で?


    …あ?


    本当にそこが貴女の村だったの?


    …。


    何も残されてなかったのに、どうしてそう判断出来たの?


    エリスがそうだって言ったんだから、そうでしょ。


    …。


    何よ。


    惚気、ありがとう。


    あぁ?


    単純って良いわね。


    喧嘩、売ってるの?


    いいえ。
    寧ろ、褒めているのよ。


    そうは思えない。


    そう?
    それは残念ね。


    全然、思ってないでしょ。


    思ってるわよ。


    つか、仕事は?
    忙しいんじゃないの?


    あら、心配してくれるの?


    全然、してない。


    休暇、よ。


    休暇?


    そう、休暇。


    それは貰えるものはちゃんと貰えるってやつ?


    ええ、勿論。


    へぇへぇ、良いご身分だこと。


    その代わり、戻ったら山のような仕事が待っているでしょうけど?


    …は。


    まぁ、手は打ってきてあるけれどね。


    知ってる。
    あんたはそういうヤツだ。


    それはありがとう。


    …そういや、あいつは?


    勿論、仕事。


    可哀想なこと。


    思ってないくせに。


    あいつの顔見ると、思い出してね。


    中身は違うわよ。
    部下として、とても扱いやすい。
    とても素直な子よ。


    …。


    なに。


    人を人としないのって、好きじゃない。


    貴女ならそう言うと思った。


    じゃあ、言うな。


    人として。
    認めているからこその、物言いよ。


    …は、どうだか。


    機械頭でも、心まで機械じゃないわよ。


    …。


    大体、人を見掛けで判断してる貴女もどうかと思うけれど?


    …それはすみませんねぇ。


    まぁ、貴女の気持ちは少しは分かるけれど。


    ……。


    落ち着かないみたいね?


    …暇なだけよ。


    やっぱりそう言うものなのかしら。
    貴女でも。


    経験のない人には分からないわよ、どうせ。


    …。


    ま、あんたは一人でも生きていけそうだけど?


    それは…どうかしらね。


    …あ?


    …。


    ちょっと、ブルーアイズ?


    共に歩ける人間がいるのは、とても素晴らしい事だと思うわ。


    ……。


    人は…一人では、生きられないもの。


    ……なんか、変なものでも食べた?


    ええ、そうなの。


    何食べたのよ。


    貴女の、惚気と言う名のものを。


    ……心配して損した。


    貴女の支度は終わったのよね。


    ええ、おかげさまで。


    だったら。
    散歩でもしてきたら?


    散歩ぉ?


    こんなところで一人、そわそわしてても仕方が無いでしょう?


    別にそわそわしてるわけじゃ。


    貴女でも緊張するものなのね。


    …いちいちうるさいなぁ。


    それ。


    …なに。


    似合ってるわよ。


    それはどーも。


    やっぱりそういうのが合うのね、貴女は。


    悪かったな。
    普通のが似合わなくて。


    だから褒めてるのよ。


    …。


    髪、少し切ったのね。


    …まぁね。


    誰が?


    …。


    ああ、あの子に?


    ……他の人に触らせると不機嫌になるので。


    あらあら。


    …ああ見えて。
    手先、結構器用なのよ。


    貴女よりは器用そうに見えるけれどね。


    どうせ不器用よ、あたしは。


    と言うより、がさつなだけでしょう。
    屹度。


    …。


    まさか、貴女も?


    …は?


    切って、あげてるの?


    …他の人に触られるの、嫌がるのよ。


    はいはい、ご馳走様。


    ……。


    髪型はそのまま?


    一応は。


    まぁ、他の人に触られるのが嫌ならばそうなるでしょうね。


    …。


    行くの?


    外の空気、吸ってくる。


    そう。
    行ってらっしゃい。


    …あんたは?


    私は、そうね。


    …うわ、嫌な笑い。


    失礼ね。


    ……ふん。


    それじゃ、また後で。


    …そのまま帰ってくれても良いけど。


    約束、あるから。


    ……。


    ナディ。


    …何よ。


    …。


    何。


    今、言う事じゃないわね。


    はぁ?


    じゃあ、後で。


    ちょっと。


    もう少し、掛かるでしょうから。


    …。


    それまでにせいぜい、緊張を解しておきなさい。


    …してないっつーの。
    つか、今更…。


    自分の事なんて、所詮、自分じゃ分からないものよ。
    特に貴女の場合はあの子の事となると、ね。


    ……。


    じゃあ。


    ……ほんと、むかつく女。


    それはありがとう。


    …褒めてねー。








    あ。


    …たく。
    相変わらずもいいとこなのよ、あの女は。


    ナディ。


    大体、エリスがあんな約束を


    ナディ!


    え…?


    ナディ、久しぶりね。


    …ニー、ナ?


    あの頃よりも大人びて。
    もっと綺麗になっていたから一瞬、分からなかったわ。


    つか、ニーナ!
    なんで?!


    やぁ、ナディ。
    相変わらず、元気そうで何よりだ。


    わぉ、ロベルトも!
    でも、どうして?


    貴女のお友達が今日の日を知らせてくれたのよ。


    友達…?


    わざわざ招待状を届けてくれたんだ。
    忙しいだろうにな。


    ……まさか。


    支店回りのついで、とは言っていたが。


    とても、嬉しかったわ!


    ……ああ、やっぱり。


    もう、ずっと楽しみにしていたのよ。
    早くこの日になれば良いのに、て。


    確かに、ずっと落ち着かなかったな。


    あら、それは貴方もでしょう?


    はは、そうだな。


    でも二人とも、店は良いの?


    あら、こんな時は勿論お休みするに決まってるでしょう?


    ああ、そのとおりだ。


    そ、そうなんだ。


    それよりもナディ。
    もう支度は終えたの?


    …え。


    こんなところにいても良いの?


    ああ、あたしはね。
    もうやる事も無いし、ちょっと散歩にでもと思って。


    髪型も?


    うん。
    エリスがこれで良いって言うから。


    少し短くした?


    少し、だけどね。
    エリスが切ってくれた。


    そう。
    あの子は器用なのね。


    そうなのか?


    そうよ。
    分からない?


    うーん…。


    もう、やぁね。


    あはは。
    短くしたと言っても、毛先をちょっと切っただけだから。
    ロベルトが分かんないのも無理ないわよ。


    …すまない、ナディ。


    良いんだって。


    ナディ、ちょっと良い?


    ん?
    …わ。


    撫で付けただけなんでしょう?


