ロント、だからそうじゃない。 うぅ。 そうやったら、折角芽を出した苗が傷んでしまう。 あんたは少し、大雑把過ぎる。 ……う? 何度も言ってるけど、苗だって生きてるの。 人と同じ。 ……。 だから……? ……。 ロント、どこ見てる。 ……。 人の話をちゃんと…… ……。 ……。 …あ! …ロント、 ナディ! …なに。 あめ、ふるよ! …。 あめ! …どうしてそう思った? そらが、おもしろいことになってるから! …晴れてるけど? ゴロゴロ、ゴロゴロ! ……。 ぴかぴか、どかーん! ロント。 わ。 帰るよ。 え、なんで? ゴロゴロくんのに。 来るから、よ。 ドカーンってなって、ピカってなるよ。 だから、帰るんだって。 えー。 ほら、早くしなさい。 ロント、ここにいる。 駄目。 あう。 ほら、帰るよ。 やーだー。 こら、暴れるなって。 いーるーのー。 あんた、エリスに心配させたいの。 エリス? そう、エリス。 なんですんの? 雷を甘く見んな。 ゴロゴロってあまいの? おいしい? その甘いじゃないから。 ロント、たべたい! そうじゃなくて。 ああもう、兎に角一旦帰るよ。 うーうー。 ほら。 やだ。 こいつは…。 ロント、ここにいる。 だから、駄目だっつの。 あ。 たく、妙なトコで頑固なのは誰似だ。 やーだーー!! て。 だから、暴れるなって。 ゴロゴロー! …ええい、もう! む、むーむー。 手を焼かせるなっての! むーーー!! R u n t u , I l y a p' a y Q u i l l a おかえりなさい。 …ただいま。 ……ま。 びしょびしょだね? おかげさまで。 これでも急いだんだけど。 向こうの足の方が早かったね? …本当だったら間に合ってたんだけどねぇ。 ん? でもま、雷が鳴るま ドォーーーン……ッ。 …間に合って、良かった。 まだ少し遠いけど。 ぼさっとしてると、あっと言う間に来るからね。 そうだね。 ところで、エリス。 タオル? 貰えると、助かるかな。 じゃあ、はい。 …。 うん? つか、後に隠してた意味は? 驚かせたかったの。 …。 驚いた? …いや、あまり。 つまんない。 …。 つまんない。 …え、と。 エリス、用意しておいてくれたんだ。 吃驚した? うん、まぁ。 さすがエリス。 ナディの嫁? …え、と。 嫁? …うん、さすがはあたしの嫁。 えへへ。 あー…。 えい。 …わ。 ちゃんと拭かないと? …ありがと。 どういたしまして。 二人が風邪、ひいたら大変だから。 …ん。 ナディは我が家の大黒柱なんだよ? あ、柱? そう、柱。 …それはどこの国の言葉? どこだっけ。 …ま、どこでも良いけどね。 ロント、あんたも濡れたでしょ… …いない。 て、どこ行った! 帰ってきた時は一緒にいたよ。 ナディが抱っこしてた。 下ろして、手を離して… 私がナディにタオルを渡した。 …。 …。 ドォーーーーーン……ッッ! …まさか、あいつ。 近くなってきた…あ。 …と。 ……光った。 …。 ドォーーーーーン…ッ!! …う。 …雨、更に強くなってきたな。 風も…。 …エリス。 私も あんたは家の中を探して。 もしかしたら、 いないよ。 …。 水の跡、続いてるから。 だから、 だめ。 …。 危ないから。 でも、 それに雨なんかに打たれたら、躰に響く。 …。 あたしに任せて。 …でもナディ、雷苦手だから。 あんたもね。 行、 …。 んん…。 ……エリス。 …。 …行ってくる。 ……ずるい。 ずるくて結構、だ。 …こんな時ばかり。 タオル、またお願いね。 …いえっさ。 ………。 ロント…! …? ロント…!! ……。 ロント…!!! ……ま、いっか。 …。 んー…。 あいつ、聞こえてな あ、またひかった! …! くる、くる…。 …あのばか。 よりにもよってなんであんなトコに…。 ふふ。 …くそぅ。 サイアク、 ドォーーーーン!!! …う。 わぁぁぁ…。 …やばい。 やばい、やばい、やばい…。 すごい、すごい。 …。 つぎ、つぎ…。 …木登りなんて、いつ以来だっつの。 