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…ナディ。
……。
ナディ…。
……。
…早く、起きて。
……。
もう、言わないから…。
……。
…あなたの子供が、欲しいなんて。
……。
もう、言わない…言わないから。
だから…。
……。
…起きて。
起きて、ナディ……。
……。
……あ。
……。
ナディ、ナディ…。
……。
…い、や。
……。
いやぁぁぁぁぁぁ……ッ！
ああ、エリス。
…。
起きた？
……。
ん？
……。
なに？
ああ、もしかしてごはん？
…いない、から。
え？
いない、から！
お…。
……。
エリス。
…まだ、一人で動いちゃだめなのに。
でも、
だめなのに…！
…エリス。
……。
…良く、寝てたから。
……。
外に、出たかった。
寝てばかりいた反動ってヤツかな。
…。
…ごめん。
ちょっとだけのつもりだった。
……。
…ちょっと長くなるかもしれない。
躰が思うように動かないから。
……。
すぐ疲れちゃってさ。
家から外に出て、家の回り、少しだけ歩いてみて。
それだけでもう、足が思うように動かない。
…。
他は何もしてないってのに、な。
これじゃ何かあった時、あんたを守れないね？
……。
…エリス。
……。
あんたが来てくれて良かった、エリス。
…ちゃんと、言って。
ん…。
外に出るなら、言って。
…。
…私をおいて、外に出ないで。
……。
…ぬくもりだけおいて、行かないで。
ん、分かった…。
ぬくもりさえ、なくなって…。
…え？
つめたく、なって……。
……。
そんなの、いや…いや…。
エリス…。
……。
無くならないよ。
…。
…無くならない。
……。
さ、中に入ろ。
手、貸してくれるでしょ？
だめ。
いや、だから。
休んで。
でも、寝てばかりだと
……。
…休む、休むから。
…。
でも、もう少し起きてたいのよ。
…しないで。
…。
無理、しないで。
しないで…。
…エリス。
……。
…心配、してくれるのは嬉しい。
けどね、エリス。
…。
ずっと鈍ってるわけにはいかない。
…。
早く、なんとかしたい。
じゃないと…。
…ナディ。
ちょっと見ない間に、痩せたね。
…。
…あんたは、食が細いから。
……。
…分かってる、それだけじゃない。
……。
あんたにずっと、心配してもらえるのは嬉しいこと。
でも、このままじゃいけないの。
…。
これ以上…あんたに、心配させたくない。
…。
あたしはさ、エリス。
…。
…かなり、甘えてる。
あんたに。
…もっと、あまえて。
…。
もっと、あまえて…ナディ。
あなたがのぞむなら、わたしは、なんだって
エリス。
…。
手伝ってよ。
…。
いきなり、は流石に無理っぽいけど。
エリスがいれば、大丈夫だからさ。
ナディ…。
…エリス。
……。
…本当、痩せたね。
……ナディ、だって。
まぁ、一週間寝てたしね。
…。
…でも、問題ない。
必ず、元に戻るから。
ほら、あたしはその辺の野郎より、体力あったからさ。
…うん。
そこは違うって言うところ。
…ちがうの？
違うの。
ま、戻るのを通り越して肥えるのはやだけどね。
ん、ナディ…。
でもあんたは、元が細いから。
少し、肉を付けたほうが良いかな。
…そのほうが、いい？
良いと思うけど。
…。
…ん？
そのほうが、すき…？
…？
すき？
…ナディが、すきなら。
そうする…。
……。
……。
…あたしの好みの話じゃ、ないんだけど。
…。
……エリス。
…。
…今日はもう一回、外に行きたい。
うん…。
その時は、一緒に
じゃなきゃ、いや。
…。
…じゃなきゃ、いかせない。
いえっさ、エリス…。
あれ、欲しいな。
…あれ？
あんたがいつも、気持ち良さそうに寝てたあれ。
…？
あたしも一回くらい、寝とけば良かったなぁ。
……。
あーあ。
…。
…なに？
……。
なんで、むくれてるのかな。