    いや、そうでも無い…けど。


    少しだけ、ね?
    さぁ、座って。


    あ、う、うん…。


    うふふ。


    …や、ね。
    他の人に触らせると大変なのよ。


    まぁ。


    でもま、ニーナなら大丈夫かな。
    多分。


    じゃあロベルトは駄目ね。


    かも。


    おいおい、二人とも。


    ふふ。


    はは。


    …はい、これで良いわ。


    ありがと、ニーナ。


    本当に少しだけど。


    ううん、嬉しい。


    …。


    …ニーナ?


    娘がいたら。
    屹度、こんな感じなのだわ。


    …え。


    ねぇ、ロベルト。


    ああ、そうだな。
    屹度、そうなのだろう。


    勿論、エリスも。
    一緒に過ごした時間は短かったけれど…。


    …ああ。


    ニーナ、ロベルト…。


    だから。
    今日はありがとう、ナディ。


    ありがとう、ナディ。


    …お礼を言うのはあたしの方よ。
    ありがとう、ニーナ、ロベルト。








    男女。


    …ん?


    男女。


    どっかで聞いたコトがあるような…。


    男女。


    あーら、やっぱり。


    男お


    こら、ホアキン。


    ……。


    久しぶりだと言うのにすまないな、ナディ。


    懐かしくて涙が出そうよ、ペドロ、ホアキン。


    …男女。


    今度言ったら。
    撃つぞー?


    …。


    ホアキン、何度言ったら分かるんだ。


    ……。


    良いわよ、ペドロ。
    こういう子には慣れてるって言ったでしょ?


    しかし…。


    良いから。
    でもホアキン、あんたでかくなったわねぇ。
    声も変わった?


    …。


    うん、相変わらずの無愛想ぶりで。
    あの頃はまだ小さくてかわいかったけど、今じゃただの生意気小僧ね。


    そうなんだ。
    最近は本当に生意気な口を利くようになってな。


    …。


    お年頃ってやつ?


    かもな。


    ……。


    残念だけど。
    あんたのお目当ての子はここにはいないわよ?


    ……男女。


    バァーーン。


    …。


    たく、お前は。


    ところでペドロ。


    うん?


    あんたも休暇ってやつ?


    ああ。
    ニーナから聞いてな。
    ほら、招待状もあるぞ。


    でもあの町、保安官は


    大丈夫だ。
    今じゃ俺だけじゃない。


    けど


    それに俺だっていつまでもあの町にいるわけじゃないからな。
    後継として、育ってくれなきゃいけない。


    へぇ、それってもしかして。


    ああ、もしかしてだ。


    じゃあ、尚更


    来たかったんだよ、ナディ。


    …。


    ホアキンも。
    な?


    ………ふん。


    …ま、いっか。
    ありがと、ペドロ、ホアキン。


    と言っても終わったら直ぐに戻らないといけないんだがな。


    それは仕方ないわね。
    町の治安を守るのがあんたの仕事なんだから。


    あはは、そうだな。


    ……。


    ホアキン、あの子に会いたい?


    ……。


    ま、今は会わせてあげないけどー。


    …男女。


    ははは。


    なぁ、ナディ。


    ん?


    今でも軽口、言えるか?


    軽口?
    あたし、なんか言ったっけ?


    エリスに俺と結婚してあげれば、て。


    ……んー。


    なんだ、覚えてないのか。


    言ったような…。


    そういうヤツだよな、お前は。


    うるさいなー。


    で。
    言えるか?


    …。


    冗談でも、な?


    …はいはい、悪かったわよ。


    別に悪いことはしてないだろ。


    あんたにはやれないから、よ。
    ペドロ。


    ああ、なるほどな。


    ホアキン、あんたにもよ。


    ……。


    お、いっちょ前に。


    男女。


    まぁだ言うか、こいつは。
    いい加減名前で呼べっつーの。


    …男女は、男女。


    何度撃たれたいのかなー?


    …。


    ホアキン。


    そうだ、ペドロ。


    ん?


    再婚、したの?


    ……え?


    再婚。
    なぁに、まだなの?


    ……。


    まぁ、確かにステキだけどね。
    亡くなった奥さんをずっと想い続けるのって。


    ……あのな、ナディ。


    誰かいないの?
    ま、エリスはだめだけど。


    俺は…


    物好き。


    …ん?


    物好きすぎるんだよ、父さんは。


    …ホアキン。


    て、男女以外の言葉、喋った。


    ……。


    なーんて、当たり前か。
    で、物好きってなんの話?


    あ、いや…。


    ペドロ?


    俺はな、ナディ…。


    うん。


    ……まぁ、もう過ぎた事だ。


    …は?


    まぁ、する時はするさ。


    何よ、それ。


    それよりもナディ。
    こんなところでフラフラしてても良いのか?


    別にフラフラしてるわけじゃ…。


    お前でも緊張するんだな。


    してないわよ、別に。


    ま、俺にも覚えがあるからな。


    だから!








    ナァディ!


    え…わ、ぷッ。


    元気だったぁ?


    と言うか前、前が見えないってー!


    ああんもう、本当に久しぶりぃ。
    二人とも、なかなか来てくれないんだもの。


    つ、つか、苦し…。


    マルガリータ。
    嬉しいのは分かるけど、ナディが苦しがっているよ。


    ………。


    あら?


    ……し、死ぬかと思った。


    ナディ、元気そうだね。


    …そっちこそ、アントニオ。


    うふ。


    マルガリータも。
    と言うかあんたらもか。


    こんなのが届いてね。
    上司からのお誘いじゃ、断れないさ。


    …どんだけなのよ、あの女。


    まぁ、上司からの命令じゃなくても来ていたけどね。
    ナディ達には本当に世話になった。


    別に世話なんてしてないけど。
    でもま、ありがと。


    ナディ、キレイよ。


    あ、ありがと、マルガリータ。
    あんたも相変わらず、


    マルガリータ、君も綺麗だよ。
    君は変わらず、いや、永遠に俺の天使だ。


    もう、アントニオったら。


    オゥ!マルガリィータ!


    ああ、アントニオ!


    …あはは、相変わらず…ね。


    ねぇ、ナディ。


    んー?


    エリスは?


    ああ。
    あの子なら…て、ん?


    ああ、まだ支度をしているのね。
    屹度、とても


    マルガリータ。


    なぁに、ナディ?


    それ…。


    どれ?


    その赤ん坊…。


    私達の赤ちゃん。


    ああ、やっぱり…て、赤ちゃん?!


    やっと、授かったんだ。


    どう、かわいいでしょ?


    うん、かわいい…けど。


    なんだい?


    いや、ちょっと吃驚して。
    でもそうよね、夫婦なんだもんね。
    そういえば籍は入れたの?


