとだけだったから。


   …。


   だから。


   …そっか。


   …。


   ま、こっちにいればいやでも覚えるわよ。
   しょっちゅう聞くことになるしね。


   いやでも?


   そう、いやでも。


   …そうなんだ。


   そうそう。


   そしたら、ナディとはなせる?


   今も話してるけどね。


   こっちのことばで。


   …。


   はなせる?


   うん、話せる。
   今だって少しだけど、話せてるし。


   うん、わかった。


   …。


   …。


   ……ふふ。


   おかしいの?


   いや、なんでもない。


   なんでもない?


   うん、なんでもない。


   そっか。








  −Rising Sun.





   目、潰れるわよ。


   …?


   太陽。


   …。


   朝だからって、その光の強さは変わんないから。


   …。


   ずっと見てると見えなくなる。


   …どうして?


   どうしても。
   人の目はそういう風に出来てんの。


   …。


   知ってる?目の色で眩しさって変わるんだって。
   青より黒の方があまり眩しくないんだってさ。
   って読書家のあんたなら、知ってるか。


   …。


   あんたの目は、青いから。


   …ナディもあおいよ。


   ま、そうなんだけど。


   …。


   …。


   …それはそうとして。
   黙ってどこかに行かないでよ。


   …だまって?


   珍しく早起きだと思ったら。
   ふらふら、こんなトコまで来て。


   ……。


   ま、確かにここは景色がキレイかもしれないけど?


   …ナディ。


   うん?


   たいようは、ずっとみていちゃいけないの?


   うん、いけないの。


   …めが、つぶれるから?


   そ。
   いやでしょ?見えなくなったら。


   …いいよ。


   え?


   みえなくなっても。


   こらこら、だめでしょ。
   なぁに言い出すかな、この子は。


   …。


   なんにも、見えなくなっちゃうのよ?
   そんなの、イヤじゃない。


   …。


   て、エリス。


   …でも、みたいの。


   …。


   みて、いたいの…。


   …エリス。


   …っ。


   ……そんなこと、言わない。


   ……。


   あたしはイヤよ?
   あんたの目が見えなくなるの。


   ナ、ディ…。


   …あんたは空を見るのが好きだから。
   空を見るのを止めろとは言わないけど…太陽は、だめ。


   …。


   分かった?


   ……で、も。


   でも、じゃない。


   ……みたい、の。


   …。


   ……どうして、たいようはあるの。


   どうしてって…なきゃ困るし。


   …どうして。


   でも、ずっとじゃない。
   太陽は夜になると沈むでしょ?


   …けど、またのぼるよ。


   …。


   …なければ、いいのに。


   エーリス。


   …う。


   どうしちゃったの。


   ……どうも、しない。


   そんなに太陽が好きなの?


   …!


   ん…?


   ……はなれて。


   お…。


   …さわらないで。


   …と。


   …。


   エリス。


   ……め、みえなくなっちゃうんでしょ。


   ずっと見てるとね。


   …みちゃ、だめなんでしょ。


   うん。


   ……でも。


   え。


   ……。


   …エリス。


   たいようが……すき、だから。


   …。


   ……だいすき、だから。


   ……。


   …。


   …そんなに、好きなの?


   …。


   エリス、さ。


   ……。


   太陽はさ、どんな時でも昇るの。
   そう、どんな寒い夜でも必ず終わる。
   明けない夜なんて、ない。


   …。


   昇ったら昇ったであっつくて、たまんないけどさ。
   でも、太陽の光で救われることだって、たっくさん、ある。


   …。


   だからさ、見るのはだめだけど。
   好きでいるのは、いいと思うよ。


   ……。


   見られないけど、空にはちゃんとある。
   あんたをいつだって、見てる。
   ずるいかもしんないけど、さ。


   …ずるい。


   はは。
   でもそう思うと、片思いみたいかもね。


   ……。


   叶わない…さ。


   ……!


   ま、でも、あんたは


   ……。


   て、エリス。


   ……。


   …どした?


   ……やさしく、しないで。


   え…?


   やさしく、しないで…。


   …。


   ……かなわないなら。
   みられないなら…こんなめ、いらない。


   …エリス。


   ……みえなくなればいいのに。


   …。


   たいようなんて…んん。


   …。


   ……ナ、ナディ。


   分かった。


   …。


   見ても、いい。
   むしろずっと、見てて。


   …けど、


   エリス。


   あ…。


   ……太陽は、いつだってあんたを見てる。


   …。


   だから、あんたも見てて。
   ずっと、傍で。


   ……みてて、いいの。


   うん。


   ずっと、みてて…。


   見てるだけで、いいの?


   …え。


   あたしは、それだけじゃ足りないかな。


   …ッ!


   手を伸ばせば、届くんだから。


   ナ、ナディ…。


   あと、勝手にどこかに行かれるのも困る。


   …ぅ。


   ……太陽は、ここにいる。


   …。


   て、自分でも言うのもアレだけど。


   ……いい、の。


   うん。
   でも。


   …。


   空のは見ちゃだめ。
   やけるから。


   やけ…。


   んー…大分、明るくなってきたかな。


   …きょうの、はじまり。


   今日だけじゃないけどね。


   ……。


   車に戻ろっか、エリス。
   朝ごはん、食べ…


   …。


   ……エリス?


   …、だけ。


   …。


   …。


   ……Okay, partner.


   ……。