…むくれてない。
あ、そ。
じゃあ、気にするの止めた。
……。
…風が、気持ち良い。
……。
やっぱり、外は良いな。
日向はあっついけど。
……。
…あんたが。
…。
いて、くれて。
…。
…きっと。
あんたとこうしてる方が、気持ち良い。
だからあれは、いらない。
…欲しいって、言ったくせに。
まぁ、一回くらいは寝てみたかったなって。
…。
今日は、これでおしまいだけど。
明日は。
…。
明日はもっと、歩けるようになる。
…いいよ。
ん…？
急がなくても、いいの。
…。
私たちの時間は、いっぱい、あるから。
…エリス。
いっぱい、あるんだよ…ナディ。
…ん、そうだね。
…。
…それでも、あたしは早く動けるようになりたい。
……。
……。
……ごめんなさい。
……。
……。
…ねぇ、エリス。
あたしの前に、座ってよ。
…。
おなか、抱っこさせて。
…うん、いいよ。
……。
……。
……。
ん…。
…あったかい。
……。
…分からないんだっけ。
……うん。
…。
ん…くすぐったい…。
…あたしだけのもの、だ。
え…？
…なんでもない。
なぁに？
なんでもない。
何か言ったよ。
…なんでもないったら、なんでもない。
……。
そろそろ、中に入ろうか。
ナディ。
入ろ？
ナディ、もう一度言って。
何も言ってない。
言ったよ。
言ってない。
ナ…あッ。
……。
…ずる、い。
うん…。
……。
…でも、したくなった。
…。
…白い首に、あたしの痕。
消えないように、同じ場所に…毎日、しようかな。
……。
…だめ？
だめ…。
…違う場所の方が、いい？
……。
だめ…？
……だめ。
……。
……ナディ。
……。
ねぇ…わたしのこえ、きこえる…？
……。
…きこえてたら。
……。
わたしのなまえ、よんで…。
……。
…ねぇ、へんじをして。
……。
ねぇ…ねぇ……。
……。
…おきて…おきて…ナディ…。
……。
……。
……。
…なにも、きこえないの。
……。
なにも、とどかないの…。
……。
…もう、なにも。
……。
ナディ…。
……。
…ナディ……。
エリス、洗濯に行くの？
…ん。
そっか。
ナディも外に行く？
うん、行きたい。
ベッドの上、飽きた？
うん、飽きた。
床ずれが出来ちゃいそう。
ふふ。
じゃあ、行こう？
……。
…？
本当は。
ナディ？
洗濯くらい、したいんだけどな。
ごはんはエリスが作ってくれるから。
…。
あたしが起きない間、あんたは一人でやってきたんだと思う。
…ううん、やってきた。
……。
起きても、何も出来ない。
寝てる時と何も変わらない。
それがもどかしい。
…ナディ。
昨日よりは歩けるように。
でも、思うようにいかない。
…。
昨日、久しぶりに外に出て。
ほんの少し動いただけなのに、疲れが残ってる。
……。
…躰が、重い。
……。
て、駄目だなぁ。
こんなんじゃ。
…私、言ったよ。
…。
言ったよ、ナディ。
…時間なら、いっぱい、ある。
…。
分かってるんだけど。
それでも、もどかしい。
……。
…もどかしいよ、エリス。
ナディ…。
…ん、エリス。
私は。
…。
…あなたがちゃんと、起きてくれてるだけで。
…。
いいから。
…エリス。
当たり前、なんて。
…。
…ふとしたことで、無くなっちゃう。
簡単に、失くしてしまう。
…。
自分で、壊してしまう…。
…エリス。
……。
エリス…。
……。
……。
…それにね、ナディ。
私たちは、夫婦だから。
…。
…あなたが出来ない時は。
私がやるの。
……。
…あなたが、私にしてくれたように。
したい…して、あげたい。
…ありがとう。
行こう、ナディ。
今日も外に。
…うん、連れてって。
……。
違った…？
…。
それとも、いや…？
…ううん。
連れてってあげるね…。
おー。
…。
ちょっと冷たいけど、でも気持ちいい。
だからって、あまり冷やしちゃだめだよ？
はーい。
ん、よろしい。
はは。