    ああ、この子がマルガリータのお腹に宿ったのが分かった日にね。


    ねぇ、ナディ。
    アントニオったらね、大変だったのよ。


    はは、それは言わないで欲しいな、マルガリータ。


    だってぇ。


    ああ、はいはい。
    何となく分かるから良いわよ、うん。
    で、どっちなの?


    どっち?


    男の子?
    それとも


    女の子よ。


    へぇ、女の子かぁ。


    どうだい?
    マルガリータに似て、美人だろう?


    アントニオにも似ているわ。
    ほら、目元なんてそっくり。
    だって私達の赤ちゃんなんだもの。


    ああマルガリータ、君と言う人は!


    あーはいはい、ごちそうさま。
    もう、良いから。


    ナディたちはどうするの?


    は?


    赤ちゃん。


    ……ぱーどぅん?


    だって


    マルガリータ、それは幾らなんでも無理だろう?


    そうそう、無理だから。


    そんなこと無いわよ。
    養子だって良いじゃない。


    養子?


    そう。
    血が繋がらなくても、二人で育てれば二人の子だわ。


    ああ、なるほど。
    君はなんて賢いんだ、マルガリィータ!


    アントニオ!


    あーもーそれは良いから。
    でもって養子も今は考えてないから。


    そうなの?


    …旅してる身じゃ、ね。
    子供育てるなら、どっかに落ち着かないと。


    あら、旅をしながらでも良いじゃない。
    関係ないわよ。


    大切なのは愛、さ。
    ナディ。


    …あーはいはい、そうねぇ。
    つかあんたらさぁ…。


    ん?


    なんだい?


    …あ、うん、やっぱり何でもない。


    変なナディね?


    そうか、緊張してるんだろう?


    いや、してないから!


    ああ、そうなの。
    だからなのね。


    いや、だからって何!
    だからって!


    あはは、そうか。
    俺もその時は屹度、いや絶対、するだろうなぁ。


    アントニオも?


    ああそうさ、マルガリータ。
    美しい君がもっと美しくなって俺の前に立つのだから。


    もう、アントニオったら。


    マルガリィータ!


    アントニオ!


    …あーもう、勝手にやってろー。
    てかこんなだったっけ、こいつら…。








    ナディ。


    …今度は誰。


    あたしだよ、ナディ。


    ああ、フリーダ。


    なんだい、まだ何にもしてないってのに疲れた顔して。


    ああ、うん…ちょっとね。


    折角の日だってのに、そんな顔してたらエリスが悲しむよ。
    あんたはエリスを悲しませたいのかい?


    そういうわけじゃないけど。


    じゃあもっとしゃきっとしな、しゃきっと。


    あ、いた…!


    背中が曲がってるんだよ。


    つか、痛いって!


    そりゃそうさ。
    思いきり、叩いたからね。


    …後で三回、殺す。


    ほら、ナディ。


    あーもう分かった、分かったから!
    ところで、フリーダ!


    うん?


    あんたんとこにも招待状が?


    ああ、来たよ。
    ほら。


    ……ほんと、やな女。


    なんか言ったかい?


    いや、こっちの事。
    店、大丈夫なの?


    休みだからね。


    あ、そう。


    マリア!


    マリア?


    まさか忘れちゃったのかい?


    いや、覚えてるけど。


    マリア、こっちにおいで。


    ……。


    マリア、久しぶりね。


    …。


    ほら、マリア。
    挨拶しな。


    ……。


    …仕方無いねぇ。
    ナディ、言ってやりな。


    え、何を?


    あんたはもう、違うってことさ。


    別に言わなくても


    いいや、言って欲しいんだよ。
    あたしが今、この子と一緒にいる事が出来るのはあんた達のおかげだからね。


    んー…。


    ……。


    …ま、いっか。
    マリア。


    ……。


    あたしはさ、もう賞金稼ぎじゃないのよ。


    ……。


    もうね、辞めたの。
    もうずっと前。


    ……嘘。


    嘘じゃないわよ。
    確かに銃はまだ持っているけれど、賞金稼ぎはしてない。


    でも銃は持っているのね。


    うん、持ってる。


    ナディ、あんたは素直だね。


    だって隠すことじゃないもの、フリーダ。


    ……。


    銃は…そうね、お守り代わり。
    マリア、力は使いようによっては守る力にもなるのよ。


    でも所詮、人殺しの道具だわ。


    そうね、それは否定出来ない。


    ほら。


    でもね、マリア。
    あたしには守りたい人がいるの。
    その人を一生、守りたいのよ。


    …。


    けど賞金稼ぎはもう、しない。
    守りたい人を悲しませるのは、絶対に、嫌だから。


    ……。


    まぁ、そんな事言っても賞金稼ぎだった過去は消せないけどね。
    だから無理はしなくても良いわよ。


    …ナディ。


    ……。


    そういや、フリーダ。
    じいちゃんは?


    ああ、ロペスなら…。


    よぉ、ナディ!


    ああ、じいちゃん。
    元気そうだね。


    おう、勿論よ!


    殺しても死なないよ、このじーさんは。


    あはは。


    ロペス、車の調子は良くなったのかい?


    ああ、バッテリーが上がってただけだったよ。


    そうかい、それは良かった。


    フリーダ。


    うん?


    今は三人?


    ん?


    じいちゃん。


    ああ。
    まんまと、押し掛けられたよ。


    押し掛けちゃったんだ、じいちゃん。


    男は押しが強くなくてはな!


    はは、嫌われなくて良かったね。


    ……ナディ。


    ん、なに?


    ……別に。


    そう?
    ああ、そうだ。


    …。


    マリア、今日はありがと。


    …?


    顔、見たくもなかっただろうに。
    来てくれたから。


    …。


    じゃ、そろそろ行こうかな。


    ナディ、そういやあんた、何してんだい?


    散歩。


    散歩?


    うん。


    呆れた。


    え、なんでよ。


    緊張感の無い子だねぇ。


    いや、散々緊張してるって言われたけど。


    …。


    え、なに。


    ナディ。


    ん?


    相変わらず、綺麗で良い歯をしてるね。


    …それはどうも。


    今日はたくさん見せておくれよ。


    何を?


    あんたと…エリスの笑顔さ。
    良いね?


    ……うん。








    …。


    リリオ、は?


    …ここにはいない。


    あ、そ。
    会いたかったのに。


    …どうせ直ぐに会える。


    それもそうね。


    …。


    けど。
    別にあんたは来なくても良かったんだけどな。


    …。


    ま、来ちゃったもんはしょうがないけどね。


    …ふ。


    一応、聞くけど。
    どうやって?


    忘れた。


    はぁ?


