女は腹に命を宿し。

   己の命を懸けて。

   産み落とす。

   それを繰り返して。

   命は続く。

   繋がっていく。



   …もしも、叶うのならば。








   ……。


   …。


   …来たな。


   ……。


   久しぶり。
   思ってたんだけどあんた、いつもはどこにいるの?


   …。


   ま、言いたくなきゃ言わなくてもいいけど。
   あたしは困らない。


   …。


   …。


   ……。


   悪態、つかない。


   …。


   と言うより、何も言わないし。
   何か言いたかったんじゃないの。


   …あんたなんかに。


   あたしなんかに?


   …。


   あんたも魔女なんだっけね。


   …だから?


   エリスとは違うもんだな、て。


   …。


   エリスは素直じゃないけど。
   あんたの場合は


   黙れ。


   捻くれてる、かな。
   エリスは素直じゃないけど、捻くれてはいない。


   黙れって言ってるの。


   でも、エリスがいない時に来る。
   そんなにエリスが嫌い?


   私はただ、心臓が欲しいだけよ。


   今でも?


   そうだって言ってるでしょ。


   そのわりにはエリスがいない時に来る。
   ここ暫く、ずっと。


   …ッ!


   会った頃は確かに、エリスを狙っていたのに。
   なんで?


   あんたには


   分からないから、聞いてるんだけど。


   …。


   エリスの事なら、関係ある。
   あたしはあの子の恋人で、あの子はあたしの恋人だから。


   ……!


   アリス。


   …あんたに、私の何が分かるのよ。


   分からない。
   言わないから。


   私の方がずっと、高い能力を持ってる。
   あんな出来損ないとは違う。


   …。


   出来損ないのくせに、いけしゃあしゃあと生きてる!
   本当なら私がいるべきだった場所で、のうのうと、あんたなんかと!!


   それは前に聞いたかな。


   そのせいで、私は……私は。


   前も、言ったけど。


   ……。


   はいどうぞって、あげるわけにはいかない。
   エリスにはこれからも生きて貰わないといけないから。
   二人で旅を続ける為に。


   …人間のくせに。


   莫迦がつく?


   ……。


   憎いなら、憎んでもいい。
   けど、エリスの心臓は何があっても、やらない。
   やれない。


   ……。


   アリス、こっちにおいで。


   …は?


   ほら。


   殺すわよ。


   殺されない。


   殺す。


   捻くれてる。


   ……。


   あたしさ、アリス。


   …。


   エリスと、結婚する。


   …ケッ、コン?


   いや、もうしたかな。
   式をしてないだけで。


   ……。


   ずっと、一緒に生きていく。
   本当はそんな事、必要ないんだろうけど。
   でも、形が欲しいから。


   …カタチ。


   そう、あの子には。


   ……。


   それから…


   ……。


   …あたしは、エリスを。
   いつか、孕ませるかもしれない。
   いや、孕ませる。


   ……。


   魔女のあんたなら、分かるかもしんないけど。


   ……いかれてるんじゃないの。


   でも、どうしようもない。
   あの子が、愛しくて堪らない。


   …。


   アリス。


   …来るな。


   あんたは、エリスに似ている。
   けど、似てない。


   来るな。


   あたしには分からない。
   分からなくてもいい、とさえ思ってる。
   あんたはエリスじゃないから。


   …!


   けど。


   来るな、私に触るな!!


   しあわせになって欲しい。
   魔女である事に縛られずに。


   触るな…!!


   ……。


   殺す……殺す、殺してやる。


   …アリス。


   人間の、くずの分際で…!


   アリス。


   来るな…来るなぁ…!!


   ……。


   う…ぁ。


   ……アリス。


   …はな、せ。


   …。


   離せ、離せ、私に触るなぁ…!!


   …つぅ。


   殺す、殺す、殺してやる…!


   アリス。


   あぁ、ぁぁぁぁ…!


   …あんたは、さ。


   いやだ、離せ、離せ…。


   確かに、あったかい。


   ……!


   命がない、なんて。
   それはあんたが勝手に言っているだけ。
   そう思い込もうとしているだけ。


   …あんたに。
   あんたなんかに……!


   あんたは確かに、生きている。
   あんたの中には確かに、命がある。
   エリスと同じように。


   ……あんたなんか、に。


   あたしはエリスを愛している。
   だからあたしはエリスが欲しい。
   エリスだけが、欲しい。


   あんた達なんかに…!