ふふ、ふふ。 あんのばか娘、帰ったらエリスがなんて言っても説教してやる。 んー、んー。 …つか動くんじゃないわよ、ロント。 ゴロゴロ、ゴロゴロ。 …。 あ。 …エリス。 また! ………。 きれい。 ……エリス。 エリス……。 …。 エリス…エリス…帰ったら…エリス……。 んー、んー。 …よし。 あと、もう少 ……あ。 …ッ! あ、あ! ………エリス。 あーーー!! ……ごめん、だめかもし だめぇぇぇぇ……ッ!!! キジャ! …。 キジャ!! …あ。 そこから早く下りろ、キジャ!!! ばあちゃんだ。 ばあちゃーん。 直、イリャパが降る! …? キジャ、早く! イリャパ…雷の、神さま。 …く。 ……光った。 そこを、動くな! 神さま…どんななんだろう。 ……。 …空、おもしろい。 ……。 ……すごい、近い。 ……エル。 あと、もうちょっとだ…。 …お前の、…を。 いち、に、さん、し……。 ……。 ……はち、く、 …キジャ。 あ。 …。 ばあちゃ…わ。 決して離すな。 下りちゃうの? 下りる。 でも…。 イリャパが降る時は高い所に登ってはいけない。 怒りに触れて打たれてしまう。 …。 雷に打たれたら、死んでしまう。 人は誰も神の力には敵わない。 …。 良いか。 何人も、神には敵わない。 人の手に掴めるものでは到底無いのだ。 ましてや、好奇心などで… …。 …人とは弱き者だと言う事を。 決して忘れるな、キジャ。 ……う あぁぁぁぁぁぁーーーん…。 ……。 …エリス。 ……。 エリス…エリス…。 ……ナ、ディ。 …! ナディ…。 エリス…。 ……。 …なんで、来たのよ。 だいじょうぶ、だった…? …! よかった……。 …ばか。 駄目って言ったのに。 ……ん。 雨に打たれて、おまけに…。 ……。 …相手は、神さまなのよ。 人間である、あんたが…。 ……。 …。 ねぇ……ト、は…? え…。 ロント…こえ、きこえた…。 ……。 ないて、た…? …さっきまで。 今は… ……。 …疲れて、眠ってる。 涙とか鼻水で顔、めっちゃくちゃよ。 酷いもんだ…。 ……ナディ、も? …! ナディ、も…。 …ばか。 …。 どうして、来たのよ。 …。 来るなって、言ったでしょ…。 …かぞく、だから。 …っ。 かぞく、だから……まもる、の。 …。 まもりたいの…。 …だからって。 …。 だからって…。 …かみさま。 …? は、ひとのてでは、つかめない…。 ……。 けっして…。 ……それ。 ……。 …そうよ。 …ん。 人は…神には敵わない。 あたしも…あんたも。 ……。 でもエリス、あんたが来てくれなかったら……。 …。 あたしは…あたし達は…。 ……わたしだけ、じゃない。 え…。 わたしだけじゃ……きっと。 …どういう事? ……わからない。 …。 わからないけど……。 ……。 …ねぇ。 ん…。 ……おこらないで。 …聞けない。 おねがい…。 今度ばかりは、聞けない。 だって ナディ…。 ……。 …こどもは、おやのいうこと…きかないものだから。 だからって…! …だって、ひとつのいのちだから。 …。 …おやに、できること。 こどもを、まもること…。 …だからって。 ……なかないで。 …。 …わたしは、だいじょうぶだよ。 すこし…つかれただけ。 少しじゃないわよ…。 …。 …全然、少しなんかじゃない。 ……ナディ。 熱だって…やっと、落ち着いてきたのに。 やっと…やっと…。 …。 ……ん。 ナディ…。 …エリス。 だいすきだよ…。 …止めてよ。 …。 そんな弱い声で、言わないでよ…。 …だいすき。 エリス。 ……ロントも。 ……。 わたしたちの…こども、だから。 ……。 ね…。 …。 ……やきもち? …ばか。 あたり……。 …違うわよ、ばか。 …ぅ。 …。 ……。 …。 ……エリス? …。 エリス、エリス…どこ…。 …ロント。 ナディ…。 …。 エリスは…? ねぇ、エリスはだいじょうぶなの…? 今は寝てる。 …。 あんたがしがみついたままだと、良く眠れない。 だから。 ……。 ロント。 ……。 