    冗談だ。


    冗談、言えるようになったんだ。
    全然、面白くないけど。


    ……お前も良く知ってる女からだ。


    まぁ、そうだとは思ってるけど。
    でもまだ、続けてるんでしょ。
    それなのに良く、捕まったわね。


    ……たまたまだ。


    たまたま、ね。
    ま、良いけど。


    …。


    リリオが来てくれたらエリスが喜ぶし。


    …。


    で、まだ続けるの?


    何をだ。


    旅。
    いいかげん、足を洗ったら?


    それはお前達もだろう、ナディ。


    まぁ、ね。
    でも賞金稼ぎはとっくの昔に辞めたし。


    いつまで続けるつもりだ。


    心が良いって言うまで。


    これを機に、どこかで落ち着こうとは思わないのか。


    それ、そのまんま返す。


    …。


    リリオはどうするの?


    それはあいつが決めることだ。
    俺が決めることじゃあ無い。


    ふぅん?


    …。


    ま、地獄送りにしなきゃ良いけど。


    …何の話だ。


    リリオの話。


    ……。


    まぁ、そんな事したら。
    一生口を利いてもらうどころか、縁ごと切られるかもしんないけど。


    …。


    ねぇ、パパ?


    ……そんなに地獄で飲みたいか。


    何にせよ、子供なんてそんなもんだと思うわよ。
    形はどうであれ、いずれ、親から巣立っていく。


    …。


    子持ちじゃないお前に言われる筋合いじゃないって顔。


    …ナディ。


    んー?


    お前はこんなところで何をしている。


    それ、誰に会っても言われるんだけど。


    良いのか、こんなところにいて。


    良いの。
    時間はまだ、あるし。


    …。


    リカルド。


    …なんだ。


    予行練習にも、なんないかもしれないけど。


    …何がだ。


    さぁ、何でしょう。


    ……。


    さて、と。
    あんたを構ってる時間なんてないのよね、本当は。


    だったら早く戻ったらどうだ。


    あたしが言ってるのは。
    あんたを構ってる時間、よ。


    ……。


    相変わらず、無愛想な顔。


    …元々だ。


    なんなら、今から帰っても良いわよ。
    リリオはだめだけど。


    ……ふ。


    本気で言ってるんだけど?


    俺がリリオを置いていくと思うか。


    思わない。
    ほんと、残念。


    …。


    あんたみたいのを親ばかって言うのよ、きっと。


    …。


    じゃ、あたしは行くから。


    ナディ。


    あー?


    …。


    何よ。


    変わったな。


    は?


    顔だ。


    綺麗になったでしょ?


    …。


    そこは嘘でも「うん」って言うところよ?


    嘘で良いのか。


    あんたはそういう男よね。


    …。


    で、変わったって?


    そのままだ。


    あ、そ。


    …お前のその顔は。


    …。


    エリスが居るからこそ、だ。


    その言い方だとエリスがいなきゃ駄目みたいじゃない。


    ああ、そうだ。


    …このやろ。


    違うのか。


    …。


    …。


    …あんたなんかに言われなくても知ってる。
    十分、ね。


    が、それは前から変わっていない。
    何一つ、な。


    じゃあ何が変わったのよ。


    …。


    と言うか、何が言いたいのよ。


    さぁな。


    はぁ?
    何よ、それ。


    俺が言わなくても分かっているのだろう?


    ……。


    もう戻れ。
    そろそろだろう。


    ……どいつもこいつも。








    どこまで行っていたのかしら?


    そこら辺。


    ああそう。
    それなら十分、吸えたでしょうね。


    は?


    空気。


    …お陰さまで。


    もう支度は終わっているわよ。


    それは良かった。


    ナディ。


    …。


    全く。


    ここまで大袈裟にするつもりは無かった。


    …。


    あんたがこんなにお節介だとは思わなかった。


    何の話?


    惚けて。
    勝手にみんなを呼んだのはあんたでしょ。


    勝手じゃないわよ。


    あたしは一言も、言ってない。


    貴女はね。


    ……。


    貴女一人でするものではないでしょう?


    ……あの子が?


    他に誰が居るの?
    居たら大事ね。
    世界、壊れちゃうかもしれないわ。


    くだらない冗談は良い。


    頼まれたわけではないの。


    じゃあ、やっぱり。


    貴女にも他者との繋がりがある。


    …は?


    だから、これだけの人がここに来た。
    そうでしょう?


    …だから、何。


    正直、集まってくれるとは思わなかったわ。
    だってただの賞金稼ぎよ、貴女。


    だった。


    ああ、そうだったわね。


    …。


    どちらかと言うと…忌み嫌われてる存在でしょう、賞金稼ぎって。


    あんたが言うか。


    何か問題でも?


    …あたしが言っているのは


    貴女は好きでしょう?
    愛している、の方が良いかしら?


    …何の話。


    あの子の嬉しそうな顔、の話。


    …。


    そして、あの子も一緒。
    違うかしら?


    …知らない。
    あたしはあの子じゃないし。


    でも、誰よりも知ってる。
    全ては無理かもしれないけれど、それでも誰よりも理解したいと願ってる。
    昔も、そして今も。


    …。


    でもまぁ貴女達の場合、嬉しそうな顔だけじゃなくて、寧ろ全てが愛おしくてしょうがないのでしょうけど。


    …やかましい、このお節介。


    出逢ってもう大分経つのに、浮気なんて全く聞かないし。
    羨ましい話ね。


    あんたが言うと白々しい。


    ああ、若しかして私が知らないだけで


    それ以上言ったら。
    風穴、空けるわよ。


    それはあったって事?


    あるか!!!!


    ああ、そう。
    それはご馳走様。


    ……。


    世界は今日も平和ね。


    だからそういう冗談は止めて。


    …。


    ブルーアイズ。


    …そうね。
    ごめんなさい。


    …。


    さて、準備はもう良いかしら?


    とっくに終わってるわよ。


    そうじゃなくて。


    あ?


    心。


    …。


    ナディ?


    だから。
    とっくって言ってるでしょうが。


    そう。
    なら、良いけれど。


    …。


    そのわりには冴えない顔しているのね。


    …こんな大袈裟にするつもり、全然、無かったのに。


    往生際が悪い。


    そもそもあんたが面白がって


    勿論、面白いわよ。


    ……この女。


    こんな機会、もう無いでしょう?
    だったら、ね。


    あんたは良いかもしれないけど、


    あの子も。


    …。


    でしょう?


    ……ああ、もう。


    屹度、吃驚するわよ。


    …何が。


    さぁ?


    ……こんの、性悪めぇ。


    ありがとう。


    だから褒めてねー!