   莫迦な願いだと言う事は分かってる。
   けど、あの子との子供が欲しい。
   あの子にあたしの子を産んで欲しい。


   ……。


   アリ、


   …あぁぁァァぁ゛!


   ……。


   …ぁ。


   ……リ、…。


   あ、ああ…。


   ……。


   …あんた、が。
   あんたがぁ…!!





   ……。





   が、は……ッ。


   ……。


   ……あ、んた。


   …ナディを。


   あんた、が…。


   ナディをきずつけるのだけは、ゆるさない。


   …できそこない、の…くせ、に!


   ナディ、ナディ…。


   あん、た、さえ…いな、ければ…。


   いま、なおしてあげるから…だから。


   ……。


   あんたさえ、いなくなれば…わたし、だって…。


   …ナディ。
   ナディ……。


   わたし、だって…!





   ……ばか、は…あんた、だ。





   …!
   うるさい、黙れぇ…ッ。


   ナディ、まだ…。


   …エリス。


   あ…。


   ありがと…。


   …ごめん、ごめんなさい。


   ん、すなおだ…。


   …わたしが。
   わたしこそが、レベルエーなのに…!


   アリス…さ。


   …黙れ。


   あんたは、あんただから。
   たとえ、エリスがいなくなったとしても、あんたはあんたいがいには、なれない。
   ぜったいに。


   うるさい、うるさいぃ…ッ!


   ……。


   …エリス。


   ……ナディ、でも。


   エリス、もうじゅうぶんだから。


   ……。


   …はぁ。
   ありがと、エリス。
   もう、


   だめ。


   と…。


   …まだ、だめ。


   ……いえっさ。


   ……。


   ねぇ、アリスさ…。


   …だまって、だまってよ。


   …いつでも、おいでよ。
   はなしくらいなら、きいてあげるからさ…。


   …。


   ナディ、なにいっているの…。


   でも、あたしがエリスをだいてるときは、だめ。
   あいて、できないから。


   ……。


   ……。


   …ほんきなんだけど。


   ……ばかじゃないの。


   …うすらタコス。


   エリス、それはちょっといたい…。


   ナディのばか。


   ……。


   アリス。


   …くだらない。


   忘れないで、欲しい。


   ……。


   あんたは、独りじゃない。
   あんたがその気になれば、いつだって。


   ……次は、殺すから。


   させない。


   ……。


   ……。


   エリス、アリス。


   ……ふん。


   ナディ…。


   …エリス。


   ナディの、ばか…。


   泣かないでよ。
   泣くのはあたしの腕の中だけでいい。


   …。


   …と言うか、泣きすぎ。


   ばか、ばか…。


   ……前もこんなこと、あったっけ。


   前…。


   …あったような気がする、と言うかな。
   なんだろね…。


   …知らない。








   ……ふぅ。


   …。


   ありがと、エリス。
   もう、だいじょ


   だめ。


   …と。


   ……。


   …エリス。


   ……。


   エリス。


   ……。


   …そんな顔、するな?


   ナディ、は。


   …ん?


   ……すき、なの。


   好きよ。


   …。


   あんたが、ね。


   ……。


   誰よりも。
   あんたがいれば、何もいらない。


   …うそつき。


   嘘じゃない…。


   …おかねがなければ、パンもかえない。


   それはそうなんだけど。


   くいしんぼ。


   そうだけど。


   …わたしだけ、なんて。


   でも、本気で思ってる。


   ……。


   思ってるよ…エリス。


   ……。


   …ところで。
   アリスは?


   …!


   ああ、行っちゃったか…。


   ……すき、なんだ。


   うん?


   …あのこが、すきなんだ。
   だから


   まぁ、嫌いじゃないかな。


   ……。


   けど、欲情はしない。


   …よく、じょう。


   そ、欲情。
   あれが湧いてくると、どうしようもなくなる。
   あんたのことしか、考えられなくなる。


   ……。


   …ん?


   ……ばか。


   それだけあたしはあんたにベタ惚れってことなんだけど。


   ナディは、ばか。


   ばかは、嫌い?


   …。


   嫌い…?


   …。


   エリス…?


   ……ばか、だいすき。


   ん…。


   ……。


   …エリス、さ。


   …なに。


   あたしは…どっちかと言うと、アリスの事は好きだと思う。


   ……。


   でも、あんたに抱いている想いとは違う。


   …どう、ちがうの。


   キスしたい。


   …。


   セックスだって、本当はもっとしたい。


   …あれいじょう。


   そう、あんたは言うけど。
   ベッドで毎夜、寝てるわけじゃないしさ。


   …ほしのしたでだって、するクセに。


   まぁ、そうなんだけど。
   けど、いつもじゃない。


   ……からだだけ。


   うん?