あ。
お。
…ナディ。
ごめんごめん。
…。
エリ…わ。
…お返し。
あたしはわざとやったわけじゃないんだけど。
でも、お返し。
そうかい。
…ふふ。
んー…。
……。
…ねぇ、エリス。
なぁに？
水、気持ち良いね。
ん、そうだね。
あの時は流れが、速くて。
おまけに濁ってたから。
…雨がいっぱい降れば。
…。
また、あの時と同じになるよ。
そしたら洗濯、出来ないの。
あれじゃあ、ね。
…。
乾季だったらこの川、無いのかな。
…かも。
あの時のトカゲの子、元気かな…。
…子供、いるかも。
あー。
て、あの子メスだったの？
分からない。
あぁ、そぅ。
オスは、産まないだけ。
…。
…。
…トカゲの子育てって、どんなかなぁ。
…どんなだろうね。
考えたこと、ないや。
…私も、ない。
……。
……。
…ね。
……。
…エリス。
なぁに…？
次は、あたしがするから。
…。
洗濯…。
…うん。
……。
……。
……ねぇ。
ん…。
…。
…ナディ？
…。
…。
…空、高いなぁ。
……そうだね。
……。
…ナディ。
なに…。
…退屈？
なんで？
…。
…そんなこと、ないよ。
ほんとう…？
…うん。
……。
…雲、流れてる。
……。
流れて…風が、雨雲を連れてくる。
……。
……。
…洗い終わったら。
ん…。
干すの、手伝って。
…。
…手伝って、ナディ。
うん、分かった。
…。
ははは。
…ナディ。
あーーー。
……。
…やっぱり、外は良いな。
なんだか、躰が軽くなるような気がする。
…。
気がするだけかもしれないけど。
…ううん、そんなことない。
…。
ナディはやっぱり外が、青い空の下が良く似あうから。
…エリス。
…。
……ねぇ、エリス。
うん…？
洗濯、終わったら。
ごはん？
も、そうなんだけど。
…なに？
あそこまで、歩こ。
…どこまで？
あそこ。
…あんなところまで？
あんたが隣にいてくれれば、行ける。
と、思う。
…。
休みながらでも、それでも。
……。
行こう、エリス。
…ん、行こう。
ナディ。
よし、終わったー。
うん、終わったね。
て、ほとんどエリスが干したけどね。
でも、ナディも干したよ。
ちゃんと。
ポンチョ、だけね。
あんまり、ないから。
そうなんだけど。
雨雲が来る前に、乾いてくれ…
…！
ナディ…！
……。
ナディ、ナディ。
…ん、大丈夫。
なんともないよ。
でも…
…大丈夫。
ナディ…。
…ちょっと休めば、これくらい、平気だから。
じゃあ、家の中で
……。
ナディ。
…ふぅ。
……。
ゆっくり、焦らない…。
…。
…よし。
歩くのは、休んでからにしよう。
うん…。
エリス、喉が渇いた。
…お茶、淹れるね。
ありがと。
外で飲む？
飲む、て、言いたいところだけど。
中に入ろうかな。
…。
窓、開けてれば、外の空気、入ってくるし。
…ん。
お茶、飲んで。
それから
ごはんは？
そうだなぁ。
先に、私がいい？
…うん？
私が先？
…ばーか。
なぁに言ってんだ…。
……ほんき、だよ。
エリス…。
…ナディ。
……。
……冗談。
…。
…立てる？
エリス。
…あ。
……キス、しよう。
……。
したい…
…う、ん。
……。
……。
…ん、元気になった。
うそつき…。
…ほんとだって。
これ、で。
…。
…ナディの躰が、治るなら。
……。
いくらでも、するのに…。
……。
……。
…エーリス。
ん…。
…喉、渇いたな？
いえっさ…ナディ。
……。
…ナディ。
……。
ナディ…。
…う。
そんなところで寝たら、躰に良くないよ…。
……。
ベッドに、行って…？
……。
…ね。
ああ…。
……。
…いつ、から？
……。
エリス、あたしは…。
…お茶、冷めちゃったね。
……。
…もう一度、飲む？
うん…。
…じゃあ、淹れ直すね。
……。
…ナディ。
……。
ナディ、はなして…？
…ごめん。
ううん…。
…。
…淹れてくるね。
お茶、飲んだら。