    …。


    …本当は二人だけでやろうと思ってたのに。


    いつもの服のままで?


    …エリスの分くらいは何とか


    それまでに幾つになってしまうのかしらね、貴女達。
    大体、どれだけ待たせてたと思っているのかしら。


    …。


    面倒?


    …そういうわけじゃないけど。
    気が重たい。


    …。


    …こういうの、あたしには一生無いと思ってたから。


    ブルー?


    …うっさい。


    ふふ。


    そもそも堅苦しいのは苦手なのよ、あたしは。


    知ってるわ。


    ……。


    もう覚悟を決めなさい、ナディ。


    覚悟って何よ。


    これ以上待たせるのは、そもそも待たせている時点で失礼。
    貴女が待つのは一向に構わないけれど。


    …あーそうかい。


    行くわよ。


    …。


    ナディ。


    言われなくても、行くわよ。
    いちいちうるさいなぁ。








    …。


    …。


    …お久しぶりです、ナディさん。


    ……。


    え、と…。


    …これは何の冗談だ、あの青目。


    はは…。


    仕事じゃなかったの、あんた。


    これも仕事なんです。


    ど・こ・が・だ。


    やっぱり変ですか?


    そういう問題じゃない。
    どうして、またよりにもよってなんであんたが、って話。


    …僕も言ったんですが。
    資格も持っていませんし…。


    本物が駄目なのは分かってる。
    だからってなんであんたなのよ…。


    あ、ナディさん。


    …大体、こんな事するつもりすら無かったのに。
    あの青目めぇ…。


    …はは。


    ……あんたも大変ね。


    はい?


    あんな上司を持って。


    …いいえ、あの人は素晴らしい方ですから。


    …。


    僕はどこまでも付いていくつもりです。


    …あーそうですか。


    あの、ナディさん。


    …なに。


    今日は精一杯、務めさせて頂くつもりです。


    …適当で良いって。
    そもそもあんたがやってる時点で適当なんだから。


    いいえ、そういうわけにはいきません。


    …は?


    今日はナディさん達にとって、素晴らしい日なのですから。
    僕にはやり遂げる義務があると思います。


    …はいはい、じゃあ好きにして。


    はい、ありがとうございます。


    ……あーあ、もう。


    …あ、ナディさん。


    なに。


    そろそろ、みたいです。


    ……。


    さぁ、あちらへ。


    ……。








    ……。


    ……。


    ナディ。


    …あ、うん。


    あとはナディの仕事。
    ううん、務めなのかな?


    …務め、ね。


    私はここまでだから。


    あ、うん、ありがと…リリオ。


    ううん、どういたしまして。
    本当はパパの方が良かったのかもしれないけどね。


    いや、それは止めて。


    そうかな?
    見掛けとか歳とか、ぴったりだと思うけど。


    大体、あいつはエリスの父親じゃないから。


    それを言うのなら私もだよ?


    でもリリオの方が良いから。
    そもそもあいつとエリスじゃ全然、似ても似つかない。


    どちらかと言うとナディの方が似ているね。
    パパと。


    …。


    …リ、リリオ。


    うん?


    それは言わないで。


    ………。


    パパとナディは同じ匂いがするだけだよ?


    …。


    だ、だから…。


    だからねエリス、ナディと本当にお似合いなのはエリス。


    …。


    世界で一番、だよ。


    ……。


    あ、あー…。


    じゃあ、ナディ。
    腕を。


    う、うん。


    エリスも。


    ……。


    ほら、やっぱりとってもお似合い。


    …。


    あ、ありがと。


    どういたしまして。


    …それにしても。
    大きくなったわね、リリオ。
    もっとステキになった。


    ありがとう、嬉しい。
    でも。


    ……。


    その言葉は今、私に言うべきじゃないよ。


    う…。


    ねぇ、エリス。


    ……。


    ねぇ、ナディ。


    …え、えと。


    ちゃんと言ってあげないと。
    だめだよ?


    は、はい…。


    ……。


    じゃあ私は行くね。


    あ、あぁ…。


    …。


    ほら、ナディ。
    みんなが見てるんだから。


    わ、分かってます…。


    …。


    エリス、今日は本当に良かったね。


    ……ありがとう、リリオ。


    どういたしまして。
    私もエリスのお手伝いが出来てとても嬉しかった。


    …。


    本当はナディのお手伝いもしたかったんだけど。


    あたしはそんなに大変じゃなかった…し。


    そうかな。


    え…。


    ふふ。
    じゃあまた後でね。


    う、うん…。


    ……。








    ……。


    ……。


    …エリス。


    ……。


    あの…。


    ……。


    …だから、そのぅ。


    …ナディ。


    え、なに…。


    …みんな、待ってるから。


    あ、そ、そっか…。


    ……。


    ……。


    ……エリス。


    …なぁに。


    その、凄く…ね。


    ……。


    ……きれい、で。
    吃驚した…。


    …私じゃないみたい?


    そ、そういう意味じゃなくて…。


    …。


    …。


    …ナディ、耳まで真っ赤だよ。


    …うるせ。


    ふふ。


    ……むぅ。


    ナディ、も。


    …。


    …凄く、素敵だから。


    あ…。


    でも、吃驚はしてないの。


    …そうですか。


    だって私のナディは…元々、素敵だったから。


    …。


    …けど、今はもっと素敵だから。
    ドキドキしてるよ。


    ……ありがとう。


    触って欲しい。


    い、今は無理。


    …うん、分かってる。


    …。


    …。


    エリス。


    …ナディ。


    綺麗だよ…エリス。
    誰よりも…。


    …ありがとう。
    凄く、嬉しい。


    …。


    凄く…凄く。


    …ん。


    ねぇ、ナディ。


    ん…?


    私…ね。


    ……。


    …ナディと出逢えて、良かった。


    …。


    ナディとこんな風になって…なれて。


    …。


    …とても、仕合わせ。


    …。


    …。


    …あたしも。


    …。


    あんたに出逢えて、良かった。


    ……ナディ。


    あんたとこんな風に歩けて…凄く、仕合わせ。


    …。


    だから…生まれてきてくれて、ありがとう。


    …!


    …ありがとう、エリス。


    う、ん…。


    …。


    …。


    …こら、今泣いたらだめでしょ?


    ナディだって…。


    …。


    …。


    …エリス。


    …ナディ。


    行こう、先へ。
    これからもずっと、二人で。


    いえっさ……!








    ………それでは、誓いの口付けを。















    ……エリス。


    うん?


    あのね、あの時はあんなキスはしないものなの。


    誓いだよ?