   わたしのからだだけ…。


   ばか。
   だけ、じゃない。


   …。


   あたしは…エリスの全部が欲しいから。
   言ったでしょ?
   あたしはエリスさえいてくれれば、他に何もいらない。


   ……すきなくせに。


   …。


   アリスのこと…。


   …エリス!


   あ……。


   ……。


   ナディ…。


   ……。


   や、だめ…。


   ……ここに。


   ん、ん…。


   ……あたしの子供、孕んでよ。


   …ナ、ディ。


   二人の子供を…ここに。


   ……。


   …エリス、あたしの家族を、新しい家族を産んで。


   ナディだけの、じゃない…。


   …そう、あんたの家族。
   あたしとエリスの…子供。


   ……。


   …こんな気持ちになるのは、あんただけ。
   好きで、好きで、好きで……頭が、うすらタコスになってるから。


   ナディ…。


   だからもう、どうしようもない…。


   ……ここじゃ、いや。


   ……。


   ここじゃいや…ナディ。


   …それは。


   …。


   ……産んでくれるってこと?


   ……。


   エリス…あたしを、男にしてよ。


   ……おとこ。


   そう、あんたにあたしの種を…


   …いや。


   ……。


   ナディはおんなのこだから。
   おとこになんて、したくない。
   なってほしく、ない。


   ……だったら。


   ……。


   …エリス。


   ……わたしといっしょになって。


   エリスと…?


   わたしと……おなじに、なって。


   ……。


   ……。


   …ああ。


   ナディ…。


   やっと、言ってくれた。


   …え。


   あんたと同じなら。
   あたしは嬉しい。


   でも…。


   でも?


   …ひとじゃ、なくなるんだよ。
   きっともう、もとにはもどれない…。


   だから?


   ……。


   あたしは、そんなこと、どうでもいい。
   あたしにとって大事なことは…


   あ…。


   ……あんたといること、それだけだから。


   …ッ。


   エリス……あたしには、あんただけ。
   あたしの恋人で、あたしの家族だから。


   ……。


   産んでよ。


   ……。


   あたしの子を。
   あんたとあたしの、子供を。


   ……。


   …うん?
   なに…?


   ほしい、ほしいよ…ナディ。


   ……。


   ナディのあかちゃん、うみたい…。


   …あげるよ。
   あんたが望むなら、望んでくれるなら、いくらでも…。


   ……うれしい…うれしい…。





   ……。





   …アリス?


   ……。


   そっか、まだ。


   ……。


   …あんたの事は嫌いじゃない。
   寧ろ、好きだと思う。


   ……。


   だけど、あたしは。
   エリスだけを愛してるから。
   あんたをしあわせにしてあげる事は、出来ない。


   ……。


   あたしは…あたしのしあわせはエリスがいて、初めて叶うものだから。


   ……人間のくせに。


   あんたも。


   私は、違う。


   ……。


   あんたみたいな出来損ないとも違う、違うんだ…。


   …できそこないでも。


   ……。


   わたしは、かまわない。
   わたしをあいしてくれる、ナディがいるから。
   だから、わたしは


   黙れ、出来損ない!


   ……。


   …あんたじゃ、なかった。
   そこにいるのは、あんたじゃなかった…!


   …アリス。


   どうして、あんたが…!
   どうして、あんたばかり…!


   …それが、本音?


   …!
   違う…!


   違わない。


   違う、違う、違う…!!


   ごめん、アリス。
   あたしはあんたを抱けない。
   エリスしか、


   黙れ、黙れ…ぇ!


   アリ


   黙って…!!


   黙らない。


   …ッ。


   もしも、先にあんたと出逢っていたら。
   それでも、あたしはエリスに惹かれる。
   エリスを見つけて、エリスだけを愛する。


   ……。


   …躰が欲しいわけじゃない。
   あたしはエリスそのものが欲しい。
   躰を抱くのは、その為。


   …。


   躰を抱く事で、エリスの全てが手に入るなんて思ってないけど。
   でも、少しでも叶うような気がするから。


   …わたしは。


   この気持ちは、あんたには持てない。


   わたしは………わたし、は……ぁ。


   アリス。
   いつか、きっと。


   ……。


   あんたを愛してくれる人が、あんたの前に現れる。
   あたしがエリスに出逢って好きになって、エリスがあたしに惹かれてくれたように…きっと。


   ……いい加減なこと、言わないでよ。


   いい加減じゃない。


   そんなの…!!