…。
…ちょっと寝るよ。
ベッドで。
うん…。
…エリスは？
…。
エリスは、どうするの…？
…ごはんの、支度。
…。
目が覚めた時、おなか、すいてるかもしれないから。
…。
…だから。
……。
……。
……。
……わた、し。
…。
…やってなんか、なかったよ。
……エリス。
一人でなんて、できなかったよ…。
…。
…せんたくも、ごはんも。
なにも、なにも…。
……。
だって…。
…。
だっ、て……。
…そっか。
ナ、ディ…。
……。
……。
…お茶、飲んだら。
…。
あたしは、寝るけど。
……うん。
もし、あんたも眠くなったら。
…。
…いつでも、隣に来てよ。
…。
腕、枕に出来るようにしておくから。
…。
…むしろ、していいからさ。
……だめだよ。
…。
だってナディ、くいしんぼだから。
…。
…おなかとせなか、くっついちゃう。
それ、ここで言う…？
…ここ、だからだよ。
…。
…ナディ。
うん…？
…ぎゅうって、して。
……お茶は？
して、くれたら…。
…。
…だめ？
だーめ。
あ…。
…だーめ。
ナディ……。
〜〜♪
…ん。
……darte alegría con mi canción.
エリス……。
…。
……。
…ナディ。
……なーんだ。
う……。
…ふふ。
……。
…ごはんのしたくは、どしたの？
…。
ん…？
…もう、おわったから。
だから…。
…じゃあ、できてるの？
…。
…ん？
さめちゃう、から…。
…から？
……。
ふふ、そっか…。
…。
…ねぇ。
なぁに…。
…むこう、むいて。
え…。
…むこう。
……いや。
…ちょっと、で、いいから。
いや…。
…おねがい、エリス。
…。
おねがい…。
…いえっさ。
ありがと…。
……むいた、よ。
うん……。
…。
……。
ん…。
……。
ぁ…。
……あたしのあと、が。
…。
きえないよう、に…。
…ナディ。
まいにち、ね…。
……。
ふふ…。
……もう、いいの。
ん…？
…ちょっとって、いったよ。
どっちがいい…？
…。
このままおなか、だっこされるのと…
…いま、は。
お…。
…いまは、これがいい。
……エリス。
これが、いいの…。
…そっか。
…。
…おなじだ。
ナディ…。
あんたのにおいがする……いい、におい。
…。
このまま…もうすこし、だけ。
うん…。
おきたら、ごはんたべて、それから…。
…よるに、なるまえに。
ん、エリス…。
…おきてね。
そとに、でたいなら。
……ほしのしたのさんぽ、も。
いいと、おもうけど…。
…だめ。
む…。
…からだ、ひやしちゃうから。
……。
だから、ね…？
…いえっさ、エリス。
ん……。
……。
…ナディ。
……。
今日はね、雨が降ってるの…。
……。
…朝から、ずっと。
……。
昨日は、くもってて。
たまに、明るくなって。
……。
…今日はずっと、雨だよ。
……。
…今日、もう終わっちゃうよ。
……。
ねぇ、ナディ…。
……。
ねぇ…ねぇ…。
……。
…目を、開けて。
あけて、ナディ…。
……。
ナディ……。
うーーー。
ナディ。
雨、だー…。
…雨だね。
これじゃ外に行けない。
…。
行けるけど、
だめ？
…ねぇ、ちょっとだけ。
……。
エリスー。
だーめ。
む。
濡れたら、良くないから。
でも
やんだら、行こう？
…むぅ。
ね、ナディ。
…んー。
……。
お…。
…えへへ。
なぁに、エリス。
…雨の音。
…？
聞こえるね。
…そりゃあ、ね。
……でも。
ん？
…ナディの音も、聞こえる。
……。
ちゃんと、聞こえる…。
…当たり前、だ。
う。
……。
…ナディ。
…。
…外、行きたい？
…。
ナディ…。
…一日でも怠けると、駄目な気がしてさ。
……。
昨日は結局、起きたら暗くなっちゃってたし。
それなのに夜、眠れたし。
…。
どれだけ寝んのかなぁ、あたしは。
……雨、やむよ。
ん？
夕方には、きっと。
そうかな。
うん。