    それはそうなんだけど、あの時は軽く重ねる、寧ろ触れるだけで良いの。


    ナディも腰に手を回してくれたよ?


    そ、それはそうしなきゃ体勢的にきつかったから、で。
    大体、首に腕を回された挙句に舌を…なんて誰が


    結果、オーライ?


    いや、だからだな…?





    「ナディ」





    わ…ッ。


    吃驚しすぎ?


    な、なんだ、リリオか。
    何?


    ナディたちは食べないの?


    あ、あー、食べるよ、食べる。


    ナディはくいしんぼうだから。


    やかましいわ。


    じゃあ、早く早く。
    ナディたちが来ないと、ね?


    あ、ああ、うん。


    ナディ、行こう?


    …。


    ナディ?


    行くけど…なんか、気まずいと言うか。


    今更?


    …あんたねぇ。


    ん?


    ……あんなの見られた後にどんな顔しろと。


    みんな、手を叩いてくれたよ?


    指笛も吹いてたね。


    うん、吹いてた。


    …うあああ、恥ずかしい。


    ナディは照れ屋さんなんだね。


    うん、ナディは可愛いの。


    黙れー。





    「ナディ」





    …わッ。


    驚きすぎ?


    …さっきからうっさい、エリス。


    何をしているの。
    今日の主役は貴女達でしょう?


    …て、ブルーアイズか。


    それなのにこんな所にいて。
    気持ちは分かるけど二人きりになるのは、後で、幾らでも出来るじゃないの。


    ちょ、はぁ?!


    さっきはありがとう。
    お熱い様を見せ付けてくれて。
    なかなか無いわよ、あれは。


    ……うぅ。


    どういたしまして。


    て、エリス!
    ここはお礼を言われるとこじゃないから!


    でもありがとうって言われたら、どういたしましてだよ?


    そうよねぇ、エリス。


    ねぇ。


    や、だからだな…?


    ナディ、楽しそう。


    リ、リリオ、どうやったらそう見えるのかな…?


    だってナディ、すごくしあわせそうだもん。


    ……。


    ねぇ、エリス。


    私は仕合わせだよ、ナディ。


    ……あー。


    ナディも仕合わせ?


    …の、ノーコメントで。


    さっきは言ってくれたのに。


    ……。


    ナディ。


    だ、だから…。


    聞かせて?


    あ、後でね。


    今、聞きたい。


    エ、エリス…。


    聞きたい。


    ………。


    …ナディ。


    あ、う…。


    …。


    ……し、仕合わせです。


    やった。


    …うー。


    後でまた、聞かせて?


    …は?


    約束。


    は、はぁ…ッ?


    えへ。


    ……。


    ふふ。
    貴女は一生、敵わないままなんでしょうね。


    ナディはエリスのこと、すごく、愛してるもんね。


    ……もう、何とでも言いやがれぇ。


    ナディ。


    …なに。


    行こう?


    …。


    みんなのところに。


    …。


    ね?


    …いえっさ。


    ……。


    な、なに…。


    …腕。


    腕?


    さっきみたいにやって。


    さっき…て、まさか?


    まさかじゃないよ?


    いや、今は別に


    やって。


    …。


    やって、ナディ。


    ……あーもう!
    もう何でも良いや、今更だし!


    …。


    はい、エリス!
    とっとと絡める!


    いえっさ!


    よし、んじゃ行くわよ!


    ゴーゥ!


    リリオ、ブルーアイズも行くわよ!


    はいはい。


    うん。


    つかエリス、あまりくっつくと歩き辛いって。


    仲良し夫婦だから。


    さっきはこんなにくっついてなかったでしょーが!


    さっきはさっき、今は今、だよ?


    こ、この…。


    ふふ、見てると本当に飽きないわね。
    ね、リリ…


    ……。


    …?
    リリオ…?


    ちょっと、行ってきます。


    え、どこに?


    すぐに戻ります。
    けど、パパには内緒にしておいてくださいね。
    ああ見えて心配性なんです。
    それじゃ。


    あ、リリオ…。


    エリス、寄り掛かったら一層歩き辛いって。


    良いの。


    あんたねぇ。


    大好きだから、良いの。


    …。


    えへへ。


    ……は、はは。


    本当、一生敵わないわね貴女。


    うっせ…!








    …。


    そんなところで見てないで。


    …。


    こっちに来て、一緒に見れば良いと思いますよ。


    …。


    気になるのなら。


    …。


    あの時、あなたは大丈夫だと言いました。


    …。


    私もそう思います。


    …。


    だってエリスには…ナディがいつだって傍にいるし。


    …。


    ナディの傍にはエリスがずっといるから。


    …。


    これまでずっと、そうだったでしょう?
    たとえ、色んな事を知ったとしても。
    あの二人は…ナディは何一つ、変わらなかった。


    …。


    これからも、それはずっと変わらないと思います。
    そう、ずっとずっと。


    …。


    パパは言ってました。
    人生は出逢いだと。


    …。


    そして、あの二人は離れるべきじゃないって。


    …。


    けどそんなの、私達が言わなくてもあの二人は離れない。
    何があっても、絶対、に。


    …。


    だからもう、あなたが心配することはないと思うんです。


    …。


    …けど。


    …?


    だからこそ、ありえない事が起きちゃうかもしれませんけど。


    …。


    二人は深く、愛し合っているから。


    …。


    ……もしかしたらもう、起きているのかも。


    …。


    だからってもう、邪魔はしないでくださいね。
    そんなことしたら…ゆるしませんよ?


    ……。


    私にはそんな力、ないかもしれないけど。
    でも私は、私たちはあの二人が大好きだから。


    …。


    だから…守ります。


    ……。


    そう…みんなで。


    …。


    それで、どうしますか?


    …?


    もっと近くで見ていきませんか?


    …。


    たとえ創られた生命だとしても。
    あなたたちの


    …。


    え…。


    ……、を。


    え、なんですか?


    …。


    ……行っちゃった。


    ……。


    石のお礼、言うの忘れちゃったな……。


    リリオ。


    あ、パパ。


    何をしているんだ。


    ううん、なんでもない。


    何でも無い?


    うん、なんでもないよ。


    …そうか。
    ナディとエリスが待っているぞ。


    私が呼びにきたのにね。


    …ああ、そうだ。


    早く行かないと。


    …。


    パパも、早く。


    ああ。








    おめでとう、エリス。


    おめでとう、ナディ。


    本当に綺麗だったわ。
    ナディもさっき会った時よりもずっと素敵だったし。
    やっぱり二人で並ぶと違うのかしらね。


    ナディ、エリス。
    どうか、ずっと仕合わせに


    あら、それは大丈夫よ。
    ねぇ、ナディ?