   ああ。


   …?


   やっぱり、エリスに似て


   似てない。


   にてない。


   …はいはい、そうですか。


   ……。


   ……。


   でも、こうしてると。
   ただの女の子だと思うよ。


   一緒にするな。


   しないで。


   …はいはい、ごめんね。















  H o p e  a n d  S i n















   …。


   …。


   …エリス。


   ……。


   怖い…?


   ……。


   …怖くないわけ、ないか。


   ナディ……。


   ごめん。


   …?


   こんなところで。


   ……。


   宿とか…それこそきれいなホテルとかも、考えたけど…。


   …うん。


   でも人は来ない、と思うから。


   …きたら、どうするの。
   わたしたちにみたいに…。


   でかいとかげの子、頭にのせて?


   ……。


   その時は…どうしようかな。


   …てきとう。


   ま、よっぽどの物好きだと思うけどね。
   こんな道から外れた…。


   ……。


   …まぁ、物言わぬ住人はいるけど。


   …。


   鍵も一応、掛けたし。


   ……。


   …でも、気になる?


   ……。


   もう少し、他を探して…ん。


   ……。


   エリス…。


   ……いい。


   …。


   ここで…いいから。


   …本当に?


   う、ん……。


   …そっか。


   あん…。


   ……エリス。


   まって…。


   …まだ、しない。


   ……。


   …怖い?


   ねぇ…。


   …うん?


   ……ほんとうに、いいの。


   いいよ。


   どうなるか、わからないのに。


   分かるよ。


   う…。


   …これから、ここに。


   ナディ…。


   あたしの子供が…宿る。


   …そんなの。


   まぁ、一回でなんて思ってない。
   それは男女でもそうだし。


   ……。


   …宿るまで、何回もすればいい。


   ……ばか。


   今更…。


   ……。


   …でもあんたの躰に負担をかけるなら。
   無理は、させたくない。


   ……わたしは。


   ……。


   わたしのことなんて…。


   考えるよ。
   考えるに、決まってる。


   ナディ…。


   …エリス。


   …。


   ……ふるえてる。


   …こわい。


   ……。


   こわい、こわいよ…ナディ。


   …大丈夫。


   ……。


   あたしは、どんな事があっても大丈夫。


   …うそつき。


   うん、嘘ついた。
   ごめん。


   ……。


   …あんたがいないのだけは、だめだった。


   ……ぅ。


   エリス…。


   ……。


   …大丈夫、あたしは何があってもあんたの傍にいる。


   ……。


   どこにも、行かない。


   …けど。


   ……どうしても、と言う時は。


   ぁ……。


   …あんたも、連れて行く。
   独りにはさせない。


   あぁ……。


   …オーケイ、相棒?


   ……やくそくだよ。


   ん、約束…。


   やぶらないで。


   …破らない。


   ……。


   ……エリス。


   ナディ……。


   ………う。


   …はぁ。


   エリ、ス……。


   ……ごめんなさい。
   ごめんなさい……。


   …あやまる、な。


   ……。


   えり、ス…。


   ……あぁ。


   ………あ。


   ナディ…ナディ……。


   あぁぁぁぁぁァァァァァ…ッ!


   ……う。


   う…ぅ、う…ぁ゛あ゛ぁ、アァ゛ぁ…ッッ!!!


   ナ…ディ……。








   ハァ…ハァ……ッ。


   (……。)


   ウゥ……ゥゥ。


   (…ああ、あれはあたしか。)


   ……グ…ゥ……ウ、うっ。


   (…まるで獣、いや、獣そのものか。)


   …っ…、うぅ、ゥゥッ。


   (…エリスを犯して、犯す事が出来て、悦んでいる。)


   ………ァウッ……ッ……。


   (……ああ、でもそれももう終わるんだ。)


   ……ッ、……ッ…。


   (……終わって、しまう。)


   ………ア、ゥ…アァぁァ。


   (……終わらなければ、いいのにな。)


   ゥ…ウ、…ウ…、…っ。


   (……あーあ。)








   ……。


   ……ェリ、ス。


   ……。


   …う。


   ……。


   ……くるしい、んだけ、ど。


   ……。


   ア、リス。


   ……。


   …げほ。
   はぁ、死ぬかと思った。


   …もう、死んでるわよ。


   うん?