そしたら外、出ても良い？
一緒、なら。
勿論。
…なら、良いよ。
やった。
…。
エリス。
…わ。
早く、やめば良い。
…ん、そうだね。
……。
……。
……。
…やまないね。
うん…。
……。
…やまない。
……。
……。
…ナディ。
……。
ナディ。
…聞こえてるよ。
…。
…なに。
……。
なに、エリス。
…。
…黙ってたら、分からない。
……。
だから！
…っ。
あ…。
……。
…ごめん。
大きな声、出して…。
……ううん。
…あんたに当たって、どうするんだ。
…。
当たったところで、躰が動くわけじゃないってのに。
あー、くそぅ…。
…ごめんね。
謝るのはあたしの方。
…ううん、わたしが悪いの。
…。
わたしの
エリス。
…。
なんとなく、それ以上は聞きたくない。
…うん。
……。
…ナディ。
ん……。
…おこらないで。
怒ってない。
これから、わたしがすること…。
…？
…キス、すること。
……怒るわけ、ない。
…。
……。
……ナディ。
…。
ナディ…。
……。
…いかないで。
どこに。
…わたしに、こころをむけて。
そとに、むけないで。
…。
……いまだけで、いいから。
…。
おねがい、ナディ…。
……。
……はぁ。
……。
ナディ……ナディ…。
……。
……。
……。
…ごめんなさい。
……もう、良いの？
え…あ。
…エリス。
ナ、ディ…。
……。
あぁ……。
……。
ね…もっと。
もっと、ナディ…。
…。
もっと、つよく……。
…ごめん、これ以上はしてあげられそうにない。
……。
…力が、うまく入らない。
ごめん。
……ううん。
……。
……あめ。
ん…。
…はやく、やむといいね。
……。
…ナディ、ねむったの。
……。
ナディ……。
…雨、は。
あ…。
母なる大地に恵みを齎す。
…。
けれど過度な其れは害を為す。
……ナディ。
昔の…思い出した。
…うん。
……。
…すこし、ねむる？
むしろ、寝てばかりだって…。
…。
……。
ん……。
…あいかわらず、やわらかいね。
…。
かみ…。
…もっと、やって。
……。
もっと…。
……あめ、は。
…？
すべては、ながしてくれない。
すべて……。
…ちのにおいは、なくならなかった。
…。
あかく、そまったもの。
それはながれおちることなく…くろく、なった。
…。
…くろは、すべてをぬりつぶしてくれる。
ちのいろも、においも、あたしじしんも。
だから。
…。
…だから。
ナディ、すこしねむって…。
…ねむるのが、こわい。
……。
めをさまさない、ことよりも。
ひかりを、うしなうことが。
…ん。
……あんたは、あたしのひかり。
くらいせかいでいきてきたあたしを、はじめて…。
わたしは…。
…ころすことで。
あたしは、いきてきた。
…。
ころしたひとのなかに、いつからか、あたしはそれをみいだした…。
……。
いきているかんかく、を…。
ナディ。
…ころして、ころして、ころして。
じぶんがいきていることを、あたしは…
…ナディ、もうやめて。
……。
ナディ、わたしはあなたのそばにいるよ。
…エリス。
わたしが、あなたのひかりなら…わたしなんかを、ひかりとしてくれるなら。
……。
……わたしは、あなたのためにいきるから。
……。
…ナディ。
……雨、止まないなぁ。
……。
古い傷が痛むから、好きじゃないってのに…。
…うん。
あんたと外、歩きたいのに…。
…。
あんたとずっと、歩きたいのに…。
…ずっと、歩こう。
ナディ…。
ん……。
…ずっと、て、つないで。
…。
はなさないで、ずっと…。
…うん、離さない。
よかった…。
……。
……。
…ねぇ、エリス。
なぁに…？
…今日が、だめでも。
明日が、あるんだっけ…。
…うん、あるよ。
ちゃんと、あるから…。
そっか…よかった。
……。
エリス……。
…あめ、やんだら。
おこしてあげる…。
…う、ん。
ちゃんと、おきてね…？
…いえっさ、エリス。