    ……。


    おめでとう、だ。


    ……男女。


    …たく。
    すまないな、ナディ。


    ……。


    この度は本当におめでとう、ナディ、エリス。
    ずっと仕合わせにな。





    ナディとエリス、本当に素敵だったわ!
    ねぇ?


    ああ、とても素敵だったな。
    まるで俺達のように仲睦まじくて。


    もう。


    あはは。


    ナディ、エリス。
    ずっと、ずっと仲良しで、仕合わせでいてね。
    約束よ!





    ナディ、エリス、おめでとう。
    凄く良かったよ。


    …。


    いやぁ、良いものを見たな。
    まぁ、あれには吃驚したが。


    ナディ、分かっていると思うけど。
    エリスを泣かしたら承知しないからね?


    …。


    まぁ、この二人なら大丈夫さ。
    多分、な。


    ……あ、あの。


    …?


    ……おめでとう、ございます。


    ……。


    どうか、お仕合わせに…。








    改めておめでとう、ナディ、エリス。


    …。


    ありがとう、ブルーアイズ。


    …。


    あらあら、新郎の方はぐったり?


    …誰が新郎だ。


    だって花嫁はエリスでしょう?


    …あたしだって


    まぁ、呼び方なんてどうでも良いでしょう?
    この際。


    ……。


    お酒、は…飲まないのね。
    今でも。


    でもこの間


    エリス。


    ……少し、酔っ払った。


    だ、だから!


    あらあら。


    酔ったって言ったってあの時は


    でも、許してあげたの。


    へぇ。
    それは良かったわね、ナディ?


    いや、だから…!


    ナディ。


    …なに、リリオ。


    仕合わせ?


    …。


    仕合わせ?


    …ふ、二人で。


    ね?


    仕合わせ…?


    ……もう、勘弁してよぉ。


    だって、エリス。
    どうする?


    どうしよう?


    て、あたしに回すな…。


    …ふ。


    て、そこ!
    こそっと笑わない!


    ……。


    何食わぬ顔して酒飲むなー!


    ふふ。


    エリスも笑わない!


    楽しい時は笑うんだって。
    教えてくれたのはナディだよ。


    …。


    それから、仲良しだから。


    …。


    仕合わせな時も。


    …ああもう、分かった分かったから。


    大好き、ナディ。


    あ、あははは。


    エリス、良かったね。
    おめでとう。


    ありがとう、リリオ。


    ブーケ、大事にするね。


    うん。


    …リカルド。


    …なんだ。


    笑っていられるのも今のうち。
    次はリリオの番かもしれないわよ。


    …。


    その時のあんたの顔、よぉく見てあげるから。


    ……お前なんぞ、呼ばん。


    それはどーかしらねー。


    教えん。


    あんたになんか教えてもらわなくても良いのよ。
    ね、リリオ?


    え、なに?


    リリオ、何でも無い。


    パパ?


    …。


    あははは、しっぶい顔!


    ……地獄で飲むか、アミ


    だめ、パパ。


    ……。


    ははは、娘には敵わないんだ。


    リリオはリカルドの弱点?


    お、エリス。
    うまいこと言った。


    ………。


    たまには良いわね。


    ん?


    こういうのも。


    …一回で十分だけど?


    式はね。
    私が言っているのは…。


    …?


    やっぱり、言わない。


    はぁ?!


    エリス、今日は呼んでくれてありがとう。


    どういたしまして。
    こちらこそ、ありがとう。


    うん?


    とても楽しかったから。


    そう、良かったわ。
    私も楽しかったから。


    …あ、あの。
    僕からも良いでしょうか?


    あら。
    いたの、ベックマン。


    ……はい。


    ……こりゃ一生、報われる事はないわね。


    冗談よ。
    で、何?


    …今日はおめでとうございます、ナディさん、エリスさん。
    僕の分までどうかお仕合わせに…


    はは、ありがと。


    ありがとう。





    「ナディ…!!!」





    あ?


    あ。


    間に合ったか!!


    でも式は終わってしまったみたいですね。
    だから、言ったのに。


    そんな事言ったって何かと支度があるだろうが。
    こういう事にはな。


    けど見たかったと思いませんか?


    それは…そうだが。


    て、じいちゃん。


    チャスカも。


    久しぶりだな、ナディ、エリス。
    たまげたぞ。


    おめでとうございます、ナディさん、エリスさん。


    じいちゃん達も?


    少し遅れてしまったがな!


    ありがとう、おじいちゃん、チャスカ。


    いいえ。
    こちらこそ、嬉しかったです。


    あれ。
    チャスカ、旦那さんは?


    ああ、あの人なら…


    ナディ!エリス!
    さぁ、歌って踊るぞ!


    へ?


    わぁ。


    結婚式は歌って踊って、みなで騒ぐ!
    そう、決まっておろうが!!


    て、この格好で?
    あたしは兎も角、エリスは


    ナディ。


    …お。


    踊ろう、ナディ。


    でもその格好で?


    うん。


    …ブルーアイズ?


    あら、良いんじゃない?


    純白なのに?


    もう、貴女色に染まってるでしょう?
    十分なほどに。


    よ、よくもそんな言葉をしれっとだな…。


    ねぇねぇエリス、踊るの?


    うん、みんなで踊るんだよ。
    歌いながら。


    そうなんだ。
    じゃあパパ、行こ。


    お、俺もか?


    勿論!


    ……。


    ざまーみろー。


    …。


    ナディもだよ?


    分かってるって。
    でも本当に良いの?
    折角のドレスが


    大丈夫。
    もう、ナディの色に染められているから。


    ……はい。


    ふふ。


    よし、じゃあ歌って踊るか!


    うん!


    あらあら、元気ね。


    ブルーアイズ、あんたらもよ!


    …私?


    あったり前でしょ!


    …。


    て、なぁに?
    ブルーアイズともあろう人が踊れないとでも言うのかしら?
    そうよねぇ、機械女だもんねぇ。


    踊れるわよ。


    へぇ?


    失礼ね。
    出来るわよ。


    じゃあ歌って踊って。
    あたし達の為に。


    …。


    今日はありがとう、ブルーアイズ。


    …ナディ。


    エリス、行こ!


    いえっさ、ナディ!!















    …。


    …ナディ。


    …ん?


    ぼんやり、してた。


    そう?


    うん。
    …疲れた?


    少し。


    そっか。


    今日はもう、朝からだったから。


    そうだね。


    あんたも疲れたでしょ?
    お疲れさま。


    …。


    ん…?