   人間の分際で、魔女の力に耐えられると思ったの。
   莫迦じゃない。


   ……え、と。


   所詮、人間なんて下等な生き物。
   生きている価値なんて、無いのよ。


   ……。


   あんたはこのまま、目を覚ます事無く終わるの。
   気分はどうかしら?


   …気分、ね。


   余裕ぶって。
   このまま死ぬくせに。


   死んでる、って言われたんだけど。


   …。


   死んでないなら、いいや。


   …どこに行くのよ。


   帰る。


   は?
   あんたはこのまま死ぬのよ。


   …。


   魔女に殺されたの、まだ分かんな


   エリス!


   …。


   エリス、聞こえてる?
   聞こえてるなら


   いい加減、諦めたらどうなのよ。


   エリス、応えて。
   今、そっちに行くから。


   …!


   エリス、エリスー。


   …ナディ!


   いや、あんたじゃなくて。


   …ッ。


   と言うか、初めてじゃないの。
   あたしの名前を呼んだの。


   ……。


   あたしは、還る。


   ……。


   …お。


   ……どうしてよ。


   どうして?


   人間のクセに、どうしてあんな出来損ないを


   人間だから。


   …。


   人間だから、エリスを愛してる。


   ……ばかじゃないの。


   …。


   ばかじゃないの…!!


   …魔女ってのは。


   ……。


   ばか、って言葉が好きなのかね。
   エリスにもここ最近、言われてばかりだし。


   ……。


   …アリス。
   あたしを、還して。
   エリスのところに。


   …なんで、私が。


   嫌ならいい。


   ……。


   ……エリス。


   …。


   …泣いてる。
   声が、する…。


   …そんなの。


   エリ、ぐ。


   ……。


   …あぁ。


   ……。


   ……アリス。


   …。


   …あたしはあんたを抱けない。
   エリス以外、抱けない。


   …じゃあ、これはどう説明するつもり?


   ……これって?


   ふん、余裕ぶって。
   莫迦のクセに生意気なのよ。


   う…。


   …ほら。


   ……。


   …汚い。


   く…ぅ…。


   …いつまで持つかしらね。


   別に、あんたに反応、してるわけじゃない。


   …。


   あたしはエリスに、エリスの中の命に


   黙れ。


   ぐっ……。


   …さぁ、教えて。


   ……。


   教えてよ、ナディ。
   私にも。


   ……ぅ。


   …。


   うぅ…。


   ……。


   …う……ウゥ。


   ……早く、しなさいよ。
   ほら、ほら…。


   ……。


   …けだもの。


   …ッ。


   これで、あの出来損ないの中に入って、よがって。
   生んだんでしょう?


   …それ、聞いたところで何になる…の。


   そう、これで……。


   ……あったかかった、よ。


   は…?


   …エリスの中は。
   あまり、はっきりとは覚えてないけど…それで、も。


   …生意気なのよ。
   あんたも、あの出来損ないも!


   ……。


   …私の中に、入れてあげる。


   ……。


   私の中に、入りなさいよ…。


   …死んでも、いやだ。


   今のあんたが私に逆らえると思ってるの。


   思って、る。


   反応、してるくせに。


   …。


   ほら、何も言い返せない。


   …。


   ……本当、醜い形。
   こんなので…。


   ……エリス。


   いつまで、呼んでいられるかしら……。


   …う、ぅぅ。


   ……ほら、入りたいって言ってるわよ。


   エリス……。


   あぁ……これ、で。


   …エリ、…っ。


   わたしにも…


   エリス…ッ!!


   ……そう、わたしにだっ





   だめぇぇぇ……ッ!!!!





   ……くぅッ。


   ……。


   ナディ…。


   …はぁ。


   ……出来損ない、が。


   ナディ、ナディ…。


   エリ…ス…。


   邪魔するんじゃ、ないわよ!


   …っ。


   エリス!


   ……ナ、ディ。


   今、還るから。
   だから。


   早く…早く、還ってきて。


   エリス、あたしの名前を呼んでて。


   …ナディ。


   その声を聞いて、あたしは還る。
   還って…帰ったら。


   ナディ…ナディ…。


   …あんたをもう、泣かせない。
   もう、二度と。


   うん……うん……。


   それに!


   …ナディ?


   言ったでしょ、そん時は連れて行くって。


   ……う、ん。


   ……。


   アリス。


   ……。


   …もう、おしまいにしよう。


   ……。


   あたしは…あんたにはあげられない。


   …良く言うわ。
   反応して


   それは否定しない。


   ……。


   …でも、それは。


   ……それは、何よ。


   ここは、あんたの世界だから。


   ……。


   これは、あんたが創ったもの。
   エリスがくれたものじゃない。


   …。


   何より、あたしの意志じゃない。


   …そういう態度、が。


   アリス。


   気に入らないのよ…!