……。
ん、エリ…？
…きょうの、ぶん。
…？
…ナディの、しるし。
きえないように…ね？
でもまだ……まぁ、いっか。
……ん。
……。
…ね、ナディ。
……。
ごはん、作ったの…。
……。
…ずっと、ねてて。
でもおなか、すいたと思うから…。
……。
…ナディは、くいしんぼだから。
……。
ねぇ…ごはん、できたよ。
……。
いっしょに、たべよう…？
……。
…たべて、ナディ。
……。
いま、じゃなくてもいいから…。
……。
…また、いっしょにたべよう？
……。
ねぇ、ナディ……。
……。
…ん。
……。
ナ、ディ……。
エリス。
…え。
……。
ナディ、どうしたの…？
分かんない。
…？
でも、なにか。
…なにか？
なにか、違うような気がする。
なにかって……。
そう、何かが。
…あ。
……。
ナディ、まって。
どこにいくの。
どこも行かない、けど。
けど、なに。
エリス。
あ。
行こう。
…でも
一人は無し、でしょ？
だから、ほら。
……。
行こう、エリス。
…いえっさ。
……。
…それ、持ってくの。
うん。
…もう。
そう、なんだけどね。
……。
大分、触ってなかったなって。
…手入れ。
は、まぁ、してたんだけどね。
……。
エリスが嫌なら、持っていかないけど。
…良いよ。
ん、ありがと。
ありがとう、は、変だよ。
そ？
…うん。
やっぱり嫌なんじゃないの？
…持っていって、どうするの。
どうもしない。
…。
けど。
腕、鈍ってるかなぁ。
……。
賞金稼ぎじゃないから、良いんだけど。
…ナディ。
ん？
撃ちたい？
別に？
…。
なんとなく、ね。
…なんとなく、なに？
ずっと、ここにあったから。
…私より長く、ナディと一緒だったもの。
そのうち、あんたの方が長くなるよ。
必ずね。
…。
じゃ外、行こっか。
…ナディ。
うん？
…大丈夫？
ん、大丈夫。
さぁ、行こう。
……。
あーーーーー。
…。
今日はまぁまぁの天気かな。
…うん。
はぁ。
…？
エリス、耳。
…耳？
塞いでて。
どうして？
これ、撃つから。
…え。
空に。
…なんで。
なんとなく。
弾、勿体無いんだけどね。
…。
エリス？
塞がない。
良いの？
平気だから。
…。
ナディがそれを撃つの、見てきたから。
…そ。
……。
ふぅ。
……。
…重いなぁ、これ。
こんなの、良く持ち歩いてたな。
…。
…よし。
行くよ、エリス。
ん。
ドン…ッ！！
……とと。
ナディ…！
はは。
…大丈夫？
まさか、腰を抜かすとは思わなかった。
鈍ってるとか、そんなレベルじゃなかったわ。
けが、してない？
うん、平気。
でもこれじゃ、あんたを守れないなぁ。
…ナディ。
あんたの…
あ…。
…お腹に宿る、予定のあたしの子も。
…！
銃で守ろうなんて、思わないけど。
それでも、あたしの力はこれぐらいしか無いから。
……。
でもま、もう、賞金首じゃないからね。
狙われる事もそう、無いと思うけど。
…。
いつかのオカマ二人組みたいなのもいるかもしれないし。
……ナディ。
しかし、重い。
ずっと持ってられない。
…これだけじゃないよ。
ん…。
ナディは、これだけじゃない。
だけじゃ、ない。
…うん、ありがとう。
……この子、置いていこう？
エリス。
ナディ。
…ん、分かった。
正直、今のあたしには持ち歩くには重過ぎる。
撃ってみて、それが良く分かった。
ん…。
エリス。
…なぁに。
それでも、馴染んできてるよ。
…馴染む？
うまく言えないけど。
でも、何かが馴染んできてる。
起きた時、そう思ったの。
……。
今日は躰が軽い。
すぐに眠くもならない。
まぁ、寝すぎってのもあるかもしれないけど。
…。
とにかく。
今までの中で、一番、調子が良い。
でも無理はだめ。
オーライ、エリス。
…。
少し歩いたら、ごはんにしよう。
それから…
…それから？
出来る範囲で、時間をかけて、体力を戻してく。