    …えへへ。


    …髪の毛、まだ濡れてる。


    ナディも乾いてないよ?


    あたしはあんたより長いから。


    …拭いて。


    自分で拭きなさい。


    拭いて、ナディ。


    お子ちゃま扱いされたい?


    …。


    んー?


    …ナディの、ばか。


    あはは。


    ……。


    タオル、貸して。


    …?


    拭いて欲しいんでしょ?


    うん!


    自分のも乾いてないってのになぁ。


    えへへ。


    …。


    …。


    …気持ちい?


    …うん。


    それは良かった。


    …ナディ。


    ん…。


    …楽しかったね。


    …ん、そうね。


    それからみんなに会えた。
    嬉しかった。


    うん…。


    …ねぇ、ナディ。


    なぁに?


    …今、仕合わせ?


    …まだ聞くか?


    何度でも聞きたい。


    …。


    聞きたい、から。


    ……仕合わせに決まってんでしょう?


    本当?


    あんたから貰ってるんだから。


    …私から。


    そう、あんたから。


    …そっか。
    えへへ、私もだよ。


    …。


    はんぶんこ?


    て、言うのかな。


    …夫婦はいつでもはんぶんこ。


    …なるほど。


    …。


    …。


    …。


    …お節介。


    …?


    どっかの会社の偉いやつ。


    …ブルーアイズ?


    ご丁寧に泊まるとこまで用意してくれて。


    …そのうち返せって。
    ちゃんと。


    言われなくても返す。
    あいつに借りを作るのは嫌だ。


    …。


    …それに。
    人の力で、って言うのはもっといやだ。


    …ナディはそうだね。


    あんたも、ね。


    …。


    あんたはあたしの相棒なんだから?


    …ん。


    …。


    …。


    …そろそろ、良いかな。


    …。


    まだ?


    良いよ。


    珍しい。
    いつも、は…。


    …その代わり。


    ……こらこら。


    …だめ?


    疲れてないの?


    …少しだけ。


    それはどっち?


    …どっちも。


    …。


    ……ナディ。


    あたしの髪、まだ湿ってるんだけど…。


    …私のも完全には乾いてないよ。


    …。


    …。


    ……エリス。


    ナディ…。








    ……ふぁぁぁぁ。


    大きい欠伸…。


    …本当に、疲れた。


    …。


    長い一日、だった…。


    …酔えた?


    あ…?


    …私に。


    ……。


    …ふふ。


    たく。


    あ…。


    あんたは、もう。


    ……ナディ?


    今夜はしてあげない。


    …なんで?


    枕、丁度二つあるし。
    たまには良いでしょ。


    ……。


    さ、もう寝よ寝よ。


    やだ。


    …。


    ナディ…。


    …。


    ナディ。


    …。


    ナ


    よ。


    わ…。


    少しは懲りた?


    ……やった。


    懲りてないし。


    ふふ…。


    この間だって酒、飲んだわけじゃないのに。


    …うん、知ってるよ。


    誰かのせいで。


    …済し崩し?


    …。


    だから、半分はナディのせい。
    いつだって。


    …なーんかなぁ。


    …。


    …。


    …怒った?


    怒ってない。
    さっきも怒ってない。


    …なら、良い。


    …。


    …。


    ……もう、寝ようか。
    明日から、また…ん?


    …しぃ。


    ……?


    あのね、ナディ…。


    ……エリス?


    希望。


    …へ?


    ナディ。


    ……何の話?


    ナディの、話。


    …あたし?


    そう。


    …希望って?


    ナディのこと。


    あたしが?


    そうだよ。


    …太陽の次は希望?
    あたしも忙しいなぁ。


    ナディの名前。


    …?


    ずっと前、ナディは“名無し”だって言ってた。


    …そうよ。
    だけど


    でもね、ナディ。
    ナディには希望って意味もあるんだよ。


    ……まさか。


    本当は“Nadine”。


    …ネイディーン?


    でもその愛称は……”Nadie”。


    ……。


    海の向こう、ずっと遠くの国の言葉ではナディは希望なんだよ。


    ……あんた、は。


    ……。


    ……。


    ……ナディ?


    いつの間にか、色々な事を知ってて。


    …。


    希望…希望、ね。
    あたしには荷が重いかな…。


    …だけど。


    でもあんたぐらいのだったら…なんとか出来るかな。


    ……。


    …出来ないかもしれないけど。


    ううん…ナディはもう、なってるよ。


    …。


    私の…太陽、だから。


    …やっぱり恥ずかしいなぁ、それ。


    …。


    …。


    ……大好き。


    あたしも…


    ……。


    ……ふぁ。


    …眠たい?


    さすがに…ね。


    ……。


    ……。


    ………あの、ね。


    ん……。


    ………。


    ………え。


    …。


    エ、エリス、今なんて言った…?


    …吃驚、した?


    び、吃驚したって言うか…。


    ……。


    もう一回言って。


    …やだ。


    ちょ、エリス…。


    …。


    エリス、ねぇ…。


    ……ちゃんと聞こえてたと思う。


    い、いや、でも…。


    …身に覚え、ない?


    え…。


    …ない?


    や、そ、それは…。


    ない?


    な、ないって言ったら…。


    …悪い嘘?


    ……。


    じゃあ…ある?


    …う、ん。


    ……。


    え、え…えぇぇ。


    ……私、言ったよ?


    そ、そうだけど…本当に?


    悪い嘘は吐きたくない。


    ……いつから?


    …ちょっと、前。


    ちょっと前……あ。


    ……。


    や、つか、そうだったらもっと早くに…。


    …今日、言おうと思ってたの。


    て。
    そんな躰で踊ったり、その…。


    …セックスしたり?


    や、だ、だから…ッ。


    ……ふふ。


    笑ってる場合じゃ…。


    …だってナディ、面白い。


    こ、こいつ…。


    …。


    ……大丈夫なの?


    …ナディは心配性。


    だって…。


    …大丈夫、女は強いから。


    あたしもそうなんですけど…。


    だから、大丈夫。


    …だから、て。


    ね、ナディ…。


    な、なに…。


    ……触って、みる?


    あ…。


    ……。


    …………エリス。


    …金色の勇気を太陽が。


    …?


    蒼い月が深い愛を。


    ……。


    ……。


    …愛、太陽にもあると思うんだけど。


    それは私だけのものだから。


    …て、こら。


    えへ。


    でも…そっか、そうなんだ。


    ……不安?


    …。


    ナディ…。


    …なわけ、ない。


    …。


    少しもないって言ったら、嘘になっちゃうけど。


    ……。


    でも。


    …でも?


    ……。


    ……。










    『二人だから、大丈夫!』