   ……。


   ……むかしから。
   そう、昔から…ッ!


   …?
   むかし…?


   ……。


   …まぁ、いいけど。


   ……。


   ……ふぅ。


   …。


   …エリス。


   あ…。


   エリス、エリス、エリス…!


   ナディ…!


   …。


   あんたはここで、わたしといるのよ。
   もう二度とあいつのとこなんかに


   あんたはあたしのエリスじゃない。


   ……!


   …あたしの帰る場所。
   ウィニャイマルカは…エリスだけだから。


   うぅ…ッ!。


   ……ごめん、アリス。
   あたしは、エリスを愛してる。


   ……どうして、よ。
   どうして…わたしじゃ、ないのよ。


   ……。


   …わたし、だって…おなじ、なのに…。


   同じじゃない。
   エリスはエリス、アリスはアリスだから。


   ……。


   エリス。


   ……キ、ジャ。


   もっとあたしの名前を呼んで。
   もっと、もっと…!








   ナディ…ナディ…。


   ……。


   ナディ……ナディ…ナディ……。


   ……エリス。


   …!


   おはよ……。


   ナディ…ッ!


   う、お…。


   ナディ、ナディ、ナディ、ナディ…。


   ……。


   …ナディ、ナディ。


   ……泣き虫?


   ……。


   …ありがと。


   …。


   呼んで、くれて。


   ナディ……。


   それから。


   …。


   ごめん。
   正直、かなり危なかっ


   ナディ…!


   わ……。


   ………。


   …エリス、ちょっと苦しいかな。


   ……ごめんなさい。


   こらこら。


   …?


   謝ってるのは、あたしだ。


   でも、わたしが


   エリス。


   ……。


   …と。


   …?
   ナディ…?


   …エリスさ、ちょっと手、貸してくれない?


   て…?


   あたしの手を、あんたの頭の上に乗せて。


   ……。


   ほら、早く。


   …いえっさ。


   ……。


   ……。


   ……。


   …のせたよ。


   ん、ありがと。


   …どうするの?


   勿論、こうするの。


   ……。


   ……。


   ……ナディ?


   …。


   ナディ。


   …力が、うまく入らない。


   …!


   エリ


   わたしの、せいだ。


   あ?


   わたしが、わたしが……。


   …。


   わたしがナディに、ナディはにんげんなのに……なのに!


   ああ、そうだ。


   …え。


   エリス、おいで。


   ……。


   おいで。


   ……。


   きょとんとしなくていいから。
   おいで。


   ……ナディ。


   ほらおいで、エリス。
   ここに。


   ……。


   さぁ。


   ……いえっさ。


   …。


   …。


   ……ふふ。


   ナディ…。


   ねぇ、エリス。


   ……なぁに。


   ばぁか。


   ……。


   …二人で望んだ事に、あんたが謝るな。


   でも…。


   でも、も、けど、も、だって、も。
   全部、なし。


   ……。


   …エリス、あたしの躰を抱き締めてよ。


   ……。


   本当は…あたしがしてあげたいんだけど。


   …ナディ。


   ん…。


   ナディ…ナディ……。


   ……エリス。


   ……。


   …どこか、痛いとこはある?


   ううん……。


   …気持ち悪いとかは?


   ない、ないよ…あるはず、ない…。


   ……。


   …。


   ……感覚は?
   感じる…感じた?


   …。


   …て、さすがに分からないか。


   ……あつかった。


   ……。


   とても、とても、あつかったの…。


   …そっか。


   ……。


   …出来てたら、いいな。


   ……うん。


   …。


   …。


   …まぁ、何度でもするけどね。


   ……。


   …出来てても。


   ……。


   ……しようよ。


   …ばか。


   ……もう、なおりそうにない。


   ばか……。








   ……。


   ……す。


   ……。


   …り、す。


   ……?


   …あ、り、す。


   だれ…。


   ……。


   …だれよ。


   ……ありす。


   わたしの名前…


   ……。


   ……名前でも、なんでもない。


   …り…。


   でも、あいつは…あいつは…。


   ……す。


   呼ぶな…呼ぶな…ぁ…。


   ……。


   …わたしに、名前なんてない。
   なかった…!


   …あ……、す。


   エリス、エリス、エリス…ッ!!!!!!!!


   ……。


   あんただって、おなじだった…!!