今夜から、一人で寝なさい。 …え。 良いわね。 そんなの、やだ。 やだでも、寝るの。 やだ、やだ! ロント! …っ。 ……。 …う。 ……ごめん、エリス。 うぅぅ…。 …エリスは、さ。 ロント。 …。 あんたも知ってる通り、躰があまり強くない…強くなくなってしまった。 …う、ん。 エリスはね…あたしと出逢った頃は、とても元気で。 病気どころか、熱だって出さなかった。 …。 だけど、今は。 ……だから、でしょ。 …。 ロントを、うんだ、から……。 …泣くな。 あぁぁ…。 泣くな。 エリスが心配する。 でも…でも…。 それに…あんたを産んだからじゃない。 ……。 産んだからじゃないのよ、ロント。 …。 そんな事、エリスが聞いたら悲しむ。 だから、エリスの前で言ったら赦さない。 良い? ……う、ん。 うん、良い子。 ……エリス。 ん…。 …すごく、あつかった。 ……。 あんなに、あついの…。 …大丈夫よ。 …。 エリスは、大丈夫。 必ず、元気になる。 …ほん、と? 本当。 あの子が約束を破った事なんて、無いから。 … あたしと…あたし達と一緒にいる、生きる。 だから。 ……う、あぁぁ。 だから、泣くなって言ってるのに。 …ごめ、っ、なさい。 …。 ごめ、くっ、んなっ、さい……。 つか泣いたまま言われても、何言ってるか分からないって。 …うぅぅ。 あーあ。 折角顔、綺麗にしてやったってのに。 ……。 …あんたのその顔は。 エリスから貰った大事なものだから、大事にしないと駄目よ。 …エリスっ、から? そう、エリスから。 ……。 ん、何。 エリっ、ス、は、ナディか、らもらっ、たって。 …ああ、しゃっくりが酷すぎる。 ……。 …まぁ、あたしとも似てなくは無いけど。 あんたはどこまで行っても、あたし達の子供だから。 …。 でも。 …ん。 その瞳は、紛れもなくエリスから貰ったものだから。 ……ひと、み。 そう。 ……。 …だからいつまでもめそめそ泣いてるな、ロント。 …。 ロント。 ……いえっ、さ。 良し。 …。 そうだ、ロント。 …。 エリスが好きな色は? んーと……あか? そう、赤。 …。 だからエリスは赤い花が好きなんだってさ。 …。 …。 …。 …て、こら。 う。 どこに行くんだ。 …。 また破る気か、あんたは。 …。 外に行くなら、行き先をちゃんと言う事。 エリスとの約束でしょーが。 …そと。 それは分かる。 で? …はなの、とこ。 …。 …。 …雷は静まったけど。 雨はまだ降ってるから。 止んでからにしなさい。 …。 明るくなってきたから。 直に止むわよ。 ……ん。 …。 ナディ…。 …ごめん、起こした。 ううん…。 ……眠れてなかった? ……。 ……。 …ロント、は? 外。 …。 もう、大丈夫だから。 ……うん。 …。 ……つめたい。 きもちいい…。 それは良かった。 …。 …何か食べたいもの、ある? ……ナディが、つくるの? たまには、ね。 ……ふふ。 ……。 …ナディ。 ん…。 …て、つないで。 うん。 ……。 ……。 …わたし、あつい? ……ん、少しね。 ……。 ……。 ……ナディ。 魔女の力、は。 …。 …今のあんたには負担が大きすぎる。 ましてやさっきは…。 ……うん。 でも…。 ……。 …必要となれば、あんたはきっとこれからも。 ……。 ……。 ……なれないうち、は。 …。 つかうと、くるしかった…。 …無意識だったから、余計だったんだろうね。 けど……。 ……。 …つかいかたが、わかって。 …。 …ふたりのいのちが、つながって。 うん…。 ……このちからが、あったから。 ……。 あのこを、もらった…もらえた。 ……。 …わたし、こうかいしてないよ。 ……知ってるよ。 …。 あたしだって、してない。 …しないで。 ……しないよ。 よかった…。 ……。 ……だいすき。 ……。 ……。 …エリス。 ん…。 …ごめん。 …? あたし、怒った。 ……ロント? 大きな声で名前を呼んで、黙らせた。 …そっか。 ……ごめん。 …。 ……。 …ナディはあのこのおかあさん。 ……。 やきもちやきのおかあさん…。 ……あたしは。 …。 …やっぱりしてるんだろうなぁ。 ……しってる。 …。 …。 …自分の子供だってのに。 あーあ…。 …すき? …。 あのこのこと…すき? ……ん。 うん…。 あんたに似てる……それがたまらなく愛しい。 ……いっしょ。 …。 あのこは…ナディにとてもにてる。 だから……いとしい。 ……だから、かも。 …? あたしに似てるから…面白くないのかもしんない。 ……そういうもの? 分かんないけど…。 ……。 ……似てなくても、面白くないかも。 …。 …どっちにしろ。 あんたを取られたような、さ…結局はそこなんだと思う。 …。 あいつは小さな子供で、お母さんであるあんたに甘えたいだけなのにね。 …わかる、かも。 …え? ……。 エリス…? …ナディが。 …。 …あのこ、ばっかりだったら。 わたしもおもしろくない。 は……。 ……。 ……えーと。 …おもしろくなかったよ? て、いつよ。 ……ひみつ。 教えてよ。 …ないしょ。 ……。 …おもいださないで。 いやだ、絶対に思い出してやる。 ……。 …あたしばっかりじゃ、ずるいから。 ……おこちゃま? なんとでも言え。 ふふ……。 ……。 ……はぁ。 …話しすぎたね。 ……や。 エリス。 …ここに、いて。 ……。 いて…。 …いるよ、エリス。 ……。 あたしはずっと…あんたの傍にいる。 離れたりなんかしない。 …ぜったい、だよ。 うん、絶対。 ……。 …さ、もう少しおやすみ。 …。 おかえり。 …。 帰ってきたら? …ただいま。 宜しい。 ねぇ、エリスは? 寝てるよ。 …。 でも、ごはんの時間になったら少しだけ起きるって。 ほんと? うん、本当。 元気になるにはごはんを食べて寝るのが一番だからね。 …それ、ナディだけじゃないの。 あんだとぅ。 あー。 たく。 それ、貸してみ。 …やだ。 水に入れてやらないと エリスのだから、だめ。 人の話は最後まで聞け。 だめなの。 誰も取んないわよ。 わかんないよ。 なんだとーぅ? …うー。 あたしは取らない。 オーケイ? ……。 ロント。 ……。 …やれやれ、本当にしょーがないヤツだなぁ。 ……。 …ほら、ロント。 …? これに入れなさい。 …。 じゃなきゃ、折角の花が萎れちゃうから。 ……。 それとも萎れちゃってる花を見せたいの、あんたは。 …やだ。 だったら…ほれ。 …。 ロント。 …とらない? 取らないわよ。 ぜったいだよ。 取らない。 …。 …。 ……いえっさ。 うん。 …。 うん? ……ほんとにとらない? 取、ら、な、い。 いい加減、しつこいわよ? …じゃ、いれる。 ある意味、エリス以上だな…もう。 ナディ。 なに。 エリス、よろこぶ? …。 …よろこぶ? 喜ぶわよ、きっと。 きっと? 絶対。 …。 …まぁ、花には悪いコトしたけど。 …? わるい…? 花も、生きてるから。 いきてるの? そうよ。 …。 芽が出て、葉っぱが開いて、花が咲いて、種を残して、そして散っていく。 それが花の生き方。 …じゃあ。 …。 このはな、しんじゃったの。 …種はもう、残せないけど。 でもまだ、死んではいない。 けど、 ロント。 …。 花も…人も。 同じってこと、忘れちゃ駄目よ。 ……。 …ま、人間の勝手な言い訳だけどね。 …。 エリスのところに行く? いく! こら。 …む。 大きな声を出す子は行かせない。 …。 出さない? …うん。 約束出来る? できる、する。 ん。 じゃあ、行こう。 いえっ、むが。 たく、言ってるそばから。 …ロント。 エリス! …て、こらこら。 おかえり、ロント…。 ただいま、エリス! …ふふ。 つか、大きな声を出すなって。 これ、あげる! …どれ? ナディ、はやくはやく。 ああ、はいはい。 ナディ…? はい、エリス。 これ、あんたに。 …わぁ。 気に入った? ん…ありがとう、ナディ。 だってさ、ロント。 良かったね。 …。 ん、どした? …て、なに、不貞腐れてんのよ。 …とった。 は? やっぱりとった! て、何を。 ……。 ロント。 …。 言いたい事があるな ナディ。 …エリス。 ロント、おいで…? …。 …ありがとう、ロント。 このはな、ロントがとってきてくれたんだよね…。 ……うん。 もっとこっちにおいで…? …。 さぁ…。 ……。 ふふ…いいこ。 …。 いいこ…いいこ…。 ……えへへ。 …あたしが撫でても、こうならないのはなんでかね。 ところで、エリス。 …ん? ちゃんと横になってないで。 こえ、きこえたから…。 エーリース。 …ごめん? たく。 親子揃ってしょーがないな、もう。 ナディ…。 …ほら、もう横になりなさい? …。 ロント、エリスを寝かせてあげて。 やだ、もっとエリスといたい。 ロ やだ、やだ、もっとい あたしだって一緒にいたいわよ。 …わ。 あんただけじゃないっつの。 わしゃわしゃ、やーだー。 色はあたしなのに、髪質は …ナディ。 エリスに ナディ。 …なに、エリス。 もういっかい、いって。 …いやだ。 いって…。 い、や、だ。 …どうして? どうしても。 …ふたりのときは、いってくれるのに。 それは…。 …さっきだって。 だから、それは…。 ナディ、へんなかお。 …うっさい。 ね、おもしろいね…? こら、エリス。 …ふたりじゃないと、だめなの。 エリ ふたり? そう、ふたり…。 ……あーもう。 エリスとナディ? …うん。 ロントは? ロントはいないの? …ううん。 ちゃんといるよ。 じゃあ、さんにんだよ? うん、さんにん…。 …て、こっち見るなって。 …。 …。 二人でじぃっと見るなって…つか、つくづくそっくりだし。 …おもしろい。 へんなの。 ……こいつらは。 ねぇ、ナディ…。 寝なさい、エリス。 …。 …それ以上、躰に負担をかけるな。 お願いだから。 …おねがいが、あるの。 エリス。 おねがい…。 …ちゃんと横になったら、聞いてあげる。 …。 さぁ。 …ここにすわって。 分かった。 だから、 わたしを、ささえて…。 …エリス。 …すこしだけ。 聞けない。 …おねがい、ナディ。 元気になったらいくらでもする、してあげる。 …。 だから ナディ! だからロント、大きな声は きいてあげて。 ……。 エリスのおねがい、きかなきゃだめ。 …ロント。 エリスは うすらたこす。 わからずや。 …怒るよ、ロント。 だめ…。 …。 …だめ。 ……エリス。 すこしだけ、すこしだけだから…。 …。 おねがい…。 ……。 …ナディ。 ……ほら、早く。 …。 支えるから。 早く寄りかかって。 …そのまえに、ロントも。 うん? ロントも…。 ……。 …さんにん、だから。 ……そーいうことは、座る前に言えって。 わ。 動くな。 うー。 で、エリス。 どこ? ここ…。 …て。 ひざ…? ……マジで。 マジ…。 ……。 ねぇ、ロント…。 なぁに、エリス。 …かみなり、きれいだった? …。 おこらないから、いってごらん…? でも…。 …。 ナディもおこらないから…ね、ナディ? …まぁ、ね。 きれいだった…? …うん、きれいだった。 そっか…。 ……ごめんなさい、エリス。 どうして…? …ナディのゆーこと、きかなかった。 ん、そうだね…。 …。 ね、ロント…。 …なぁに。 だまってどこかにいっては、だめ…。 …。 …だめ。 ……いえっさ。 ん…。 ……。 …ナディ。 うん? 話は終わった? …ううん、まだ。 ……で? かみさまのおはなし…。 …神さま? かみなりのかみさま…。 …ああ。 してあげて…? 良いけど…今? わたしも、ききたい…。 …。 …ナディのこえ、 …。 ききながら…、ねむりたいから…。 …この姿勢で? ……。 エリス…? ねぇ、ナディ…。 ……。 ロント、に…。 …? エリス? …ッ! エリス…! …だいじょうぶ。 大丈夫じゃないわよ。 だいじょうぶ、だから…。 エリス、だいじょうぶなの? ねぇ。 なわけ、無いでしょ。 だいじょうぶ… エリ、ん。 ……。 あ、またきすしてる。 ……ほら、ね? …ばか。 何がほら、だ。 ん…? …こんな熱い唇でキス、されて。 