手伝ってくれるでしょ、相棒？
…オーライ、ナディ。
うん。
……。
ん、エリス？
…良かった。
…。
輝いてる、から。
…そっか。
ナディ…ん。
……。
…ナディ。
あんたも。
…。
あんたの笑った顔、大好きだからさ。
……ん。
ふぅ……。
…ナディ。
わ…。
…気持ちいい？
うん、気持ちいー…。
……。
あー…。
…少し、熱い。
疲れたんだと思う、けど。
…無理、しないで？
したつもり、ないんだけど…加減が、いまいち分からなくて。
感覚まで鈍ってんのかなぁ。
……。
冷たい、気持ちいい…。
……ナディ。
ん…。
…。
なぁに、エリス。
……。
…？
エリス？
……。
…。
……。
エリス。
…。
おいで。
……でも。
おいで、ここに。
今日は特別。
でも、疲れて
おいで、エリス。
もう、大丈夫だから。
……。
座りたくないなら、まぁ、無理にとは言わないけど。
……。
そうじゃなきゃ…ほら。
……う、ん。
……。
わ…。
…つかまえた。
……カサドール？
カサドーラ、だ。
…手。
ん…。
…熱いね。
いや？
…ううん。
…。
……躰も、熱い。
ん…。
…大丈夫？
大丈夫だよ。
…。
…寝転んでするのも、良いけど。
こういうのも、悪くない…。
ナディ…息、熱い。
…あんたのお腹はあったかい。
……。
エリス…。
…あ、ん。
……今日の、分。
……。
いつまで、続けるかな…。
…ずっと、でも良いよ。
ずっと、ね…。
…私はずっと、ナディのものだから。
……。
…ずっと、ナディのものにしていて欲しいから。
ばーか…。
…えへへ。
……。
……ねぇ。
……。
たび、いつでるの…？
……。
…いつまで、ここにいるの？
……。
ねぇ、ナディ…。
……。
また、つれてって…。
……。
…もう、いちど。
ふたりで、たびにでよう…？
……。
…ひとりは、なしだから。
……。
…なし、なんだよね？
……。
エリスがいないと、だめなんだよね…？
……。
…ねぇ、おしえて。
おしえて……。
……。
……ひとりは、いや。
……。
いや、だよ………。
……。
…っ、…く。
……。
ナ、ディ……。
……。
…ナ、デ…ィ。
……。
……。
……。
…く、…ぅ。
……。
……ナ、…ディ…。
……。
……。
……ぅ。
……。
………あ。
…。
エリ…ス…。
…あ。
……え、と。
ナ、ディ……。
…なに、ないてんだ？
ナディ…！！
わ…ぷ。
ナディ、ナディ、ナディ、ナディ、ナディ…！
わ、分かったから、てか、よびすぎ、よびすぎだって…。
……ねぇ。
ん……？
……。
…眠ったと、思ってた。
ねぇ、ナディ…。
…なぁに。
たび……また…ふたり、で。
…うん、行こう。
……いける？
もちろん…。
ん…ナディ…。
エリス…。
……ね。
うん…。
…もっと。
……。
もういちど、だけ…。
…エリス。
……いちどで、いいから。
あ、う……。
ナディ……ナディ……。
…エリ、ス。
……。
ぅ……。
…ねぇ。
……。
ナディ……。
……したいのは、やまやまなんだけ、ど。
け、ど…？
とばし、すぎたかな…て。
…？
…なんせ、久しぶりだったから。
その、加減が……ね。
…。
……すごい疲れちゃった、と言うかさ。
……。
あ、でも、だからって心配、は……？
……。
…エリス。
……ごめんなさい。
…。
ごめんなさい…。
…謝ること、何もないよ。
…。
…何もない、から。
E n l a j a u l a d e l p e s a r y l a f e l i c i d a d .
BGM…
“悔恨と安らぎの檻にて” from Xenogears
光田康典
”Decretum（Sayaka's theme）” from Puella Magi Madoka Magica
梶浦由記
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