   ……。


   それ、なのに…それなのに!


   ……。


   …どうして、あんただけ。
   あんただけ、誰かの「Ellis」になれて…。


   ……。


   …わたしは「“A”llis」のままなの。


   …あり…す。


   ……。


   ………ありす。


   ……だれ、かの、なんて。


   ……、から。


   ……。


   ……いく、から。
   だ、から…。








   …。


   …。


   ……。


   ……。


   …寝る前にまた、お話?


   ん…。


   たまにはあたしの相手もして欲しいんだけど?


   たまには?


   そう、たまには。


   …。


   なんで笑うかな。


   へんなナディ。


   なんだとぅ?


   いつも、してるのに。


   めっきり減ったと思うけど。


   …それはナディのおもいちがい。


   本、読んでるか。
   お話、してるか。
   或いは、“お話”を読んで聞かせているか。
   最近のあんたはそればかり。


   ……。


   おかしくないって。


   …しょうがないひと。


   む。


   ……ね。


   …。


   ……しょうがないひとなの。


   …それは聞かせなくてもいい思うけど。


   だいじなこと。


   …。


   …だいじな、こと。


   まぁ、いいけど。
   で、どんなお話をしてたの。


   ナディのおはなし。


   それ、昨日の夜も言ってなかったっけ?


   いってた?


   言ってた。


   …そう。


   ……。


   ……。


   で?
   今日はあたしの何を話してるの。


   …。


   ん?


   …うすらタコス、で。


   あ?


   ばか、で。


   …ばかで?


   すぐ、エッチなことしたがるの。


   間違いじゃない。


   あ、ん…。


   今だって…したいしね。


   ばか…だめ。


   どうせあたしはエッチだし。


   ……ん。


   ……。


   …ナディ。


   ……あんたが、言ったから。


   だからって…。


   …どっかの国では、さ。


   ん、ん……。


   …口は災いの元、って言うんだってさ。


   ……わざわ、い?


   閉じた口に、ハエは入らないってね…。


   …。


   …エリス。


   ……はえ、じゃないよ。


   …うん?


   ナディ…。


   ……。


   それに…。


   …それに?


   ……わざわい、じゃない。


   ……。


   あ…ぁ、ん。


   ……いい声。
   久しぶり…。


   …うそつき。


   嘘じゃないって…。


   ……うそつき。


   …あんまり、触らせてくれないくせに。


   ん、ナディ…。


   ……この子の相手ばかりで。


   …やきもち。


   そうよ…。


   …ん。


   ……あんたは、あたしのものだから。


   ばか…。


   ……。


   ……キス、はしてるのに。


   キスだけじゃ、足りない…。


   …。


   …ねぇ、エリス。


   ……。


   …入らないから。
   だから…触らせてよ。


   ……。


   エリス…。


   ……ひとつ、だけ。


   ひとつ…?


   …ナディも、して。


   ……何を?


   ……。


   ん、エリス…。


   ……おはなし。


   …。


   …ナディのおはなし、ききたいって。


   ……一応、してるつもりなんだけど。


   …。


   ……分かった、約束する。


   ぜったい…。


   …いえっさ。


   ……。


   …エリス。


   やっぱり、ふたつ…。


   …ふたつ?


   ……うしろから、だっこして。


   ……。


   わたしたちを…。


   …それだったら。


   ……。


   いつも、してる…。


   …。


   あれから、ずっと…。


   …ナディ。


   もう、いい…?


   …だめ。


   ……。


   だめ……。


   …ん、分かった。


   あ…ぅ…。


   …分かった、けど。


   ナディの、ばか…。


   ここで止めたら…。


   ナディ…。


   …寝られなくなる。


   おおかみ…。


   ……はらぺこの、ね。


   くいしんぼ……。


   …だから、おなかいっぱいにしたい。


   ……。


   ……。


   ……つよく、しないで。


   しない…。


   ……がっつかないで。


   …出来るだけ。


   はいっても、いいから。


   …。


   ……いいから。


   …。


   ……はいっ、て。


   ……いえっさ。


   は、…ぁ…あ。








   ……さて。


   ん…。


   なんの話、するかな…。


   ……。


   …あんたと逢った頃の話でも、してみようかな。


   ……それ。


   ん…?


   …もう、してるよ。


   ……。


   ナディとはじめてあったときのこと…。


   …でも、それは。


   あ、ん…。


   ……あんたの視点、でしょ?


   わたし、の…?