大丈夫なんて思えるか。 …あついこいのほのおがもえあがるのだった? ばか、子供の前で。 つか久しぶりだし、それ。 ……えへへ。 …。 あ…。 ……このまま。 ん、ナディ…。 …三人で、横になろう。 ……。 ロント、まんなかにして…さ? …うん。 …つか最初からそう言え、ばか。 ん……ごめん。 イリャパ? そう、イリャパ。 雷神の名前。 らい…? 雷の神さまのこと。 …。 昔は たいよーより? 違う、太陽の次。 ふぅん。 雷は雲を呼んで、大地に恵みの雨を降らす。 …。 雨が降らないと、枯れちゃうでしょ? 花も、畑のものも。 うん。 ところで、イリャパはどんな顔してると思う? かお? そう、顔。 ……。 怒った顔、してるらしいわよ。 なんで? さて、なんでかな。 しらないの? 会ったこと、無いからね。 どこにいるの? 空の上。 あたし達の手が届かないところ。 …。 いくら伸ばしても、そこには届かない。 そう、人の手では。 …。 …そうそう、イリャパには妹がいてね。 …いもーと? そう、妹。 雨はその妹が持っている水差しに、イリャパの投げた石が当たった時に降るんだってさ。 ふぅん…。 で、その水差しの水ってのがね、 うん。 天の川から引き出したものなんだって。 あまのがわ? そう、 ま…。 昔の言葉ではそう言うのよ。 ……。 ロント。 …? イリャパが降る時は高い所に登ってはいけない。 怒りに触れてしまうから。 …。 もしも怒りに触れて、雷に打たれてしまったら。 どんな人間でも死んでしまう。 そう、どんな人間でも。 し…。 人は誰も、神の力には敵わない。 それを、覚えておかなければならない。 ……でも。 でも? …みたい。 …。 きれいだから。 だから、 見るな、とは言っていない。 …。 見ても良い。 けど、高い所に登ってはいけない。 近付いてもいけない。 …。 ロント。 ……。 …この話はね、ロント。 …。 あたしがあんたぐらいだった時に…ばあちゃんから、聞いたのよ。 …。 …あたしも、あんたと同じだったからね。 おなじ? 聞いた時は良く分からなくて…でも、後で痛いほど思い知らされた。 あれには絶対に、敵わないってさ。 …。 …エリスが、心配する。 分からないなら、今はそれだけ覚えておけば良い。 …ナディは? て、エリス。 ナディは…しないの? そりゃ… …それは? するに、決まってる。 ……よかった。 まぁ、なんだ。 そんなに見たけりゃ、家の中から見ろって話。 分かった? …わかんないけど、わかった。 うん? エリスがねつだすの、やだから。 もう、しない。 …ん、今はそれで十分。 あと、ナディがしんぱいするから。 ついで、かい。 うん、ついで。 はいはい、そーですか。 ま、良いけどさ。 えへへ。 ……よかった。 ん、エリス? ……。 …エリス。 ……。 ……う。 …はぁ。 ……。 はぁ……。 …エリス。 …はぁ、…はぁ…。 …? エリス…? …はぁ…はぁ……はぁ……ぅ。 ……あ。 ……はぁ……。 ……どこ。 ……。 ナディ、ナディ…。 …ナ……ィ……。 どこ、どこなの、ナディ…。 ……、ト…。 ナディ……ぅ。 ………。 あぁぁぁ お、起きたか。 …! 丁度良かった。 そろそろごはんの支度をするから、ロント、あんたも手伝いなさい。 ナ、ディ…。 たく、寝ちゃって。 おまけにしがみついて離れないか…ら? ナディ…! …どした。 エリスが、エリスが…。 エリスがどうしたの。 しんじゃう、しんじゃうよぉ…。 エリス…!! ………。 エリス、エリス?! ……。 …酷い、さっきよりもずっと上がってる。 ロント。 …ぁ。 水を、新しい水を汲んできて。 早く。 う…。 早く! あぁぁ…。 泣いてる暇なんか! やだ、やだ、やだよぅ…。 ロント! …っ。 …泣いてても、何もならない。 エリスの熱は下がらないの。 …っく、ひっく。 あんたが今、しなきゃいけない事は水を汲んでくる事。 分かるわね、ロント。 …い、っ…いえ、さ。 良し、良い子だ。 ……。 頼んだわよ、ロント。 いえっさ…! |