   そ。


   ……。


   …あの頃、どう思ってた?
   あたしのこと。


   ……しょうきんかせぎ。


   はは、そのまんま。


   …へんなひと。


   なんだとう?


   …しんじゃうよって、いったのに。
   いっしょにいくって、いってくれたひと…。


   …。


   ……いまになって、おもうの。


   なにを…?


   ……うれしかった。


   …今更?


   ……ううん、もっとまえから。


   …。


   うれしかった…。


   …ん。


   ……ナディは。


   …。


   わたしのこと…どう、おもってたの?


   何考えてんのか、いまいち掴みきれない子。


   ……。


   本当、読めなくて。
   話しかけても会話は続かないし、気付けば寝てるし。


   ……。


   …むくれるな?


   ……むくれてない。


   でも。


   ……。


   …守りたいって思った。
   わりと、すぐに。


   …それが、けいやくだったから。


   けど、破棄してやったけどね。
   あん時のブルーアイズの顔は、むかついたな。
   大人になりなさい、とか言いやがってさ。


   ……ふふ。


   契約だったからとか、ばあちゃんとの約束だったからじゃなくて。
   気付けばそれはあたしの意志だった。


   ……。


   …あんたを、小さな女の子であるあんたを命に代えても守るってさ。


   ……ナディ。


   でもここにいるあんたはもう、小さな女の子じゃないけどね…。


   …。


   …とりあえず、こんなもんかな。


   おしまい…?


   …今夜、は。


   ……。


   眠い…?


   ……うん。


   じゃ、もう寝ようか…。


   …うぅん。


   エリス…。


   …ナディ。


   ……久しぶりで、疲れたでしょ?


   ……。


   …ばか?


   ……さきにいわないで。


   ごめん…?


   ……。


   ……エリス。


   ねぇ…。


   …なぁに?


   ……。


   なぁに、エリス…。


   ……、ス。


   え…?


   ……アリス、のこと。


   アリス…?
   あの子がどうかした…?


   ……。


   エリ、い。


   ……。


   …エリス、手の甲を抓られたら痛いんだけど。


   ……あのこなんて、いわないで。


   でも、エリスが…て、痛い痛い。


   ……。


   …自分で、言っておいて。
   しょうがないな…。


   ……ナディは。


   あたしは…?


   …アリスにもやさしい。


   ……。


   ……やさしい。


   まぁ、気になっていたからね…。


   …まじょだから?


   それもあるけど。


   …。


   …アリスも小さな女の子だから。


   ……じゃあ。


   何度も言わせるな?


   …。


   …愛してるのは、エリスだけ。


   ……いった。


   言って欲しかったクセに…。


   ……。


   ……。


   ……。


   ……しあわせに、なって欲しいって思うのよ。


   …いまも?


   うん…。


   ……。


   …でも、それだけ。
   あたしがしあわせにしたいのは…


   …したいのは。


   ……どうしようかな


   …。


   …聞きたい、なら。


   いじわる。


   …したくもなる。


   ……ばか。


   かわいい。


   ……。


   …エリス、だけ。


   ぅ…。


   エリスとしあわせになりたい。
   今以上に。


   ……。


   …体温、上がった。


   ……わすれないで。


   …何を?


   このこの、こと…。


   勿論、忘れてない…。


   ……。


   …あんたも、この子も。
   しあわせにしたい…する。


   ……しあわせだよ。


   …。


   わたしも……このこも。


   …だったら、いいけど。


   そうなの…。


   …けど。


   ん、ナディ…。


   …あんたも、忘れないで。


   ……。


   …あたしを、しあわせにすること。


   ……ナディ。


   …ま、もうしてもらってるけどね?


   ……もっと、してあげたい。


   …。


   …だから。


   ……。


   ……。


   ……いえっさ、エリス。


   ……いえっさ、ナディ。








   …もしも、叶うのならば。



   誰よりも好きなこの人の命と。

   何よりも愛しいこの人の命と。

   一つになりたい。

   そう、思うのは。

   願ってしまうのは。



   心を、持っているから。







   エリス。


   …?
   なに?


   愛してる。


   ……もう、だめ。


   今夜はね。


   …しばらく、だめ。


   しばらくって、どれくらい…?


   …ずっと、だめ。


   この子が生まれてくるまで?


   ……。


   …でも、我慢出来ないと思うけど。


   それはナディだけ。


   エリスとは、言ってないけど?


   …。


   ん…?


   …ばか、うすらタコス。


   それ、してる時に言ってみてよ。
   今度。


   ……。


   …そういうのも


   ナディのばか。